「フリーク・キッチンはこの3人だけでやろう、と考えたんだ!」2025来日、全員インタビュー!

「フリーク・キッチンはこの3人だけでやろう、と考えたんだ!」2025来日、全員インタビュー!

今年9月、22年ぶりの来日を果たしたスウェーデンのベテラン・ロック・トリオ:フリーク・キッチン。熱狂的な国内ファンに迎えられ、エネルギーたっぷりのライヴで期待に応えた大阪・東京公演を見せてくれた。遅ればせながら、東京公演の直前、マティアス“IA”エクルンド(g, vo)、クリスター・ハイセン(b, vo)、ビヨルン・フリックルンド(dr)の3人へ行なわれたインタビューを紹介しよう。ハチャメチャなように見えて高いレベルで結託している彼らの楽曲のように、お互いの仲の良さとプロ意識の高さが伝わってくるフリーク・マシンガン・トークをお楽しみあれ。

「今はこの曲じゃないのに」と思ったら、別の曲をやるんだ

マティアス“IA”エクルンド
Mattias “IA” Eklundh (g, vo)

YG:久々の日本はいかがですか?

3人:素晴らしいよ!

クリスター・ハイセン(以下CH):戻ってこられて嬉しいね。

マティアス“IA”エクルンド(以下ME):とても良かったね。みんな、温かく受け入れてくれた。今日大阪で、新幹線の駅に着いたらファンが僕達めがけて飛びついてきたんだ。スウェーデンでは小さなバンドなのに、「きっと大阪から東京に向かうには新幹線を使うに違いない。だからここで待っていよう!」と思ってくれたのかな。3人とも汗だくで荷物を山程抱えている所に来てくれて、「これにサインして下さい」などと言ってくれた。ロック・スターの気分だったよ。

YG:その間にマティアスは何回も来ていますが、二人は2003年以来になりますよね?

ビヨルン・フリックルンド(以下BF):そうだね。

CH:随分久々だ。

ME:日本食を食べ歩いたよ。「これはどうだ?」「この酒はなんだ?」と、ずっとそればっかり。夜通しだよ。日本が大好きだから。ファミリーマートでたまごサンドを買ったしね! 昨日は二人のビールにもつきあった。肉は食べなかったよ(註:マティアスはベジタリアン)。で、寝室に戻った。映画でも見ながら、たっぷりと上質な睡眠をとることにしたんだ。その間に、この二人はも別のレストランに行って、もう1回夕食をフルで摂り、さらにバーへ行ったんだ!

CH:持てる時間をすべて食に費やしたからね。「まだまだ! 寝るのは家に帰ってからでいい」って感じ。「餃子です」「ほう、これが餃子! いいな」(笑)。

BF:味噌ラーメンは美味かったな。一番のお気に入りかもしれない。

CH:俺は刺し身、寿司、和牛…。ステーキが大好きでね(笑)。こないだ食べたものは焼き具合も完璧だった。すまんね、俺はベジタリアンじゃないから。

ME:大丈夫、美味しいものが多いからね。とにかく二人は日本らしさをいっぱい満喫したらしい(笑)。良かった。

YG:大阪公演はいかがでした?

CH:素晴らしかった。

ME:僕たちのことを本当に気にかけてくれたよ。日本人にしてはかなりラウドなオーディエンスだった。曲と曲の間では拍手と歓声が鳴り止むと静かになって、また曲が始まると気が狂ったように歌いまくっていた。

CH:歌っている人は多かったし、大声だった。インイヤー・モニターをつけているので「歌ってないなあ」と思っていたけど、外してみると爆音だった(笑)。

ME:開場待ちのオーディエンスが列を作っていたので、出ていってみんなと握手してきたよ。「どういうこと!? そんなことする人はいないよ!」とばかりに驚かれたね。「えーっ! マティアスだ!!」「なんということだー! スウェーデンのギタリストが俺達のそばを歩いている!!」みたいな(笑)。

YG:昨晩のセットリストは様々なアルバムから曲を選ばれたようですが、どんな風に決められたのですか?

ME:僕が作ることが多いけど、紙の上でいい感じにできたものがステージ上で必ずしもうまくいくとは限らないよね。もし昔の曲ばかりやると、オールドスクール寄りな一部のファンは『SPANKING HOUR』(1996年)から『APPETIZER』(1994年)、3rdアルバム(1998年『FREAK KITCHEN』)を聴きたがる。一方で『CONFUSION TO THE ENEMY』(2018年)など新しいアルバムしか知らない人も多い。昔の曲だけ弾いていたら、昔を懐かしむクラシック・ロック・バンドになってしまうだろう。それは僕達じゃない。フリーク・キッチンは2025年の今を生きるバンドだ。別に、25歳ではないけどね。今も新しい曲を作って、今を重視するバンドになろうとしているんだ。時には新曲を聴かせなきゃならないこともある。「もちろん、あの曲もこの曲もやるよ。でもその前に、まずはこれを聴いてくれ!」とね。そうすると、まるでジェットコースターのように流れができる。エネルギーをうまく使うんだ。その結果がこのセットリストになった。いくらか調整を加えて、今はこれがいい感じに落ち着いている。最初はウォーム・アップするためにいくつか曲を外してちょっと楽にスタートして、終盤に向かうにつれてクレイジーになっていく。終わる頃には汗まみれだ(笑)。

CH:セットの途中で「あー、今はこの曲じゃないのに」と思うこともある。そしたらその曲は動かして、別の曲をやるんだ。オーディエンスの盛り上がりを見ると、今ここでやるべきはこのタイプの曲じゃない、ということがあるから。生き物のようだ。マティアスはオーディエンスの方に触手を伸ばして様子を確かめるのが上手でね(笑)、そうやって今のフィーリングを掴む。「今こはの曲じゃない、こっちにしよう」「わかった」と、話し合って決めることがあるんだ。

YG:演奏中に、ステージ上でですか?

3人:そうだよ!

BF:バック・トラックなんか何も使ってないから、好きなようにできる。その場で入れ替えは問題ないし、途中で止めて「今のは良くなかった。もう1回やろう」なんてこともあるし。

CH:曲の途中でな(笑)。

ME:「ハモリが良くなかったからやり直そう!」

CH:「最初から通しで!」

ME:そうすると観客が「えっ、今何が起きてるの? 間違えたみたいだけど、大丈夫?」と焦ってしまう。でも、人生は間違いだらけ。ミスは毎日するものだ。間違いなしに進む人なんていないよ。そのうち、不穏なエネルギーは良いエネルギーに変えてしまえる。「うわあ、なんてクールなんだ!」ってね。

BF:それに、オーディエンスも俺達のショウの一部なんだと気づいてもらえる。俺達がプレイして、みんなが聴いて、というだけのものじゃない。こちらから話しかけることもあるよ。

CH:相互作用だな。だから俺達もエネルギーをもらえている。

ビヨルン・フリックルンド
Björn Fryklund(dr)

ME:この間土曜日にフランスのフェスティヴァルでプレイしたんだ。それからブリュッセル、北京などにも行ったよ。そんな中で、ライヴのレビューに、「フリーク・キッチンのライヴは、観に行くものではない。体験しに行くものだ。これは大きな違いだ」と書いてあった。「よし、観に行ってやるぞ、あれ、今ミスったな。ヤング・ギターの記事に書かれているほど上手くないじゃないか。動画をとってインスタに上げてやろう」みたいなことじゃないんだ(笑)。もっと、「すごい! 服なんか脱いで踊りたくなる!」というような感じ。そうやって、一人ずつこっち側に取り込んでいくんだよ。

BF:だから、1つ1つのショウが全然違ったものになる。俺達ですら、セットを始めた段階では今日がどんなショウになるのかわかっていない。演奏が終わるまで、自分の耳をオープンにし続けること。

ME:素晴らしいことだけど、“安全ネットもない”。そんなタイトルのライヴ・ビデオを、ヴァン・ヘイレンが1980年代に出しているよね(1986年『LIVE WITHOUT A NET』)。つまり、間違えたらよーく目立つというわけだ。「ごめん、間違えた。君たち、チケットにいくら払ってくれたの? 20ドル? じゃあもう1回やるよ(笑)」…何度でも、何度でもやり直す。それがバンドだ。

CH:それでも興味を引くものにすることができる。俺達は一生こんなライヴをやっているから、面白いものにするのは毎晩チャレンジが必要だ。ダイナミクスのある生き物のようなものだから。「それでこそトップ・バンドだ」と言わしめることをやっていかなきゃならない。常にゲームの頂点に立てるのは、そのための努力を惜しまないからなんだ。

ME:そうだな。

CH:ステージ上で起きていることやオーディエンスの様子をしっかり聴くこと。いまだにそうやってプレイするのは、昔と同様楽しいことなんだよ。だからこそだと思う。もちろん俺達はいい音楽を演奏している。

ME:うんうん。

CH:だけど、このステージ・パフォーマンスの見せ方そのものが、俺達自身続けていて面白いことであり、やりがいを感じてもいるところだ。

ME:ある意味、スウェーデンのパンク・メタル・バンドみたいだよね。変拍子が入ったり、洗練されたハーモニーを使ったりもするけど、実のところステージ上の僕達は汗かいてツバ吐いて、ぐちゃぐちゃだよ(笑)。それが人生だね!

CH:エネルギーをあらゆる方向に流しているんだ。溢れ過ぎて、プレイが粗くなることもあるから大変だよ。そんな時はちょっと気持ちを落ち着かせるけど…「ウォー!…待て待て、落ち着こう」その繰り返しだ(笑)。

ME:今日も話していたんだけど、大阪は素晴らしいショウだった。流れも良く、オーディエンスもとってもクールだった。僕がしゃべって、さらにピークを迎えた。でも、そんな日の次にやるショウは危険だよ。今晩の東京はさらに良いものにするために、ものすごく集中しなくちゃならない。ショウって、勝手に良くなるわけじゃないんだ。「たった1回きりの、久しぶりの東京公演なんだ!」という気負いがあるから…例えばこれまでに「金曜日の夜にニューヨークでライヴだ!」ということもあったけど、出来はさんざん(笑)。なのに、フィラデルフィアの農場近くでやった時には最高だったり!

二人:そうそう(笑)。

ME:だから頑張りすぎず、集中はしなくちゃ…と思ってる。さて、質問は何だった?

YG:ちゃんと答えてくれました(笑)。

ME:ならよかった(笑)。

コンサートに行ったなら「その場で事が起こってる」のかを観たいものだ

クリスター・ハイセン
Christer Hysén(b, vo)

YG:東京公演のセットリストは大阪公演と大体同じですか? 少しは変わりますか?

BF:そうだね、大体はこれと同じだ。

ME:流れが良いから。リクエストがあれば別だけど(笑)。いくつか他の曲を試したりもしたんだ。スウェーデンを出る前の、昔々の曲だ。でも、「いやー、これをやる気にはなれないな!」というのが正直なところだった。髪型は変えたし、ビジネスも変わったし。

YG:「Blind」(『APPETIZER』収録)とかどうでしょう?

ME:ああ、この曲は8弦に置き換えて弾いてみたんだ。曲によっては開放弦を使うことがあって、「Blind」もそう。弦を飛ばすとひどいプレイになる。でも、まあできるかもしれないね。しっかり頑張らないといけないけど。違うチューニングがたくさんあるので、それらを覚えるには結構かかるよ。

BF:でもちょっと変えれば済むんじゃないの?

ME:そうだけど、Keyが違う。開放弦を使わなきゃならない。C♯音の開放なんてないからね(笑)。

BF:カポでもつければ…

ME:やめてくれ(笑)。

CH:吟遊詩人みたいになっちゃうからな(笑)。

YG:オーディエンスからの、新曲への反応はいかがですか?

ME:いい感じだよ。

CH:とてもうまくいっていると思うね。ヘヴィで、ちょっと異なるサウンドがあって、みんな気に入ってくれているな、というのを感じている。とても聴きやすいから、すぐに聴いてくれるんだ。

ME:以前は日本でもフィジカル・コピーをたくさん売っていた。JVCビクターがやってくれたんだ。僕達と同じ世代のオーディエンスはCDを持っているし、今はストリーミングでどこででも聴けるから、言い訳はきかない。流通のない地域だって、そして今回は日本でのレコード会社もつかなかったけど、それでも曲を聴くことはできるんだ。「『APPETIZER』しか持っていない」と言っていた人も、今はオンラインでYouTubeなどに行けば、誰でも聴けるようになっているよ。実際、そうしてくれているみたいだね。前とは違う。

YG:機材は、ご自身のものを持ってこられましたか?

ME:もちろん!

BF:ドラムは、シンバルは自分の。あと、キック・ドラムにつけるデコレーション用スキンだね。

CH:目玉のヤツだ。

BF:あとは、パーカッションとフット・ペダルも含めてレンタルだ。

ME:プロだからね!

BF:(笑)何だって叩けるよ。うまく使えて、見た目も良ければそれでいい。機材にはそんなにうるさくないんだ。うまくいかなそうな時でもどうにかする。フランスでは、ペダルのメーカーが違うこともあった。でも、とにかくなんとかする。実際うまくいった。

YG:ベースはどうですか?

CH:日本にdragonflyのディストリビューターがあるから、ここでレンタルもできた。だけど今回はまずフランスでライヴをやってから日本へ来たので、自分のベースを持ってきたよ。足元はデジタルの小さいやつ。Line 6“Helix”だ。

YG:“Helix”はマティアスも同じ物?

ME:うん、クリスのは“Helix XL”で、僕は小型の“Helix Stomp”。機内持ち込みできるサイズだ。ギターとペダル、それにヴォリューム・ペダルを持てばおしまいさ。大きい方は重くて持ち運べないので、家に置いてある。パンツの着替えやデオトラントとか、持ち物は他にもあるし(笑)。さらにスタンドとかもあるから、どっちみち重量オーバーしているんだ。中国の飛行機会社には本当に嫌がられたよ(笑)。ところで、クリスが弾いているdragonflyは素晴らしいベースだよ。ハリーさんが作ってる。

CH:シグネチュア・ベースを作る話もしたよ。サインを入れたり、スペックに俺の仕様をちょっと盛り込んだり。ステージでは使わないものもあるんでね。俺はとってもシンプルなヤツだ(笑)。使うのはヴォリュームだけ。だから細かい調節とかは必要ない。逆にあることで音を台無しにしてしまうかもしれない。何しろ俺達は、パンク・バンドのように手を振ったり飛び跳ねたりするからね。だから今後どんな風に作っていくか、楽しみにしているんだ。素晴らしい楽器だからね。

ME:スウェーデン製のフレットを採用するよ。

YG:“True temperament fretting system”ですか?

ME:そう。(彼の)5弦ベースにも付けるんだ。

CH:だから、今度音が外れたら、楽器のせいじゃなくて俺達のせいになる(笑)。

ME:もう言い訳できない(笑)。

YG:ギターはずっと“True temperament〜”を使ってきていましたが、これまでベースは通常のフレットを使ったものでしたよね。フレットの種類が異なることで音程に微妙なズレとかが出たりするものですか?

ME:なぜか、今も昔もうまくいっているんだよね。僕の耳が悪くなってるのか、わからないけど。

CH:ハハハ(笑)。

BF:主な違いは4弦から5弦になったことで、弾き方が変わったんだよな。

CH:そう、たくさんの曲でうまく合わせる必要があった。ずっと長いこと5弦を弾くのを拒んできたけど、今はこれがないと何もできない(笑)。

ME:僕の8弦と同じだよ。

CH:そう、もうしっかり自分のものにしている。今はうまくいってるね。

ME:トリオでやるなら、音合わせはかなり大事だ。本当に音数が少ないから、ギター・ソロの時なんてクリス以外は後ろに何も鳴っていない。近頃コンサートを観に行くと、素晴らしいライヴでも、誰が何を弾いているのか分からない…ということが結構ある。シンガーがフル・パートのハーモニーを出していたり、ギター・ソロがハモっていたり…でもステージにはそれぞれ、一人ずつしかいないんだ。キーボーディストがいないのに、サウンドはキーボード満載、とか。「やっぱ、観るならAC/DCだな」って思っちゃうんだよね(笑)。

CH:まったく。

ME:ダーティでめちゃくちゃだって、いいじゃないか。そんなオールドスクールは僕だけかもしれないけど。

CH:いや、当然だろう。ライヴ・コンサートを観に行くんだ。アルバムみたいに美しいサウンドがが出てくるんなら、家でお気に入りの椅子に座ってお気に入りのヘッドフォンをつけて、アルバムを聴いていた方がいいんじゃないか? コンサートに行ったなら「この人はこんなことを弾いている」「こっちの人はあんなプレイをしている」と、「その場で事が起こってる」のを観たいものだ。「あー、今のは良くなかったな」でも構わない。3人いたら3人が歌うものを聴きたいよ、17人じゃなくてな(笑)。なんかそういうのって、つまらないと俺は感じるね。…今のは全然重要な話じゃなかったけど(笑)。

まるで朗読のように「タカタ・タカタ…」と唄っていくだけさ

YG:マティアスはFREAK AUDIO LAB の『RESIST THE EROSION』をリリースしますよね。

ME:うん、クレイジーなやつを、クレイジーな友達といっしょに作ったよ! 10月24日に出るけど、その前に1曲だけ、YouTubeのみで公開している。まだストリーミングされてはいないよ。でもLPとCDにもなる予定だし、予約も始まるよ。これは“FREAK GUITAR CAMP”でなにか違ったことがやりたかったので出来たんだ。イベントで講師を頼んでいるBCマンジュナスなどが参加している。ムリダィンガムという太鼓と、コノコルが得意だ。“タカタカティン♪って感じだね。それからリオール・オゼリ(b)、そしてヨゲフ・ガバイ(dr)だよ。キャンプでは、スクリーンいっぱいにコノコルの図解などを生徒に見せて。それで昨年「僕が、キャンプの教材になるアルバムを作るよ」という話をした。聴いて、みんなに弾いてきてもらうんだ。いつもと違うことをやりたくて出来たんだ。僕にとっては随分高くついたけどね(笑)。地球の反対側までスタジオをブッキングして、フライトを予約してさ…。でも音楽への情熱のためには、とっても違うことができたという意味でとても価値があったと思う。僕が作る曲だから、僕が支払うわけだ(笑)。それにみんな素晴らしい人たちだから、気楽に作れたよ。ビヨルンとクリスと同じような関係だ。エゴもなくクールな人、もしくは正しい方向にエゴがある人たちを見つけるのは大変なことだ。個性はしっかりあるけど、音楽の妨げにならない形でね。そんな友達と、全然普通じゃない曲を書いた。81/4拍子とか。でもグルーヴィで、やっていて楽しかった。マンジュナスはこういうのがクレイジーなぐらい上手だね。コノコルが速すぎて、イカれてるよ(笑)。とてもいい感じで、インスパイアされる。

それから、フリーク・キッチンのアルバムも書いているよ。僕には、作曲こそがすべてだ。何もないところから作るのが好き。作って作って…とやっていると、つまらない人生から抜け出すことができる。「新しい請求書が来た!」「フライトがキャンセルされた!」なんてことがあっても、音楽があれば迷いごとは消えていく。音楽こそが盾になってくれるんだ、家族や友人ももちろんだけど。

YG:コノコルってすごく複雑なリズムですよね。ドラマーとしてはあの考え方はいかがですか?

ME:全く使わないよ(笑)。

BF:ちょっとかじったから少しは知っているよ。この夏は彼のクラスを聴講したんだ。

ME:そうだったね! 一緒にキャンプに行った。

BF:でも俺には自分なりの西洋音楽のリズムの考え方があるから、奇妙なコノコルがやってきても変換するようにしている。だから、マティアスと同じようにカウントしたりはしない。2つの異なる言語が共存しているような感じだね。

ME:コノコルの美しさはまるで宇宙のようだ、ということだ。限界がないんだよ。どんなことでもできる。僕にはアメリカに、デス・メタルの友達がいる。パンダみたいな白塗りに鋲をつけたようなファッションのヤツなんだけど(笑)、「君のリズム感ってすげえよなあ! コノコルとか言うの。そしたら、音数が666個の曲なんかも作れるの?」

YG:(笑)

ME:僕は「もちろん作れるよ!」と、1曲作ってYouTubeにアップした。内容はひどいもんだけど、ご覧の通り。2分しかかからなかったね。37/4拍子で16分の6連符が222個だ。これを3回繰り返せば666になる。

Freak Audio Lab – Sixhundredandsixty-sixsixteenth-notesextuplets

つまり、何でもできるんだ。西洋音楽でやるのは、僕には難しい。7拍子もできるし、11拍子でもいいし、27拍子でもいい。でも、本当に広い形で見ようとすると、図でカウントしていくのがいいと思う。僕にとっては、非常にパワフルな音楽ツールだ。境界線はない。リズム面では非常に安泰だ。ドラマーが「こんな風にできる?」と言われたら、僕は「お安い御用だ」とそのリズムをコノコル化してさ。ギリシャとブルガリアに行くと、(現地の音楽の)楽譜を見せてくれるんだけど、どっちも全然違うんだ。3拍子、5拍子、7拍子、11拍子、23拍子…色々変わるんだ。まるで本の朗読のように「タカタ・タカタ…」と唄っていくだけさ。まあ、奇妙な本だろうけど(笑)。

これが好きじゃない人もいる。「こんなインドのつまらないものをメタルに混ぜるのはやめてしまえ!」みたいなコメントを読むのは面白いね。とてもインスパイアされるよ。ただ、いい人達と一緒に仕事ができるのはいいね。“聖なる結合”というか、仕事をするうえで、何か邪魔になるようなことがないように注意を払っている。だから、フリーク・キッチンはこの3人だけでやろう、と考えた。だからすべての決定は自分たちで下す。人が増えた途端に意見は分かれるし、そういうことが解散につながったりするバンドもたくさんいる。だから、このバンドはきわめてタイトに行きたい。それで、この3人だけで移動しているんだ。

YG:3人とは、本当にあなた達3人だけですか?

ME:そうだよ。クルーはいない。ビヨルンは奥さんが来ているけど、今は買い物に出ているしね(笑)。

BF:今回は一緒に来たけど、普段は本当に3人だ。

ME:その方が儲かる(笑)。フリーク・キッチンと同じぐらい評判を得ているバンドでクルーが多いところは「何週間も出ていっても、多分タダ働きに近いんじゃ…」と気づいたことがある。

BF:それで、俺達はツアー中は機材を自分で運転して運ぶ。

ME:販促物もあるしね。サウンド・エンジニアもいない。とっても気楽なバンドだ。仕事がしやすいし、プレイしていない時は大人しくて、ステージに上がれば大音量だ。

CH:いたって普通だよ。

ME:君のリヴァーブ以外はね。

CH:俺のリヴァーブは世界一呪われている。自分のヴォーカルにはリヴァーブと、それにディレイも組み合わせてほしい。少なくとも俺のイヤー・モニターには返してほしいんだ。ところが…いっつもこれが問題でさ(笑)。

ME:サウンド・チェックの時はちゃんと聴こえてるんだ。でもプレイが始まった途端に消えて、どこかに行ってしまう。

CH:ミキサーもデジタルだから、何も変わらないはずなんだ。でも、必ず聴こえなくなってしまう! 「なんで? どうやって? リヴァーブを戻してくれ!」(笑)

ME:毎晩毎晩、「俺のリヴァーブはどこへ行った?」とクリスが言う場面が見られるよ。僕はスーパー・ドライな方が好きだな。その方がシンプルじゃないか。でないと緊張してしまう。僕がシンガーじゃないからだろう、リヴァーブがあると自分がシンガーになってしまった気がする。

BF:キック・ドラムの音がなくなるような大ごとではないけど、必ず起きるよね。専属のサウンド・エンジニアがいないせいかな。

CH:確かに。でもそしたら、自分たちで機材も全部運ばないと。そしたら今よりもっと大量になるし、人も増えてでかいビジネスになってしまう。それでお金を稼ぐのは、正直現実的じゃない。いつも同じサウンド・エンジニアがついてくれれば、俺達の好みも把握できるはずだけど…やっぱり、自分たちでなんとかしちまうんだよ!

ME:ロックンロール・バンドだ!

BF:パンク・バンドだ!

CH:そういえば、昨晩のショウでもリヴァーブが消えたよ! 曲の途中で…。オーディエンスを待たせるわけにはいかないから、そのまま進めたけど。でも、復活したよ。エンジニアが気づいてくれたのかな。リヴァーブがあると俺の声が支えられるんだ。よりリラックスして歌えるし、何本もショウを続けてやれる。だから、リヴァーブが戻ってきた時、すぐに分かるんだ。「ホッ、良かった…」。誰にでも、より良いプレイの時に必要不可欠なもの、これがあれば安心してやれるものがあるだろう。だけど、俺のリヴァーブは呪われている…!(笑)

YG:分かりました(笑)。呪いが解けるように願いつつ、今後の予定はいかがですか?

ME:まだショウが続くよ。その後は新曲とギター・クリニックに時間を使いたいね。そして、フリーク・キッチンはまた下品な音楽を作っていく!(笑)

CH:多分永遠に活動し続けるだろう。

ME:全くだ! 無観客でも演奏するよ!

フリーク・キッチン
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