毎年恒例の夏フェス“SUMMER SONIC”が去る8月18日(土)〜19日(日)、例年通り幕張と大阪の2ヵ所にて開催された。今回もYG取材班は幕張会場へと潜入し、ギタリストを擁したロック・アクトを中心に各ステージをチェック。1日目のMOUNTAIN STAGEに登場予定だったマーモゼッツがベッカ・マッキンタイア(vo)の体調不良を理由に出演をキャンセルするという残念至極なアクシデントがあったものの(註:翌日には体調が回復し、大阪会場では予定通り演奏)、多種多様なアーティストが繰り広げる熱いパフォーマンスの数々にすっかり魅了された2日間となった。以下では今回YGが目撃したライヴの中から、本誌読者にぜひともお伝えしたいステージの模様を簡単にご紹介していこう。
8.18. Sat.
HER NAME IN BLOOD
今年4月に最新フル『POWER』をリリースしたメタル・ビースト:HER NAME IN BLOODが、MOUNTAIN STAGEのオープニング・アクトとして登場。ESPの“MA-CTM / QM”を手にしたDAIKI(g)と自身のアイバニーズ製レフティ・モデルを操るTJ(g)が放つ、圧倒的パワーのツイン・ギター・サウンドで血気盛んなオーディエンスをフルボッコに! その有り余るエネルギーは1曲目からバスドラのヘッドが破れるというハプニングも引き起こしたが…そんなことはなんのその、強烈な鋼鉄グルーヴを全開にして突き進むパフォーマンスに感服!
BULLET FOR MY VALNETINE
コンテンポラリーなメタルコア・サウンドに急接近し、ギター・ソロが封印された最新作『GRAVITY』(’18年)が賛否両論となっているブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン。そんな彼らが2年振りにサマソニのステージへカム・バック! セットリストは新作からの選曲が多めで、重厚かつメロディアスなミドル・ナンバーが多数を占めていた。故にテクニカルなギター成分は薄めだったが、旧作からの人気曲「4 Words(To Choke Upon)」、「Scream Aim Fire」、そして「Waking The Demon」等ではギター・コンビのマット・タック&マイケル“パッジ”パジェットによるシュレッド・プレイが炸裂。新曲での盛り上がりもさることながら、やはり彼らの巧妙なメタル・ギターが引き起こす興奮は格別!…と、感じずにはいられなかった。
NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS
元オアシスのノエル・ギャラガーが、同バンドの解散後に始動させた自身のソロ・プロジェクト:ハイ・フライング・バーズ名義で約3年振りに来日。本公演のヘッドライナーを務めた。序盤は最新作である3rdフル『WHO BUILT THE MOON?』(’17年)の冒頭4曲(SE1曲を含む)をそのまま演奏し、以降は1st&2ndも含めた全ソロ・アルバムの曲とオアシスの有名曲を織り交ぜながらステージを進めていった。今回注目だったのが、ゲム・アーチャー(g)とクリス・シャーロック(dr)というオアシスの元メンバーを帯同していたこと。特に’90年代末〜’00年代にバンドを支えていたゲムのリード・ギターとノエルの歌メロが溶け合う「Little By Little」(オアシスの’02年作『HEATHEN CHEMISTRY』収録)が演奏された際には、冗談抜きでステージが涙で見えない…なんてファンも少なくなかったのでは? ラストはオアシスの「Don’t Look Back In Anger」〜ザ・ビートルズのカヴァー「All You Need Is Love」という反則級の必殺コンボで、この上なく美しい音楽空間を生み出した!
8.19. Sun.
BAND-MAID
昼下がりのRAINBOW STAGEにて、開演前から多くのオーディエンスに見守られる中、BAND-MAIDの“お給仕”がスタート。今年発表の最新アルバム『WORLD DOMINATION』からの楽曲を中心に、タイトなアンサンブルとキャッチーな歌メロが一体化したメタル・サウンドでガッチリ聴かせ、海外からの“ご主人様”“お嬢様”をも楽しませていた。強力なバッキングでバンドを支える小鳩ミク(g, vo)はキュートな歌声でヴォーカルとの掛け合いも巧みにコナし、KANAMI(g)はクラシカルなメロからトレモロ・ピッキングのファストなリックまで爽快なほどに弾きまくり。2人の息をピッタリ合わせた「Choose Me」のリフ・セクションも圧巻!!
ST.VINCENT
奇抜なイメージと無表情な音楽性が印象的なアニー・エリン・クラークのソロ・プロジェクト:セイント・ヴィンセントは、ライヴという生身の体験ができる場において興味深い魅力を放っていた。舞台には4人のプレイヤーが横一列に並び、『MASSEDUCTION』(’17年)の曲を中心に背面スクリーンの芸術的な映像と共に強烈なディスコ&オルタナ・サウンドを展開。鮮やかな色のミニ・ワンピース姿で直立する彼女の姿は、どこかデヴィッド・ボウイにも似た雰囲気が漂う。シグネチュア・ギターを手に極太ファズ・サウンドでメロディーを奏でつつエキセントリックなヴォーカルで楽曲を引っ張り、SONIC STAGEに広がる観客を踊らせていた!
NICKELBACK
MOUNTAIN STAGEに響くメタリカの「Disposable Heroes」——曲が終わると、この場で2日目のトリを務める大ベテラン:ニッケルバックの登場だ。まず最新作『FEED THE MACHINE』(’17年)の表題曲を披露し、硬質なサウンドとシャープな演奏で観客をノックアウト。チャド・クルーガーのヴォーカル&ギターは絶好調、ライアン・ピークのエレクトリック〜アコのギター捌きも鮮やかだ。名バラードの中に「Something In Your Mouth」などのメタル・サイドを交え、“柔能く剛を制す”さながらの見事なショウ運びは、ちょうどこの日発表された来年2月の単独公演も観なくては…と思わせるに充分な内容だった!