僕はとにかく考え過ぎないんだ
YG:「Ghost In The Moon」「Alchemy」にはインプロヴァイズとは思えないほどドラマティックなソロ・パートがありますね。
SP:しばらく聴いていないんで、どんなだったっかな…でも、「Alchemy」は完全にインプロヴァイズしたものだ。インプロヴァイズと言っても、曲を聴いて1テイクで録ったということではないよ。2〜3通り弾いてみることもあるんだ。前半が良かったな…と思ったら、後半をパンチ・インする。ただ弾いただけのものがそのままOKテイクになることもあるけど、かなり稀なことだな。同じテンションがキープ出来ない場合は他のフレーズを考えたりと、少し苦労することもあるよ。「Ghost In The Moon」のエンディング・パートはデモ音源にトビーが入れていた歌をなぞっていて、それ以外は最初からほぼ最後まで、全部インプロヴァイズだよ。それを最初から気に入ってくれていたから、議論の余地もなかった(笑)。
YG:「Requiem For A Dream」のメイン・メロディーは、これぞまさしくメロディック・メタルといった趣ですね?
SP:加速していく感じを出したいと思ったんだ。このパートを2〜3回弾いて、あれこれ試しているうちに出来上がった。トビーが気に入ったので、そのまま採用されたよ。
YG:「Book Of Shallows」はグルーヴィな低音のリフが曲の前半を占めており、後半はスラッシュ・メタルのように過激に変化します。今回のアルバムでは最もヘヴィなパートだと思いますが、こういったダークなギター・サウンドを作るコツとは?
SP:特にコツなどはないと思うな。今回のアルバムは全編通して同じサウンドを使っていて、弾き方を変えただけだよ。おそらく「Book Of Shallows」ではよりメタルらしく弾いたのかもしれないね。君の言う通り、このアルバムで一番ヘヴィなのはここのパートだよ。
YG:「The Piper At The Gates Of Dawn」のギター・ソロは非常にエピカルですね。
SP:うーん、部分的にインプロヴァイズしたかな…。デモからそのまま持ってきた所も少しある。それを元にプレイして、もっと装飾を加えたものに変えていったんだ。だけどやっぱりインプロヴァイズだよ。僕はとにかく、考え過ぎないんだ(笑)。頭に浮かんだものをやるだけ。バッキングのパートを弾く時も、曲のアレンジをする時も、ドラムやキーボードのフレーズを考える時も、頭に思い浮かんだことをやって、どのアイデアをキープするかすぐに決めるんだ。
YG:マイケル・センベロの「Maniac」をカヴァーした理由は?
SP:これはトビーの発案で、僕は最初やるべきなのか確信が持てなかった。でも、「じゃあやってみようか」となって、僕なりに作ったヴァージョンを提示したら、彼が気に入ってくれた。実は僕も、結構クールに仕上がったなと思っていたんだ。ここにエリック・マーティンを呼んでトビーとデュエットしてもらったことで、彩りが増えて良くなったよ。実験的にトビーとエリックそれぞれに全パートを歌ってもらったけど、デュエットの方が断然カラフルになった。このギター・ソロも弾いていて楽しかったな。原曲のフレーズを引き継いで使ったところもあるけど、それにもっと装飾を足して、自分なりのものも入れていった。原曲は青写真として使った感じだね。
YG:今回のアルバムのレコーディングで使った機材を教えて下さい。
SP:ギターはデューセンバーグ製、僕の“Starplayer”モデルで、ブラック・レザー・スタイル(ボディー・トップが革張りになっている)なんだ。これは僕のお気に入りで、ハムバッカーが搭載されていて音が太いんだけど、ちょっとトゥワンギーでフェンダーのギターっぽいところもある。イントネーションも良いし、とてもクールだね。アルバムはほぼこのギターで録ってるけど、ソロの幾つかはまた別の“Starplayer Special”を使ったよ。比較的手頃な価格のモデルだけど、より歌うようなサウンドが得られる。レスポールに近いかもしれないね。あと、ソロかメロディーで1〜2回…あれは「Lavender」だったかな? 古いゴールドトップのギブソン・レスポールを弾いたところもあったし、ダブリングとかをするために、フェンダー・ストラトキャスターを1〜2本使ったはずだ。クリーン・サウンド用のテレキャスターもあったかな。クリーンは普段、デューセンバーグでやっているんだけど。
アンプはケンパーしか使っていなくて、エフェクト・ペダルはワウ以外に何もない。たまにプラグイン・エフェクトは使ったけどね。デジデザインの“Eleven”だよ。もう10年ぐらい前の製品になるけど、顔面直撃みたいなサウンドがあって、凄く気に入ってるからたまに使うんだ。
ツアーではエレクトロ・ハーモニックスの“Small Stone”や“Octave Multiplexer”も持って行って、音に色付けをしようかと考えていたけど、ごちゃごちゃとした音作りはもうやらないつもりだよ。最近じゃ1台のボックスの中で事足りるようになったからね。例えばライヴでは、(Line 6)“Helix”に乗り換えたんだ。今、小型の“Helix Stomp”のサウンドをいじっているところなんだけど、ツアーに出る際に僕が必要とするものをすべて持っている。ツアー用のセットアップを簡単に作って、バックパックに入れておけるんだから、これとワウがあれば大丈夫。このイージーさがいいんだよ(笑)。
YG:5月に日本公演が行なわれることが発表されましたが、どんな内容になりそうでしょうか?
SP:基本はこれまでと変わらず、ゲスト・シンガーを迎えたセットになる。バック・ヴォーカルも付けてね。バンドの編成は今までと同じだ。お楽しみの要素に関して、今はまだ話せないけど(笑)。でも、みんなに納得のいく良い音楽と良い演奏を体験してもらえるはずだし、いつものことではあるけど、僕達がこのツアーを楽しんでいるということを知ってもらいたい。
YG:アヴァンタジアのスタジオ・アルバムはこれで8枚になりましたから、セットリストを作るのがどんどん大変になっているのでは? ファンの好きな曲を簡単に外すことは出来ないですよね。
SP:これは間違いなく大きな問題だし、毎回難易度が上がっていっているね。現時点で、僕達の大好きな曲を幾つか外している。3時間のショウをやっても、まだ足りないからね。でも、しょうがないじゃないか。全員を満足させることは出来ないんだから。例えばどのシンガーがツアーに出られるか、やる曲に合ったシンガーが参加出来るか、全員の出番を平等に出来るか、色々気を遣わないといけない。それに新曲もやりたい。すると昔の曲は外すことになる。アヴァンタジアには長い曲も結構多いから、そういうものは古い曲を外して新曲に入れ替えたりするしかない。あと、これまで一度もやってこなかった昔の曲を3曲やろうかとも考えているんだよ。ちょっと今までとは違いを出したいからさ。大変だけど、良い妥協ポイントを見つけたはずだから、きっと上手くいくよ(笑)。
YG:現時点では、日本公演に参加する全ミュージシャンの名前が発表されていませんが…?
SP:そうだなあ…これは、我慢強く待ってもらうしかないんじゃないかな(笑)。でも、きっととてもクールなショウになるし、楽しんでもらえると思うよ。インタビューをしてくれてどうもありがとう。日本に行った時に会えるのが楽しみだよ。