ディジー・ミズ・リジーの来日公演が目前に迫ってきた。9月3日(水)、東京・豊洲PITで行なわれる今回の公演は、彼らのデビュー・アルバムの発売30周年を記念してのもの。厳密に言えば、セルフ・タイトルが冠された同作が彼らの母国であるデンマークでリリースされたのは1994年のことで、昨年11月には同国の首都コペンハーゲンのロイヤル・アリーナにてアニヴァーサリー公演が行なわれている。それから9ヵ月半ほどを経て、ようやくここ日本でも同様の趣旨のライヴが実現することになったというわけだ。
「第二の故郷」とまで言うと大袈裟だろうが、日本は彼らにとってデビュー当時から所縁の深い国のひとつであり、これまでのトータル公演本数についてもデンマークに次ぐ第2位にあたる。そして何よりも彼ら自身がこの国のオーディエンスに“ホーム”を感じているという事実がある。フロントマンであるティム・クリステンセン(vo, g)は昨年、自身のソロ公演のために来日した際、筆者とのインタビューの中で次のように語っている。
「日本に来るたびに感じさせられるのは、この国のオーディエンスが本当に音楽に集中して、それを楽しんでくれているということなんだ。ステージから客席を見渡していても、スマホやお喋りに夢中な人たちの姿は見当たらない。デンマークでライヴをやるのも楽しいけれど、パーティー気分の人たちも少なくない。もちろんそれはそれで大歓迎だけど、少なくともミュージシャンとしては、みんなが何よりも音楽のためにそこに集まってくれているんだと信じたいし、その点においても日本のオーディエンスは本当に素晴らしいし、とても演奏しやすいんだ」
今回のライヴは、当然ながらデビュー作『DIZZY MIZZ LIZZY』の楽曲を軸とする演奏内容になる。参考までに前述の母国での記念公演の際のセットリストを確認してみると、このアルバムのオリジナル収録曲すべてが網羅され、さらに『ROTATOR』(1996年)、再集結後の『FORWARD IN REVERSE』(2016年)、『THE ALTER ECHO』(2020年)といった各作品からも漏れなく選曲された盛りだくさんな内容となっている。しかも日本のファン思いの彼らだけに、日本公演ならではの趣向が用意されている可能性もある。また、すでに『ALTER ECHO』に続くアルバムの制作も進行中のはずなので、デビュー作の完全再現やこれまでの集大成といった枠組みにはとどまらない演奏内容が期待できそうだ。
今回の公演当日にあたる9月3日には『DIZZY MIZZ LIZZY』と『ROTATOR』の2枚が2010年のリミックス音源により再発されることになっており、さらに、ふたつのライヴ作品を合体させた『LIVE IN AARHYS + LIVE IN JAPAN』も同時にリリースされる。また、当日の公演会場ではアニヴァーサリー公演に似つかわしいメモリアルなグッズの数々が販売されるが、その中でも日本公演限定での販売となる30周年記念フォトブックには注目したいところだ。こちらは前述のコペンハーゲンでのアニヴァーサリー公演の際に撮影された写真の数々がふんだんに使用された特別な1冊となっている。
『DIZZY MIZZ LIZZY』はまさに「デンマーク音楽史上もっともヒットしたロック・アルバム」であり、同国ではメタリカの『METALLICA』(1991年/通称ブラック・アルバム)を超えるセールスを記録しているほど。まさに「一家に一枚」レベルで浸透しており、たくさんのヒット・シングルも生まれている。ティムは、同作について「ある世代にとっては青春のサウンドトラックのような作品だ」と言いつつ、「そしてどんな人にも“18歳に戻りたい”と思う瞬間がある。だからこそ今回のようなライヴは多くの人にとってとてもエモーショナルなものになるはずだ」と語っている。そして、当時の楽曲が今も愛され続けていることについては次のように発言している。
「20歳そこそこの頃や20代のうちに書いた曲には悲しいラヴ・ソングも結構多くて、今となっては当時の自分を痛々しいなと思う部分もあるけれど(笑)、今もなおそうした曲をやることによって当時の感情を再訪することができるのは素敵なことだし、それを自分が表現できるというのはとても嬉しいことだ。しかもそうした曲やメロディは古びていくことがない。もちろんそこはアレンジ次第ではあるし、すべての曲が今の時代に通用するとまでは言えないかもしれないけれど、時代を超越したと言っていい曲も確実にいくつかあるはずなんだ」
「すべての曲が時代を超越している」とまでは言い切らず、そういう曲が「いくつかあるはずなんだ」というティムの言葉からはいかにも彼らしい謙虚さが感じられるが、実際、9月3日の夜には、彼らのさまざまな楽曲が時代もジャンル感も飛び越えながら愛され続けてきたこと、今なお魅力が損なわれぬままであることが証明されることになるはずだ。ひとつだけ残念なのは今回の来日公演が一夜限りで終わってしまうことだが、だからこそこの貴重なステージを、絶対に見逃さずにおきたいところである。
DIZZY MIZZ LIZZY THE 30TH ANNIVERSARY OF THE ICONIC DEBUT ALBUM
日程:2025年9月3日(水)
会場:東京 豊洲PIT
開場 18:00 / 開演 19:00
スタンディング 前売り 13,000円(税込) (ドリンク代別途)
主催:CITTA’WORKS / BAYFM78「POWER ROCK TODAY」
招聘・企画制作:CITTA’WORKS
協力:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル / シンコーミュージック・エンタテイメント / MUSIC LIFE CLUB / ディスクユニオン
詳細・お問い合わせ:チッタワークス 044-276-8841(平日12:00~13:00 / 15:00~18:00)
イベント特設サイト
THE 30TH ANNIVERSARYOF THE ICONIC DEBUT ALBUM | CITTA’WORKS



