現在発売中のヤング・ギター2015年12月号では、バンド初のミュージック・ビデオ集(DVD/BD)を伴って再発されたザ・ビートルズのベスト・アルバム『THE BEATLES 1』(オリジナルは’00年リリース)にちなみ、全35ページに亘って彼らの特集を掲載している。その中で、「ザ・ビートルズ“現役世代”の貴重な証言」と銘打ち3人のベテラン・ギタリスト──仲井戸麗市、坂崎幸之助(THE ALFEE)、アンディ・ティモンズらのインタビュー・コーナーを設けているが、それらインタビューの未公開パートを本ウェブサイトにて3回に分けてお届けして行こう。第1回目となる今回は、アンディ・ティモンズの未掲載インタビューだ。
ビートルズという存在は毎日太陽が昇るのと同じくらい自然なものだった
「Hey Jude」の思い出
’68年に「Hey Jude」がリリースされた当時、僕は5歳だった。それまでの彼らのシングルはキャピトルから出ていたけど、「Hey Jude」は自身で設立したアップル社から出た初めてのシングルだったから、見てくれがそれまでと違っていたんだよね。子どもにとって、それは大事だよ。しかも、7分以上もあるシングルなんて聴いたこともなかった。あれは革命的だったな。
ビートルズの解散について
レコード店でジョン・レノンのシングル「Instant Karma!(We All Shine On)」(’70年)のジャケットを見ながら兄貴に、「ビートルズはもう存在しないんだ」と言われたんだ。正直僕には理解できなかったね。ビートルズという存在は、毎日太陽が昇るのと同じくらい自然なものだったんだから。当時僕は小学校1年生でデイヴ・マーティンというビートルズ仲間がいたんだけど、彼とは毎週土曜日にどちらかの家に行って、互いのレコードを交換し合っていたんだ。それくらい情熱を持っていたんだよ。
ビートルズが素晴らしい楽曲を生み出した理由とは?
なぜビートルズのメンバーはみんな、あれほど素晴らしいソングライターだったのか? デビュー前の彼らはリヴァプールのキャバーン・クラブやハンブルクのスター・クラブに出演しては、1日10時間とバカみたいに長くプレイしないといけなかったから、チャック・ベリーやバディ・ホリーなどの曲をたくさん覚えざるを得なかった。で、自分達のオリジナルを書く時になって、その経験が役に立ったんだよ。本で学んだ知識ではなく、そうした楽曲のエッセンスを自らの耳で学んで吸収してしまったというわけさ。それって、譜面を読んだりビデオを観て学んだりするのとは全く違う体験だよ。素晴らしいミュージシャン、そしてソングライターというのは自分が聴いた音楽を自分のものにできる人物のことだと思うんだ。
ギター・レスの曲が増えて行った中期〜後期のビートルズの音楽的変遷に関して
「Love Me Do」は’62年に書かれてレコーディングされた。シンプルなコード進行だけど、素敵な名曲だよね。その4年後の’66年、ジョン・レノンはスペインで「Strawberry Fields Forever」(’67年『MAGICAL MYSTERY TOUR』収録)を書いた。たった4年後にだよ! もの凄い成長だ。その4年の間に、彼らはいろんな本を読んで、様々なアートを貪欲に取り込んでいたみたいだ。とてもオープンで賢い人達だったからね。だから、彼らの音楽は当時のカルチャーも反映していたんだよ。また’60年代はとてもアーティスティックであると同時に、不穏な時代でもあった。ベトナム戦争など大きな争いがあったし、公民権運動も行なわれていた。彼らの成長の背景には、こうした出来事の影響もかなりあったと思うんだ。
あと他の音楽からの影響も重要な要素だよね。「Tomorrow Never Knows」(’66年『REVOLVER』収録)は、ビートルズがインド音楽に出会わなかったら生まれなかっただろう。これはジョン・レノンが1コードで作った曲で、素敵なドローンにメロディーが乗っている。それから、後期になるにつれてストリングスを加えたアレンジも目立って来る。僕は特にギター中心の音楽に惹かれていたけど、だからと言って「Eleanor Rigby」(『REVOLVER』収録)みたいな曲でも何の問題もなかった。「She’s Leaving Home」(’67年『SGT.PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND』収録)も本当に美しい曲だ。今でも聴くと涙が出て来るよ。
また、“ホワイト・アルバム”(’68年『THE BEATLES』)の「Revolution 9」もギターが入っていないけど凄くかっこ良い。「人の言うことなんかクソ食らえ! 僕達はやりたいことをやるんだ!」というあの冒険心。そして、彼らにはそれができた。それくらい強かったし、自分たちの能力に対して自信があったんだ。僕は、ビートルズのすべてが好きだったんだよ。