-->【PART 2】鋼鉄神がHARDERステージへ降臨、グレンも登場! – YOUNG GUITAR

WACKEN OPEN AIR 2018 ライヴ・レポート特集

2018.8.1〜8.4 @ Wacken, Schleswig-Holstein, Germany

レポート&写真●奥村裕司 Yuzi Okumura

【PART 2】鋼鉄神がHARDERステージへ降臨、グレンも登場!

いよいよ本日よりフェス本編が開幕! ただこの日は“Night To Remember”と呼ばれる前夜祭的な位置付けで、メイン・ステージへの入場開始は午後1時と、翌日以降よりもやや遅め。ちょうどその時間にインフィールドへ到着すると、ゲートから次々と観客が走り込んでくる。最前列を確保するため全速力で駆け抜けていくほぼ全員が、「Wacckkkkeeeennnn!!!!」と大絶叫。中には“聖地”の本丸へやっと踏み込めたという感激のあまりか、大地に突っ伏しキスする者も…。その気持ちはよ〜く分かる。いくら水曜にテント・ステージやヴァッキンガー・ステージで盛り上がっても、やっぱりあの牛頭のオブジェが掲げられたメイン・ステージ・エリアはずっとずっと特別だ。

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ここには“FASTER”、“HARDER”と名付けられた2つのメイン・ステージと、“LOUDER”の名が冠されたサブ・ステージがある。“FASTER, HARDER, LOUDER”とはWOAのスローガンであり、理念であり、モットーだ。より速く、より激しく、より大音量で──メタル・フェスとしての矜持が、そこに込められていると言ってもイイだろう。

ところで──今年のWOAはとにかく暑かった…! 前々夜祭とも言える水曜日も入れた4日間…いや、その前後も含めずっと晴天で、雨が全く降らなかったのだ。’01年から毎年このフェスに来ているが、そんなことはこれまで一度もなかった。過去にも晴れが続いた年はなくもなかったが、夜中や朝方にちょっとパラっときたり、突然のにわか雨やゲリラ豪雨に見舞われることもしばしば。言ってみれば、どんなに天気が良い日であっても、いつ何どき雨が降るか分からない…というのが、WOAでは常識なハズ。それなのに、文字通り一滴も降らないなんて…。

WACKEN 天気予報

実を言うと、END ALLのメンバーや“Metal Battle Japan”のスタッフと一緒にWOA現地へやって来た火曜日(7/31)の夕方、ゲリラ豪雨が降る…というか雷雨になるとの予報が出ていて、実際に黒い雲が流れてきて、現地関係者からも「サンダーストームがくるから早めにテントを設営した方がイイよ」なんて言われていた…のだが、何故か黒雲は何事もなく過ぎ去ってしまい、雷も全く鳴らず…。ただその時点では、翌日以降も連日晴れで、週間予報にも雨マークは一切なかった…ものの、「どうせ何回かドカンと降るんでしょ?」なんて思っていた。ここ数年、悪天候で地面が泥沼状態になるのが常だったので、当然のように長靴も持参してきていたし。しかし──天気予報は的中し、本当に雨は1mmも降らなかったのである(画像は7月29日のもの)。

雨が降らなくてラッキーじゃん! うん…確かに、野外フェスで雨が続くと本当に悲惨この上ない。でも、晴れは晴れでまたキツいのだ。日本とは違って湿気がない分、直射日光が肌に痛く、照り返しも恐ろしいことに…。日中、陽差しを遮る物がなにもないフェスティヴァル・エリアにいると、まるでオーヴンの中にいるかのようだ。また、乾いた大地には砂ぼこりがもうもうと舞い、普通に歩いているだけで口の中がジャリジャリになるし、モッシュやサークル・ピットの近くにいたらどうなるのか──想像に難くないだろう。そもそも、この夏が記録的猛暑だったのは日本だけに限らず、ヨーロッパでも異常な高温と少雨が問題視されていたようだ。いやはや、雨が降っても地獄、晴れ続きでも地獄なのがWOAなのである…!

そうこうしているうちに、SKYLINEのショウがHARDERステージでスタート。

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彼等は’90年の第1回WOAに出演していた地元バンドで、毎年メイン・ステージのトップバッターを任され、色々とカヴァー・ソングをプレイするのが恒例となっている。今年はディープ・パープルの「Burn」(「Stormbringer」も組み込んだホワイトスネイク・ヴァージョン)を手始めに、ディオやAC/DC、オジー・オズボーンやヴァン・ヘイレン、アイアン・メイデンなどの有名曲を繰り出し、最後にラムシュタインの「Asche Zu Asche」を演奏。一説には、「SKYLINEの演目が翌年のWOA出演バンドのヒントとなる」とも言われているので、是非とも記憶にとどめておいて欲しい。(実は、2曲目にエアボーンの「Runnin’ Wild」がプレイされ、後日の“WOA 2019”出演バンド初回アナウンス分に、しっかりエアボーンが含まれていた…!)

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例年、“Night To Remember”にはベテラン・バンドが多くラインナップされる。今年も同様で、SKYLINEに続いて、FASTERステージにドッケン、HARDERステージにヴィンス・ニールがそれぞれ登場。そのどちらも、主役シンガーの経年劣化に向き合うこととなったが、言わずもがなLAメタルの黄金時代を彩った名曲の数々(後者は当然、モトリー・クルーのナンバーをガッツリ!)が色褪せることはなく、観客は大いに盛り上がっていた。

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ここでテント・ステージに目を向けてみよう。ヴィンス・ニールのショウが始まって程なく──16時に“Metal Battle”日本代表:END ALLがヘッドバンガーズ・ステージへ登場。突進力抜群な自称“ビア・スラッシュ”サウンドは大いにウケまくり、モッシュやクラウド・サーフも大発生した。結果的に、彼等は“Metal Battle”優勝を逃すも(順位が発表されたのは翌日で、今年は中国代表のDIE FROM SORROWが優勝)、WOAの地で大歓声を浴びたことは、貴重な経験となったろう。

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再びメイン・ステージへ戻ると、お次はダークシュナイダー。元アクセプトのウド・ダークシュナイダー(vo)が、自らの名を冠したバンド:U.D.O.の面々とアクセプト・ナンバーだけを演奏する期間限定プロジェクトだ。’16年に来日公演を行なったあと、ツイン・ギターの一翼を担うカスペリ・ヘイッキネンが脱退。’17年に加わったビル・ハドソン(元セラドール他)も短期間で脱けてしまい──現在その後任には、元アクセプトで元U.D.O.でもあるステファン・カウフマン(元々はドラマー)がヘルプとして就いており、WOAでもそのステファンがアンドレイ・スミルノフ(’12年加入)とツイン・ギターを奏でるスペシャルな布陣が見られた。注目すべきは、ほぼ全曲でリード・パートを任されることになったアンドレイが、アクセプトのオリジナルをなぞりながら、自分流で見事に再現していたこと。このダークシュナイダー名義でのツアーが終了すると、ウドはアクセプト・ナンバーを封印してしまうそうだが、その時はもう近くまで迫っており、よって「Metal Heart」「Fast As A Shark」「Balls To The Wall」といった名曲群が、より感動的に響いたことは言うまでもないだろう。

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続いて、ベヒーモス(10月リリースの新作『I LOVED YOU AT YOUR DARKEST』から「God = Dog」を逸早く披露)が背徳の闇をもたらし、ダンジグ(ギタリストはプロングのトミー・ヴィクター)が退廃のロックンロールを叩き付けると──

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22時半、ブラック・サバスの「War Pigs」を合図に、我らが鋼鉄神:ジューダス・プリーストがHARDERステージへ降臨! 

パーキンソン病を公表したグレン・ティプトン(g)の代役として敏腕プロデューサーのアンディ・スニープを起用してのステージは果たして…と思ったら、もうまるでリッチー・フォークナーの独り舞台であった。多くの場面でステージ中央の最前面に出てきては、時に切れ味鋭く、時にエモーショナルにリードを放つ彼は、もはやプリーストに欠かせない存在となっていると言えよう。アンディはどちらかというとステージ後方に引っ込んでいることが多いため、またロブ・ハルフォード(vo)もあまり頻繁に前へ出てこないため、余計にリッチーの活躍が目立つのだ。

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気になるセットリストは、今年春リリースの最新アルバム『FIREPOWER』からのナンバーに加えて、「Bloodstone」(’82年『SCREAMING FOR VENGEANCE』収録)、「Saints In Hell」(’78年『STAINED CLASS』収録)、「Tyrant」(’76年『SAD WINGS OF DESTINY』収録)などレア曲も含まれており、お馴染みの定番曲も勿論たっぷりプレイ。そして、アンコールでまさかのグレン登場があり、「Metal Gods」「Breaking The Law」「Living After Midnight」と3曲参加し、リッチー&ロブとフォーメーションを組んで演奏したり、「Breaking The Law」以外の2曲でソロも執ったから驚いた! その間、多くのファンが感動のあまり落涙を禁じ得なかったのは言うまでない。思いの他、調子も良さそうだったグレン──11月の来日公演にも帯同してくれたら最高なのだが…。

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ジューダス・プリースト “WACKEN OPEN AIR” 2018.8.2 セットリスト

1. Firepower
2. Grinder
3. Sinner
4. The Ripper
5. Lightning Strike
6. Bloodstone
7. Saints In Hell
8. Turbo Lover
9. Tyrant
10. Night Comes Down
11. Freewheel Burning
12. Rising From Ruins
13. You’ve Got Another Thing Comin’
14. Hell Bent For Leather
15. Painkiller
[Encore]
16. Metal Gods
17. Breaking The Law
18. Living After Midnight

【PART 3】 “Metal Battle”2018日本代表のEND ALL:嶋崎大輔にインタビュー!