VICIOUS／ヘイルストーム

ワイルド＆セクシーなフロント・ウーマン：リジー・ヘイル（vo, g）率いる、米ペンシルヴァニア州レッド・ライオン出身の４人組による４作目。曲がったことが心底嫌いそうな、真っ向勝負のメタル／ロックを重厚に聴かせる基本姿勢に変わりはなく、ゴツゴツしたリフに意外にも柔軟な展開と溢れるような熱気、ヘヴィで骨太なサウンド、それにガッツに満ちながらも女性らしいキュートさ／セクシーさも伴ったリジーの表現豊かな歌声も十二分に聴かせる、ワクワク感の止まらない濃厚な作品に仕上がっている。現代に生きるクラシック・メタル／ロックの申し子みたいなイメージのあるバンドだけれども、実は手法的には結構コンテンポラリーなところが以前からあり、上述した展開のフレキシビリティやメロディのキャッチーさ、リズムやサウンド・アレンジなどは’90年代以降のモダン志向を大いに踏まえており、またそれを変に隠すこともない。今回は特にそれが顕著なのであるが、それでも良い意味で武骨で奔放なイメージを崩すような、過剰に洗練されたような演出は一切なく、あくまで普遍的なロックの熱さが主軸なので、迷うことなくその音世界へ入っていける。表向きはカジュアルだが内実は本格的というさらに強化されたスタンスは、より広いフィールドへアピールすることだろう。’15年以来の来日の実現にも期待したい。

【文】小澤明久