ザック・ワイルド／レスリー・ウェスト『LEGACY』：ペンタトニック剛腕の継承者による豪快リード

彼のことを偉大なギター・ヒーローだと思って、彼の声の素晴らしさを忘れてしまう

ＹＧ：ザックがレスリー・ウェストというギタリストのことを、最初に認識したのはいつのことでしたか？

ザック・ワイルド（以下ＺＷ）：俺がリロイというギターの先生について習っていた時のことなんだけど、彼はジミ・ヘンドリックスが大好きでね。それだけじゃなく、レスリーみたいなギタリストのことも教えてくれたんだ。で、俺が読んだとあるランディの記事で、彼が好きなギタリストにレスリーを挙げていてね。そういうこともあってレスリーを知ったんだよ。後に彼に会えた時、「あなたはランディの憧れの人だったんですよ」と伝えた。ランディと一緒にやっていたオジーと俺が一緒にやって、やがてレスリーと友達になるなんて、クレイジーな話だよ。

ＹＧ：レスリーとは面識があったわけですね。

ＺＷ：ああ、電話でよく話したしね。彼のことはよく知ってる。奥さんのジェン（ジェニー）のこともね。

ＹＧ：レスリーがライヴでプレイするところも観たことがありますか？

ＺＷ：レスリーがコーキー・レイング（dr）と、ジャック・ブルースの息子（マルコム／b）と一緒にやっているのを観たよ。あの時のレスリーにもぶっ飛ばされたな。単に凄腕のギター・プレイヤーというだけでなく、声だけを取っても良かった。バンドのシンガーとしてもやっていけたはずだよ。もう、最高なんだから。みんな彼のことを偉大なギター・ヒーローだと思って、彼の声の素晴らしさを忘れてしまう。

ＹＧ：今回のトリビュート・アルバムに声がかかった経緯を教えてもらえますか？

ＺＷ：気楽な感じだったよ。ジェンから電話があって、「レスリーのトリビュート作品を作るから、歌ってくれない？」「もちろんだ！　何でも曲を言ってくれ」「これが候補曲のリスト。この中でやりたいものはある？」「それなら“Blood Of The Sun”が良さそうだな。これをやらせてくれ」って。

ＹＧ：すでに曲をよく知っていたんですね。

ＺＷ：ああ。そこからじっくり取り組んだよ。弾いたことはなかったけど曲は知ってるから、改めてちゃんと向き合ってプレイした。

ＹＧ：「Blood Of The Sun」の原曲にはギター・ソロがありませんでしたが、今回のザックのヴァージョンではソロを弾いていますよね？

ＺＷ：ソロを突っ込んでおいた。あるパートを引き延ばして、ソロのフレーズを作ったんだ。

ＹＧ：レスリーはこの曲をライヴでプレイする時は、ソロを弾いていましたね。

ＺＷ：ああそうか。それでソロを入れてもハマったんだな。

ＹＧ：ザックと同じように、レスリーはペンタトニック・スケール主体でソロを弾くギタリストでしたよね。シンプルなペンタトニックを印象的に聴かせるセンスが優れていたように思います。

ＺＷ：君の言ったことがすべてだよ。彼のプレイは歌にとても近いものがあった。テクニック的には、B.B.キングやアルバート・キングみたいな人たちの奏法に通じるね。ジョン・マクラフリンがマハヴィシュヌ・オーケストラでやっていたような、スケールを速弾きするようなスタイルとは違っていた。よりヴォーカル・パートに近いんだ。歌声に近い。ただスケールをなぞるようなものとはまったく異なる心構えが違うね。

ＹＧ：同時に、レスポール・ジュニアをメインにした彼は、独特のトーンも魅力でしたよね？

ＺＷ：“少なくして多くを語る”の好例だね。レスポール・ジュニアは必要最小限のスペックしか備えていないギターで、ピックアップも“P-90”を1発搭載しただけ。実はあれが、レスリーにとって完璧なギターだったに違いないな。

彼の素晴らしさを知るために、ぜひこのトリビュート・アルバムを最初から最後まで聴いてもらいたいね。それからもちろん、レスリーの出したアルバムも全部聴くこと。レスリーのリフはどれも最高のものばかりで、俺の人生に重要な影響を与えているんだ。