男女トリプル・ヴォーカルを擁するスウェーデンの激烈&キャッチーな6人組:アマランス。そのニュー・アルバム『MANIFEST』に伴うオロフ・モルク(g)のインタビューは、ヤング・ギター本誌2020年10月号に掲載済みだが──その際、紙幅の都合により泣く泣くカットされた未発表部分をここにお届け! 意外なカヴァーや驚愕のゲスト起用などで話題のPV各種について、また、『MANIFEST』に迎えたその他のゲストについて、そして、気になるボーナス・トラックについても、オロフにガッツリ話してもらった…!!
この時間をいかにクリエイティヴに使うか、そこに焦点を当てたい
YG:『MANIFEST』のリリースに先駆け、今年1月にサバトンのカヴァー「82nd All The Way」のPVが公開となりましたね? あのカヴァーはいつ録音されたのですか?
オロフ・モルク(以下OM):’19年11月だよ。アンジェラ・ゴソウ(vo/元アーチ・エネミー)とシングル「Do Or Die」をレコーディングしたのとまさに同時期だった。「Do Or Die」は『MANIFEST』のためにまた録音し直したから、完全なヴァージョンが2つあることになるね。
YG:そもそも、サバトンのカヴァーをやることになったキッカケは?
OM:サバトンとは結構長い付き合いだし、(’20年1〜2月に)一緒にヨーロッパ・ツアーに出ることにもなっていたから、両方のファンに向けて、それぞれのバンドをよりアピールするために「何かやろう」と話していたんだ。
YG:『THE GREAT WAR』(’19年)収録の「82nd All The Way」を選んだ理由は? この曲は第一次世界大戦のアメリカ軍の活躍を歌っていて、北欧出身のあなた達とは、あまり関連がないような気もしますが…?
OM:サバトンの中心メンバー:パル・スンドストロム(b)が提案してくれたんだ。もう一瞬で、俺達にとってパーフェクトだと直感したよ。コード進行もメロディーも、あとソロまでもが、完璧にアマランスのスタイルで解釈出来ると思ったのさ。
YG:PVといえば、『MANIFEST』の先行シングルとなった「Do Or Die」での、アンジェラの起用には驚かされました。現アーチ・エネミーのアリッサ(ホワイト=グルーズ:vo)ではなく、しばらく一線を退いていたアンジェラをゲストに招いた理由は?
OM:アンジェラは’18年8月以来、アマランスのマネージャーを務めてくれていてね。去年、この気候変動についての曲を書いた際、スペイン南部アリカンテのとてもクールなロケーションでヴィデオを撮る…というコンセプトのアイデアを持ち掛けてくれたのは、実はアンジェラだったんだよ。確かに彼女は、この9年間シンガーとして活動していなかった。でも、だからこそ参加してもらえて、素晴らしく光栄なことだったんだ。何せ俺とエリーゼは、20年前、彼女が加入した頃のアーチ・エネミーをよく聴いていたからね。
YG:この「Do Or Die」のPVは、今年2月の公開なのに、まるでその後のコロナ蔓延を予言するような内容になっていますね…?
OM:アマランスは通常バンドとして、あまり終末論的になることを好まないし、たとえダークなテーマであってもポジティヴな面を見せることが多い。基本的に「Do Or Die」は、母なる自然に対する人類のリスペクト不足へ焦点を当てているんだ。この曲が意味するところから環境問題に目を向けてみると、新型コロナウイルスのパンデミックというのは、人間が自然を乱用したが故の産物だということも見えてくる。単に今までとは違った形…という点でね。残念なことに──近い将来、我々は自らの行為がもたらす悪影響をもっと頻繁に見ることになるんじゃないかな…。
YG:『MANIFEST』には他にも沢山のゲストが迎えられています。それぞれについて、起用のキッカケなどについて話して頂けますか? まずは、「Strong」に参加しているバトル・ビーストのノーラ・ロウヒモ(vo)から。
OM:ノーラは楽な選択だった。’20年8月から一緒に全米ツアーを行なう予定だったからね。勿論、レコーディングの時点では、もう(コロナ禍によりツアーが)実現しないことは分かっていたんだけど…。そもそもノーラは、メタル界全体の中でも俺が好きなシンガーのひとりなんだ。アプローチした時、彼女もこのアイデアをとても喜んでくれたよ。
YG:「Crystalline」のペルットゥ・キヴィラークソ(cello:アポカリプティカ)とエリアス・オルムリッド(key:ドラゴンランド)は?
OM:アポカリプティカのチェロ奏者:ペルットゥとは、先のサバトンとのツアーで一緒だった。彼も俺もクラシックや映画音楽が大好きだから、俺達は音楽的に、様々な意味でパーフェクトに通じ合ったんだ。「Crystalline」のアレンジを始めた時、チェロのパートはペルットゥに弾いてもらうのがパーフェクトな選択だったよ。一方、エリアスとはドラゴンランドで長年一緒に活動してきたし、何より彼は素晴らしいピアノ弾きだからね。今回も、俺が何を求めているのか正確に理解してくれたし、その上、あいつらしさもトラックに加えてくれたんだ。彼がペルットゥと一緒にプレイしているのを聴くのは最高の気分さ!
YG:「BOOM!」にはブッチャー・ベイビーズのヘイディ・シェパードが参加しているそうですが、どこで歌っているのでしょう?
OM:ヘイディが「BOOM!」担当してくれたのは、ほんの短いセリフだけだよ。ブレイクの前のところで、アメリカ人の女の子の声が欲しかったんだ。彼女とも仲の好い友達だから、今回やってもらって楽しかったよ。
YG:PVに関してもうひとつ──「Viral」であなたはピアノに向かって楽譜をしたためていますが、もしやこの曲は、鍵盤で作曲したのでしょうか?
OM:よく気付いたね! これまで(楽譜について)指摘する人は他にいなかったよ。あのシーンには楽譜が必要だったんだ。ちょっとした隠れキャラというか、音楽的なドッキリみたいな感じで──実は、『スター・ウォーズ』のメイン・テーマ(の譜面)をしたためているんだよ!(笑) 但し、「Viral」はギターで書いた曲だ。キーボードのパートはあとから加えたのさ。
YG:『MANIFEST』のボーナス・トラックについても教えてください。日本盤には「Strong」の別ヴァージョン「Strong Cinematic」がボーナス収録されますが、海外盤には「Adrenaline」のアコースティック・ヴァージョンが追加となるようですね?
OM:ああ、「Adrenaline」のフラメンコ・ヴァージョンね! Admira Almeriaの’70年代製スパニッシュ・ギターを弾いたんだけど、凄く楽しかったよ。俺がドラゴンランドの1stアルバム(’01年『THE BATTLE OF THE IVORY PLAINS』)以来、ずっと使ってきたナイロン弦のアコさ。「Adrenaline」については、元々のヴァージョンにスパニッシュやラティーノのヴァイブがあるような気がしていて、その流れから新たな解釈をするのが面白く自然なアイデアだと思ってね。ソロはほんのワン・テイクで、完全に(オリジナルと)異なるフラメンコ・スタイルで録ったんだ。文字通りのファースト・テイクだけが欲しかったから、あまりテクニカルではないものの、スパニッシュ・ギターのプレイヤーがライヴなんかでよくやるような感じに仕上がったと思う。
YG:ところで──現在、新型コロナの感染拡大により、ライヴが行なえない状況にあると思います。「Viral」のPVは、そんなフラストレーションを吹き飛ばすような内容になっていましたが、今後、配信ライヴなどの予定はありますか?
OM:いま俺達は、将来的にステージ・ショウをレベル・アップする方法として、凄くクールなアイデアを幾つか温めている。確かに現状は、音楽業界全体にとって、間違いなくクレイジーで奇妙な時期だと言えるよね。今年に入ってアマランスも、70公演ぐらいキャンセルを余儀なくされたし…。言わずもがな、大きな大きな痛手だよ。でも、その失望感を乗り越えて、この時間をいかにクリエイティヴに使うか、そこに焦点を当てるようにしなきゃだ。俺達自身、ライヴ・ストリーミングというメディアにパーフェクトな状況を見出したら、近い将来きっとトライすることになるだろうな!!