KOIAIのLi-sa-Xと葉月、EP『Deep Love』は「ツイン・リードがたくさん」

KOIAIで「A New Picture」をやるのは挑戦だった

ＹＧ：狙いが完璧に成功していると思います。続いて２曲目「One Way or Another」、こちらもLi-sa-Xさん作。私は取材前の感想のメモに「AC/DC風、’80年代ハード・ロック風」と書いたんですが…。

葉月：ああ～！　なるほど。

Li-sa-X：明るく盛り上がれる曲も１つ、この2nd EPの中に入れたいと思って。ライヴの最後にお客さんと一緒に盛り上がれるような、一体感のある曲をイメージして作りました。

ＹＧ：かと思えば、Aメロの後のバッキングでは非常に緻密なハーモニーが聴けたりして、この辺りがKOIAIらしさかとも思いました。

葉月：最初にLi-saちゃんからもらったアイデアの段階から、シンプルだけど聴かせどころがたくさんある曲だったんです。ポリリズムっぽいところもあるし、それ以外にもギターのいいところがたくさん出ていて、弾いていて楽しいですね。こういうのをちょいちょい入れてくるのがLi-saちゃんらしいなと。

ＹＧ：そして３曲目「Straight To My Heart」は、お二人の共作。

葉月：これは基本的に私が作った楽曲のフレーズを、Li-saちゃんがいい具合にブラッシュアップしてくれた形です。

ＹＧ：イントロでいきなり長めのギター・ソロが始まるので、他の曲とかなり違った印象を受けました。インストと歌モノの中間のような曲ですよね。

Li-sa-X：1st EPの「Your Socks」なんかもそうだったんですけど、葉月ちゃんの作る楽曲は私には、すごくしっとりとしたイメージがあって。その葉月ちゃんらしさを、上手く汲み取りたいと思ったんです。それにせっかく共作ならギターも目立たせたいし…ということで、結果的にKOIAIとしては新しい感じが出せました。

葉月：歌メロもLi-saちゃんが考えてくれて、いい意味で抑揚を抑えたヴォーカルが、すごく今の時代に合っていると感じています。

ＹＧ：歌はR&B的というか、宇多田ヒカルさんを思わせるような。

葉月：確かにそうですね。

Li-sa-X：Kotonoちゃんにすごく合っているので、そういう方向性に落とし込もうと思って。

ＹＧ：そしてサウンド的には、ギターの控えめなクランチの歪みがすごく素敵ですね。

Li-sa-X：ありがとうございます。それこそしっとりと聴かせたいと思って色々試したので、これは私たち的にも大成功です。

葉月：元ネタを言っていいのかわからないですけど（笑）…ポリフィアのある曲を聴いた時に「こういう曲を作りたい！」ってインスパイアされて作ったので、彼らのようなトーンになってるなあ…と思います。

ＹＧ：なるほど、言われてみれば確かにポリフィア的な曲かもしれないですね。続いて４曲目「A New Picture」はLi-sa-Xさんの作曲で、非常に激しいリフが印象的です。

葉月：出た！（笑）

Li-sa-X：これはすごく挑戦的だったよね？

葉月：最初、仮タイトルが「腱鞘炎」だったんですよ（笑）。BPM165ぐらいで、ひたすら16分音符を弾き続ける曲で。右手も左手もとにかく忙しくて、途中にオブリも入ってくるし、もうずっと50m走のような感じです。

ＹＧ：そういう嵐のようなパートと、速度を落としてゆったり歌うパートが交互に来る構成ですね。

Li-sa-X：前作や、今回の2nd EPの他の曲と比べて、ちょっと外れたタイプというか…ギターのサウンド的にもかなり違いますし、自分的にはKOIAIでこれをやるのは挑戦だったんです。でもこの激しいリフから勢いを落として、Kotonoちゃんの歌が入ってくる感じが面白いなと思って。最初にこのリフを思いついた時は、どうしようかすごく悩んだんですよ。ラップを乗せるとか、色々考えたんですけど…。

葉月：ラップ！

Li-sa-X：でも勢いを落としてみて静かな歌を乗せたら、意外と面白くて。ガーっと走り切るのではなくて１回落とすという、KOIAIらしさを入れてみました。

ＹＧ：例えば1st EPと2nd EPの全曲を通して聴いていて、この激しい曲が出てくるとかなり驚きがありますよね。曲調が全く違うので。

葉月：でもお客さんからの評価も高いんですよ。「よし、来たか！」って思われている感じはあると思います（笑）。

ＹＧ：ファンのみなさんからは既に、KOIAIはこういう激しい曲もアリなアーティストなんだと認識されているわけですね。

葉月：そうだよね？

Li-sa-X：うん、そうだと思います。

ＹＧ：そして最後の「My Breath」は、葉月さんの作曲。これも相当激しい曲調で、ヘヴィ・メタルと言ってもいいですね。

葉月：このラインナップの中にあったら面白いかなと思って、今まで温めておいたんです。個人的には本当に入れていいのかな…という思いもあったんですけど。でもアルバムを通して聴いてみると、「A New Picutre」や「Straight To My Heart」のように全く違う曲調も入ってますし、上手くバランスが取れたかなと思います。

ＹＧ：コード進行的に面白い瞬間がいくつかありますよね。ダイアトニック・コードから外れてもわりと平気な感覚があるのが、面白いというか…。

葉月：最初のリフからもう外れてるんです（笑）。もともとは違うフレーズを弾いていたんですけど、これはこれで美味しいんじゃないかということで、採用してもらって。

ＹＧ：外れるのは簡単かもしれないですけど、心地よい進行に戻ってくるのは難しいですよね。そこが独特のセンスだと思いました。

葉月：面白いんじゃないかと思う音を詰め込んだら、自然とそうなりました。

ＹＧ：一方、サビに入るとすごくさわやかなコード・ストロークが出てきたりもしますし、非常に表情豊かな曲になっている印象です。

葉月：そうですね。その辺りはやっぱり、Kotonoちゃんが歌うことによって上手く表現が広がったのが大きいと思います。

ＹＧ：…というものすごくヴァラエティのある５曲を収録した、表情豊かなEPになったわけですが。最後にお二人それぞれから、作品の聴きどころだと思うポイントをアピールしていただけますか？

Li-sa-X：「Straight To My Heart」みたいにしっとりした曲から「A New Picture」のように激しい曲まであって、さらに「Inside」みたいな代表曲もあるし、これを聴いてほしい！って１つに絞るのは難しいかも…（笑）。わたし的にはKOIAIの振り幅の広さが詰まったEPになったと思います。この『Deep Love』がKOIAIの全貌…って感じですね。

葉月：私も「Inside」は、KOIAIのバンド・サウンドがまとまった１曲だと思います。作品全体としては、ギターがAメロやBメロなどでも細かいフレーズを色々と弾いているので、細部のニュアンスまで耳を傾けてもらえたら嬉しいです。