-->【PART 4】北欧ベテランが大奮闘&MR.BIGは初参戦! – YOUNG GUITAR

WACKEN OPEN AIR 2018 ライヴ・レポート特集

2018.8.1〜8.4 @ Wacken, Schleswig-Holstein, Germany

レポート&写真●奥村裕司 Yuzi Okumura

【PART 4】北欧ベテランが大奮闘&MR.BIGは初参戦!

ライヴ以外にもやることはいっぱいあるんです

明けて金曜日。この日もよく晴れ、朝から気温が急上昇。ちょっと前の予報では、最高気温26℃となっていたが、とんでもない…! 午前9時の時点でもう30℃を越えていただろう。やっぱり日差しが強烈で、体感ではゆうに35℃以上あり、ヴァッケン村のスーパーマーケットまで買い出しに行ったら、汗だくでヘトヘトになってしまった。それでも、ギラギラ照り付ける陽光に負けじと気合いを入れ直し、キャンプ・サイトからインフィールドへと移動。本日は午前11時から各ステージで演奏開始&終了は夜中の午前3時と、複数ステージを巡りながらの16時間に及ぶメタル・マラソンに挑まねばならないのだ…。

ヴァッケン・プラザ

しかしながら──先に言い訳をしておくと、炎天下のインフィールドで3つのステージを行ったり来たりするだけで精いっぱい。“ブルヘッド・シティ”内のテント・ステージやその他の小さなステージに足を伸ばすことは、ぶっちゃけ殆ど出来なかった…。それに、言うまでもなくお楽しみはライヴだけではない。どのステージで誰を観るか──それだけでも大問題なのに、他にもやるべきこと、やりたいことは山ほどある。

Tシャツなどのマーチャンダイズや、フェスのオフィシャル・グッズを買いに行くのは勿論のこと、サイン会に参加したり、世界各国のメタルヘッドと交流もしてみたい。メシだって色々食べたいし、ビア・ガーデンにも行ってみたいし、ビール以外にミード(蜂蜜酒)が呑んでみたいし、巨大な鹿のオブジェとしてそびえるイェガーマイスター・バーにも登ってみたいし、ヴァッケン村をのんびり散歩するのも悪くない。メタT以外の服もチェックしたいし、アクセサリーを物色したり、タトゥーを入れたり、鎖帷子や剣を買ったり(ヴァッキンガー・ヴィレッジに売ってます!)、マッサージを受けたり、芝生で寝っ転がったり、日焼けを楽しんだりもしてみたい。

マーチャンダイズ
フードエリア
食べ物
フライドポテト系どっさり

またヴァッキンガー・ヴィレッジやウェイストランドでは毎日、沢山の催しが行なわれており、カーヴィングの妙技に見入ったり、たわいもないゲームに興じたり、単に呑みながらくっちゃべったりしているうちに、目当てのライヴを観逃したり、次のバンドをついつい忘れてしまったりすることも…まぁよくある。それに、トイレにも行かなきゃだし、シャワーも浴びなきゃだし、携帯の充電も重要だし、熱中症にならないよう適度な休息も絶対に必要だ。さらに今年は、プロレス小屋こそなかったものの、お馴染みロックな映画が上映されるムービー・フィールドは健在だったようだし、メタル・ヨガとか、ゲーム・イベントとコラボした“Full Metal Gaming”テントにも、きっとみんな興味津々で──って、いやはやもうキリがない。

ウォーキング・アクト:ブラース・オブ・グローリー
ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル・ステージ

そんなこんなで、とりあえずインフィールドへ向かうと、午前11時にFASTERステージでスウェーデンのガールズ・バンド:THUNDERMOTHERのショウがスタート! 朝イチから元気イッパイ、ノリノリのロケンローで出迎えてくれる。同時刻には、LOUDERステージでアマランスも演奏を始めており、そちらは紅一点シンガー:エリーゼが一気に観客を掌握すると、オロフ・モルク(g)もコンパクトながらフラッシーなプレイを連発。次いで正午過ぎには、HARDERステージへカンニバル・コープスが登場し、待ってましたとばかりにモッシュの嵐が吹き荒れる。

サンダーマザー
アマランス:オロフ・モルク
カンニバル・コープス:ロブ・バレット
カンニバル・コープス:パット・オブライエン

ただ、うだるような暑さの中で聴くデス・メタルはなかなか刺激的だが、くれぐれも熱中症にはご注意を…。えっ、朝からしこたまビールを呑んでいるから大丈夫だって?

確かに、あちこちに点在するビール・スタンドは早くも大盛況。さらにインフィールドでは、ビール・サーバーを背負った売り子さん達が、「こりゃ稼ぎ時だわ♪」と張り切ってステージ前を歩き回っている。そう、日本では野球場などでお馴染みのスタイルが、ヨーロッパの野外フェスでも定番だったりするのだ。ビールといえば、WOAは昨年、専用のパイプラインを設置したことで話題となった。何とそれで、約7km離れた醸造所から1日約10万リットルのビールを供給出来るようになったとか。運搬コストや渋滞緩和、環境にも配慮しての英断とのことながら、パイプラインでビールを送っちゃうなんて、流石はビール大国:ドイツのフェスならではの発想では?

オフィシャル・バー(牛頭)
レインボー・バー&グリル フィーチュアリング・レミー

ちなみに、会場内でのビールの価格はプラカップ1杯4ユーロで、WOAのロゴなどがデザインされたカップはリユースされるため、別途1ユーロのデポジットが必要だ。ノン・アルコール飲料は、コーラがビールと同じく4ユーロで、ミネラル・ウォーター(炭酸水)は3.5ユーロ。後者もカップで提供される。コーラはペプシでもコカ・コーラでもなく、カフェイン量が世界一と謳う地元産のアフリ・コーラ。他にブルーナ・ツィトローネというスプライトに似た味の(というか、スタンドのスタッフは「はい、スプライトね」と言ってました)炭酸飲料もあり、さらには、エナジー・ドリンクのモンスターとか、ハーブ・リキュールのイェガーマイスター(下記写真は同ブランドのバー)とか、それらを使った各種カクテルなども呑めるし、ビールは大ジョッキ(確か10ユーロ)で頼むことも可能だ。

ヴァッケン - イェガーマイスター・バー
ヴァッケン - イェガーマイスター・バー(拡大)

日独アーティスト人気のギャップを楽しむひと時

午後2時半を回った頃、HARDERステージにビールが欠かせないバンド──フィンランドの酔いどれフォーク・メタラー:コルピクラーニが登場! ここのところシリアスな面も強く打ち出してきている彼等だが、いきなりデビュー作(’03年『SPIRIT OF THE FOREST』)収録の「Wooden Pints」(邦題「酒場で格闘ドンジャラホイ」)で始まったこの日のショウは、終盤に「Happy Little Boozer」(邦題「痛快!飲んだくれオヤジ」)〜「Tequila」〜「Beer Beer」〜「Vodka」という、何ともアルコール度数の高い連打でとてつもない宴会モードを演出していた。

コルピクラーニ:カーネ&ヨンネ

続いて、午後4時55分にHARDERステージへ登場したのは地元のフォーク・バンド:SCHANDMAUL。牧歌的なサウンドでほのぼの楽しめるそのサウンドは、全くもってメタリックではないが、独語圏でヒット作を連発している大人気バンドで(’16年作『LEUCHTFEUER』はドイツ本国のチャートでNo.1に!)、WOA常連バンドのひとつだ。このSCHANDMAULのように、日本では殆ど知られていないバンドが観られるのも、海外フェスならではの醍醐味と言えよう。

シャンダモール

また、日本とドイツの人気ギャップに驚かされることも多い。何とあのMR.BIGが、WOAではメイン・ステージではなくサブ・ステージ出演なのだ。とはいえ、ドイツでの知名度が今ひとつ…なんてことは無論なく、ポール・ギルバート&ビリー・シーンの鉄壁アンサンブルはLOUDERステージを大いに沸かせていた。尚、バンドとしてはこれが初WOAだったものの、フロントマンのエリック・マーティンはメタル・オペラ・プロジェクト:アヴァンタジアで数度WOAのステージ(その時はメイン!)に立ったことがあり、よってWOAのオーディエンスについての傾向と対策は、しっかり把握出来ていたことだろう。

日独人気ギャップの象徴的な例として、もうひとつ挙げておきたいのが、地元の大ベテラン:ランニング・ワイルドだ。コチラは“日本<ドイツ”。’90年代前半頃までは、日本でもそれなりの人気を誇っていた彼等だったが、一度も来日公演が実現していないのもあってか、徐々に勢いを失っていき、残念ながらここのところは「まだやってたの?」状態で、現時点での最新作『RAPID FORAY』(’16年)は日本盤が出なかったし、すっかり過去のバンド扱いされてしまっている。ところが、地元ドイツでは未だ根強い人気を保っており、午後10時半からHARDERステージにて90分に亘って繰り広げられた今年のショウも大観衆が大熱狂! イントロSEからのオープニング曲が『PILE OF SKULLS』(’92年)収録の「Fistful Of Dynamite」で、終盤に新曲「Stargazer」が披露され、アンコール曲が『BLACK HAND INN』(’94年)の「Soulless」&『RAPID FORAY』の「Stick To Your Guns」と、演目が若干マニアックだったのも、ダイ・ハードなファンにはきっとそれも堪らないモノがあったに違いない。

ミスター・ビッグ
ランニング・ワイルド

そのランニング・ワイルドの前にFASTERステージでプレイしたフィンランドの国民的バンド:ナイトウィッシュも素晴らしかった。’15年作『ENDLESS FORMS MOST BEAUTIFUL』に続く新作発表はまだまだ先だが、今年春リリースの20周年ベスト『DECADES』を踏まえてのセットリストは、『OCEANBORN』(’98年)から「Gethsemane」「Devil & The Deep Dark Ocean」、『CENTURY CHILD』(’02年)から「Slaying The Dreamer」など、しばらくライヴ披露されてこなかったレア曲がテンコ盛りで、3代目シンガー:フロール・ヤンセンの圧倒的な存在感にも、新旧のファンいずれもが感嘆しっ放しだったろう。また、「Come Cover Me」(’00年『WISHMASTER』収録)などで、エムプ・ヴオリネンとマルチ楽器奏者:トロイ・ドノックリーのツイン・ギターが炸裂したことも見逃せない。

ナイトウィッシュ:エムプ・ヴオリネン&トロイ・ドノックリー

それにしても、今年の出演ラインナップは例年に勝るとも劣らず豪華だった。2つのメイン・ステージで演奏するバンドは、もうすべてが必見だったと言っても過言ではなかろう。FASTERステージでは、アモルフィス、チルドレン・オブ・ボドム、イン・フレイムスと、北欧勢の活躍が目立ち、後者2バンドが言わば“フェス仕様”のセットリストを組んで、初期レパートリーをやや多めにして盛り上げてくれたのも特筆しておきたい。

アモルフィス:エサ・ホロパイネン
アモルフィス:トミ・コイヴサーリ
チルドレン・オブ・ボドム:アレキシ・ライホ
チルドレン・オブ・ボドム;ダニエル・フレイバーグ
イン・フレイムス:ビョーン・イェロッテ
ダーク・トランキュリティ

見逃し後悔もフェスのうち…

一方、HARDERステージではDOROことドロシー・ペッシュが多数のゲストを迎えてサプライズ満載なショウを展開。中でも、本家メンバー:アンディ・スコット(g)らとスウィートのカヴァー「The Ballroom Blitz」を、ウォーロックのギタリスト:トミー・ボランと「East Meets West」や名曲バラード「Fur Immer」などをプレイしたり、アモン・アマースのヨハン・ヘッグ(vo)と「If I Can’t Have You – No One Will」&アモン・アマースの「A Dream That Cannot Be」をデュエットしたのは、正に“スペシャル”としか言いようない。勿論、レギュラー・メンバーのバス・マース&ルカ・プリンチョッタ(共にg)も、相変わらずのイイ仕事っぷりで──最後にはジューダス・プリーストのカヴァー「Breaking The Law」で、アナイアレイターのジェフ・ウォーターズが飛び入りするという最高のオマケ付き…!

ドロ:ドロシー・ペッシュ&ルカ・プリンチョッタ
ドロ:バス・マース

あと、エピカもゴーストも当然ガッツリ盛り上がったし、LOUDERステージに2 CELLOS登場というのも意表を衝いていて面白かった。心残りなのは──繰り返しになるが、テント・ステージやヴァッキンガー・ステージのバンドをことごとく観逃したこと…。普段はメイン・ステージ常連のジャーマン・スラッシュ重鎮:デストラクション、カナダの元祖“メタル・クイーン”リー・アーロン、元オーペスのマーティン・ロペス(dr)率いるSOEN、そして、ヴァイキング・テイストのシンフォニック・メタラー:リーヴス・アイズ…などなど。しかしながら、そもそも分身の術でも使わなければ、広大なWOAのフィールドすべてを網羅することなど到底不可能だ。泣く泣くあきらめたバンドに後日また思いを馳せ、たっぷり後悔しまくるのも、WOAにおいては毎年の恒例行事なのである…。

エピカ:シモーネ・シモンズ&アイザック・デラハイ
エピカ:マーク・ヤンセン

ゴースト

オーディエンス夜景

【PART 5】アーチ・エネミー&ハロウィンでクライマックス!