SPANISH METAL ATTACK!! 3組合同インタビュー:RISE TO FALL / BLOODHUNTER / VHÄLDEMAR

SPANISH METAL ATTACK!! 3組合同インタビュー:RISE TO FALL / BLOODHUNTER / VHÄLDEMAR

SPANISH METAL ATTACKフライヤー

2024年10月、東名阪にて“SPANISH METAL ATTACK!!”と題されたカップリング来日ツアーが行なわれた。ベテラン“漢”パワー・メタラー:ヴァルデマール、過去2度の来日経験があるメタル・コア5人組:ライズ・トゥ・フォール、これが初来日となるメロデス5人組:BLOODHUNTERと、スペイン産メタル・バンド3組がタッグを組んでの、これまでにない趣向のマニア垂涎イベントだ。本誌は以前、ヴァルデマールの首魁ギタリスト:ペドロ・J・モンヘには取材を行なったことがあるが、他2組はこれまでYG未登場。そこで今回、3バンドのギタリスト全員を集めての合同インタビューを実施! 名古屋&大阪公演を終え、意気揚々と東京へ乗り込んで来たギタリスト5名──ペドロ以下、・ウーゴ・マルカイダ&ダン・オジョス(ライズ・トゥ・フォール)、ダニー・アルコス&ギジェルモ・スターレス(BLOODHUNTER)による、和気藹々としたギター談義をお楽しみ頂きたい…!

全員

それ以上に力が湧いてきた

YG:名古屋と大阪での公演はいかがでしたか?

ダン・オジョス@ライズ・トゥ・フォール:凄く良かったね! とにかく観客が素晴らしくてさ。大歓迎してくれて、ショウの最初から最後までエネルギー全開で、みんな全力を尽くしてくれた。あれには感激したよ。

ウーゴ・マルカイダ@ライズ・トゥ・フォール:平日のショウだったから、集客はそこそこだったけど、ダンが言うように、オーディエンスはエネルギーに満ち溢れていて、みんなクレイジーになってくれて、それが嬉しかったね。ホント素晴らしいとしか言いようがない。

Hugo Markaida(左)&Dann Hoyos/RISE TO FALL
Hugo Markaida(左)&Dann Hoyos/RISE TO FALL

ダニー・アルコス@BLOODHUNTER:俺達はみんなバテ気味だったんだ。というのも、日本へ来る前に中国と韓国を廻ってきたからね。でも、日本の観客からとてつもないエネルギーを感じ、そのパワーをもらって、凄く良いライヴになったよ。メチャクチャ楽しかったな…!!

ギジェルモ・スターレス@BLOODHUNTER:そう、俺達は移動、移動の連続で疲れ果てていたんだ。ただ俺にとって、日本でプレイするのはスペシャルなことでね。だって、自分のギター・ヒーローや憧れのバンドが日本でライヴを行なう映像をさんざん観てきたからね。そして、(日本でのライヴは)本当に最高だった! グッときたよ。ショウ自体が実に素晴らしかったね。最高の時間を過ごすことが出来たんだ。いや…まだ疲れは残っているよ。でも、それ以上に力が湧いてきたんだ。

Guillermo Starless(左)&Dani Arcos/BLOODHUNTER
Guillermo Starless(左)&Dani Arcos/BLOODHUNTER

YG:ペドロはどうでしたか?

ペドロ・J・モンヘ@ヴァルデマール:凄く良かったよ! 動員的にはちょっと少なかったけど、みんなエネルギーに満ち溢れていて圧倒されたね。次回はもっと多くの観客に観てもらいたいな。

ペドロ・モンヘ
Pedro J. Monge/VHÄLDEMAR

YG:BLOODHUNTERの2人は、日本に来るのは初めてですか?

ギジェルモ:うん、俺はそうだよ。

ダニー:俺は5年前、仕事で来たことがある。当時、日本の企業で働いていたんでね。でも、バンドでの来日は初だ。だから、楽しみで仕方がなかった。俺にとっても日本は、あらゆるギター・ヒーローが輝きを放ってきたところだからな。実際、沢山の伝説的なライヴがここで行なわれてきた。いや、中国と韓国でのショウも、会場がデカかったり、観客が熱狂してくれて、凄く良かったんだよ。でも、日本での経験は期待以上だった!

ギジェルモ:ああ、まさにね!

ダニー:観客はみんな、凄く音楽に入れ込んでいる。それって、ここ10年ぐらいのスペインでの状況とは大違いなんだ。スペインではあまり熱狂と言えるようなことにならなくてさ。

YG:ライズ・トゥ・フォールの2人は、2019年以来ですね?

ウーゴ:うん。前回はソイルワークのオープニングを務めた。大好きなバンドだし、会場も今回より大きくて、観客の数も多かったんだ。その前(2011年)もデストレイジのサポートで、会場の規模は今回と同じぐらいだったけど、週末だったので、観客の数は結構多かったね。でも、オーディエンスから受け取った愛やパワーは、今回だってそう変わらなかったよ。いや…むしろ、過去2回以上だと言える。何故なら、前回ならソイルワークを観にきたファンが殆どだったけど、今回は俺達スペインのバンドを──“SPANISH METAL ATTACK!”を観るために、みんな集まってくれたんだからさ!

YG:これまでにスペイン国外で、こうして複数バンドでツアーをしたことは?

ダン:多分、初めてだと思う。

ウーゴ:そうだな。俺達はBLOODHUNTERとよく一緒になるし、ヴァルデマールと共演したこともあるけど、それってスペイン国内でのことだから。俺が思うに、この“SPANISH METAL ATTACK!”は最高の組み合わせだ。スペインのあらゆるメタル・バンドの中で、最高の3組が集まっている。文字通りの“ヘヴィ・メタル”という点では、ヴァルデマールこそ最高峰だし、BLOODHUNTERも最高のメロディック・デス・メタル・バンドだからね。そして俺達は、(他の2バンドよりも)もっとモダンなスタイルを採っている。だから、とても良いバランスの組み合わせだし、最高のメンツになっているよ。

BLOODHUNTER
BLOODHUNTER

YG:3組とも付き合いは長いのですか?

ダニー:BLOODHUNTERはまだ活動歴10年ぐらいだけど、ライズ・トゥ・フォールとはもう8年来の付き合いになる。

ウーゴ:俺達はもうちょっとキャリアが長くて、もう18年ぐらい活動している。俺達とBLOODHUNTERについては、スペインにはあまりメロディック・デス・メタル・バンドが沢山いないんで、お互いによく知っているんだ。ヴァルデマールはさらにキャリアが長い。俺自身、ギターを始める前から彼等のことを知っていたから。確か、初めて彼等のライヴを観たのは22年前だ。当時、ロスト・ホライズンのサポートを務めていて──ペドロと初めて会ったのもその時だったな。そして俺は、それから1年ぐらい経ってギターを始めたのさ。勿論、ペドロの存在がそのキッカケのひとつだったよ。

ペドロ個人としてなら、俺は彼が(ヴァルデマールで)パワー・メタルをやる前から知っているんだ。彼の弾くギターが大好きで、自分がギターを始める前から、ずっとそのプレイを見続けてきたのさ。彼は文字通り何でも出来る。何でも弾きコナしてしまう。ただ、俺はそのレベルには到達出来なかった。まぁ、それでも問題ないけどね(笑)。

YG:ウーゴがギターを始めたのは何歳の時でしたか?

ウーゴ:17歳だったよ。当時はパワー・メタルの影響が強かった。でも、ギター・ヒーローを挙げるとしたら、その筆頭はイングヴェイ・マルムスティーンだな。あとは、アレキシ・ライホとイン・フレイムスのイェスパー・ストロムブラード。彼等のつくり上げるメロディが大好きなんだ。ただ──実を言うと、俺がギターを始めた最大のキッカケは、ドラムを叩く機会に恵まれなかったことだったんだ。本当はドラマーになりたかったんだけど、ドラム・セットを買う余裕なんてなかったし、そもそも(自宅で叩いていたら)家族から「うるさい!」と言われるに決まってるからね。そう、今の俺は“フラストレーションを抱えたドラム好き”でもあるんだよ(笑)。

YG:他のみなさんのギターを始めた年齢とキッカケも教えてください。

ギジェルモ:俺は確か、12~13歳の頃だったんじゃなかったかな。ギターを弾いている従兄弟がいて、彼が色んな曲を弾くのを見ていて、自分でも弾きたくなったんだ。当時から、ガンズ・アンド・ローゼズとかアイアン・メイデンのファンだったからね。でも、決定的だったのは、スティーヴ・ヴァイを知った時だったよ。彼は今でも俺のフェイヴァリット・ギタリストなんだ。

ダニー:俺がギターを始めたのは8歳の時だった。ちょうど15年前だな。ギターを弾いていたおじさんの影響で、彼のギターを使って、少しずつ覚えていったんだ。ただ、(8歳から)ずっと弾き続けていたワケではなくて、色々と興味は移っていったんだけど、その後、おじさんから最初の(本格的な)レッスンを受けた時、「よしやるぞ!!」と心に決めたのさ。そこからは止めずに、ずっと弾き続けているよ。

ダン:俺は…ハッキリとは憶えていないんだけど、確か14歳ぐらいだったと思う。キッカケは、ギターを弾いている夢を見たからだった。実は、もっと早くからレッスンを受けてはいたんだ。でも、まだ子供だったし、凄く退屈で、和音なんかを教えてもらっても、全く面白くなくて、いつの間にか止めてしまってさ…。ところが、それから何年も経ったある日、夢の中でギターを弾いていて、ネックの右側を使ってかなりの高音を出していてね。それでハッと思って、ずっと寝かせてあったギターを引っ張り出してきて、また弾くようになった──それが13~14歳ぐらいだったと思う。

それからは独学で弾きまくって、上手くなればなるほど惹き込まれていったよ。最初のギター・ヒーローはAC/DCのアンガス・ヤング! 俺の人生の半分は彼の影響下にあったんだ。その後、スティーヴ・ヴァイを知り、マティアス・エクルンドを知って、他にも沢山のクレイジーなギタリストを発見していったのさ。

YG:それぞれ、最初からシュレッダーを目指しましたか?

ウーゴ:俺は自分のことをテクニカルなギタリストだとは思ってないけど、テクニカルなプレイヤーの演奏を聴くのが大好きだ。特にネオ・クラシカルなスタイルが好きで、マイケル・ロメオがやっていることなんて最高だと思う。でも、自分では弾いてみようと思わないな。その10%も再現出来ないから…(苦笑)。

俺はリフを作るのが好きなんだ。元々は競い合うような速弾きが大好きで、このバンドでもリード・ギタリストを務めていたんだけど、(2018年に)ダンが加入してからは、ずっとリズム・ギターに専念している。メロディをつくることは得意ではあるものの、ソロよりもリフに入れ込んでいて、今じゃギター・ソロに関しては、もっぱらリスナーに徹しているよ(笑)。

ダン:おかげで俺は、「もっと速く弾きたい!」と思うようになり、もっとテクを付けなきゃ…と頑張ったんだ。いつも新しいテクニックを追い求めていて、タッピングを修得したら、「よし、次!」…という具合にね。マティアス・エクルンドは俺も大好きで、彼からは大いに刺激を受けた。だって、他のギタリストだったら、聴けばどう弾いているのか大体のところは見当が付くけど、マティアスの場合そうはいかないだろ? そこで、彼のプレイを研究し始め、今も何とか真似しようと頑張っているところさ。

そこがギターの素晴らしい点なんだよ。どれだけ上手くなっても、上には上がいる…というか。だから、常に「もっと…もっと上手くなりたい!」と思い続け、さらにその先を目指すんだ。「もっと」「もっと!」「もっと!!」…と、それが永遠に続いていく感じだな。

RISE TO FALL
RISE TO FALL

ダニー:俺の場合は、おじさんから言われた「曲の90%はソロではなくリズム・ギターだ」という言葉がずっと心に残っている。だから最初は、とにかくリズム・ギターを極めようとしたんだ。毎日学校から帰るとレッスンに行き、メタリカやメガデスのCDに合わせて、とにかく難しい曲に挑戦しようとしていたよ。そういったことを繰り返し、繰り返し続ける中で、自分の思うように右手が使えるようになってきて、それでようやく、ソロの技術的な練習を始めたのさ。

イングヴェイやアレキシのプレイを意識して聴くようになったのもそれからで、当時はただひたすら、耳に入ってくる音を繰り返し練習するのみだったね。言ってみれば、無意識に弾きまくっていたんだ。その後、自分が何をやっているのか理解出来るようになったのは、ギジェルモと一緒にプレイするようになってからだったよ。彼が「これはこういう理由でやっているんだよ」と言ってくれて、それでようやく、自分がやっていることをちゃんと分かってプレイ出来るようになった。

ギジェルモ:俺はギターを始めた時、別に“ここまで上達させたい”なんてことは思うことなく、ただ自分が好きな曲を弾いていただけだったな。でも、ダニーと同じく、成長の道を歩んでいくうちに、数年前には出来なかったことが出来るようになったりして、いつの間にか何か新しいことを修得している自分に気付いたんだ。でも、俺にとって技術は飽くまでツールでしかない。音楽をつくる上で、何を使うか──何が必要か…というだけのことさ。

勿論、あらゆるツールを手に入れ、どんなテクニックもやりコナすことなんてことは不可能だよ。要は、適材適所さ。俺はヘヴィ・メタルやロックンロールから入ったけど、ジャズも学んだし、音楽学校で和音の取り方や譜面の読み方も教わった。ジャズを学んだことは、インプロヴィゼーションなどで今も役立っていて、それは俺の中でひとつのツールになっている。それが必要となれば、ツールとして活かせる…というか。難しいことに挑戦するのも好きだけど、それが絶対的な目的ではないからね。俺自身、より簡単で、何度も何度も繰り返して弾くことが出来る、心地好い音楽を聴く方を選ぶタイプだし。