現在発売中のヤング・ギター2017年6月号には、新ヴォーカルにクリードのスコット・スタップを迎えてから初となるアルバム『THE MADNESS』をリリースした、アート・オブ・アナーキーのロン・サールの最新インタビューを掲載している。以下は、スペースの都合で割愛したそのインタビューの未公開パートだ。こちらでは新作に関することだけでなく、海外で再リリースされた2ndソロ作『HERMIT』についても言及している。
この作品は間違いなくチーム全員の努力の賜だったね
YG:「The Madness」が先行シングルに選ばれた理由は?
ロン“バンブルフット”サール(以下RT):スタップを交えて作ったいくつかの曲の中で、最も強烈なメッセージを持っていたのが「The Madness」だったんだ。この曲の歌詞は彼が人生で経験した苦難について書かれている。かつてスタップは躁鬱病と診断され、さらにドラッグにも手を染めるようになってしまった。そんな状況に置かれたら、ほとんどの人は死に至るか、あるいは自分や他人の人生を破壊してしまうような、非常に不健康で壊滅的な方向に進んでしまうだろう。でもスタップの場合は、彼をとても愛してくれる人達が周りにいてケアをしてくれたり、そういった状況から抜け出す手助けをしてくれたりしたんだよ。おかげで彼は悪い状況を突破し、すべてを克服してみせたんだ。今のスタップはとても健康的でハッピーだし、凄くポジティヴだよ。で、「The Madness」は同じような経験をしたことがある人達へのトリビュート・ソングになっているんだ。自分が入り込んだ狂気(Madness)の反対側に辿り着こうというね。
YG:ロンはレコーディング、ミックス、プロデュース、マスタリングのすべてを担当しているんですよね?
RT:そうだね。RECボタンを押したり、最善の録音方法を見出したり、サウンドをミックスしたりするのは俺の役目だった。でも、そのすべての工程にメンバー全員が関わっていたんだよ。例えばミックスの作業ではmp3データでみんなに曲を送り、意見を聞いた。(ジョン)モイヤー(b)は「ここのベース・ラインをもうちょっと前に出した方が良い」とか、スタップは「このヴォーカル・ラインをもっと際立たせたい」とか、ヴィンス(ヴォッタ/dr)は「このスネア・ドラムはもっとハードにする必要がある」とか…みんなそれぞれに色々な意見を言ってもらい、それを参考にして仕上げていったんだ。だからレコーディングやミキシングをメインで担当していたのは俺だったけど、これは間違いなくチーム全員の努力の賜だったね。
YG:4月4日のライヴ写真をTwitterにアップしていましたが、その写真でロンが持っているヴィジェの“DoubleBfoot”は、NAMMショウで発表された新しいモデルですよね?
RT:そうだよ。このモデルはとてもユニークな方法で塗装されていて、個体ごとに模様が違っているんだ。で、ヴィジェの人達にどのフィニッシュが好きか聞かれたので、俺は白いボディーに黒や金、黄色の模様が入り混じったヤツを選んだというわけ。ツアーではこのギターを使っているよ。あと「Echo Of A Scream」のミュージック・ビデオでもこれを持っている。
YG:『THE MADNESS』のレコーディングでジョン・ヴォッタがどんなギターやアンプをメインで使っていたか、分かる範囲で教えてください。
RT:ジョンはESPのカスタム・ギターを主に使っていたよ。6弦と7弦の両方を弾いたんだ。アンプはマーシャルだったね。
YG:20年前にシュラプネルからリリースされたあなたのソロ・アルバム『HERMIT』(’97年)が再発されるんですよね? リマスターが施されていたりするそうですが、ロンの口からこの再発について説明していただけませんか?
RT:ニューヨークの“The Orchard”というレコード・レーベルがシュラプネルのカタログをすべて買い取ったんだ。だから、’80年代〜’90年代にリリースされたシュラプネルのアルバムの権利は、すべて“The Orchard”に移行されたのさ。で、俺は“The Orchard”の人達と会って、初期の2枚のソロ・アルバム『THE ADVENTURES OF BUMBLEFOOT』(’95年)と『HERMIT』について話し合ったんだ。そして彼らはこれらのアルバムに関して何かサポートしたいと言ってくれたので、俺は『HERMIT』のオリジナル・マルチ・トラック音源をすべてWAVファイルに変換し、すべてをリミックスして彼らに提供したんだよ。ただリミックスとリマスターを施しただけだけど、真新しいレコードみたいに聴こえるね。俺は当時のアルバムのサウンドに全然満足していなかった。俺が望んでいたような良質なサウンドではなかったんだよ。そんなわけで20年経った今、このアルバムはようやく望み通りのサウンドになったのさ。それから今回、『HERMIT』を制作した1年前に書いた曲を採り上げたりもしんだ。たしかあの曲を書いたのは’96年か、もしかしたら’95年だったかもしれない。当時、その曲は音楽もメロディーも何もかもすでに完成していたんだけど、最終的なヴォーカル・トラックが入っていなかったんだよ。だから今回、新たに俺がヴォーカルを入れてアルバムに加えたんだ。それと『THE ADVENTURES OF BUMBLEFOOT』のもう1つのボーナス・トラックも加えた。それは’92年に作られた短いインストゥルメンタル曲だよ。
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