生涯メタル道を貫いた、不世出の傑物シンガー:ロニー・ジェイムズ・ディオ。彼が2010年5月16日にこの世を去って、早いものでもう13年もの月日が過ぎ去ってしまった。そんなメタル界のゴッドファーザーに対し、今も深いリスペクトを表するミュージシャンはあとを絶たない。我らがポール・ギルバートもそのひとりだ。先日、彼はその名も『THE DIO ALBUM』をリリース。ロニーの歴代代表曲を採り上げ、隠れた名曲にも着目し、すべてギター・インストとして故人を追悼した。同作についてのインタビューは、既にヤング・ギター本誌の5月号、6月号の2度に亘って掲載済みだが、ここに未発表部分を含むミニ・インタビューを公開!! 本作でポールは、ドラム以外の全パートを自らプレイしているが、ベース・パートに焦点を当て、アルバム制作の裏側を語ってもらった…!
YG:大好評の『THE DIO ALBUM』ですが、ベース・パートのレコーディングについて伺います。録音時、’70年代や’80年代のムードを捉える工夫はしましたか?
ポール・ギルバート(以下PG):アナログ・テープを使ったりはしなかったな。“ProTools”を使ったのは確かだし。でも、ベースはPA直録りだったと思う。アヴァロンのプリアンプとコンプレッサーに通して録ったんだ。それから──アルバム全曲で、どのベースにもフラット・ワウンドの弦を張って弾いたことも言っておかないと。特に理由はなかったんだけど、あまり歪まないから、ちょっと頑張る必要があったよ。
YG:オリジナル曲のベーシストについては、何か発見がありましたか?
PG:(レインボーの)「Man On The Silver Mountain」でベースを弾いているクレイグ・グルーバーのプレイは興味深かったな。まるでディスコ・ミュージックみたいなんだ。そんなプレイをしているなんて、思いもよらなかった!(笑) しかも、それがぴったりハマっていて、素晴らしいグルーヴを生んでいる。彼がどんな人なのかよく知らないけど、今や僕はこの曲のリックを習得したから、自分の曲を弾く時も、「ここにクレイグ・グルーバーのリックが使えるかもしれない」「おおっ、上手くいった!」なんてことをやっているよ。ありがとう、クレイグ!(笑)
YG:ブラック・サバスのギーザー・バトラーはどうでしょう?
PG:これまた驚きの連続だったよ。彼は真ん中の音域で弾くことが多い。でも僕は、てっきり低域で弾いているんだと思っていてさ。ところが、例えば「Heaven And Hell」はKey=E(Em)だけど、(4弦の)ローEの音を弾くことがめったにないんだよ。楽曲全般で真ん中のE音をよく使っていてね。A音を弾く時も同じく、低い方じゃなくて高い方に移動する。彼はベースの低音域ではなく、中間の音域を意識して多用しているようだ。ブラック・サバスは世界一ヘヴィなバンドだから、まさか…という感じだったな。必ずしも低いポジションで弾けばイイというワケではない──そうギーザーから学んだよ。これは大きなサプライズだった。中域の方がよりパワフルで、素晴らしいサウンドにもなっているんだからね!
YG:ディオの初代ベーシスト:ジミー・ベインについては?
PG:「Stand Up And Shout」のベース・ラインは、弾き終えたあとに腕の休息が必要だった(笑)。あの曲を通して弾くのは肉体的に相当なパワーが求められるよ。
YG:ベース・パートについて、他にも特筆すべき曲はありますか?
PG:「Holy Diver」の冒頭にはシンセがたくさん入っているけど、BOSSのディレイ・ペダルをカマしたベースで、ヴォリューム奏法もやっているんだ。ロング・ディレイで2~3回リピートする設定にし、音量をフェード・インさせながら弾くと、“ウォ~ン…ウォ~ン♪”といった感じになる。ちょっとだけコーラスも掛けたかな? 確か、青いペダルだったと思うけど…。