絶賛上映中『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』ギターのロットヴォネン役にインタビュー!

絶賛上映中『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』ギターのロットヴォネン役にインタビュー!
ヘヴィ・トリップ II ポスター
©2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food

全メタラー、全ギタリスト…に限らず、もはや全人類必見! 世界一おバカなメタル・バンド:インペイルド・レクタムが、あの“Wacken Open Air”出演を目指すハチャメチャ・ロード・ムービー『ヘヴィ・トリップⅡ〜』は現在、絶賛上映中〜!!

先日の監督&主演俳優インタビュー記事(下記参照)に続いて、ギター誌としての本領発揮…ということで(?)、レクタムのギタリスト:ロットヴォネン役のサムリ・ヤスキーオ氏にも直撃取材!! やはり根っからのメタラーという彼は──え〜と…実は全くギターが弾けないそう。しかし、エア・ギターの腕前はそこいらのギタリストが裸足で逃げ出すほどだった…!!!!

熱きメタル魂を見せ付けてロットヴォネン役を掴み取った

YG:本日は、超テクニカル・シュレッダーに取材出来ると聞いて飛んできました!(笑)

サムリ・ヤスキーオ:えっ、何だって!? うん…まぁ、何でも訊いてくれたまえ!!(笑)

YG:日本に着いたのは?

サムリ:昨日(※取材を行なったのは映画公開の数日前)なんだ。他のキャストはもっと前に来ていたんだけど。だから俺は今回、日本文化をツマミ食い程度しか味わえない。でも、元々日本のことは大好きだし、俺の彼女も日本の大ファンなんで、次回は是非2人で一緒に来たいね! 俺も彼女もアート方面でも活動していて、彼女は画家だから、日本のアート・カルチャーには興味津々なんだ。

YG:いよいよ日本公開される『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』ですが、前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の時点では、当初まだ続編の話は出ていなかったそうですね?

サムリ:うん。でも、俺自身は心の中で「次作があるとイイんだけどな…」とずっと思っていたよ。

YG:俳優としてギタリスト役に挑戦したのは、『ヘヴィ・トリップ〜』が初めて…?

サムリ:うん、その通りだ。実は、ギターなんて全く弾けないんだけどね(笑)。

YG:他に楽器演奏の経験は?

サムリ:ガキの頃に3年間ほどピアノを習ったことがある。でも、だからといって「楽器が弾ける」と言えるようなことでもなくて…。どっちかというと俺はシンガーなんだ。あと、ラッパーでもある。

YG:メタル・ファンでもありますか?

サムリ:勿論! 小さい頃からロックやメタルが好きだったよ。あと、アート系の高校に通っていたから、俺もよく絵を描くんだけど、その際にメタル・ミュージックがインスピレーションの源になる。こんな感じの絵だよ(と、スマホで見せてくれる) 。

YG:確かに、幻想的でメタルのアルバムのジャケットに使えそうですね!

サムリ:ああ、そうかもしれない! ヤング・ギターの表紙に使いたい時は、いつでも言ってくれたまえ(笑)。

サムリ・ヤスキオ(ロットヴォネン)

YG:是非!(笑) メタルにハマったキッカケは?

サムリ:バンドでドラムを叩いている弟がアリス・クーパーの「Poison」(1989年『TRASH』収録)を聴いていて、それがキッカケだったね。ダークな歌詞で、結構悪いことを言ってるし(笑)、「こんな世界があるんだ?」と衝撃を受けたんだ。13〜14歳ぐらいだったかな? それで、スコーピオンズやメタリカを聴くようになり、もっとヘヴィなバンドを求めて、スリップノットやKORNなど、NUメタルにもハマっていった。中でもSTATIC-Xは、17歳当時の俺の中で一番だったな。あとはパンテラとかラム・オヴ・ゴッド…それから、MORS SUBITAも大好きだよ。

YG:他に好きなフィンランド出身バンドというと?

サムリ:STAM1NAだな。あと、ビースト・イン・ブラック! 大好きなバンドなんだ。それに俺は、彼等のMVにも出演しているんだよ。「Hardcore」(2021年『DARK CONNECTION』収録)さ。まぁ、ナイトウィッシュなんかも聴いてはいたけどね。ラジオでよくかかっていたし。何故だか分からないけど、フィンランド人にはメタル好きが多い。(気候的に)寒くてあまり日が差さないからかな?(笑)

YG:フィンランドに凄腕のギタリストが多いのは、寒い冬は日照時間が短く、家にこもってギターの練習をするしかないから…なんてよく言われますが?

サムリ:まさにそうだな! そうして、アレキシ・ライホのような凄いギタリストが育ったんだろう。

YG:好きなギタリストの筆頭を挙げるとすれば?

サムリ:パンテラのダイムバッグ(ダレル)だな。彼はまさにレジェンドだ。

YG:ライヴにもよく行かれますか?

サムリ:ビースト・イン・ブラックとかMORS SUBITAのライヴには行ったことがあるよ。どっちのギタリストとも仲が良いんだ。(ビースト・イン・ブラックの)アントン(カバネン)とは同い年というのもあってね。あとMORS SUBITAのミカ(ランマッサーリ)は、俺達の映画の音楽を手掛けてくれているから。

映画シーン ロットヴォネン

YG:ちなみに、ロットヴォネン役のオーディションを受けた時は、実際にはギターが弾けないことがネックになりませんでしたか?

サムリ:実は自分でも、そこが凄く心配だったんだ。でも、(オーディションで)エア・ギターをしまくり、叫びまくっていたら、それで「合格!」となってね。そう、俺はただ熱きメタル魂を見せ付けただけで、このロットヴォネン役を掴み取ったのさ!(笑) ただ、本当に大変だったのはその後だった。だって、本当はギターなんて弾けないのに、ギター歴15年という役を演じなきゃならなかったんでね。

YG:ギタリスト役をやるに当たっては、どんな演技指導を受けましたか?

サムリ:メンターがいたんだ。WHORIONというバンドのエペ・ラウタマーさ。WHORIONはフィンランドのテクニカル・デス・メタル・バンドで、エペはシンガー兼ギタリストなんだけど、とてつもない凄腕でね。それで、彼の下で特訓を行なった。最初にやったのは、1本だけ弦を張ったギターを持ち、とにかくただただ弾きまくること。1万回も…まるでノコギリを挽くかのようにしてね!(笑)

YG:ロットヴォネンは、『ヘヴィ・トリップ〜』では“速弾きの達人”と紹介されますが、『ヘヴィ・トリップⅡ〜』では上手くソロが弾けないというシーンが出てきますよね? 役柄としてはどっちが正しいのでしょう?

サムリ:間違いなく“達人”だよ! でも、置かれた状況によっては、ナーヴァスになって思うように弾けない時もある。みんなから見られて、あまりに(プレイに対する)期待度が高過ぎると、緊張のあまり本来のスキルが発揮出来ないんだ。「ああ…ダメかもしれない」と思ったら、その通りになってしまうタイプ…というか。

YG:シンガーのトゥロが、観客を前にすると緊張のあまりゲロを吐いてしまうのとちょっと似ていますね?

サムリ:ああ、そうかもしれない!(笑)

YG:前作も含めて、撮影で一番大変だったシーンというと?

サムリ:ヘドバンしながらギターを弾くシーンだな。アクションをキメながらギターを弾くこと自体、凄く大変だったよ。こういうシーンさ!(と、立ち上がってヘドバンしながらエア・ギターをやってみせる) どうしてもヘドバンの方に意識がいくから、ついつい(ギターを弾く)指が止まってしまう。「一体どうやれば出来るようになるんだ?」って感じで、とにかく大変だったな。ソファに座ってギターを弾くシーンだったら大丈夫なんだけどね(笑)。

サムリ・ヤスキオ(ロットヴォネン)

YG:ロットヴォネンはメガデスのデイヴ・ムステインに憧れている役どころですが、サムリさん自身もメガデスのファンだったりしますか?

サムリ:勿論さ! 『RUST IN PEACE』(1990年)は大名盤だよね!!

YG:ギターを弾く演技で、ムステインを意識したことは?

サムリ:あるよ。特に(『ヘヴィ・トリップ〜』の)“Damnation Festival”の演奏シーンでは、かなりムステインに寄せていたと思う。こうやって(うつむき加減で)ギターを弾き、あまり動かない立ち姿とかね。勿論、彼のコピーをやろうとしたワケじゃないよ。飽くまで参考にしたという程度さ。

YG:ムステインといえば、『ヘヴィ・トリップⅡ〜』でロットヴォネンが「ムステインさん?」と間違って声を掛けるシーンで、そのギタリスト役を演じていたのはユーソ(ラーティオ)監督だそうで…?

サムリ:うん、そうだよ。彼は実際にギターが弾けるんだ。だから、彼からもギター演奏に関して何度か演技指導を受けた。というか、2作目に向けて準備を始めた時、最初にチュートリアルを受けたのは、実はユーソだったんだよ。2023年に撮影を開始するに当たり、2022年の暮にユーソの家へ行って猛特訓してね…(笑)。その時は、メタリカの「Enter Sandman」(1991年『METALLICA』収録)が課題曲だったな。あと、レインボーの「Kill The King」(1977年のライヴ作『ON STAGE』が初出)も練習した…!

映画シーン

YG:顔が写らない手元アップのシーンなどは、メンターのエペさんがギターを弾いたのでしょうか?

サムリ:いや、エペじゃない。名前は知らないけど、確かプロのギタリストだったと思う。あと、劇伴全般を手掛けたミカは本当に凄いギタリストだから、時にエペでさえ弾けないソロ・パートがあったりもしたんだ。リトアニアのヴィリニュスでの撮影では、そのシーンがコナせるギタリストを現地調達しようとしたものの、誰でも弾けるフレーズじゃなかったから、とにかく探すのが大変だったよ。

YG:『ヘヴィ・トリップⅡ〜』には、ブラッドモーターのドラマー役として、ザ・シックスティナイン・アイズの実際のドラマー:ユッシ69が出演していますが、他にもミュージシャン兼業の俳優はいますか?

サムリ:バンドをやっているかどうかは知らないけど、ブラッドモーターのギタリスト役のカロリス(カスペラヴィシウス)は、実際にギターが弾けると聞いているよ。あと、トゥロ役のヨハンネス(ホロパイネン)もギターが弾けるんだ。

YG:ユッシ69からミュージシャン役を演じる上で何かアトヴァイスをもらったことは…?

サムリ:ないなぁ。逆に俺が、演技の何たるかを彼にレクチャーしてやったよ! 「いいかい、演じるとはこういうことだ…!」ってね!!(笑)

フィンランド大使館にて、インペイルド・レクタムとYGを持ったユーソ・ラーティオ監督

レクタム@フィンランド大使館! 左から、オウラ(dr)、ロットヴォネン(g)、ユーソ(監督)、クシュトラックス(b)、トゥロ(vo)。