本誌2018年7月号の奏法企画を期間限定公開!!
2017年のデビュー以来、破竹の勢いでシーンを駆け抜けてきたヘヴィ・メタル・バンド:LOVEBITES。しかし2021年8月にベースのmihoが脱退し、バンドは活動休止を発表し、一時的にその歩みを止めている状態だ。そんな状況の中、初のベスト盤となる『IN THE BEGINNING – THE BEST OF 2017 – 2021』が12月22日にリリースされる。今月号(ヤング・ギター2022年1月号)では、これまで本誌に掲載されたギター・チーム:midori&miyakoのインタビューをまとめた特別企画を掲載している。
また、『BATTLE AGAINST DAMNATION』(2018年)の発表時、YGは2人にデモンストレーション映像の撮影をオファー。ツイン・ギターによるハモリ・フレーズを2パターン、それぞれのおすすめリックを4パターンずつ、計10個のフレーズを実演してもらった。その映像は本誌2018年7月号の購入者のみダウンロードすることができたが(現在は提供終了)、今回の企画に伴い、特別にYouTubeのYGチャンネルにて期間限定で公開している。さらに、当時の誌面に掲載された譜面&解説を当ページにて復刻掲載! 以下、動画と合わせてぜひチェックを。
いずれのフレーズもLOVEBITESの楽曲におけるギター・プレイに通じるもので、EPも含めた初期アルバム3枚に収録されているナンバーをコピーしたい読者には良き教材となるはず。midoriとmiyakoのフレージングや得意とするテクニックの違いがはっきりと表れているので、そういった点を比較してみるのも面白いだろう。
また映像では、2人がレコーディングやライヴで当時使用していたメイン・ギターを紹介している(miyakoがディーン“Icon”、midoriがE-Ⅱ“FRX”と“Horizon”)。こちらも必見だ。
※譜面はタップ/クリック/マウスオーバーで拡大
一糸乱れぬツイン・リード feat. miyako & midori
Ex-1とEx-2は共に、miyakoとmidoriによるハモリ・フレーズだ。まずEx-1は、テクニック的に言えば今回紹介するリード・フレーズの中で最も取り組みやすいだろう。ただ2人で綺麗にハモらせるためには16分音符のリズムやヴィブラートのニュアンスなどをタイトに揃える必要があり、その点に関して彼女達はピッキング・パターンなどをシビアに合わせていることが映像で確認できる。
一方Ex-2はタッピングを含んだフレーズとなっており、それ故にピッタリ合わせるのがEx-1より難しい。5小節目の終わりからタッピング・パートに入るが、2人とも1音目(miyakoが1弦11f、midoriが2弦13f)は、ピッキングをせずに左手の人差指を使ったタッピングで発音している点に注目(譜面には“T”という記号で表記している)。
Ex-1 細部まで息を合わせたアイアン・メイデン的ツイン・リード
スタッカートの長さといった細かいところまで合わせている点に、2人のストイックさが感じられる。1〜3小節目の16分音符には、軽くブリッジ・ミュートを掛けているようだ。
幅広い表現力と秀逸なソロの構成力 feat. miyako
Ex-3〜Ex-6はmiyakoが紹介してくれたフレーズだ。まずバッキングのEx-3(譜面にしたのは冒頭の4小節のみ)は、彼女のようなスピード感のある演奏にするためにはアクセントの付け方が重要。映像を参考にしながら、ミュートしない音やコードの変わり目の音を強調するイメージで取り組むのが良いだろう。
残りの3つはすべてリードものだ。Ex-4はキャッチーなメロディー弾きで、ここにはタッピング・パート以降を採譜して掲載した。1〜2小節目は左手先行型のタッピングとなっているのがポイントで、人差指をしっかりと指板に打ち付けて綺麗に発音しよう。
Ex-5はタッピング主体のフレーズで、リズム面が特徴的。1〜4小節目で意識すべきは「タンタタ、ンタタン」というTAPするタイミングで、miyako自身は恐らくこの「タ」で表記した打点の間に左手のレガート音を詰め込む…くらいの感覚で弾いていると思われる。そのため右手のリズムが正確に取れてさえいれば、譜面に記した符割りを厳密に守る必要はない。
そしてEx-6は、ゆったりとしたテンポで唄いあげる泣き系のソロだ。溜めを効かせたロング・トーン中心のメロディックな前半、音数が増えて徐々に高音域へとシフトし、盛り上がりを演出している後半…という、彼女の構成力が光るフレーズとなっている。
Ex-3 心地好いスピード感で駆け抜ける爽やかなバッキング
単音と複音の弾き分けがポイント。3小節目4拍以降のコードをアップ・ピッキングする箇所は、弦を引っ掻き上げるようにプレイすると本人の演奏に近いニュアンスになる。
Ex-4 左手先行型タッピングを含んだメロディー弾き
左手先行のタッピングは、慣れない人には難しいかも。指先だけでTAPしようとするのではなく、付け根の関節部分を支点にして指を動かすように意識するのがコツ。
Ex-5 右手TAPのタイミングを把握することが攻略の第一歩
まずは右手の動きだけを練習するのが得策。“タンタタ、ンタタン”のリズムでタッピングできるようになったら、その間に左手のレガートを詰め込んでいくようなイメージだ。
Ex-6 徐々に盛り上がっていく慟哭のギター・ソロ
チョーキングやレガートを多用して哀愁のメロディーを際立たせる、miyakoの表現力に注目。
多彩で精確なテクニック feat. midori
続いてEx-7〜Ex-10は、midoriが披露してくれたソロ・プレイだ。最初のEx-7は、冒頭がGmコードの分散和音になっているが、4つの小スウィープにポジション移動が絡んだフレーズでかなり難易度が高い。ゆっくりしたテンポから練習を始め、ダウン・スウィープでリズムが走らないように注意しよう。
Ex-8の1〜4小節目は、スリー・ノート・パー・ストリングのポジションを使った高速レガート・フレーズだ。スキッピングも含まれているこれを攻略するには、midoriのように無駄な動きのないフィンガリングを心掛けよう。5小節目はFコードの分散和音で、1拍目の異弦同音を使ったフレージングがポイント。
Ex-9はアームを多用したメロディアスなプレイ。この譜面の中だけでも、「ゆっくりアーム・ダウンして戻す」「瞬間的にヴィブラートを掛ける」「ゆっくりアーム・ダウン&リターンし、そのままヴィブラート」「アーム・ダウンした状態でピッキングしてリターン」という4つの使い方が登場している。それによってフレーズに、多彩な表情を付けているのだ。
最後のEx-10は、ラン・フレーズで緊張感を演出したスリリングなソロ。1小節目のA7のコード・トーンに♭9thの音を加えたフレージングや、4小節目に登場するクリケット・ヴィブラートなどにも注目してもらいたい。
Ex-7 小スウィープとポジション移動が絡んだ冒頭2小節が難敵
使用されているスケールは、Gナチュラル・マイナーの第6音(E♭)を半音上げてEにしたGドリアン。このE音が混ざることで、少し明るいマイナー調の響きが生まれている。