ギター・チームとして既に6年もの付き合いになるLi-sa-Xと葉月、そしてシンガー/ダンサーとして多彩なユニットで活動してきたKotonoという3人が集結し、2022年から本格始動したKOIAI。彼女たちが2023年10月にリリースした2nd EP『Deep Love』は、前作『Deep Indigo』(2023年5月)の時点で高い完成度にあった音楽性に磨きをかけ、さらに個性の面で突出させたかのような作品だ。あくまでもポップでありつつディープな感情表現もできるヴォーカルの周囲を、ロック&メタル由来の安定した技巧で自由自在に彩るギター…という、他に比較する対象が思い浮かばないような個性は、既に「耳にしているだけで心地よい」の領域。ちなみに12月10日には、以前からサポート・ドラマーとしてライヴを支えていた佐藤 奏が正式メンバーとして加入することが発表されており、4人編成として強化されたKOIAIが今後どんな風に活躍していくのか楽しみで仕方がない。
さて、ここからのインタビューではLi-sa-Xと葉月にご登場いただき、遅まきながらこの2nd EP『Deep Love』の制作裏話について語っていただいた。
「KOIAIとは何か?」と聞かれた場合に「Inside」を選びたい
YG:お二人は2022年までLi-sa-X BANDとしても一緒に活動されていましたが、KOIAIとしてはヤング・ギター初インタビューということで…まずはこのバンドを結成することになった経緯から、改めてお聞きしてもいいでしょうか?
Li-sa-X:葉月ちゃんとは私が12歳の頃、ワンマン・ライヴのサポートをしてもらった時から本当に仲良くさせてもらっていて、もう本当にお姉ちゃんみたいな感じで(笑)。だから今回も改めて誘ったというよりは…。
葉月:決定事項みたいな感じでした(笑)。
Li-sa-X:Kotonoちゃんとは、森久保祥太郎さんのラジオ番組(『森久保祥太郎 presents IRONBUNNY’S ROCK ROCKER ROCKEST』)に呼んでいただいた時が最初の出会いだったんですけど、その後もライヴとかで一緒に演奏させてもらう機会が何度かあったんです。さらにTWICEの「BETTER」という楽曲で一緒にYouTubeでコラボしたり、葉月ちゃんと3人でポリフィアの「ABC」という楽曲をカヴァーしたり。それで相性がぴったりだということで、新しいバンドを一緒にやりませんかと誘いました。
葉月:私もそのラジオ番組に、NEMOPHILAのギタリストとして出演させていただいたことがあって、Kotonoちゃんとはその時が初対面でした。
YG:最初からどんな音楽をやりたいという、はっきりしたヴィジョンはあったのでしょうか? それとも、このメンバーが集まって自然と生まれる音楽をやりたいというスタンスでした?
Li-sa-X:このメンバーだからこそ出てくる音楽をやれればいいなと思っていました。Kotonoちゃんはダンスという武器も持っていてステージングでかっこよく見せられるし、そういうダンサブルな曲も私たちには合っているんじゃないか…って。3人の化学反応から生まれる音楽をやっている感じです。
葉月:ヴォーカルはやっぱりバンドにとって一番大事なパートだし、Li-sa-X BANDの時と比べて、自然と音楽性が変わっていくんだろうなと想像はしていました。
YG:面白いですよね。素人考えだと、メンバー3人のうち2人が前のバンドと同じなら、方向性もそれほど変わらないだろうと思ってしまうんですが。でもKOIAIの音楽を聴くと、全く新しい方向性に進んだように感じます。
葉月:Li-sa-X BANDの時は、何と言うか…ギターをフィーチュアし過ぎたという反省点もあったんです(笑)。それをどうしようかという話し合いもあって、あまり弾き過ぎず、よりシンプルにしようと意識はしています。
YG:曲作りはどんな風に進めるのでしょうか?
Li-sa-X:私の場合は…「曲による」というのが正直なところなんですけど(笑)、1st EP『Deep Indigo』に関しては「Kotonoちゃんが歌って私たちのギターが入るならどういう楽曲がカッコいいだろう」「私たちにしかできない音楽って何だろう」と考えた時、シンプルでありながらツイン・リードがたくさん入っている曲がいいと思ったんです。それで、例えばドラムやベースを打ち込む時にテンポを何となく決めて、メロディーを少しずつ付けていって、ギターを録ってみて…。
YG:自分の理想の形に少しずつ近付けていく作業ですね。
Li-sa-X:そうです、その近付けていく作業が難しくて。最初に自分が頭の中で思い描いて録ったギターも、いざ歌と合わせてみたらちょっと違う…みたいなこともあったり。だから今もまだ、良い作曲の方法を追求してるところです。
葉月:私も、普段必ず決まっている曲作りの仕方があるわけではないんですけど…一度、3人でLi-saちゃんの家に集まって、いっせーので曲を作ってみようとしたことがあったんです。でも全然上手くいかなくて(笑)。だから結局、曲は個人個人で作っています。
YG:なるほど、作曲できるメンバーが多い場合はそれが一番いいのかもしれませんね。そういう試行錯誤の時期を経て、今回の2nd EP『Deep Love』はいかがでしょう? 聴かせていただいた感想だと、前作よりもハッキリとしたヴィジョンが生まれてきたのかな…と思ったんですが。
Li-sa-X:そうですね、やっぱり1st EPに比べて「これだ!」という感覚はありました。
葉月:KOIAIらしさとは何なのかを表せたのは、この2nd EPの方かなと思います。
YG:そのKOIAIらしさを、言葉で表すとどうでしょう?
葉月:何て言ったらいいんだろう…ジャンルが自分たちでもハッキリ定まっていないので、例えば「ダンサブルなヴォーカルにツイン・ギターの旨みが加わった音楽」みたいに表現するしかないかもしれないです。
Li-sa-X:私たちのツイン・リードを大切にしつつも、Kotonoちゃんの歌の色もKOIAIらしさとしてすごく大事な要素で…そういう音楽ですね。
YG:そこはお二人の共通認識なわけですね。では具体的に、最新作『Deep Love』の収録曲に関して細かくお聞かせください。まず「Inside」はLi-sa-Xさん作で…1曲目から個性的なギター・フレーズをたっぷり聴くことができます。先ほど「あまり弾き過ぎないように」という話もありましたが(笑)。
Li-sa-X:どんどん入れていたら、いつの間にかギターだらけになってしまったという…。
葉月:これでも控えめな方だと思っているんですけど、そうでもないのかな?(笑)
Li-sa-X:自分たち的には「Straight To My Heart」のツイン・リードとか、「My Breath」の方がもっとバッキングが忙しかったり…。
葉月:そうだね。
Li-sa-X:だからことさら「Inside」のギターが忙しいという感覚は、あまりないんです。でも1st EPを改めて聴くと、ちょっとシンプルにしすぎたかな…と思うところもあって。だから2nd EPではなるべくKOIAIらしさを残しつつ、私たちのギターの音ももう少し目立たせたっていう感じですね。
YG:そのバランスも、色々と試行錯誤しているわけですね。
葉月:個人的には「KOIAIとは何か?」と聞かれた場合に、全部の曲の中からこの「Inside」を選びたいぐらい、自分たちらしい出来になったと思います。モダンなオブリも入ってるし、Li-saちゃんの作る楽曲らしいと思いました。
YG:基本的にはしっとりした歌声を聴かせる曲でありながら、1番と2番の間に突然テクニカルなプログレ・メタル風のパートなんかも入ってきたりして、こういうアイデアはどこから出てきたんだろう…と驚かされました。
Li-sa-X:曲ごとに「この曲はこう」「この曲はこう」という、特徴というかコンセプトをそれぞれ自分の中で決めていて。「Inside」に関してはそれこそ、聴いた瞬間に「おっ!」と思ってもらえるようなパートを入れたかったんです。そうやって試行錯誤してみた結果、こうなりました。