ジョージ・リンチ 本誌2021年7月号インタビュー後編:ジ・エンド・マシーン『PHASE 2』

ジョージ・リンチ 本誌2021年7月号インタビュー後編:ジ・エンド・マシーン『PHASE 2』

ジョージ・リンチ(g)、ジェフ・ピルソン(b)、ミック・ブラウン(dr)というドッケン黄金期のメンバー3人に、ジョージやミックとはリンチ・モブで活動を共にしたロバート・メイソン(vo)がドッキング。このジ・エンド・マシーンが’19年に発表したセルフ・タイトルのデビュー作は、’80年代テイストと実験性がミックスされたサウンドが好評となった。そして今年春、ドラマーがミックの実弟であるスティーヴに交替した2nd作『PHASE 2』がリリース。さらに明快なメロディック・ロックに焦点が絞られ、ジョージのギター・プレイもいつも通りに自然体でありながら、前作よりも圧倒的にキャッチーで切れ味鋭いフレーズが増加している。

そういった作風になった経緯については、ヤング・ギター7月号のインタビュー前編で語られているが、ジョージの言葉が到底そこに収まり切らない量だったため、ここで続編をお届けすることにしよう。もちろん機材オタクであるジョージだけに、使用機材に関する話題もしっかり語ってくれている。

ジューダス・プリーストはソングライターとしての俺にとってとても大きい存在

YG:イントロ的な「The Rising」から「Blood And Money」に行くというアルバム冒頭の展開や、「Blood And Money」のギター・ソロの終わり方は、ドッケンの「Tooth And Nail」を彷彿させると感じたファンも多いようですね?

ジョージ・リンチ(以下GL):そりゃあそうさ。間違いなく、「Tooth And Nail」のパクりだよ(笑)。意図的にやった。この曲のソロは複数のパートから成り立っているものでね。ソロを構築するタイプと言われていた昔の俺…40年前にやっていたようなことを、もう1回コピーしたわけ。ネオ・クラシカルな要素も使ったしね。「Tooth And Nail」をテンプレートとしてさ(笑)。どんな大物バンドだろうと、自身が成功した頃のことを真似したいと思う衝動にかられなかった人なんていないだろう…例外もあるだろうけど。

YG:「Plastic Heroes」のイントロのコード・アルペジオや、コーラス・パートなども、かつてのドッケン的では?

GL:間違いなくドッケン方式だ。ヴォーカルはすべてジェフ(ピルソン)が入れた。ドッケンというより、昔ながらのジェフのやり方のおかげでこういう曲になったと言うべきかな。これはドッケン・サウンドの大きな部分を締めているところだね。あのバンドのビッグなコーラスやメロディーを作ったのは、ジェフの功績だよ。メロディーがとても簡潔にまとまっていて、延々とギターを弾いたりせず、曲にしっかり合わせてある。一緒に歌えそうだよ。ジェフはとても謙虚なやつで、この曲を気に入ってないらしいけど(笑)。

さっきの「Blood And Money」についてだけど、正直に言うと「Tooth And Nail」ほど上手くできたとは思わない。コピーっていうのは結局、オリジナルほど良いものにはならない。クールだけど、ちょっと長すぎた。ソロのアレンジのせいかな。

YG:でも、ファンが喜んでいるので問題ないのでは? ジョージがこういう構築タイプのソロを弾くのも最近は稀なことになりましたし。 

GL:ああ。そこは俺としても、昔とは違うものをやっていかなければという思いがあるしね。昔からずっと聴いているお気に入りの音楽だって、しばらく聴いていると、古臭いものに感じてくるんだよ。もちろん素晴らしいけど、何千回も聴いていれば「わかったわかった」という気になってしまう。その曲の新しいヴァージョンを待ち望むぐらいになるんだ。で、「Blood And Money」もそういう考えで「この曲(「Tooth And Nail」)はアップデートしても問題ないんじゃないか」っていうノリだったわけ。いや、アップデートってほどのことはない。みんなが愛する曲の、別ヴァージョンだよ。

YG:「We Walk Alone」はヴォーカルが非常にメロディックで、ジョージのソロがそのドラマ性を引き立てていますね。個人的には昔のジューダス・プリーストのバラードのようなテイストも感じました。

GL:そうなんだよな。ジューダス・プリーストからの影響はすべての曲に表れていると思う。’80年代のドッケン時代から、今に至るまでずっとだ。プリーストはソングライターとしての俺にとってとても大きい存在であることに、最近気づいたよ。俺の娘の1人がプリーストの現ギタリスト(リッチー・フォークナー)と結婚したわけだけど…(笑)、俺も彼と長い時間を一緒に過ごしている。たまに、制作中の曲をリッチーに送って聴かせる時、「これ結構ジューダス・プリーストっぽいんだよな」と言っては笑っているんだけど、ドッケンや他の曲を分析してみると、実は彼らからの影響が至るところに散りばめられていることに気づいたよ。君が指摘した1曲だけじゃなく、アルバム全体を通してね。今朝もこのインタビューの準備のためにアルバムを聴いてみたけど、ここはプリーストに影響されていると分かる箇所は多い。もちろん他のバンドの影響も必ずといっていいほど入っているよ。AC/DCもレッド・ツェッペリンも。ロックンロールという構造の中にいるなら、彼らの影響から逃れることはできない。ジミ・ヘンドリックスだって…まあ、ビッグ・ネームの要素は大体入ってるよ(笑)。

YG:「Prison Or Paradise」のソロは、まずエモーショナルなフレーズで始まります。

GL:(音源を聴いて)最初はゆっくりとした(デヴィッド)ギルモア風だな。…うん、流れがいい。これもやはり、スピード感があったりメロディーがあったりと、いろいろミックスされているね。みんなが聴きたいものが入っている。

YG:スピーディーに上昇していく部分のスリル感は素晴らしいですね。

GL:ありがとう。でも簡単なフレーズだよ。

YG:そうですかね?(笑)

GL:今の子の基準としては、だよ。俺みたいなオールドスクール世代にとってはファストなフレーズだ。でも新しい連中にとっては、このぐらい速くもなんともない。俺が子供の時は、誰もが速く弾こうとやっきになっていたし、俺の中には今でもそういう意識が残っている。

YG:「Scars」のオブリガートに出て来る、凄く高い音はどうやって出しているのでしょうか? イメージ的にはスティーヴ・ハウがスティール・ギターで出しているような高音だったのですが。

GL: ESP“Skulls And Snakes”に内蔵されているサスティナーだよ。トグル・スイッチで低音か高音のどちらかに効くよう選べて、耳を突き刺すような高音のサステインが持続するセッティングで弾くことが可能だ。確かそこでは、スライドも組み合わせたはず。これと同じようなことを『HEAVY HITTERS』(’20年/ジェフと共同制作したカヴァー作品)でもやっているんだよ。あのアルバムを作ったすぐ後に『PHASE 2』に取り掛かったんでね。ところでこれって、エレクトリック・ヴァージョンの話だよね? アコースティック・ヴァージョン(註:日本盤ボーナス・トラック)もあるけど。

YG:もちろんエレクトリックの方です。

GL:この曲をアコースティックでやったのって、言ってみれば“測り”みたいなものなんだ。その曲がアコースティック・ギターとヴォーカルだけで成り立つかどうか。それによって良い曲かそうでないかがわかるんだよ。キャンプファイアーでも囲んで、アコースティック・ギターを持って1人で歌えるかどうか、ってこと。

YG:「Destiny」は、ベースとユニゾンになったメイン・リフのグルーヴが強力な曲ですね。

GL:これはミュートロン“Octave Divider”を使った曲だったな。KXMでも、スウィート&リンチやリンチ・モブでも、常にこのペダルを使ってきた。原音に1オクターヴ低い音を加えてこリフを弾くと、モンスターみたいに邪悪なサウンドになる(笑)。この曲は大きなフックもあるし、素晴らしい曲だと気に入っているよ。

YG:この曲のソロはタッピングしながら下降していくパートが面白いですよね。

GL:そうだな、メロディックでスローに始まり、構築していく感じだね。(音源を聴き返して)ああ、ここの下降していく部分は面白いな。音楽的には正しくないというか。実はこのパートを弾いた時、ジェフに「クールだね! 適切ではないけど」と言われたんだ。理論的な根拠が何もなくランダムに弾いているだけだとね。ジェフは音楽教育を受けたミュージシャンで、理論を熟知している。俺とは真逆にね。しかし言っていることは分かるよ。下降していく音の中には開放弦の音が混ざっていて、それが曲のKeyと合ってないんだ。でも、俺はそういうルールを知らない。ルールの破り方も知らないんだ。

YG:言うなればアヴァンギャルドということでしょうね。

GL:まさにそうだな! そんな俺の独学ソロを聴いて「あなたは天才だ!」とか言う人がいるんだよ。ある時、音楽学校だかクリニックだかに招かれたことがあってね。俺を呼んだのは明らかに理論を学んだ人たちだ。ある人は「あの曲でやっていたソロはとてもクレイジーです。凄い天才ですね! この音からこの音へ行くんですよ。モードを次々と変えて…スケールはこうなっていて、インターヴァルが…」って、俺には分からないことばかり言う。「これを意図的にやったんでしょう? それはクレイジーです。天才的ですよ」ってさ。なんだか面白くなってきて、まるで意図的にやったかのように振る舞ったよ(笑)。しかもそれを細かく分析して、コピーした人までいる。俺は何も計画してないのに! 

YG:理論的に100%正しいものだけが正解というわけではないですからね。ジョージの場合は感性に従って弾いたものが、耳を惹くソロになっているわけで。

GL:そう。エモーショナルに弾くことが一番でなければ、毎回同じフレーズを書いたり弾いたりするハメになるからね。

George Lynch

YG:今回のレコーディングに使った機材はどのようなものでしたか?

GL:バッキング用のアンプは2台で、片方は’88年製のソルダーノ“SLO-100”だったはず。リンチ・モブの『WICKED SENSATION』(’90年)で使った2つのソルダーノのうちのどちらかだ。もう片方はプレキシの100Wマーシャル──’68年製だ。シリアル・ナンバーで言うとエディ・ヴァン・ヘイレンが所有したモデルから2番しか違わないという、聖杯的なモデルだよ。改造はなしで完全にストックのまま。で、片側(のチャンネル)でバッキングを弾き、さらにもう1台のアンプを使ってダブリングした。そうすれば巨大なサウンドを得られる。でもそれは、ゲインを高くすることが目的じゃない。これで十分と思えるゲインに一旦合わせた後、若干歪み量を落として弾くんだ。こうして2つのトラックを合わせると、広大かつ、歪みすぎない音が得られる。ディストーションを強くすることばかり意識していると、実際には音が小さくなってしまうよ。

時には、ジェフと俺で「ここのコーラス部分には、ロータリー・スピーカーを使ったレズリー・エフェクトでオーヴァーダブするといい」…なんていうこともあった。そういう時はコンボ・アンプの出番──小型の古いVOX“AC30”を使ったよ。さらにクリーンな音でオーヴァーダブを入れたい時や、煌めくようなコーラス・サウンドを使いたい場合は、’80年代のドッケン時代に使っていたローランドの“Jazz Chorus”を引っ張り出してきた。ステレオ仕様で、きわめてクリーンだ。あと、フェンダーの“Bassman”はエッジーなサウンドが得られる。ブラック・フェイスの’65年製だよ。

YG:ギターはいかがですか?

GL:’80年代にESPに作ってもらった “Lynch Paul”と呼ばれるギターだな。分厚い感じの音が出せる。これを他の何本かのESPモデルと一緒に使ったんだ。あまり歪んでいない音はTLシェイプ、ミッド・レンジを埋めるのは“Kamikaze”と“GL-56”、サスティナーが必要なところでは“Skulls & Snakes”、そして“Tiger”と、これが主要な5本だね。ソロでは“Kamikaze”をかなり使った。

YG:アコースティック・ギターは?

GL:昔のギブソン“J-200”を持っていて、これを弾くのが好きなんだ。それと、まるで1800年代に作られたようなルックスのモデルがある。ワッシュバーンだ。低域がたっぷりあって、焦点の絞られた音がする。「Scars」の(アコースティック・ヴァージョン)のようにアコ1本で成り立たせたい曲には“J-200”が必要だ。より空間があるし、豊かな低音が出せるから。他の楽器やギターにかぶせて使いたい、ちょっと装飾的に入れたい…という場合はワッシュバーンを使う。

YG:エフェクターやペダルの方はいかがですか?

GL:最近は2つのオーヴァードライヴの間を行き来しているね。1つは昔から持っている、アイバニーズの“TS808”。これにかなうものはない。このオーヴァードライヴを特にソロで使う時、もう半分はクロンの“Centaur”をかけている。それから、マーシャルの前段には常に昔の(マエストロ)“Echoplex”をプリアンプ・セクションとしてつないでいる。ドッケンの『BREAKING THE CHAINS』(’81年)の頃からそうしているよ。あとのエフェクトは特定のパートで必要とされる時に使うことが多かった。ADA“Flanger”は「Shine Your Light」のメイン・リフでだったかな? さっき言ったように「Destiny」ではミュートロンの“Octave Divider”。それに場所は特定できないけど、ヒュース&ケトナーのロータリー・スピーカー・エフェクトや、古い(フルトーンの)“Deja’ Vibe”、長年使い続けてきたMXR“Phase 90”も。実にあたたかみのあるスウィープ・トーンが得られるし、音像を滑らかにしてくれる。そしてラジアルのコーラス・ペダルも。

YG:ところで前回、リンチ・モブというバンド名はもう終わりにするというお話がありましたが…。

GL:そう、代わりに新しいバンドを作ったんだ。名前は“George Lynch’s Electric Freedom”。ジェーンズ・アディクションのステファン・パーキンスがドラム、ホワイトスネイクのマイケル・デヴィン…彼は以前一緒にやったことがあって、彼がベースとヴォーカルを務めてくれる。パワー・トリオだ。もうリンチ・モブの曲は以前ほどたくさんやらない予定で、35〜40年の間に俺が関わって来たバンドやプロジェクトのレパートリーから選んでいく。カヴァーだっていいし、ジャムってもいいし、KXMの曲をやったっていい(笑)。リンチ・モブじゃなく、ジョージ・リンチだからね。

YG:それはエキサイティングですね。それと7月にはインストの新作ソロ『SEAMLESS』がリリースされますが、ちらっと聴かせてもらったところ、ジミ・ヘンドリックス的なグルーヴが全体に満ちつつも、モダンなアレンジも行き渡ったアルバムですね。

GL:ヘンドリックスというより、すべてがちょっとずつ入っていると言いたいかな。どの曲も全く異なる星から来ている(笑)。ジ・エンド・マシーンみたいに、全体が一貫しているような内容ではないんだ。以前に作ったアルバムは、11〜12曲入っていたものがどれも速弾きで、テンポやKeyぐらいしか違いがなかった(笑)。繰り返し聴いていくうちに、以前聴き逃していたものが聴こえてくることだってある。俺はそういう風にして聴いて楽しめるアルバムが好きなんだ。

THE END MACHINE
THE END MACHINE[L. to R.]Steve Brown(dr)、Robert Mason(vo)、Jeff Pilson(b)、George Lynch(g)

INFO

THE END MACHINE - PHASE 2

『PHASE 2』/THE END MACHINE
2021年4月9日発表 マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン

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