上映間近!『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』監督&主演インタビュー

上映間近!『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』監督&主演インタビュー
ヘヴィ・トリップ II ポスター
©2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food

前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』(2018年:日本公開は2019年暮)から約6年──世界一おバカなメタル・バンド:インペイルド・レクタムが帰ってきた! さらにスケール・アップしたハチャメチャ・ロード・ムービー、その名も『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』で…!!

フィンランド発、終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタルを標榜する彼等は今回、ドイツ開催の世界最大級HR/HM祭典“Wacken Open Air”(以下WOA)を目指す。しかし、ある意味エクストリームなトラブルメイカーの彼等だからして、またまた超ドタバタな顛末が繰り広げられることに。果たして我らがインペイルド・レクタムは、“メタルの聖地”WOAでプレイすることが出来るのか…!?

というワケで(?)、日本全国666万人の(?)メタラーが待ち望んだそんな続編の日本公開に合わせて、監督や出演者が緊急来日! まず本誌がキャッチしたのは、共同監督のひとり:ユーソ・ラーティオ氏と、レクタムのシンガー:トゥロ役のヨハンネス・ホロパイネン氏。共に生粋のメタラーという2人には、映画の裏話を含めたっぷり語ってもらった…!!

ユーソ&ヨハンネス
ユーソ・ラーティオ監督(左)&ヨハンネス・ホロパイネン

1作目の撮影がとにかく楽しかったから、夢のようだったね

YG:日本は初めてですか?

ヨハンネス・ホロパイネン:うん。ずっと日本には来たかったから、凄くハッピーだし、今日で滞在4日目なんだけど、楽しく過ごさせてもらってる。今回は2週間ほどいる予定だけど、これが最後の来日にならないことを祈ってるよ(笑)。

ユーソ・ラーティオ:僕は4回目なんだ。ただ、仕事で日本に来たのは今回が初めてでね。これまでは、家族や友人とプライヴェートで来ていただけだから。

YG:監督は『AKIRA』のTシャツを着ておられますが、元々日本好きだったりしますか?

ユーソ:子供の頃から日本が大好きでね。アニメやマンガ、あと(日本語で)タベモノも──すべての大ファンさ。

YG:日本のバンドもお好きですか?

ユーソ:うん。なかなかフィンランドでは観られないけど、今回の滞在中、ライヴにも行く予定だ。え〜と、何てバンドだったっけな…。

ヨハンネス:確かヘッドフォン・プレジデントだ。楽しみだな。

YG:今、ジューダス・プリーストも来日中(※取材を行なったのは12月中旬)なのはご存知でしたか?

ヨハンネス:うん。聞いてるよ。

ユーソ:もしライヴを観に行くんだったら、彼等に「よろしく!」って言っておいてくれ。特に面識ないけど(笑)。

YG:了解しました(笑)。さて、いよいよ『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル』の続編『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』が日本公開されますが──当初より2作目のことは念頭にあったのでしょうか?

ユーソ:いや、全くなかったよ。予想だにしていなかった。正直、そんなに話題になるとも思ってなかったんだ。フィンランド国内で上映されればイイな…ぐらいに思っていたから、世界中のメタル・ファンが楽しんで観てくれるなんて本当に驚いたよ。殊に日本で人気になるなんて…ね! 実際、2作目の話が出たのは、最初に公開されてから1年ほど経ってからだった。プロデューサーから「続編をやってみるか?」と言われた時はマジ興奮したよ。

ヨハンネス:1作目の撮影がとにかく楽しかったから、俺にとっても夢のようだったね。しかも、こうして今ここ日本にいるなんてさ…!

ユーソ&ヨハンネス

YG:ユーソ監督はユッカ(ヴィドゥグレン)監督との2人体制で映画制作を行なっていますが、それぞれで役割分担があったりするのでしょうか?

ユーソ:基本すべて2人で一緒にやっているよ。まぁ強いて言えば、ユッカは俳優陣を相手にすることが多くて、僕はどっちかというとカメラや照明なんかのクルーと話すことが多いかな。ざっくり僕はヴィジュアル担当で、ユッカは演技担当…と言えるかもしれない。

ヨハンネス:でも、だからといって(俳優陣が)ユッカとしか話さないワケじゃないよ。何か疑問があった場合も、どっちかではなく、2人の意見を参考にする。自分の近くにいる方に訊く…という感じかな? 実際、“50:50”だね。両方の意見を聞くことが大事なんだ。そもそも彼等は、2人でディレクションすることに慣れているし、凄く良いコンビだから。あと、俺ら俳優からの意見も尊重してくれるんだ。

ユーソ:うん。誰からのアイデアだろうと、良いアイデアは採用する。僕達は演技指導するにしても、決して自分達の意見を押し付けたりはしないんだ。それぞれのキャラクターからベストなアイデアが出てくることもあるしね。

ヨハンネス:コメディ映画だから、アドリブだとか“遊び”の部分も重要だ。創作面でも余白を残しておく…というか。現場では偶発的な出来事で、“みんな大爆笑!”なんてことも少なくなかったんだ。

メイン画像
トラブル続きのインペイルド・レクタムの面々。左から、ロットヴォネン(g)、トゥロ(vo)、オウラ(dr)、クシュトラックス(b)。

YG:そもそも、監督2人は長い付き合いなのでしょうか?

ユーソ:うん。知り合ったのは2006年だったから、もう17〜18年ぐらいの付き合いになるね。僕達はアート/メディア系の大学に通っていて、ユッカはそこでプロデュースについて、僕はヴィジュアル・コミュニケーションについて学んでいた。お互いの趣味や趣向が似ていたのもあって、すぐに意気投合し、それからずっと一緒だね。15年前に会社を立ち上げる前から、ずっとさ。

YG:2007年に『Impaled Rektum』という短編を撮ったと聞きましたが…?

ユーソ:そう、それがユッカとの初仕事さ。学校の課題として制作したんだ。それが凄く楽しくてね。それで、大学を卒業したあと、何に取り組もうかと考えていた時、ユッカが「あの短編をベースに長編映画を撮ろうよ」と言ったんだ。それまでは、地元バンドのMVなんかを手掛けていて、ローカルなメタル・コミュニティとのつながりが出来ていたし、元々アイデアも色々と持っていたからね。それで、すぐ「やろう!」となった。ただ、勿論ストーリーは違っているよ。似たようなキャラクターは登場するけど。

ヨハンネス:つまり、俺達が関わるようになったのは、原案からずっとあとのことだったというワケさ。

YG:短編『Impaled Rektum』に登場するバンドも、売れないローカルなデス・メタラーなのでしょうか?

ユーソ:デス・メタル・バンドという点では同じだけど、短編では、ヴォーカルが実はフォーク・シンガーなのに、その事実を隠して加入するんだ。それがバレて一旦バンドは解散するものの、結局は受け入れることになり、また一緒にやっていく…というストーリーだった。

ヨハンネス:当時のヴォーカル役は、キーラカという実際のフォーク・シンガーが務めていたんだよ。そして、元々のクシュトラックス役は…何と、ユーソが演じていたんだ!(笑)

ユーソ:そうそう(笑)。ただ、キーラカは亡くなってしまったんだ…。

ヨハンネス:ああ…。でも、トゥロはキーラカを聴いているという設定になっているよ。映画には出てこないけどね。

サブ画像

Wacken Open Airの転換中に3分で撮影

YG:ちなみに、監督はそもそもメタル好きなのでしょうか?

ユーソ:うん。生まれた瞬間にはもうメタル・ファンだったよ(笑)。初めて自分で買ったアルバムはメタリカの“ブラック・アルバム”(1991年『METALLICA』)で、確か10歳の時だったと思う。

YG:相棒のユッカさんは?

ユーソ:それが違うんだよ。まぁ、メタルも聴かなくはないけど、彼が好きなのはフィンランドのフォーク/トラッド・ミュージックだね。

YG:ヨハンネスさんは?

ヨハンネス:ティーンエージャーの頃、最初にハマったのはクイーンで、それからメタリカ、ドリーム・シアター、メガデス…と、どんどんハードなサウンドにのめりこんでいったよ。そして、『ヘヴィ・トリップ〜』の撮影でさらに暗黒方面へ飛び込むことになった。インペイルド・レクタムでブラスト・ビートの洗礼を受けたりしてね(笑)。

YG:『ヘヴィ・トリップⅡ〜』にBABYMETALをフィーチュアしようと思ったキッカケは?

ユーソ:制作の初期段階に、今回は堅物のクシュトラックスが妥協したり、心変わりするようなシーンが必要だ…と考えてね。それで、賛否や議論を呼ぶようなバンドを持ってこようと思ったんだ。

ヨハンネス:クシュトラックスは、他のみんなが好きなバンドを認めないようなところがあるけど、「いや、俺も好きだ」と認めることで、彼の成長を描こうとしたんだよね。

サブ画像:クシュトラックス

ユーソ:そういったシーンにBABYMETALはうってつけだった。そもそも、僕が彼女達のファンだというのもあるけど──クシュトラックスが「俺が気に入るなんて…?」と悩む姿を思い浮かべると、それ以上に完璧なバンドは他にいないと思った。ただ、当初の台本には“BABYMETALのようなバンド”と書いてあって…。というのも、こんなチンケなフィンランド映画に(苦笑)、世界中で大人気の彼女達が出演してくれるなんて夢にも思ってなかったから。

ところが、プロデューサーがBABYMETALチームに連絡を取り、出演を交渉してくれて、何と実現してしまったんだよ! 何でも(BABYMETALのプロデューサーの)KOBAMETALはこの映画のファンで、『ヘヴィ・トリップ〜』を映画館へ観に行ってくれたそうなんだ。実際、彼等とのミーティングはとても上手くいって、撮影に関しても、ツアーの合間に3日間とかなら…ということになった。そうして、リトアニアまで来てもらって撮影を行なったという。いやぁ、未だに信じられないな。

BABYMETAL
BABYMETAL

ヨハンネス:ミーティングの席でユーソは、出演を快諾してくれたことに対して、日本語で感謝を述べたそうだ。

ユーソ:ああ。大学で日本語を学んでいたのが役立ったよ。

YG:それは凄い! 今回、インペイルド・レクタムがWOAを目指す…というのは、誰のアイデアでしたか?

ユーソ:とにかく“デカいフェスに出る”というのがまずあったんだ。それでプロデューサーから「ドイツにはこの映画のファンが沢山いるから」と提案があって、最初の台本を書くに当たって、“WOAで撮影する”ということだけ先に決めてしまったんだ。その時点では、WOAで何をするか、何もアイデアはなかったんだけどさ(笑)。だって、WOAはメタラーなら誰でも目指す巡礼地のようなところだろ?

YG:メタルの聖地ですから!

ユーソ:そうそう!

YG:実は私も、撮影が行なわれた2023年のWOAに行っていたのですが、あの年は過去最高の悪天候に見舞われ、現地では色々と大変だったのでは…?

ユーソ:うん、とにかく酷い天気だった。ずっと雨が降り続いていて…。幾つかのシーンでは、雨が降っているのが分かると思う。でも、ラッキーにも何とか止み間に撮影することが出来たんだ。

ヨハンネス:神に祈った甲斐があったな!(笑)

Wacken Open Air 2023
WOA2023は豪雨に見舞われ会場中が泥まみれに…。

ユーソ:あと、ステージのシーンは実際のフェス中に撮影したんだけど、出演バンドの出番の合間──転換中にやらなくちゃいけなくてね…。

YG:そうだったんですか…!!

ヨハンネス:だから観客は、「アイツら何やってんだ?」と思っていたみたい。中には気付いたヤツもいて、「トゥロじゃないか!」と言われたりもしたけど、「ゴメン…いま撮影中だから」となったりとかね(笑)。ただ、短い時間ですべてを終えなくちゃいけない中、スタッフやクルーは本当によくやり遂げてくれたと思う。特にあのシーンはとても重要な場面だし。まさに映画への情熱の賜物だな。ホント感謝しかないよ。

ユーソ:転換中に3分だけ撮影可…って感じでね。あと、引きの画を撮りたいんだけど、実際のフェス中に撮影しているから、ステージの横でクルーが次のバンドのセッティングをやっていたりして、その辺はCGを使って何とかしたり…とか。他のシーンの大半は、フェス開催の前に撮影したんだけどさ。

ヨハンネス・ホロパイネン(トゥロ役)
ヨハンネス・ホロパイネン(トゥロ)

ヨハンネス:君は撮影しているところを見た?

YG:いや、全く気付いてなかったです。他のステージに行っている時だったかもしれませんが。ともあれ、天候も、時間的制約も…すべてがハンパなく大変だったことは想像出来ます。

ユーソ:撮影で5日間、WOAに滞在していたんだけど、その間ずっと濡れた服で過ごしていたよ。ろくに着替えも用意してなかったから、毎朝起きたら、「またこの濡れた服を着なくちゃならないのか…!」ってね。実際、酷い状況だったな…。豪雨も泥も最悪で、まるで「ここは戦場か?」って感じだったよ…!!(苦笑)

YG:本当にお疲れ様でした…! ところで、今後についてですが──それぞれ原題が『HEAVY TRIP』、『HEAVIER TRIP』ということで、『THE HEAVIEST TRIP』という3作目に期待している人も多いのでは?

ヨハンネス:うん。俺達も期待しているよ!(笑)

ユーソ:まぁ、この2作目の反応次第だな。大ヒットすれば、当然また続編の可能性が出てくる。

YG:実は先日、プロデューサーのカイ(ヌールドベリ)さんと少し話す機会があったんです。彼は、「3作目が実現したら、今度の舞台は日本だ!」と言っていました。「インペイルド・レクタムが次に目指すのは武道館公演さ…!」と。本当のことなのか、その場での思い付きで、ただのサービス・トークなのかは分かりませんが…(笑)。

ユーソ:そうなったら最高だけど…。

ヨハンネス:でも、嘘を言う人じゃないからな!(笑)

ユーソ:僕の頭の中にも何となくの構想はなくもない。ただ、まだ何も具体的ではないし……まぁ、「どうなるかお楽しみに!」ってとこだな。もし武道館で撮影出来るんなら、是非そうしたいものだけど…!

ヨハンネス:武道館ってどんなところなんだい?

ユーソ:でっかいライヴ会場さ。

YG:元々はその名の通り武道会場なんですが、1966年のザ・ビートルズ公演に始まり、ディープ・パープルやチープ・トリック、あとジューダス・プリーストやアイアン・メイデンなどなど、伝説的なHR/HMバンドがそこでプレイしてきました。

ヨハンネス:よし! そりゃ目指すしかないな…!!(笑)

 

映画『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』概要

2024年12月20 日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

原題:HEAVIER TRIP
邦題:ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!
製作:カイ・ヌールドベリ、カールレ・アホ
監督・脚本:ユッカ・ヴィドゥグレン、ユーソ・ラーティオ
出演:ヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オヴァスカ、サムリ・ヤスキーオ、チケ・オハンウェ、アナトーレ・タウプマン、
ヘレン・ビースベッツ、ダーヴィト・ブレディン、JUSSI69、SU-METAL(BABYMETAL)、MOAMETAL(BABYMETAL)、MOMOMETAL(BABYMETAL) 他
字幕翻訳:堀田雅子 字幕監修:増田勇一 後援:フィンランド大使館
共同提供:キングレコード+スペースシャワーネットワーク
宣伝:HaTaKaTa
配給:SPACE SHOWER FILMS

【2024年|フィンランド映画|96分|カラー|スコープ|DCP|原題:HEAVIER TRIP】

© 2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food

『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』公開記念 前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』再上映

2024年12月13日(金)〜19日(木) 東京 シネマート新宿
2024年12月13日(金)〜19日(木) 愛知 センチュリーシネマ
2024年12月14日(土)〜20日(金) 新潟 高田世界館
2024年12月27日(金)〜29日(日) 群馬 シネマテークたかさき
2024年12月27日(金)〜29日(日) 宮崎 宮崎キネマ館
2025年1月17日(金)〜23日(木) 東京 シネマネコ
2025年1月24日(金)〜30日(木) 兵庫 塚口サンサン劇場

 

公式インフォメーション
映画『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』公式サイト