ナイト・デーモンのギタリストにインタビュー!「最初からライヴを見越して曲を書くようにしているよ」

ナイト・デーモンのギタリストにインタビュー!「最初からライヴを見越して曲を書くようにしているよ」

先日、日本初上陸時のライヴ・レポートをお届けしたNWOBHM魂炸裂の米産オールドスクール・メタラー:ナイト・デーモン。その初日公演にて、旧き良き王道HR/HMの旨味たっぷりに圧倒的パワーを見せつけた翌日──4月28日の開演前に、ギタリスト:アルマンド・ジョン・アンソニーにインタビューする機会を得た。ナイト・デーモンでの活動の他に、スタジオ・エンジニアとしても敏腕を揮っている彼は、これがヤング・ギター初登場。そこで、来日ライヴについては勿論、今年リリースのコンセプト・アルバム『OUTSIDER』、自身のバックグラウンド、機材へのコダワリなどについても、たっぷり話してもらった…!!

ライヴ中に誰かからリクエストされても、すぐ対応出来る

アルマンド
Armand John Anthony

YG:昨晩の初日公演はいかがでしたか?

アルマンド・ジョン・アンソニー(以下AA):凄く良かったよ! 最初、観客の少なさが気になったけど、プレイしていくうちに、みんなガッツリ盛り上がってくれたし。実は、「日本の観客は大人しい」と、パンク・シーンの友人達から聞かされていたんだ。でも、ちゃんと熱狂してくれたし、ロックしてくれてもいたね! まぁ、連中が日本へ来たのは、ずっと前のことだったけど。もしかしたら、2003年とかそれぐらいだったかもしれない。最近だと、ハードコア系のDEAD HEATが日本へやって来て、1週間ぐらいツアーしたんじゃなかった?

ともあれ、事前に観ていたライヴ動画よりも、みんなクレイジーになってくれて、楽しんでもくれたようで何よりだ。ただ俺は、どっちかというと耳を澄まして聴いてもらえる方が嬉しい。勿論、最高にロックしてもらいたいという思いもあるけど、時にはその瞬間に何が起きているのか、ちゃんと音楽に集中して“聴く姿勢”になってくれるとありがたいね。

YG:少なくとも日本では、ライヴ中にビールを買いに行ったりする観客は殆どいないので…。

AA:確かにそうだった。それはクールなことだ。嬉しいよ!

YG:初来日ということで、今回セットリストを決めるのは大変だったのでは?

AA:そうだったよ。だから、プロモーターに訊いたんだ。「何が聴きたい?」って(笑)。俺達としては、基本的に何でも弾ける準備が出来ている。ライヴ中に誰かからリクエストされても、すぐ対応出来るぐらいにはね。まぁ、めったにプレイしない曲も1つや2つはあるけど。だから、それ(プロモーターからのリクエスト)を元にしつつ、当然ながら新作(2023年『OUTSIDER』)を中心にセットリストを組んだよ。今日は新作の全曲再現をやる。当然、古い曲もやるし、あとはカヴァー曲だな。昨日は(シン・リジィの)「The Sun Goes Down」をやったけど、今日は…どうかな?

YG:もしかして、アイアン・メイデンを…!? 「Wasted Years」(1986年『SOMEWHERE IN TIME』収録)をよくやっていますね?

AA:うん。でも…このあと、みんなと話してどうするか決めるよ。(※結局、2日目にカヴァーはプレイされず)

YG:『OUTSIDER』全曲再現は、これまでにもやったことが?

AA:やったよ。(新作に伴う)ツアー初日のショウでね。地元(米カリフォルニア州ヴェンチュラ)で、アルバム発売を記念して行なったんだ。勿論どの曲も、観客を前にしてプレイするのはその時が初めてだった。でも、最初から結構ウマくいったよ。その後も、アメリカ・ツアーの最中にあと2回(再現ライヴを)やったかな。ヨーロッパではまだやっていないから、アメリカ以外では日本が最初になる。

YG:正にスペシャルですね…! 両日とも観にくるファンが少なくないと思うので、みんな喜ぶと思います。

AA:そうだとイイな。どうやら今夜の方が観客が多いそうだし。昨晩の会場でも、ステージ前ではアツく盛り上がってくれたから、今日も楽しみだ。今夜の方が会場が小さくて、(最前付近は)ラッシュ・アワーみたいになるんじゃない?(笑)

実は…昨日の朝、日本の満員電車ってのを体験してきてさ。まだ時差ボケが残っていて、午前4時に目が覚めたんで、寝直そうとしたんだけどダメだった…。それで、「公園にでも行ってみるか…」と電車で向かってみたんだ。すると、ちょうど(混雑の)ピークの時間に当たったみたいで、凄いことになってしまって…(苦笑)。でも、経験する価値はあったよ。

YG:なかなか良い体験をされましたね!(笑) ちなみに、コンセプト・アルバムである『OUTSIDER』のストーリーって、改めて教えてもらえませんでしょうか?

AA:元々はジャーヴィス(・レザビー)がアイデアを持っていて、彼から構想を聞き、そこからみんなで意見を出し合って仕上げていったんだ。俺も参加して、「このムードに沿った曲が必要だ」「この歌詞の中で起きていることを表現すべきだ」といった感じでね。どうやって(物語や展開を)音楽に置き換えるのか──それってなかなかのチャレンジだったな。でも、シナリオに沿った曲を書くのは楽しいよ。

ストーリーを簡単に言うと──小さな町に住む男が、別の現実というか別の次元にいる自分の姿に気付いて…といった感じで、『トワイライト・ゾーン』に通ずるようなところがある。向こうの世界で殺人を犯してしまった主人公は、結局そこから戻って来られなくなるんだけど、留まったまま出られなくなったそこで父親に…といった展開もあってさ。ジャーヴィスは以前、アイルランドの北部に滞在した時に、小さな古い教会を見付け、そこからインスパイアされたらしい。実は最初、彼の出自などに関する話が中心だったのに、徐々に(ストーリーが)変わっていったんだ。

あ〜でも、あまり細かいところまでは訊かないでくれ。俺自身、詳細まで完璧に把握しているワケじゃないから…。とにかく、ジャーヴィスは凄いヤツだよ。実にクールなアイデアを持っていて──俺達には「The Howling Man」(2015年『CURSE OF THE DAMNED』収録)という曲があるんだけど、これも『トワイライト・ゾーン』の(同名)エピソードにインスパイアされている。彼は自分で映像を制作するのも好きでね。ストーリーさえあれば、それを(MVなどで)映像化することだって可能なんだ。

ジャーヴィス
Jarvis Leatherby

YG:『OUTSIDER』では、初期作品よりも音楽的な幅が一気に広がったように思います。よりメロディックになったし、クリーン・トーンやアルペジオの使い方が絶妙で。それって、ストーリーがあったからでしょうか?

AA:何か特別な理由があったワケじゃないよ。作曲を始めたのは、まだ(コロナ禍の)色々な厄介事が起きる前で、その時点でもう様々なアイデアが生まれてはいたんだ。でも、そのうちに「これは“何かある”ぞ…」と思い始めて、「コンセプト・アルバムの形でやってみないか?」という話になった。だから、アルバムの半分は2018年から2020年の間に書かれ、残りの半分は2021年以降に書いたということになる。実は当初、元々あった曲をA面、残りをB面と考え、後者には20分20秒の大曲を入れて、それがコンセプトの部分になるハズだったんだよ。でも最終的に、「これ(20分20秒の大曲)はシングルで使うことにしよう」となり、さらに5〜6曲を書き、全体をまとめるような形に出来ないかやってみたのさ。

その際、これまでに試したことのないことをあれこれやってみた…というのはある。同じような曲を何度も書く代わりに、「何か新しいことに挑戦してみよう」とね。みんな、あらゆるジャンルの音楽が大好きだからな。俺はクラシック・ギターも大好きで、トニー・アイオミが時々ブラック・サバスでやる、アコースティカルなパートなんて堪らないよ。でも、その手の曲を書いてバンドでプレイするなんて、自分では思ってもみなかった。ところが、いざやってみたら「これはクールだ!」となってさ。「そっちへ進みたいのなら、俺もアコを持ってきてやってみるよ」とね。あと、「光と闇を表現するために、ヘヴィかつダークに…」というのもあった。でも俺は、メロディーやハーモニーが好きだし、ツイン・ギターのハモりも大好きだ。メタルの世界において、ギターをハモらせるのが重要な要素なのは間違いない。それはヴォーカルについても言える。ただ単純にスクリームする方が簡単だったりするけどね。

YG:トリオならではのアレンジの妙もよく練られていますが、やはりライヴで再現することは、あらかじめ考慮に入れているのでしょうか?

AA:最初からライヴを見越して書くようにしているよ。みんなで集まって、一緒に作曲するんだ。ジャムをやりながら、すぐにアイデアが出ることもある。いきなり「これだ!」と思うモノが出来上がることもあれば、そうでなくとも、取っ掛かりになるモノは何かしら生まれるからね。時には、あとから思い出してアイデアを追加することもある。でも殆どの場合、みんなで一緒にプレイしながら仕上げていくよ。バンドとして書いていくのさ。だから、それをステージに移行するのは簡単なんだ。

違いがあるとすれば、ライヴの現場ではよりエネルギーに溢れている…という点だな。だって、ステージだと走り回ったりするけど、(スタジオでの)ジャムの時はそんなことしないから(笑)。あと、自分のソロはひとりで書くことが多い。他のメンバーを待たせながら、ああでもない、こうでもない…と色々試していたら、耳障りに聴こえるかもしれないだろ? 問題は、複雑なパートの弾き方をしっかりおさらいしつつ、(ライヴで)ロックすることの難しさ…だね。

YG:シングル・ギターのトリオ編成にはコダワリが?

AA:そうだな。時には、「一緒にハモりを弾いてくれるヤツがいたら…」と思うこともある。だけど、いつも最終的には「3ピースこそ完璧だ!」というところへ戻ってくるのさ。ドラムが真ん中に陣取り、その両翼にギターとベースという構図──そこには誰も他に入り込める余地はない。ハモりについては、ハーモナイザーのエフェクトが使いコナせると、それで何ら問題なくなる。今夜、「Rebirth」という曲(『OUTSIDER』収録)で聴けるよ。

あと、3人の方が色々と楽だというのもある。ツアー移動もそうだし、バンドに対する心構えの統一という点でも。ただ、追加メンバーというのも1つの案だな。キーボード奏者を入れようか考えたこともあったし。オルガンを入れて、ちょっと違ったことをやってみて、ディープ・パープルみたいな雰囲気が出せたら…と思ったんだ。スタジオでは大抵、俺が(キーボード・パートを)担当していて、実際に(アルバムでは)バックにキーボードを入れたところもあるしね。それか、同期音源を使ってキーボード・トラックを流し、それ以外は生で…というのも面白いかもしれない。いつかそれもやってみたいな。でも、このツアーの前には試すところまでいかなかったんだ。

俺がステージの反対側にいる時に、ジャーヴィスがワウを踏んでくれた

アルマンド

YG:では、今回持ってきたギターを教えてください。

AA:カスタム・モデルで、Jailbreak Guitarsというメーカーで作ってもらった(※上写真参照)。イタリアのミラノ近郊の小さな工房で、たった1人で運営している。確か数年前に、Facebookで見つけたんだったかな? “Jailbreak”だなんて、やっぱりシン・リジィの曲から採ったそうだけど、そりゃ「クールだ! ちょっと見てみるか」となるよね(笑)。

YG:他にどんなバンドのギタリストが使用しているのですか?

AA:サイトを見た時、STシェイプなどイイ感じのギターの写真があって、同時に、聞いたこともないようなマイナー・バンドも沢山掲載されていたよ。それで、まずは連絡してみて、ナイト・デーモンの楽器を作ることに興味ありますか?」と訊いたら、「是非とも!」ということだったんで、最初はジャーヴィスのベースを頼んでみたんだ。彼はそれまで、Vantage Guitarsという日本のメーカーのベースを使っていたから、そのうちの1本を実際に送り、「全く同じベースを作ってくれ」と注文したら、見事に素晴らしいモデルが完成してね! それで、次は俺の番だな…と、’50年代モデルのVシェイプをリクエストしてみた。すると、バインディングが施され、インレイは稲妻型で、さながらキャディラックのギター版みたいなのが届いたんだ! それは固定ブリッジのハードテイルだったけど、最新のモデルはフロイドローズのトレモロ・ユニットを搭載している。こちらは’60年代のVシェイプ…と言えばイイかな?

YG:フレット数は?

AA:22フレットだ。普通だな(笑)。24フレットはあまり触ったことがなくてさ。アイバニーズのギターを持っていることは持っているんだけど、ちょっと慣れなかった。

YG:ピックアップはメーカーのオリジナルですか?

AA:セイモア・ダンカンさ。地元の町から30マイル(約48km)しか離れていないところに会社があって、友人が働いているから、よく遊びに行くんだ。今はブリッジに“Custom 5”を、ネック側に“Pearly Gates”を搭載している。

YG:日本公演では、アンプは何を使っていますか?

AA:Line 6の“HX STomp XL”に、セイモア・ダンカンの(ペダル型パワーアンプ)“PowerStage”をつないでいるよ。ハイワットの100Wアンプ、その前段に“Tube Screamer”、それと“SP Booster”、アナログ・ディレイもつないだセッティングを再現しつつ、ワウのサウンドも出せるんだ。俺は、最初から入っているストックのパッチを使うよりも、自分で作っていく方が好きでね。それで、色々と試してみたら、ハイワットが唯一、本物のアンプに近い音が出るモデルだった。

実は、それまで9〜10個のペダルをつないで弾いていたんだ。でも、ケーブルが絡まったり、パッチの調子がおかしくなったり、ボードをぶつけてペダルが外れたり、アースがちゃんと刺さっていないとパワー・サプライからノイズが出たり…と、とにかくトラブル続きで、何が問題なのか判明する前に、頭が痛くなってしまうことがよくあった(苦笑)。もう、うんざりだったよ。でも、今じゃスッキリ整って、よく動くし、徐々にお気に入りになりつつある。元々は、この手のデジタル機材は好きじゃなかったんだけどさ…。

ただし、スタジオでは今も本物のアンプを使う。1969年製で“プレキシ”の頃のマーシャルさ。’80年代に初めて(マーシャル・アンプの)改造を手掛けたチームの1人が関わってくれて、ハイ・ゲイン回路になっているんだけど、これが俺の自慢のアンプというワケ。あと、インドネシアのCeriatoneという、マーシャルにそっくりなモデルを作ることが出来る会社の“Hot Rodded Plexi Chupacabra”というモデルも使っている。スタジオではギターの左右(チャンネル)で異なるモデルを弾き、ソロも何もかもすべてダブリングしているよ。他にバッキングはない。2〜3曲あるにはあるけど、それが俺達ならではのサウンドになっているんじゃないかな。

アルマンド 機材1 足元

▲右から、Line 6対応のミッション・エンジニアリング製コントローラー“EP1-L6”、Line 6“HX Stomp XL”、TCエレクトロニック製チューナー“PolyTune 3 Mini”。信号はワイアレスで送られており、ボードの左端にLine 6“Relay G50”のレシーバーがセットされている。

YG:昨晩はマーシャルにマイキングしていませんでしたか?

AA:Line 6で音を作っていて、マーシャルはキャビネットだけ使っている。そうすることで、よりリアルかつウォームでナチュラルな音が出せるからね。以前、PA直でやったこともあって、それも悪くはなかったけど、ミックスのレベルを揃えるのが複雑で…。もし専属のエンジニアを連れてくることが出来れば、それもアリかもしれない。でも、今回は俺1人だけだからさ。あと、インイヤー・モニターを使っていて、キャビネットからマイキングした音を拾っているんだ。

YG:チューニングはどうなっていますか?

AA:いつも全弦半音下げだ。確か、ブラック・サバスの初期作って全弦半音下げだったよね?(※作品によっては1音半下げも) つまり、あまりチューン・ダウンしなくても、充分ヘヴィなサウンドが出せる…ってことさ。でも、新しい曲ではドロップDも試してみた。実はずっとやりたかったんだけど、ようやく最適な曲を見付けたんだ。ライヴ中に(ペグを回して)下げてたの、気付いた?

ペグを回して音程を下げるアルマンド

YG:はい、ジャーヴィスもその場で下げてましたね?

AA:そういう細かいとこを観てくれるのも嬉しいな。時には失敗することもあるけど(苦笑)。

YG:あと昨日、あなたがステージ中央でソロを弾いている時に、ワウがオンになることがありましたね? もしかして、ジャーヴィスが踏んだのでしょうか?

AA:おっと…それは最高機密だ! いやいや(笑)、その通り──彼(ジャーヴィス)が俺のペダルを踏んでくれたんだよ。キッカケは思い出せないんだけど、前に「俺がステージの反対側にいる時、フェイザー・ペダルをオンにしてくれないか?」とジャーヴィスに言われたことがあってね。それとは逆に、彼がディレイをオンにしてくれたこともあったよ。するとある時、何の前触れもナシに、突然ジャーヴィスがワウを踏んで、一瞬「何だ?」と思いつつ、「こいつはクールだ!」ということになったんだ。それ以来、恒例となっている。「Screams In The Night」(2015年『CURSE OF THE DAMNED』収録)でね!

助け合いの精神さ(笑)。俺は元々、あまり沢山のペダルを使うタイプじゃない。でも時には、リモート・ボタンを(ステージの)反対側に置いておきたいな…と思うこともあるし、「(自分の定位置に)戻りたくないな〜」と思いながら慌てて引き返すこともある。そんな時、焦って間違ったペダルを踏んでしまったりすると最悪だろ? 沢山のことを同時にやろうとして、正にカオス状態に陥ってしまう…。

メタリカのおかげで怪しいバンド(笑)にハマっていったんだ

アルマンド

YG:ここで改めて、あなたのバックグラウンドについて訊かせてください。まずは、ギターを始めた年齢とキッカケから。

AA:父親がミュージシャンで、キーボードやピアノを弾いていたんだ。だから、常に音楽を聴きながら育ったよ。ギリシャ家系なんで、いつもギリシャ音楽が身近にあったし、8歳になるとロックにも目覚めた。いとこがガンズ・アンド・ローゼズの『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)を聴かせてくれて、「コイツは凄ぇ!!」と、それで人生が変わったね! そんな感じだから、家にはギターも普通にあって、俺は時々クローゼットからアコを引っ張り出してきて、最初は好き勝手に弾いていたんだ。その後、12歳になって1年間レッスンを受けたものの、「メタリカやブラック・サバスの曲が弾けるようになりたいのに!」と思い、そこからはもう止まらなかった。この道で成功することだけを考えて、色々と探求していったよ。

YG:12歳の時のギター・ヒーローというと?

AA:トニー・アイオミ、ジェイムズ・ヘットフィールド、マーティ・フリードマン…かな。’90年代の初め頃だから、MTVやラジオが中心で、ブラック・サバスやメタリカ、あとガンズが大好きだった。それから、当時のメガデスこそ最強ラインナップだね! 『RUST IN PEACE』(1990年)を聴きながら育った…と言っても過言ではないぐらいさ。

YG:’90年代にはギター・ソロがクールではない時期もありましたが、あなたはそんな頃も弾きまくっていたのですか?

AA:いや、あの頃はモロに影響を受けて、「ソロはやめておこう…」と思っていたよ。ただ、そのおかげでバッキングを磨くことが出来た。ガキの頃は、スピード・メタルのソロを弾くなんてとても無理だったから(苦笑)。でも、グランジ曲を弾くとリズムにフォーカスすることが出来たし、構成やメロディーにも気を配れた。そして、幾つもバンドをやっているうちに、もう1人ギタリストがいる場合が多くなってきて、ソロの掛け合いなんかをやるうちに、またリード志向が戻ってきたのさ。

YG:影響源であるNWOBHMのマイナーなバンドは、どうやって見付けていったのですか?

AA:メタリカさ! 彼等はカヴァー・アルバム(1987年『THE $5.98 E.P. GARAGE DAYS RE-REVISITED』&1998年『GARAGE INC.』)も作っていただろ? だから、ダイアモンド・ヘッドとかマーシフル・フェイトを入り口に、そこからもっと怪しいバンド(笑)にハマっていったんだ。ジャガーだとかセイタンだとかに…ね!

YG:ところで、あなたは以前にキリス・ウンゴルという地元の先輩バンドでもギターを弾くことがありましたね?

AA:うん。あのバンドは、ジャーヴィスがメンバーを説得して、再結成、再始動を果たしたんだよ。それで、まずは彼(ジャーヴィス)がベーシストを務めることとなり、俺は最初、ギター・テックをやったり、ライヴでサウンド・エンジニアをやったりしていた。ところがある時、(キリス・ウンゴルの)ギタリストの母親が危篤状態になってね。それで、俺に電話がかかってきたのさ。実はそれ以前から、「いつかお前にも弾いてもらえたらな」といった話は出ていたんだ。それで、「今こそがその時だ!」と言われて、ちょうどイギリスにいた俺は、その翌日にドイツへ飛び、彼等と現地で合流した。その日はオフで、翌日がライヴ本番。でも俺としては、彼等のライヴを20〜30回は観ていたし、ソロは別として殆どの曲が弾けたから、ちょっと合わせた程度で、翌日からの3公演──ドイツのフェス出演を含み、その後にはロンドン公演もあった──を何とかコナしてみせたよ。

後日、Wikipediaのキリス・ウンゴルのページに俺の名前がギタリストとして載ったこともあったな!(笑) だから、また機会があれば是非とも弾かせてもらいたいと思っている。彼等のことも、彼等の音楽も大好きだから、いつでも準備は出来ているぜ! でも、彼等のことを知ったのは、実はジャーヴィスが再結成をあと押ししてからだったんだ。いや、名前は耳にしていたさ。でも不思議なことに、一度も音を聴いたことがなくて、「何だコレは? 凄い!!」と思ったよ。こんなバンドがいたとは…と驚いた。それなのに、今じゃ兄弟のような関係で、一緒に仕事をやっている…なんてね!!

YG:アルバムでエンジニアも担当したそうで?

AA:そう、新作(2020年『FOREVER BLACK』)もライヴ・アルバム(2019年『I’M ALIVE』)も手掛けたよ。俺のことを信頼してくれているみたいでさ。でも実際、彼等の言い分をまとめて、それをキリス・ウンゴルの作品に仕上げられるのは、俺ぐらいしかいないんじゃない?(笑)

YG:次回の来日公演は、キリス・ウンゴルとカップリングで行なえるとイイですね!

AA:ああ。来年やれるとイイな。

YG:日本にも両バンド共通のファンがいると思うので。

AA:そいつはクールだ。

YG:嬉しさのあまり倒れるファンもいるかも?(笑)

AA:よし、それなら絶対にやらないと!(笑) 良いライヴになることは俺が保証するよ!!

キリス・ウンゴル&ジャーヴィス
CIRITH UNGOL featuring Jarvis(b)at Wacken Open Air 2022

INFO

NIGHT DEMON - OUTSIDER

OUTSIDER / NIGHT DEMON

CD|ワードレコーズ | 2023年発表

アルバム詳細