40年来の絆が作る巧みなギター・コンビネーション!
山本恭司(g, vo)と斎藤光浩(g, vo)というオリジナル・メンバー2人を核に、ギタリスト2人を示す“G2”をバンド名の末尾に加え、散発的に活動を継続しているBOWWOW。2016年8月に行なわれた彼らのライヴでは、デビュー40周年という“超”がつくベテランならではの息の合い方は言うに及ばず、若手に負けないアグレッシヴなエネルギーにも驚かされた憶えがある(その時の模様はDVD『BOWWOW G2 LIVE IN TOKYO 2016 〜The 40th Anniversary』としてリリースされているので、ぜひチェックされたし)。2017年は残念ながら諸般の都合で実現しなかったが、あれから丸2年、久々に彼らが同じ会場…Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREのステージに帰って来た。
シンセサイザーとギター・オーケストレーションによる重厚なSEをバックに、恭司&光浩が登場すると、満場の喝采が一段と大きくなる。彼らをがっちりサポートするのは、前回と同じく松本慎二(b)&小柳”Cherry”昌法(dr)。リズミカルなタムに導かれて始まったのは「20th Century Child」で、実にヘヴィかつエネルギッシュなのも前回同様…、いや、音の分厚さはますます増しているように思える。恭司のヤマハ“HR-Custom”、光浩のギブソン・レスポール・カスタムから放たれるビッグなリフの壁に、観客の大きな手拍子が絶妙に絡み、幕開けからして素晴らしい一体感だ。
ブルージーなアップ・テンポ・リフから始まった「Jet Jive」でも、勢いよりはむしろ厚みや安定感が際立ち、身体が自然と心地よく揺らされる。“G2”時代のBOWWOWはこの重厚感が特徴なのか…、ブラック・サバス的なヘヴィ・リフを持つ「Silver Lightning」においてはグルーヴ感がさらに200%増。もちろんその上に乗るコーラスは相変わらずキャッチーかつ華やかだし、粘りがあって艶やかな恭司、王道ストレートの光浩という、個性の異なるソロ回しからのツインも実に派手で、会場の盛り上がりは3曲目にして既にクライマックスの様相を見せる。ちなみにMCでも触れられていた通り、光浩は今年で還暦を迎え、恭司は現在62歳。以前ローリング・ストーンズの来日公演を観た時にも筆者は感じたが、ロックは人を若くさせる…どころか、年々エネルギーを乗算していくかのようだ。
2人のギターによる巧みなコンビネーションは他の曲でも随所に見られ、例えば「Rock Me」では光浩のトリッキー・リックと恭司の耳をつんざくハイ・トーン、「Abnormal Weather」では恭司の伸びやかなロング・トーンと光浩のレスポールらしいスウィートな音色…の対比が魅力的。一方「Behind The Mask」や「Clean Machine」においては、バンドが一丸となってドラマティックな展開を生み出す様が強力で、徐々に感情を盛り立てていくコントロールの巧みさがBOWWOWならではだ。
中盤は彼らのライヴでは既にお馴染みとなった、恭司&光浩のみのデュオによるアコースティック・コーナー。“弾き語り弾きまくりギター三昧”というソロ・ツアーを8年に渡って続けている恭司のMCは、親戚のお兄さんが隣でしゃべっているかのような自然体が面白く、この辺りもキャリアが培ったテクニックなのだろう。たまに入る光浩の相槌も楽屋っぽい雰囲気で、2人の関係性が伝わって何だかほのぼのしてしまう。そんな風に会場の熱を巧みにクール・ダウンさせてから、ステージでは何十年ぶりかに披露するという「Blue Eyed Lady」を演奏。先ほどまでの激しさとは打って変わったようなカントリー風アレンジが心地よく、アルバム(1977年『CHARGE』)ではエレクトリックだったツイン・リードが張りのあるアコースティックに置き換わると、テイストがまるで変わってしまうのが興味深い。次の「絆フォーエバー」でも感じられたが、本来サステインが短いはずのアコースティックも、恭司の手にかかれば実に伸びやかに延びる。また次の「Rock’n’Roll Drive」では、本来ストレートに走るリズムをシャッフルに置き換えることでフォーク調に変貌。こういった引き出しの多さで楽しませる術を持っているところも、今のBOWWOWの強みだ。
「まったりし過ぎちゃったかな?」という恭司の一言で笑わせてから、後半は一転、松本と小柳がステージへ戻ってロック・モード再開。「You’re Mine」ではメタリックかつ鋭いギター・リフが全体をグイグイと引っ張り、パンキッシュな速さで観客のコブシを思う存分振らせる。猛烈な速弾きに続くクラシカルなキメ・フレーズは、無条件にアドレナリンを放出させるエキサイティングさだ。そこから大らかな曲調と不思議なテンポ感のコーラスが独特な「Judas(In Blue)」でシフト・チェンジしてから、絶望感のあるスロー・バラード「Still」へ。彼らのライヴでは何度も見て来た定番ナンバーだが、恭司のギター・ソロの情念のこもり方はいつも強烈で、そこに絡んで来る光浩のハーモニーも感動に拍車をかける。マニアックなギター・ファン以外にもしっかりと訴求する旋律の奏で方が流石…と唸らされたところで、思いっきりマニアックな恭司のギター・ソロ・コーナーへ続く、この辺りの落差も面白い。ヴォリューム奏法による幻想的なイントロから、空間エフェクトで静謐さを巧みに表現したかと思うと、クジラの鳴き声や宇宙空間のような轟音あり、ハーモナイザーによるロボット的ノイズあり、チャーチ・オルガンのような荘厳なコードあり…。1本のギターで様々な世界を作り出すステージ上の恭司を、会場中が息を呑んで見つめる。ワウを駆使しての破壊的な「Amazing Grace」が終わると、その表現力に惜しみない拍手が送られた。
ライヴは終盤へ突入。シャッフルのリズムで元気に跳ねる「Rock And Roll Tonight」やハイ・テンション&スピーディーな「In My Image」では、細かいリズムのキメがビシバシと鋭く決まる様が痛快だ。そして2本のギターが巧みに絡む「Prelude」の荘厳なオーケストレーションから、「Get On Our Train」へと雪崩込み、開放弦を巧みに使う特徴的なフレーズからの美しいツイン・リードでまた会場は熱狂。さらに『SIGNAL FIRE』のアルバム通りに「Just One More Night」が続き、勇壮に切り込むようなリフでますます空気を熱くさせる。ショウの前半で聴かせた安定感や重厚感に良い感じのラフさも加わり、要所要所は緻密なのに全体的な勢いは荒々しいという、そのバランス感が実に見事だ。意図的に操っているのだとしたら恐ろしいが…、時折、珍しく恭司が感極まったかのようにハイ・トーンのシャウトを挟み込むのを見ると、観客の反応に感化されて彼自身もエキサイトしていることがよく分かる。そして徐々にリズムが加速して「Theme of BOWWOW」へ突入、熱量がピークへ到達したところで、本編は一旦幕を閉じた。
もちろんこのままショウが終わってしまうはずがないのは、満場の観客の誰もが知っている。何度も繰り返される“BOWWOW!”の呼び声に導かれて再びステージへ現れた4人の表情は実に嬉しそうだ。「次が来年になるか再来年になるかは分からないけど」と前置きつつ、恭司が次回のライヴの開催を約束すると、この日一番の喝采が巻き起こった。
アンコールは光浩のレスポール・ジュニアから飛び出す歯切れ良いリフが印象的な「Silver Train」からスタート。恭司のワウがそこに絡み付くように粘り、ここでも再び2人のギターの相性の良さを見せ付けるかのよう。さらに定番中の定番「Signal Fire」でも個性の違いを活かした掛け合いソロが炸裂、2人入り乱れたかと思えば華麗なツイン・ハーモニーへ…、流れるようなつながり方は40年来の相方ならではだ。
そして燃えるような「Hearts On Fire」で最後を締めくくった後、歓声に応えて再度行なわれたアンコールは、お馴染みの「Summertime Blues」。言わずと知れたザ・フーの名曲だが、BOWWOW G2ヴァージョンはリズムの刻みがかなりヘヴィな印象で、現代的アップデート版とでも表現するのがしっくりと来る。そしてここでもやはりハイライトとなったのは、もはや言わずもがな、恭司&光浩のギター・コンビネーション。長めの尺を取ってのインタープレイは大団円に相応しい派手さで、エンディングを迎えた後も観客からのスタンディング・オベーションが鳴り止まなかったことを考えると、実は3倍、4倍の長さで弾きまくってもらっても良かったかもしれない…!?
BOWWOW G2@Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 2018.8.25 セットリスト
1. 20th Century Child
2. Jet Jive
3. Silver Lightning
4. Rock Me
5. Abnormal Weather
6. Behind The Mask
7. Clean Machine
8. Blue Eyed Lady〈Acoustic〉
9. 絆フォーエバー〈Acoustic〉
10. R&R Drive〈Acoustic〉
11. You’re Mine
12. Judas(In Blue)
13. Still〜Kyoji Guitar Solo
14. Rock And Roll Tonight
15. In My Image
16. Prelude〜Get On Our Train
17. Just One More Night
18. Theme of BOWWOW
[encore1]
19. Silver Train
20. Signal Fire
21. Heart’s On Fire
[encore2]
22. Summertime Blues