ギャラクティック・エンパイアが『マンダロリアン』スタイルで新作発表、CJマシャントニオ&グラント・マクファーソンが語る!

ギャラクティック・エンパイアが『マンダロリアン』スタイルで新作発表、CJマシャントニオ&グラント・マクファーソンが語る!

The Empire Strikes Back! 『スター・ウォーズ』シリーズをモチーフに、“それ”風の本格コスチュームをまとい、サウンドトラック・チューンの数々をメタル・アレンジでカヴァーする帝国軍インスト・バンド:ギャラクティック・エンパイア。しばしの沈黙を破り、メンバー・チェンジを経た彼らが、装いも新たにニュー・アルバムをリリース! 『SPECIAL EDITION』とタイトルされたこの3rd作に伴い、どうやら現ラインナップのルックスには、ドラマ・シリーズ『マンダロリアン』の世界観が採り入れられているようだ。

興味深いのは、ギタリスト3名が総替えとなったにもかかわらず、カイロ・レンならぬカイル・レン(g)に扮していたCJ・マシャントニオが、引き続きバンドに深く関わり続けていること。そこで本誌取材班は、『SPECIAL EDITION』のレコーディングにも全面参加しているCJ、そして、ずっとカヴァー曲のアレンジを一手に引き受けてきたグラント・マクファーランド(ボバ・セット改めブラストビート/dr)の2人に、メンバー交替の経緯や新作のあれこれについて、たっぷり語り尽くしてもらった…!!

個性的なキャラクターで再ブランディングを図ろうと思ってね

YG:前回インタビューを行なった2020年春は、ちょうどダーク・ヴェイダー(g)がクリス(ケリー)からクリントン(タスティン)に交替したタイミングでした。ところが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、同年5〜6月に予定していた“Hellfest”出演を含むライヴ/ツアーは、すべて延期、もしくは中止となってしまったようですね?

CJマシャントニオ:そうなんだよ。あの時期、俺達に限らず、他の多くのアーティストにとっても、ツアーに出るのは困難になってしまってさ…。“Hellfest”出演や、その後のツアーがキャンセルされたのは、本当に残念だったな。いや、ライヴがなくなっただけでなく、活動自体を鈍らせざるを得ない状況は、とても厳しかった。ただ、そんな中だからこそ、その後の戦略を見直す時間が出来て、それについては良かった…と言えるかもしれないな。

YG:当時、元々レッド・ガード役だったクリントンがダーク・ヴェイダーを引き継いだことで、彼に代わってレッド・ガードの任に就いたのは…?

CJ:当時、コロナ禍により、バンドは一時的に活動停止を余儀なくされたんだ。だから、ヴェイダー役を引き継いだクリントンの穴を埋めるべく、新しいレッド・ガード役を探す必要はなくてさ…。

YG:’21年と’22年には何か活動を? ’22年6月に仕切り直しになった“Hellfest”には出演しましたか?

CJ:残念ながら、“Hellfest”には参加出来なかった。コロナ禍で他のツアーやライヴもやれなくなり、その代わりに俺達は、将来のリリース計画やソーシャル・メディアの活用方法、コスチュームの変更、バンドの方向性などについて、改めてじっくり考えることにしたんだ。だからあの時期は、ギャラクティック・エンパイアとしての再ブランディングや新たなアイデア出しの期間となったのさ。

YG:当時のバンド・ラインナップは?

CJ:カイル・レン役の俺、ボバ・セット(dr)役のグラント(マクファーランド)、ベース・コマンダー(b)役のカーソン(スロヴァック)という3人だけだったよ。でも俺達全員、それぞれの音楽プロジェクトやスタジオ仕事などが忙しくなってもきていたんだ。

YG:その後、ニュー・アルバムの準備に取り掛かったのは?

CJ:ニュー・アルバムのための最初のデモ「The Mandalorian」のアレンジを始めたのは、確か’21年8月ぐらいだったんじゃないかな。(メンバーは)みんな忙しかったから、作業はかなりゆっくり進んでいったよ。

YG:その時点で、新作でどの曲をカヴァーするのか、もう決まっていましたか? タイミング的にも、スピン・オフやドラマ・シリーズの曲を取り上げることは必然だったでしょうか?

CJ:どの曲をやるかについては、もうある程度アイデアを持っていたよ。既に『スター・ウォーズ』の人気テーマの多くを採り上げ済みだったから、新作にスピン・オフやドラマ・シリーズの楽曲が多くなるのは当然だ。数ヵ月かけて曲を選んでいったんだけど、結果的に、かなり上手くまとめることが出来たと思う。

YG:新作のタイトル『SPECIAL EDITION』にはどんな意味や意図が?

グラント・マクファーランド:多くの人達から、「どうして新作のタイトルを『EPISODE III』にしなかったんだい?」と訊かれたけど、それじゃありきたり過ぎるし、俺達としてはもっと楽しいモノにしたかったんだ。今回、ニュー・アルバムは『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のオープニング・テーマ「Star Wars And Revenge Of The Sith」で始まるんだけど、これって、俺達の1st(’17年『GALACTIC EMPIRE』)に入っている「Main Theme」よりも、オリジナル(『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』)のメイン・テーマに近く、よりギター的なスタイルで、より華やかに書き換えられ、レコーディングされている。つまり、映画のオリジナル・トリロジー(エピソード4〜6)が(’97年に)スペシャル・エディション版として再編集されたような感じだから、それってニュー・アルバムのタイトルに「うってつけだ」と思ったのさ。

そもそも、メイン・テーマは俺達のアルバムにおいて最高のオープナーだからな。再びこれをカヴァーするに当たり、俺は(『GALACTIC EMPIRE』収録の「Main Theme」よりも)さらに一段階上を目指した。今回の特別なアレンジは、オリジナルのメイン・テーマにより忠実になっていて、その上で、これまでの経験や学びを活かしてもいて、ギターの技量だってもっと際立っていると思うな。

YG:『マンダロリアン』シリーズを模した最新のバンド・ヴィジュアルはどのようにして決めましたか?

グラント:今回のアルバムでは、オリジナルの個性的なキャラクターで再ブランディングを図ろうと思ってね。じゃあ、リード・シングルが「The Mandalorian」になるし、そもそもボバ・セット(ボバ・フェット)ってマンダロリアンのひとりなんだから、『マンダロリアン』シリーズを新しいコスチュームのテーマとするのは「理に適っている」と考えたのさ。そして、新しいキャラクターをデザインする際、メタル・バンドにぴったりな黒、グレー、赤、銀という色使いにし、結果として、すべてのキャラが似たような雰囲気をまとうことになったんだ。

YG:ところが、CJは現在、バンド・ラインナップに含まれていないそうですね? アルバムの制作には関わっていて、レコーディングにも参加したと聞きましたが、どういった経緯でメンバーからは外れたのですか?

CJ:他のプロジェクトや仕事で忙しくしていて、ギャラクティック・エンパイアに専念することが難しくなってきたからだよ。それって、他のメンバーに対してフェアじゃないだろ? それで、今年の初めに苦渋の決断をし、バンドからは脱退することにしたのさ。でも、俺にとってこのバンドは、世界中を見て廻る機会を与えてくれて、想像すらしていなかった方法で音楽キャリアを前進させてくれたんだから、今も出来得る限りの貢献をしているよ。もちろん、バンドの連中とは今でも友達として良い関係を続けているし、もし今後、また一緒にプレイする機会があれば、喜んで参加するよ!

CJマシャントニオ
CJ Masciantonio

YG:ダーク・ヴェイダーことクリントン・タスティンも、同様にバンドから離れたようですね?

CJ:彼も他の音楽プロジェクトで忙しく、写真やビデオの仕事もやっているから、もはやギャラクティック・エンパイアに専念することが出来なくなってしまったのさ。ただ当然ながら、今もバンドとの友好的な関係は続いているよ。

YG:結局、’20年時点からギタリストは総替えとなりましたね? 新しいメンバー3人を簡単に紹介してください。

CJ:まずエリック・ライドは、プログレッシヴ・グルーヴ・メタル、ビバップ、バロック音楽にルーツを持つギタリスト、ソングライター、プロデューサーで、DISEMPATH、SEASON OF MOURNING、SOMETHING STEADY、INSOMNIVOREといったバンドで活動してきた。INSOMNIVOREでは、今年の暮に初のフル・アルバムをリリースする予定だ。続いて ブレット・アンスパッチは、レコーディング・スタジオ:アンスパッチ・オーディオのオーナーで、ギャラクティック・エンパイアのレコーディング、ミックス、マスタリングも手掛けている。また彼は、ULTRAVIOLENT、THE ART OF DECEPTION、MONUMENT OF A MEMORYのメンバーで、今月(’23年4月)の初めにソロEP(ANSPACH名義の『COLOSSUS』)をリリースしたばかりだよ。そしてコッター・チャンプランは、ニューヨークを拠点に、メタルとジャズのシーンで活躍するプレイヤーだ。CONGLACIATION、CHIRAL DECAY、COTTER CHAMPLIN TRIOでも活動していて、即興のセッションも沢山コナしてきているよ。

YG:新しいキャラクターについても、元ネタ含め教えてもらえますでしょうか?

グラント:エリック扮するロード・シク(g)は、分かると思うけどシスの暗黒卿だ。メタルな響きにしたかったから、この名前は自然に出てきたよ。ブレット扮するドゥームリフ(g)は、いかにもリズム・ギター・プレイヤーって感じ。もしかしたら、ドゥーム・メタル・バンドを想起するかもしれない。カーソン扮するOD-66(b)は、オーダー66(ジェダイ抹殺指令)へのオマージュだ。俺が扮するブラストビートは、実際にブラスト・ビートも多用するギャラクティック・エンパイアのドラマーにうってつけの名前だろ? なかなかクールだよね。そして、コッター扮するダース・ブルックス(g)は、カントリー・レジェンドのガース・ブルックスをもじった名前で、かなりシャレが効いていると思うな。

さっきも言ったように、俺達はニュー・アルバムに向けて、新たなキャラクターを創造することにした。新しいことを試すには、キャラクターを再ブランド化した方が良いし、その方が楽しいからね。

Lord Sikh
Lord Sikh
ドゥームリフ
Doomriff
OD-66
OD-66
ダース・ブルックス
Darth Brooks
ブラストビート
Blastbeat

YG:今回もこれまでと同じく、楽曲のアレンジやパート振り分けはグラントが行なったのですか?

CJ:そう、アルバムの大半は彼がアレンジを手掛けているよ。「The Book Of Boba Fett」と「Victory Celebration」は俺も少し手伝ったけどね。グラントは原曲をじっくり聴き込み、ギター、ベース、ドラムといった各パートに振り分け、俺達の好みに合わせて微調整も行ない、それがデモの基礎となったんだ。

YG:レコーディングには、あなたを含めギタリスト全員が参加したのですか? 

CJ:リード・ギターは俺がほとんどを弾き、リズム・ギターの大部分はグラントとカーソンが担当し、グラントは一部リードもプレイしているよ。基本的にリモートですべての作業を行ない、録音のために3人で集まったのは2〜3回だけだったけど、お互い離れていても、素晴らしいチームワークで作業に臨むことが出来たと思う。

カーソンとグラント
Carson (l.) & Grant

YG:今回のレコーディングで使用したギター周りの機材を教えてください。

CJ:俺はシェクターUSAのカスタム・ショップ製“Sunset-24 7 FR(ヴァイオレット・アイス・フィニッシュ)”とシェクター“C-7 FR SLS Elite(ブラック・フェイド・バースト)”を弾いた。俺は本来、6弦ギターを弾く方が好きだし、その方が自然にプレイ出来るんだけど、ギャラクティック・エンパイアの音楽には7弦が必要だからな。

グラント:俺がリズム・ギター・パートで使ったのは、エクストラ・ロング・スケール・ネックのアイバニーズ“RGD61ALET”だ。新しいリズム・ギタリストのドゥームリフは、今後ライヴで7弦を弾き、リード担当のロード・シクとダース・ブルックスは6弦を弾くことになる。

YG:現ギター・チームも、かつてのCJやクリス・ケリー、マイク・ディマリアらと同じく、明確にパート分担が決まっているのですね?

グラント:ああ。3人の分担は以前のラインナップと同じだよ。リード・パートについては、ロード・シクがメインのリード・メロディーを担当し、ダース・ブルックスはセカンド・リード、またはカウンター・メロディーを担当することになる。

YG:『SPECIAL EDITION』の中で、CJが特に気に入っている曲/パートというと?

CJ:「The Bad Batch」のメイン・メロディーが大好きなんだ。とてもキャッチーだし、流れが見事で、ワーミー・ペダルも最高! でも実は、すべての曲にそういったスパイスを加えるようにしているよ。エキサイティングで味わい深い演奏をするために、クールなベンドやテクニックを多用し、音符同士を結び付けるようにしているのさ。元々俺は、’80年代のシュレッド・ギター、より現代的なメタル、そしてブルースを愛聴してきたから、それらの要素を組み合わせることで、とてもクールでユニークなギター・パートを生み出すことが出来るんだ。

YG:「The Mandalorian」のPVでのダンス導入は、なかなかインパクトがありました。

グラント:今回はバンド演奏だけでなく、少し違ったことがやりたかったんだ。あのダンスには、(『アダムス・ファミリー』のスピン・オフ・ドラマ)『ウェンズデイ』や(DCコミックスのキャラクター:ピースメイカーが主役のドラマ・シリーズ)『ピースメイカー』からインスピレーションを得ていてね。メインの(マンダロリアンの)ディン・ジャリンを演じているのは、カイル・ムナというダンサーなんだ。

YG:「The Battle Of Hoth」のオリジナルは組曲ですが、どのパートをピックアップしましたか?

グラント:確かに、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』サントラの20周年リイシューには、14分に及ぶ組曲「The Battle Of Hoth」が収録されているけど、俺が選んだのは、オリジナルのサントラに入っていた「The Battle In The Snow」という3分台の曲で、そこにフォーカスしているんだ。

YG:ところで、『STAR WARS』といえば(“may the force be with you”を“May the 4th be with you”に引っ掛けた)5月4日ですが、『SPECIAL EDITION』の発売日は5月5日だそうですね?

グラント:デジタルとフィジカルのそれぞれのリリース日を設定するに当たって、技術的な問題があったため、デジタル・ストリーミングは5月3日、フィジカル・コピーの発売日は5月5日になってしまったけど、当然ながら、5月4日というのは念頭にあったよ。

YG:5月4日には’19年以来となるライヴを行ない、ストリーミングで配信もされるそうですが、その後のツアー予定はもう決まっていますか?

グラント:8月4〜13日にアメリカの中西部エリアをツアーするんだ。その後も続々とライヴ予定が発表されるから、楽しみにしていてくれ!

YG:CJはTETHRAなどの活動も続けているのですよね?

CJ:ああ。ツアー仕事がかなり控えているよ。あと、ソロの楽曲のためのプリ・プロダクションにも取り組む予定だ。既に沢山のアイデアがあるんだけど、完璧なクオリティになるまでリリースしたいとは思えないからね。もちろん、TETHRAの新作のリリースも近いうちに行なうつもりだし、他にも、時々セッション・ワークやゴーストライター業もやっている。かなり忙しい年になりそうだな!

INFO

GALACTIC EMPIRE - SPECIAL EDITION

『SPECIAL EDITION』 / GALACTIC EMPIRE

CD、アナログ盤、配信 | 輸入盤 | 2023年5月5日発売

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ギャラクティック・エンパイア ツアー情報

ギャラクティック・エンパイア 2023ツアー告知

2023年5月5日 ペンシルベニア州リティッツ(Lititz, PA) Mickey’s Black Box
2023年8月4日 インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis, IN) Black Circle Brewing Co.
2023年8月5日 オハイオ州シンシナティ(Cincinnati, OH) Legends Bar & Venue
2023年8月6日 ケンタッキー州ルイヴィル(Louisville, KY) Headliners Music Hall
2023年8月7日 テネシー州ナッシュヴィル(Nashville, TN) The Basement East
2023年8月9日 ウィスコンシン州マディソン(Madison, WI) The Red Zone Madison
2023年8月10日 ミズーリ州セントルイス(St. Louis, MO) Red Flag
2023年8月11日 カンザス州ローレンス(Lawrence, KS) The Granada
2023年8月12日 イリノイ州ウェスト・シカゴ(West Chicago, IL) The WC Social Club
2023年8月13日 インディアナ州ホバート(Hobart, IN) The Hobart Art Theater

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GalacticEmpire8