このレポートはヤング・ギター2002年5月号に初掲載されたものを復刻しています。
新女性ヴォーカルを迎えさらなるアグレッション&エモーションを得た激烈叙情派ギター・コンビ:アモット兄弟率いる新生“魔王”降臨!
赤坂ブリッツは、開演前から何とも異様な興奮状態に包まれていた。当然、フロアはスシ詰めの超満員。それは取りも直さず、このスウェーデン産メロディック・デス・メタル・バンドの人気の高さを証明すると同時に、今回が日本における初ステージとなる女性シンガー、アンジェラ・ゴソウに対する期待の大きさを物語っていたとも言えよう。そのアンジェラがノドを痛めたことで、昨年夏に行なわれるハズだった公演が延期となって7ヵ月余──ひたすらファンは待たされていたワケで、もうその期待は鬼のように膨れ上がっていたはずだ。よって、雷鳴のSEに続いて「Enemy Within」のイントロであるピアノの調べが聴こえてきた瞬間、爆発的な大歓声が湧き起こり、バンドの演奏が始まると同時にフロア全体が大きく波打って凄まじいパワーがはじけまくったことは言うまでもない。そして、歌入りのまさにその時、一陣の風のようにアンジェラがステージに現れ、アルバムよりも数倍野太いデス・ヴォイスで咆哮を放つと、オーディエンスの反応は歓喜の度合いを一気に増した…!
ヘソ出し姿のアンジェラは、見事に腹筋が割れ、まるでブルース・ディッキンソンみたいなアクションでオーディエンスを煽りまくる。心配された線の細さも全くなく、いらぬ先入観など完璧に吹き飛ばすぐらいに堂々たるフロントマンぶりを見せつけ、ほぼ立ち尽くすのみだった前任者とはまさに正反対のキャラクター性をアピールしている。そんなアクティヴなアンジェラ効果もあってか、マイケル&クリストファーのアモット兄弟もこれまでになくよく動き回り、ドラム・ライザーの両脇とステージ左右に設けられた“お立ち台”に上って、しっかり“魅せる”パフォーマンスをコナしていたのには驚いてしまった。実際、いくらかマニアック臭を取り払い、メジャー感漂うスケールの大きいHR/HMショウを構築していたことは特筆に価するだろう。
マイケルがESPの白のVシェイプ、クリストファーがバンドのトレードマーク入りのキャパリソン…と、既に御馴染みとなったそれぞれの愛器でショウ全体を通していたことはこれまでと変わりないものの、特に、マイケルのプレイが回を追う毎により丁寧に、クリアになってきていることに気づかされた人も多かったのではないか。ショウの前半にはPAの音の分離が悪く、若干リズム・プレイが聴き取り難かったりしたものの、リード・パートでは総じて音の輪郭もハッキリと聴こえ、「Heart Of Darkness」でのマイケルの溜めて泣きへと転ずるソロや、「Pilgrim」におけるクリストファーのダイナミックなメロディー展開等では、見事に互いの持ち味を発揮していたと思う。
旧曲とアンジェラの相性も悪くなく、例えば「Bury Me An Angel」なんかでは、明らかに前任者よりもディープなデス声をぶちカマしてもくれ、ショウ後半をメロディックなナンバー中心で固めたステージ構成も──アンジェラの衣装替えなんかもあったりして──なかなかよく考え抜かれていたのではないか。マニアックなファンへのプレゼントとしては、ドラム・ソロの前のインスト・セクションにて、「人体ジグソー・パズル」の邦題で有名な(?)カーカス・ナンバーのリフを盛り込んでいた点が挙げられ、また、セカンド・アンコールでは、兄弟2人による生「Snowbound」が披露されたことも付け加えておこう。バンドとしての確実な成長をアピールした今回のツアーで、彼らはさらに実力を身に付けたに違いあるまい!
アーチ・エネミー“WAGES OF SIN JAPAN TOUR”@赤坂ブリッツ 2002.3.15 セットリスト
- 1. SE~Enemy Within
- 2. Bury Me An Angel
- 3. Diva Satanica
- 4. Heart Of Darkness
- 5. The Immortal
- 6. Dark Insanity
- 7. Instrumental Riff Medley(incl. CARCASS’s Corporeal Jigsore Quandary & Bridge Of Destiny)~Drums Solo
- 8. Burning Angel
- 9. Pilgrim
- 10. Ravenous
- 11. Silverwing
- [encore]
- 12. Dead Bury Their Dead
- 13. Angelclaw
- 14. Beast Of Man
- [encore 2]
- 15. Snowbound~Shadows And Dust~Fields Of Desolation’s Theme Ending