ジョー・サトリアーニが３ピックアップの新ギター“Gold Boy”を紹介！　ヤング・ギター５月号未掲載コメント

ついにアイバニーズが私の理想とするゴールド・フィニッシュを開発した

ＹＧ：ジョーのYouTubeチャンネルで公開されている『THE ELEPHANTS OF MARS』の楽曲解説動画の中で、ジョーは３ピックアップのJSギターを抱えていますが、あれは新しいモデルですか…？

ジョー・サトリアーニ（以下ＪＳ）：あれは、“Gold Boy”と呼ばれる予定のギターで、“Chrome Boy”のゴールド・ヴァージョンなんだ。1989年に最初のクローム・ギター（“JS2CH”）が作られた時、実は同時にゴールド・ヴァージョンも作るというアイデアがあったんだよ。ところが、当時の技術では私たちが理想とするような美しいゴールドを再現することができなくてね。ゴールドのメタル・フレークを混ぜたフィニッシュやギブソンのレスポール・ゴールドトップ、フェンダーのファイヤー・ミスト・ゴールドみたいなものではなくて、まさに“ピッカピカのゴールド”にしたかったんだけど、当時はまだそれを実現するテクノロジーがなかったんだ。１本だけプロトタイプが作られたんだけど、それは『FLYING IN A BLUE DREAM』（1989年）の「Big Bad Moon」のミュージック・ビデオで使われているよ。撮影中に濡れてしまったために傷んでしまったけど、音はいまだにいいんだ（笑）。

…で、2022年の現代になって、ついにアイバニーズが私の理想とするゴールドを開発したのさ。彼らは“JS1CR”という素晴らしいクローム・ギターを作ってくれたけど、今度はついに私がずっと求め続けていた“Gold Boy”を作ってくれたんだ。ただ、あれはまだプロトタイプなんだけどね。

Joe Satriani – “Sahara” (#1 The Elephants Of Mars Track By Track)

ＹＧ：ピックアップはネックとミドル・ポジションにシングルコイルが、ブリッジにはハムバッカーが搭載されていますが、具体的なモデル名は？

ＪＳ：どれもディマジオ製だけど──今あれに搭載されているのは、ディマジオのスティーヴ・ブルチャーがだいぶ前に送ってくれたカスタム・モデルだと思う。私たちは1989年からずっとあのギターに取り組んで来ていて、その間にあらゆる組み合わせのピックアップ・セットを試してきた。誰か別のアーティストのギターをコピーするようなことはしたくなかったし、ユニークなものを作りたかったから、ひたすら追求を続けてきたんだ。凄く変わったギターで、スイッチング・システムがとてもユニークなんだよ。

ＹＧ：トグル・スイッチが３つ付いているようですが…？

ＪＳ：あれはすべてピックアップのオン／オフ・スイッチなんだ。アイバニーズL.A.カスタム・ショップのみんなといろんなパターンを試して、シングルコイル２つとハムバッカー１つですべてのサウンドを最大限に活かそうということになり、３つのスイッチを使うと決めたんだ。もちろん普通に１つのピックアップ・セレクターで３ウェイや５ウェイにしようというアイデアもあったけど、私はあのスイッチがとても気に入った。それぞれをオン／オフできるから、まったく音を出さないこともできる。あれは本当に素晴らしいと思ったね。１つのピックアップだけを使ってもいいし、もしくは３つや２つのどんな組み合わせにしてもいい。キル・スイッチとしても使えるしね。あと、コントロール・ノブはそれぞれハイ・パス・フィルター・スイッチとブリッジ・ピックアップのコイルタップ・スイッチとして、プッシュ／プル・ポットになっているんだ。

ＹＧ：完成品の正式な発表はいつ頃になりそうでしょうか？

ＪＳ：今はどこのメーカーも同じだと思うけど、私たちはサプライ・チェーンの問題に直面しているんだ。ギター用のパーツが到着するのを待ち続けているんだけど、様々な事情でなかなか届かないのさ。だから今はちょっと様子を見てるところなんだよ。本当に完璧なギターができ上がるまでは、発表したくないからね。今年の夏のNAMMショウまでには間に合えばいいけど…。

ＹＧ：楽しみにしています。元々ヴォーカル・アルバム用に書いていた曲を入れたアルバムの制作も進めていると聞いていますが、現時点で何か話せることはありますか？
──註：元々ジョーは２枚のミニ・アルバム（１枚はヴォーカル入り、１枚はインスト）を予定していたが、パンデミックなどの影響でフルレンスのインスト・アルバムを作ることに変更し、それが『THE ELEPHANTS OF MARS』となった──

ＪＳ：ニュー・アルバムをバンドによる完全なインストゥルメンタル・アルバムにするということに方向転換すると、私は元々あった歌モノのアイデアの大半をネッド・エヴェット（vo, g）に送って、「これでアルバムを作ろう！」と話したんだ。私たちは一緒にツアーもしたし、『Crystal Planet』のストーリーも一緒に書いて、コミック・ブックも出した。でも１つだけやっていなかったのがアルバムだったんで、それを一緒にやろうということになったんだ。そしてそれをアコースティック・サウンドのアルバムにしようということになった。私はアコースティック・ギターで弾き語りしたアイデアをネッドに送って、それに彼が歌詞をつけた。彼は素晴らしいシンガーであり、作詞家だからね。そんな風にアイデアを交換して、もうアルバムのデモは完成しているんだ。ただ、この手の音楽をやるにはバンドのメンバーを集めなければならないし、プロデューサーも必要だけど、」そこはまだどうなるか分からないんだ。

ＹＧ：そのネッドと共同制作している『Crystal Planet』のコミックスは現在第４巻まで刊行されていますが、最終巻となる第５巻はいつ頃発表されそうですか？

ＪＳ：これまたサプライ・チェーンの問題があって、ちょっと時間がかかりそうなんだ。ジョー・サトリアーニ・アクション・フィギュアだって、注文してくれた人たちに発送しようと思っているんだけど、どこかの海の真ん中で足留めを食らっているようで、まだ届けることができていない。まったくクレイジーだよ。ファンを待たせてしまって本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、私たちにはどうすることもできないんだ。

『Crystal Planet』については、コミックスの第５巻が発売されて全巻が出揃ったところで、2022年後半にはグラフィック・ノベルを出そうと思っている。それから、次のシリーズのエピソードに取りかかるよ。７〜８年かけてネッドと一緒に『Crystal Planet』のストーリーを作った後、ネッドは長編小説を書いたんだ。私たちはコミックスの出版社であるインセンディエムのレキシー・レオンにその長編小説や脚本、ビデオのデモを送ったんだけど、レキシーとチームは何ヵ月もかけてまるで『スター・ウォーズ』サーガのように壮大な世界に仕上げてくれたんだ。彼らは実に素晴らしい仕事をしてくれたよ。

ＹＧ：コミックスの日本語版の予定は？

ＪＳ：私たちもそれが実現することを願っているよ。すべては人気次第なんだ。私たちはベストを尽くして、この物語を世界中の人々に知ってもらおうとしている。もちろん、フルレンスの長編映画にしたいし、アニメ・シリーズにもしたいし、あらゆる言語に翻訳されてほしい。やるからには、トップを目指さないとね！

ＹＧ：そちらも楽しみにしています。最後に──年齢の話で大変恐縮ですが、ジョーは現在65歳（今年７月15日で66歳）です。ギターの技術的に、以前とは何か変化を感じるようなことはありますか？

ＪＳ：私には、時間との戦い方を教えてくれる素晴らしい師匠たちがいるんだ。ミック・ジャガー（vo／ザ・ローリング・ストーンズ）がそうだし、サミー・ヘイガー（vo／チキンフット、元ヴァン・ヘイレン）がそうだよ。２人とも私より年上なのに、今でもパワフルで素晴らしい歌を聴かせてくれる。彼らは避けられない自然の変化に対処する術を知っていて、常に健康を維持している。もちろん、然るべき行動を取ってもいるだろう。私は50歳の時、意識的にスノーボードをやめた。年齢のことがあったからね。私はもの凄くラッキーで、それまで骨折したりプレイができなくなるような怪我をしたことは一度もなかったけど、それはラッキー過ぎたんだな（笑）。だから50歳の時に「今やめるべきだ」と思ったんだよ。年齢を重ねると危険に晒されるリスクというのは高まるもので、特に気をつけて行動しなければならない。

私の場合、ギターを弾くための手には特に気を遣っていて、例えばビデオ・ゲームはやらない。指を痛める恐れがあるからね。健康を保つためには、こうした行動に対するちょっとした気遣いが必要になってくるんだ。簡単にできることではあるけど、誰もが耐えられることでもない。ゲームが大好きなギタリストにとって、それを我慢しなければならないのは辛いことだろうからね。でも、音楽を、そして自分の楽器を本当に愛しているのなら、対処するためにできることは何でもやると思うな。私は、ギターを弾くためなら何だってするよ。