新世代のスーパー・プログレ・グループ:アーチ・エコーが、7月28日に新作『FINAL PITCH』をリリースした。ドリーム・シアターのジョーダン・ルーデス(key)ゲスト参加も交え、文字通りの進化を遂げた彼らに制作背景を訊くインタビューをヤング・ギター8月号に掲載している。このウェブページでは、誌面に入り切らなかったエピソードをいくつか紹介しよう!
YG:アーチ・エコーのサウンドは、凄まじい技巧を含みつつもキャッチーで、全体としてポジティヴなムードも強いのが特徴ですが、リード・パートはあらかじめ練り上げられ、いわば“作曲”されたフレーズを弾いているのですよね? それとも、レコーディングの際にインプロヴァイズすることもありますか?
アダム・ラフォウィッツ(以下AR):メロディーは間違いなく“作曲”されている。ソロに関しては、スタジオではまずインプロヴァイズし、それが気に入ったら(作曲されたメロディーを)加えていくんだ。アルバムではまとまりのある感じにしたいんでね。ただしライヴでは、「ここはインプロヴァイズすると上手くいくな」と思ったら毎回違うことをやっているよ。
YG:アダムRは今回、アーム・バーを使っての“ゆらぎ”のようなニュアンスが絶妙だと思いました。前作EP(’20年『STORY I』)の「Leonessa」など、これまでにもアーム使いの妙は見られましたが、今作ではアレックス・ライフソン(g/ラッシュ)っぽいと思う場面が幾つかあって…。
AR:確かに、ちょっとラッシュっぽいよね。ラッシュのことは史上最強のラッシュ・ファンの部類に入るジョーイ(イゾ/key))とジョー(カルデロン/b)が教えてくれた。あのアームを使った弾き方を覚えていくのは本当に楽しいよ。1stアルバム(’17年『ARCH ECHO』)の時は、アーム付きのギターを持っていなくてさ。ストランドバーグはもう持っていたけど、ハードテイルだったんだ。ギターで感情表現するための手段として、アームを使うのは大好きだね。声を出してヴィブラートをかけているような気持ちになる。
YG:ヤング・ギター読者に向けて、それぞれの『FINAL PITCH』イチ推し曲を教えてください。
AR:「Super Sudden Death」のハイブリッド・ピッキング・パートだな。一緒にピアノが入っているんでミックスの際にちょっと(ギターが)引っ込んでしまったけど、あそこは結構チャレンジングなパートなんだ。実際、弾きコナすまでにしばらく時間がかかった。それから、「Bet Your Life」にはリード・パートがいっぱいあって、サビの裏でベンドをコントロールし、良い感じのヴィブラートになっているところも注目してほしい。超テクニカルというわけじゃないけど、凄くエモーショナルにベンドさせないといけなくて、なかなか良いフィーリングが出せたと思う。あと「Angry Sprinkles」に入っている、ドラムと一緒にやっているちょっとしたソロも楽しいよ。
アダム・ベントリー(以下AB):あそこは僕も覚えないといけないな。その「Angry Sprinkles」だけど、最初のセクションからメイン・ギターにかぶさってくるリードがあって、そのタッピング・パートが好きだね。実は、デモの段階でこの曲は「Tappy」と呼ばれていたんだよ。みんなにもぜひ挑戦してもらいたい。ただ弾くだけならできるかもしれないけど、普通のタッピング・パートよりもフレット・ボードを駆け回る感じになる点は注意してくれ。あと、これはみんなに覚えてもらいたいパートってワケじゃないけど、「Super Sudden Death」の最後のセクションも推したい。楽しいパートだし、ギタリストみんなが気に入ってくれると嬉しいな。弾きたいとは思わなくても、もし好きになってくれたら、僕にとっては成功だ。
YG:ところで、ジョーダン・ルーデス(key/ドリーム・シアター)が鍵盤ソロを客演した「Aluminosity」ですが、ライヴではどう再現しているのですか?
AB:この間のツアーでは、ジョーイがインプロヴァイズしていたよ。毎回その場で思いついたソロを弾いていたけど、どれも凄く良かったと思う。
YG:バンドによっては、ソロであっても同期音源を流してしまうことがあるようですが…?
AB:ジョーダンのトラックをPAから流すのかい? そんなことをやったらヘンだよ!
AR:PAからリード・トラックを流すのは、僕達としては大反対だね。
YG:では、ヴォーカル入りの「Final Pitch」はどうでしょう? ゲストで歌ったアンソニー・ヴィンセントのパートもさすがに同期で流すワケにはいきませんよね?
AR:うん。「Final Pitch」はインストゥルメンタルでやるか、アンソニーに参加してもらうか、誰か他のシンガーに歌ってもらうか…だね。ヴォーカル・トラックを流すことはない。そんなことをしたら、ライヴが台ナシになると思う。
YG:でも、やっているバンドもいるんですよ…(苦笑)。では今のところ、日本でやるかどうかは分からない…と?
AR:そうだな。どうするか考えないといけない。
YG:では最後に、その9月の再来日公演に向けて、それぞれ意気込みを聞かせてください!
AB:前回の来日公演(’19年)は、ミュージシャンとしての僕の人生にとって、忘れられない素晴らしい体験になった。だから、また日本のファンのためにプレイするのが待ち遠しいよ。きっと素晴らしいショウになるだろう。僕は日本のことなら何でも好きだから、もう日本へ行けるだけで光栄なんだ。
AR:アダムBが言ったことすべてに同感だね。早く日本へ行って、前回観てくれたファンにも、また新しいファンにも会いたいな。そして、最高のライヴをやって、みんなに楽しんでもらい、僕達も大いに楽しみたいと思っている。きっと最高のライヴになる! 待ち切れないよ…!!