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カルロス・ロザーノ&フィリップ・バルダイア/ペルセフォネ 2017来日

インタビュー、文&写真撮影●奥村裕司 Yuzi Okumura

曲作りはストレスの溜まる作業だけど、音楽は永遠に残る(カルロス)

Persefone Carlos and Filipe

YG:ポルトガルには現地独特のギター(Guitarra portuguesa)がありますが、そっち方面は?
FB:祖父が持っていたのを試しに弾いてみたことがあるけど、凄く難しくて弾けなかった…。フレットもネックも独特だし、チューニングも全く違うから。ファドの種類によって、チューニングも4つあるんだよ。
CL:母国のギターが弾けないなんて、そいつはガッカリだな! セップクだ!(笑)
FB:先生、スミマセン…(苦笑)。

YG:NAMIというバンドは何歳の時に始めたのですか?
FB:16歳だよ。アルバムを2枚(’11年『FRAGILE ALIGNMENTS』&’13年『THE ETERNAL LIGHT OF THE UNCONSCIOUS MIND』)リリースしたけど、ボビーと僕がペルセフォネに加入したんで、今は活動を止めている。2〜3年ほど並行して活動していたんだけど、NAMIの状況が芳しくなくなったんで、ある一定のレヴェルに達するまでは、ペルセフォネに専念することにしたんだ。2つのことを同時にコナすのは難しい。1バンドに集中する方が良いと思ったのも理由だね。

YG:NAMIというバンド名は日本語由来?
FB:うん、日本語の「波」のことだよ。あと、『ONE PIECE』のキャラクターにもナミって女の子がいるよね。

YG:よくご存じで。
FB:だって、“NAMI”でネット検索して最初に出てくるのは、(キャラクターの)ナミの方だからね。それで、バンド名を変更しようと20回ぐらい試みたものの、みんなが嫌がるんで…。

YG:日本語名を採用した理由は?
FB:もうひとりのギタリストが付けたんだ。僕達の音楽は(寄せては返す)波のように、人々に何かを与え、僕達もそこから何かを得るから…ね。そういう精神の下で活動していたのさ。
CL:そのギター・プレイヤーも僕の生徒だったんだよ。
FB:そうそう。アンドラのギタリストはみ〜んなカルロスの教え子なんだ(笑)。
CL:彼は素晴らしいギタリストだったけど、もう弾いていない。音楽を辞めてしまったらしいね。
FB:音楽ビジネスに携わって、アルバム制作やら何やらにお金を掛けた結果、「これは自分には向いていない」と思ったみたいだ。ともあれ、アンドラでギタリストを志すヤツは、遅かれ早かれ彼の生徒になる。イエス・キリストに弟子がいたようにね!
CL:おいおい! まぁ…何せちっちゃな国だからね(苦笑)。(アンドラの)ギタリストのことはみんな知ってる。
FB:実際、彼がアンドラのメタル・シーンを創造したようなモノだからね。カルロス、そしてジョルディが導いてくれたんだ。
CL:そう言ってくれて嬉しいけど──僕の見方は違っている。僕はただ自分がやらなきゃいけないことをやってきただけだ。ギターを習得したいと一生懸命な生徒が集まってきて、僕はいつも同じことを教えていた。僕に出来るんだから、みんなも上手く弾けるようになるハズだ…と、そう思っていたからね。上達したギタリストは沢山いたし、そうでもない人もいた。僕は最善を尽くすだけで、あとは生徒の頑張り次第だよ。だから、巧いギタリストが沢山育ったのは、単にラッキーなだけだと思う。それにしても──(フィリップに向かって)他のインタビューでは、もうそんなことは言わないでくれよ! ダメだよ…(日本語で)バカ!(笑)
FB:キリストの喩えは良くなかったのかもしれないけど、そんなに気にするとは思ってなくて…。ゴメンね。

Filipe Baldaia▲元々カルロスとは子弟ということで、鉄壁のコンビネーションを随所で見せつけた、まだ20代半ばのフィリップ・バルダイア!

YG:さて、今年出た新作の『AATHMA』ですが、変わったタイトルですね?
CL:あれはサンスクリット語なんだ。“魂”という意味だけど、アルバムには全編通してコンセプトが出来ていたんで、そのすべてにピッタリ当てはまる言葉として「“AATHMA”はどうだろう」ということになって採用した。これは、一人々々が持つ感情、言葉、さらには世界や惑星など、生命のあるすべてを結び付ける特別な言葉でね。前作の頃からそういったことに関心があって、瞑想や座禅なども行なっていたから、そこから『AATHMA』で生命や一生についてより掘り下げることにつながったんだね。“life(命あるモノ)”はとても興味深い。始まりがあって、終わりがある。そういう意味でもしっくりくるんだ。

YG:音楽的にも、よりアトモスフェリックでスピリチュアルな方へ寄ってきていると感じました。同時に、デス・メタルの要素はかなり減退していますよね?
CL:うん。メタルっぽさは少ないかもしれない。同感だね。実は、前作『SPIRITUAL MIGRATION』(’13年)を制作した際、プロデュースも手掛けた鍵盤奏者のモエは私生活で色々と問題に直面していて、作曲のプロセスに思ったほど関わることが出来なかったんだ。それも影響して、あのアルバムは低音重視のミックスになり、ファストで激しいギターのリックがあちこちに散りばめられていた。でも今回は、そういった方向性には進みたくなかったし、『SPIRITUAL MIGRATION』のようなクレイジーなアルバムを2枚続けて作りたいとも思わなかった。それで、今度はモエも作曲に集中して取り組み、アトモスフェリックなサウンドを何層にも重ね、アルバムにダイナミクスを持たせようと考えた結果──プロデュースはイェンス・ボグレンに依頼したのさ。

YG:なるほど…。
CL:僕にとって、『SPIRITUAL MIGRATION』はトゥー・マッチで、何度も聴き返すのはキビしい…。メシュガーは知ってるよね? 彼等のことは大好きだけど、2曲も聴いたらもう充分。激辛料理みたいなモノさ。好きだけど、沢山は食べられない。それが前作と『AATHMA』との違いだ。実際、より聴き易くなっているよ。何度も聴けるし、全体を通して楽しめる。メタルの範疇ではあるけど、あまり“らしく”ないかもしれない。
FB:オーガニックとも言えるんじゃないかな。

Marc Martins▲途中から上半身裸になり、激情を迸らせ咆哮しまくるマルク・マルティンス。サークル・ピットの中へ飛び込み、自ら観客を先導する場面も…!

YG:作曲はメンバー全員で行なうのですか?
CL:プロセスはその時々で変わる。今の世の中は音楽が溢れているよね? 沢山のバンドやミュージシャンがいて、お金になる、ならないに関係なく音楽を作っている。でも、いずれにしても音楽というのは、僕にとってはすべてが同じなんだ。インスピレーションを得るために、僕は新しいバンドを探している。例えば、最初にシニックを聴いた時のことを今でも憶えているよ。「凄い…でも、こりゃ大変そうだ!」と思ったね。同じように、ペルセフォネのやり方も徹底している。一音々々、とことん考え込んで作るから。ストックしておいたアイデアなんてひとつもない。どのアルバムにも、入らなかった曲というのはないんだよ。常に新しいことを試し、限界を超えて“道具”を増やすのさ。
FB:僕はリフを作るのに慣れていたから、とても楽しかったな。カルロスに「これを聴いてみてくれないか?」とアイディアを聴かせたこともある。でも、後から聴き返してみると、「待てよ…こんな酷いアイデアがペルセフォネのアルバムに入ってちゃいけない!」と思ったんだ。
CL:まだ加入したての頃だったからね。ある時、彼が両手タッピングのフレーズを作ってきたことがあった。リズム的にはとても面白いことをやっていたよ。ただ、コード進行にヒネリがなくて…。7/8とか、11/8みたいな変拍子で、とても面白かったんだけど、結局ダメ出しをした(笑)。
FB:うんうん(苦笑)。
CL:リズム面でも、僕達はリフひとつから、まるでクラシックのオーケストラみたいにコードのハーモニーを熟考し、各パートを作り込んでいく。「僕がこの音を弾くから、君はこっちの音を弾いて…」なんて風に、一緒に演奏すると壮大になるよう仕上げていくんだ。しかも、メタルという音楽の範疇で…ね。何度も聴いて、良いと思えなかったら、そのパートはボツにして、別のリフを入れることもある。メンバーはみんな友達だけど、曲作りになると、僕は人が変わるんだ。「そんなプレイは二度とするな!」なんて言ったりすることもあるし(笑)。とにかく、曲作りはストレスの溜まる作業だよ。でも、最後には…(喜びや達成感が待っている)。辛いのは一瞬だ。音楽は永遠に残るんだからね。

YG:今シニックの名前が出ましたが、『AATHMA』にはポール・マスヴィダルがゲスト参加していますね?
CL:’15年だったかな…、ドイツで開かれた大規模なプログレッシヴ・メタル系のフェスティヴァルに出演した時、シニックも出ていて、僕達はみんな大ファンだから、凄く楽しみにしていたんだ。でも…その後、彼等が分裂したのは知ってるよね?

YG:はい。
CL:そのショウは、ポールが(長年連れ添った)ドラマー(ショーン・レイナート)と共に行なった最後のステージになったんだ。既にバンドのフェイスブックでは、「俺は辞める」「いや、俺が辞める」といった書き込みが続いていて、見ているのも辛い状況だった…。だから、客席にいた僕達も悲しかったけど、何とか盛り上げていたよ。バックステージで見かけた時も、彼等は椅子にもたれて、気落ちしているように見えた。その時、ポールに話し掛けてみたところ、ちょっとした音楽の話から、生と死や様々な出来事についてなど、次第に突っ込んだ話になっていってね…。とても聡明な考えの持ち主だと思ったよ。僕達みたいに瞑想もするらしい。

YG:そうなんですか!
CL:それから1年後に、アルバムの制作に入った僕達は、ポールとの会話のことをすっかり忘れていたんだけど、アルバムのイントロになる曲(「An Infinitesimal Spark」)の最初の歌詞を考えていたら、“身体に宿る命ほど美しいモノはない”というような、とても深い内容を思い付いてね。そこでふと、「これをポールに歌ってもらったらどうだろう?」とひらめいた。それで、マネージメントを通じて彼に連絡を取ってみたら、全部(歌詞を)読んでくれた上で、「是非やりたい」と言ってくれたんだよ。ただ──僕はその時、シニックで彼がやっていたように、ヴォコーダーのエフェクトを掛けて歌って欲しいと思っていたんだけど、(バンドが解散したのもあって)なかなか言い出せなくてさ…。そんな時、ポールからEメールが届いて、何とそこには「ヴォコーダーを使って録ってもイイかい?」とあったんだ。もう「やった!!」と大喜びだよ。でも、平静を装って「ええ、勿論。良いアイデアですね。よろしくお願いします」とプロフェッショナルな返事を出したよ(笑)。

YG:(笑)
FB:憶えてるよ。あの頃カルロスは、「ポールが僕達のアルバムで歌ってくれる!」「しかも、ヴォコーダーを使って…!!」と大興奮だったね(笑)。
CL:その後、録ったデータが送られてきて、聴いてみたら…もう最高だったね! そこで「もし可能なら、もう1曲歌ってもらえませんか?」とメールを送り、さらに「ギターも弾いてくれると嬉しいんですが…」と書いてみたいんだ。すると、「この仕事は気に入ったから、是非やりたい」と快諾してくれて、素晴らしいプレイを送ってきてくれた! 最高のコラボレーションが出来たと思う。今では仲の良い友達になったよ。またいつか一緒に曲を作ったり、ツアーをしたり出来ないかと考えてもいる。そういえば、ポール・マスヴィダルが『AATHMA』のTシャツを着てコーヒーを飲んでいる写真があるんだけど、悲しいことがある度に、僕はあの写真を見ては「大丈夫、きっとすべて上手くいくさ…」と励みにしているんだ。彼は自分が歌うパートの歌詞を手掛けてくれたし、何もかもが自然に運んだからね。本当にありがたいことだった!

YG:では最後に、今後の予定を教えてください。
CL:(’18年)3月にヘッドライナーとしてヨーロッパ・ツアーをやることになっているよ。前回のツアーは沢山の人達がショウを観に来てくれて、少しずつ活動の幅が広がってきていることが感じられた。今回はもうちょっと規模の大きなツアーで、ステージ・プロダクションにも凝る予定だ。あと、夏フェスの時期にも幾つか予定が入っていて、アメリカでもプレイすることになっているよ。

YG:(’18年)9月の“ProgPower USA”ですね?
CL:そうそう。その前には2週間のアメリカ・ツアーも行なう予定なんだ。あるバンドがオープニング・アクトとして呼んでくれてね。まだ正式発表は出来ないけど、かなり名前が知られているバンドと一緒に廻れそうだ。そして──’19年にはまた新作を作るよ! それまでに日本にも来たいな!
FB:そうだね、是非!!

ダーク・ルナシー

DARK LUNACY - Davide Rinaldi(g)&Mike Lunacy(vo)▲共演の伊産4人組:ダーク・ルナシーも、抒情と激情に満ちたサウンドでフロアを熱狂に渦に叩き込む! 哀感を湛えたマイク・ルナシーの濁声、抜群のトーンでメランコリックなフレーズを連発するダヴィデ・リナルディのギター・ワークが、ダークだが壮大でドラマティックな音世界を構築!!