妖精帝國:新ギター・コンビと終身独裁官ゆいが語る最新作『The age of villains』

妖精帝國:新ギター・コンビと終身独裁官ゆいが語る最新作『The age of villains』

紫煉曹長(g)の脱退や橘 尭葉大尉(g)のライヴ出演引退(制作には引き続き参加)などでその動向が注視されていた妖精帝國に、厳正なるオーディションを経て2019年にXiVa(サイバ)伍長とryöga(リョウガ)伍長という新ギタリストが入隊。一時は暗礁に乗り上げたニュー・アルバムの制作も新体制が固まったことにより再び開始され、去る3月25日に『The age of villains』と銘打たれ遂にリリースされたのだ。

その中身は妖精帝國らしい荘厳なゴシック・テイスト、技巧的なメタル・ワールドは健在ながらも、スタイルの異なる新メンバー2名による鮮烈なエッセンスが注ぎ込まれ、まさに再生の狼煙を上げる入魂の作品となっている。フル・アルバムとしては実に4年半ぶりとなる今作について、XiVa伍長とryöga伍長の新ギター・コンビとフロントを務める紅一点の終身独裁官ゆい(vo)の3人に語ってもらった。以下はヤング・ギター2020年5月号に掲載されたインタビューの冒頭部分だ。

入隊前に、観客席から観たことが…(XiVa伍長)

YG:近年の妖精帝國は激動で心が揺れることもあったと思いますが、『The age of villains』はまさに完全復活を印象づける作品となりましたね。

終身独裁官ゆい(以下ゆい):確かに前任のギタリストが脱退して新しいメンバーが入り、そこでいろいろ比べられることもあるだろうし、新しい妖精帝國をどう見せていくべきかというところで不安に思った時もあった。しかし今回アルバムが完成してみて、もうこのメンバーでしかありえないというぐらい最高のものができたのではないかと思えている。

YG:XiVaさんとryögaさんは、歴史あるバンドに加入する部分でプレッシャーはありませんでしたか?

XiVa伍長(以下XiVa):うーん、そうですねえ…。

ゆい:あまりなさそうだな。

ryöga伍長(以下ryöga):僕は結構感じますけどね。

YG:(笑)ギタリストお2人のルーツはどういったものだったのでしょう?

ryöga:僕は中学1年生の頃にギターを始めて、元々はそんなに激しいものやテクニカルなものを弾いていなかったんですけど、それこそヤング・ギターの付録DVDでポール・ギルバートが「I Like Rock」でギターを100本重ねて録るって映像を観て、「何だこれは!?」と。そこから割とハードな音楽に傾倒するようになって、ポールの他にヌーノ・ベッテンコートのようなギター・ヒーローにも興味を持ち、その後MI JAPAN大阪校に入学したんです。そこでは大村(孝佳)さんやケリー(サイモン)さんにお世話になって、卒業後は僕もそこで講師をやらせていただいてました。あと物凄く影響を受けてはっきりと覚えているのが、2004年2月号のヤング・ギターですね。ガス G.とアレキシ・ライホが表紙を飾っていて、その時の付録DVDがとにかく強烈だったんですよ。SYUさん、大村さん、横関 敦さん、太田カツさん、あとはガス G.も登場して、「速弾きしないと殺されるんじゃないか?」と思ってしまうような面々で(笑)。それを観た時に、「やらないと!」と覚醒しましたね。僕の人生はヤング・ギターによって大きく変わりましたよ。

XiVa:僕は当初アコースティック・ギターから始めて、エレクトリックに持ち替えたのは高校生になってからですね。それまではAqua Timezとかを聴いていたような少年でしたけど、先輩にDIR EN GREYを勧められたのをきっかけに、よりハードなロックに興味を持ちました。その後ESPの専門学校に入学したら周囲にラウド・キッズが多くて、それでメタルコアやスクリーモのような音楽をたくさん聴くようになったんです。実は過去に妖精帝國がとあるイベントに出演していて、観客席から観たことがあるんですよ。

ゆい:ん、そうなのか? それは初耳だな。

XiVa:卒業後は作曲家になろうと思っていて、作曲に専念してた時期が2〜3年ぐらいありましたね。あとプレイに影響は全然表れていませんが、スティーヴ・ヴァイが大好きなんです。バンド単位だと、初期のブリング・ミー・ザ・ホライズンやホワイトチャペル、MAKE THEM SUFFERといったデスコア・バンドが特に好きですね。

バンドの個性を残しつつ自分の得意なものを乗せていく(ryöga伍長)

YG:ギタリスト両名の初参加作品となる『The age of villains』がリリースされましたが、作曲するにあたり“妖精帝國らしさ”と“自分らしさ”のバランスはどのように考えてました?

XiVa:僕は最近のメタルコアやデスコア系が好きなので、そういうエッセンスを入れていきたいなって思っていたんです。でも今までの妖精帝國の世界観から乖離しないように意識して、元々好きだったストリングスやピアノといった楽器を絡めて作りましたね。

ryöga:僕が作る曲のタイプはまた違うんですけど、考え方としては今の話と凄く似ていて。やっぱり妖精帝國が持つ音の豪華さやヴォーカルの個性的なメロディーなどは残しつつ、自分の得意なものをそこに乗せていくという曲作りをしました。あとはイメージですね。曲を聴いてどういう景色が思い浮かぶのかを重要視して作っていきました。それと(過去の妖精帝國と比べて)弾き負けないようにしようと…結構、音数を詰め込んでいる曲も多いですね。毎月ヤング・ギターを教科書にして練習してたタイプですから(笑)。

ゆい:それが教科書側になるとは実に感慨深いな。

YG:まさに。制作を通じて、各々どういうタイプのギタリストなのかがより浮き彫りになったのでは?

ゆい:そうだな。2人は真反対のタイプと言えるのではないかな。今回のアルバム作りで感じたのは、ryöga伍長は内に秘めたる感情を理論的にぶつけて表現していくタイプで、XiVa伍長はありのまま感情を解放するような。私にとってはそういうイメージで、カッチリしたタイプと結構自由なタイプ…なんだけれども、何でそれがここまで高次元で融合してるのだろう?と、今回のアルバム制作で常に感じていたな。

YG:ryögaさんから見たXiVaさん像は?

ryöga:本当にすごいセンスを持ってる人だと思っていますね。純粋に上手いですし、モダンなことをやらせたら強い部分もあるので、安心して委ねることができます。例えば伝統的な要素を継承した、XiVa伍長が持っていない部分は僕がまかなえばいいし、そこにXiVa伍長から受けた刺激も加えられれば妖精帝國として良いものができ上がるだろうなと。XiVa伍長のことは凄く尊敬してますよ。

XiVa:(笑)確かに真反対なタイプだなとは感じていて、僕は結構勢いでババッとソロを弾きますけど、ryöga伍長は良い意味でカチッとフレーズをカッコ良く弾いている印象があるんですよね。加えてリズム感も良くて、音も素晴らしいし、さらにピッキングのセンスも多彩なので、自分も練習しようと励みになりますよね。