アーティスト名 | MR.BIG MR.BIG |
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アルバム名 | DEFYING GRAVITY ディファイング・グラヴィティ |
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初期4作品を手掛けたケヴィン・エルソンをプロデューサーに迎えた、約3年ぶりとなる9枚目のアルバム。ファンとしてはパーキンソン病と闘っているパット・トーピー(dr)の参加が気になるところだが、彼の意向に沿ってマット・スターがプレイし、完成に至ったようだ。一聴してまず驚かされるのが、サウンドの生々しさ。ベーシック・トラックはスタジオ・ライヴのような環境で録音されたようで、オーヴァーダブもほとんどなされていない印象を受ける。高い技量があるバンドだからこそより説得力を得られる手法だが、彼らがこのアプローチを選択した事実は重要だろう。自身のルーツに着目した前作とは異なる意味での“原点回帰”と言っていい。メロディックかつテクニカルな要素を巧みに融合させた、MR.BIGらしい多彩な楽曲群。そのいずれもが躍動感に満ちている。
ポール・ギルバートが世界屈指のギタリストであるのは改めて言うまでもないが、特に今回は各マテリアルそのものや他のメンバーのプレイから触発された、インプロヴィゼーションと思しき数々のフレージングが光る。バッキングに関しても、コードとリズムの組み合わせを意識した妙技に、類稀なるセンスを有する彼の個性を再確認。今秋には日本公演が予定されているが、本作がライヴの場においてさらなる輝きを見せるのは間違いないだろう。
【文】土屋京輔