ジョージ・リンチ/レスリー・ウェスト『LEGACY』:50年間の影響が生んだレスリー楽曲のジョージ的解釈

ジョージ・リンチ/レスリー・ウェスト『LEGACY』:50年間の影響が生んだレスリー楽曲のジョージ的解釈

3月23日に発売される故レスリー・ウェストへのトリビュート・アルバム『LEGACY : A TRIBUTE TO LESLIE WEST』に参加した強力なギタリスト勢の中からYGが特に注目した4人が、レスリーに対する想いを語ってくれた。ヤング・ギター4月号のレスリー特集に掲載しきれなかったコメントをウェブで全文公開!

INFO

V.A. - LEGACY : A TRIBUTE TO LESLIE WEST

LEGACY : A TRIBUTE TO LESLIE WEST / V.A.

CD|ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
2022年3月23日 日本先行発売

ジョージ・リンチ参加曲
「Never In My Life」

アルバム詳細

レスリーのシステムを再現したくて機材を集めているんだ

YG:レスリー・ウェストのことを知ったのはいつ頃のことでしたか?

ジョージ・リンチ(以下GL):高校時代、TUNGUS GRUMPというバンドをやっていた頃のことだね。メンバー全員がレスリーから大きな影響を受けていたから、それで知ったんだ。当時はブラック・サバスが『PARANOID』(’70年)を出したばかりで、マウンテンのアルバム(『CLIMBING!』)も出たばかり。フリートウッド・マックのピーター・グリーン、ジョニー・ウィンター、レッド・ツェッペリンなどがいて、どれもギターが主体の音楽。その中でも俺はマウンテンから強く影響されていた。その理由はレスリーの音とプレイだよ。まだ若かった俺の耳が強く惹きつけられた。

YG:以前、ジョージのカヴァー・アルバム『FURIOUS GEORGE』(’04年)で、マウンテンの「Blood Of The Sun」を取り上げたことがありましたよね? 昔からのファンだったのですね。

GL:その通り。マウンテンはこの50年間ずっと聴いている。これまでにもいろんなバンドでカヴァーしてきたよ。TUNGUS GRUMPとはまた別の、北カリフォルニアでやっていた別バンド(WHITE SURGEANT ROCKS)では、自分がリード・ヴォーカルだった。そこでよく「Blood Of The Sun」「Never In My Life」をライヴでやっていてね。カヴァー・バンドというものを積極的にやることはないけど、機会があればやる。「Blood Of The Sun」と今回カヴァーした「Never In My Life」、この2曲は昔バンドでやった思い出があるから、また弾きたいという気持ちが高まるんだ。

YG:その「Never In My Life」を取り上げた今回のトリビュート・アルバムに関して、声がかかった経緯を教えてもらえますか?

GL:企画側が、俺がレスリーのファンであることを知ってくれていたんだ。彼らが狙っていたものに、俺が合致するということで選んでくれたんだと思う。俺がプレイすると、レスリーを彷彿とさせながらも完コピではなく、俺なりのスタイルで再現することになる。あちらもそれを望んでいたので、それを実現するよう務めたよ。で、自分に話が来た時は、他に誰が決まっていたんだったか…(「Mississippi Queen」をプレイした)スラッシュが決まっていたことは憶えている。ギタリストなら「Mississippi Queen」「Theme From An Imaginary Western」の2曲が取り合いになるものでね。すでにこれらは他の人に取られていた。自分はどの曲であろうとも嬉しかったけどね。

YG:今回カヴァーしたことで、改めてレスリーのプレイについて気づいたことはありましたか?

GL:作曲の観点から言えば、レスリーはリフの人なんだ。コード進行は普通のバー・コードを使ったものだけど、リフが特徴的だ。しかも「Mississippi Queen」「Never In My Life」「Blood Of The Sun」はメイン・リフがほとんど同じ。半世紀聴き続けてきた自分でも、リフだけでは曲の判別がつかないことがたまにある。俺も長年曲を書いてきて、気がついたら似たようなリフを作っていたことがあるよ。レスリーも曲ごとに多少の違いはあれど、1つのスタイルのリフをずっと追いかけていたのかもしれないね。

YG:レスリーのプレイはテクニック面で言えばシンプルですが、フレージングには確実に人の印象に残る特別なセンスがありましたね。

GL:シンプルと言うべきなのかどうかは分からないが、彼のプレイを真似るのは難しいよ。たっぷりと1つ1つの音をタメて、空間を作る。だから彼のソロは歌声のように聴こえる。しかもその歌声は音色がとてもユニークで、自分に語りかけているような気がするね。エリック・クラプトンやピーター・グリーンにも似た、言語のようなもの。そういうものは技術があっても再現は難しい。俺にとっても難しいよ。音の選び方も独特だし。

YG:ところでジョージ自身がプロになってから、レスリーと一緒にプレイしたことはあるのでしょうか?

GL:はっきりとは思い出せないな…特に’80年代は誰かとジャムることもよくあったはずだけど、色々と忙しかったのでね。憶えているのは、’00年代に俺がレスリーをカヴァーした音源について電話で話をする機会があったこと。レスリーには「ありがとう」とお礼を言われた。その時の会話の中で憶えていることがあってね。マウンテンの野外スタジアムでのライヴ動画を観たことがあるんだ。コーキー・レイングとフェリックス・パパラルディがプレイしている、’70年代のライヴだった。たぶんキーボードはスティーヴ・ナイトだったはずだ。レスリーは’56年製シングル・カッタウェイのレスポール・ジュニアと、サンのスタック・アンプを揃えていた。そのトーンがとてつもなく魅力的だったんだよ。電話で話した時、あのライヴで何を使っていたのか尋ねると、マネージャーに頼んでマーシャルを山ほど手配したのに、手違いで届かず、代わりにサンのアンプが来たそうだ。ではどうやってあの音を出したかというと、届いたのはPA用のアンプで、「1つのヘッドに4チャンネル付いている。1つ目のチャンネルにギターを接続し、それを次のチャンネル、また次のチャンネルへと数珠つなぎに接続してカスケード回路を作ることで、深いゲインを得ることができた」と教えてくれた。非常に興味深かったな。モデルは“Coliseum”。そのシステムを再現したいので、俺も機材を集めているんだ。彼の使っていたものによく似た、色も年代も同じレスポール・ジュニアは購入した。歪みペダルはサム・アッシュ製“Astrotone Fuzz”なんだけど、これは見つからなくてね。彼の死後に機材に関する注目が集まったことでかなり入手しやすくなったが、まだまだ高額でレアなんだよ。

YG:機材マニアのジョージらしいですね。ところでレスリーのプレイをライヴで観たことはありますか?

GL:ライヴを観たことはないんだ。面と向かって話したのも一度か二度ぐらい、ライヴやハリウッドのイベントの楽屋ですれ違って言葉を交わした程度かな。いつのことだったかはっきり思い出せないけど、残念ながら特に意味のある会話ではなかった。随分と影響を受けた人なので、お礼の一言でも伝えられれば良かったのに…。彼はまさしくギター界の偉人の一人なんだからさ。

YG:また次回、レスリーのトリビュート・アルバムに参加するとしたら、「Never In My Life」以外でどの曲を選びたいですか?

GL:「Theme From An Imaginary Western」がいいけど、みんなやりたがるから競争率が高いだろう。やるとしたら自分のアルバムでやればいいかも。