オラフ・トーセン、ラビリンス新作『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』は「古き良きオールド・スクールなメタル・アルバムに仕上げたかった」

オラフ・トーセン、ラビリンス新作『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』は「古き良きオールド・スクールなメタル・アルバムに仕上げたかった」

イタリアのプログレッシヴなメロディック・パワー・メタル・バンド:ラビリンスがニュー・アルバムをリリース! 『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』とタイトルされた待望の新作は、’17年作『ARCHITECTURE OF A GOD』に続くスタジオ・フルレンスとしては通算9枚目だ。’19年2月の来日公演後、ドラマーが交代しているが、サウンド面で大きな影響はなく、アルバム全体としては初期路線により回帰したような印象すらある。そんな充実の仕上がりについて、ツイン・ギターの一翼を担うオラフ・トーセンに語ってもらった…!!

ラビリンスの音楽を作るためには、これが完璧な方法なんだ

YG:新作について質問する前に、まずはメンバー・チェンジのことから。前作『ARCHITECTURE OF A GOD』で叩いていたジョン・マカルーソは、どのような理由でバンドを去ることになったのですか?

オラフ・トーセン(以下OT):ジョンは『ARCHITECTURE OF A GOD』で素晴らしい仕事をしてくれたし、ナイス・ガイで、共に楽しい時間を過ごすことが出来た。でもその一方で、彼はあちこちのレコーディング・セッションやスタジオ・ジャムに呼ばれ、いつも忙しくしていてね。俺達は今回、新作によりパワフルで、もっとメタルらしさを押し出したドラムが必要だと考えたんだ。しかし、ジョンにそれを要求するとなれば、これまで以上の時間と労力を必要とし、彼の仕事に影響が出てしまうだろう。そこでお互い合意した上で、俺達の求める条件を満たしてくれるドラマーとして、マット(マッティア・ペルッツィ)に加入してもらったのさ。

John Macaluso

YG:マットはどのようにして見つけたのですか?

OT:彼とは、’15年にツアーを共にしたことがあってね。彼は新作の方向性に完璧にフィットした、正に俺達が望むドラマーだ。強力なツー・バスを武器とする、完全なるメタル・ドラマーだよ。勿論、スタジオでも100%プロの仕事をしてくれる。それに、友達としても最高だし、俺個人としては、マーク・ボールズとのシャイニング・ブラックで素晴らしい仕事をやってくれたことが大きかったね。

ジョンと最後にプレイしたのは(’19年2月来日時の)東京での公演で、マットにはその後すぐ加入してもらった。既にライヴも一緒にやったけど、元々マットはラビリンスの大ファンで、セットリスト全曲をよく知っていたから、たった1回のリハーサルしか必要なかったんだ。

Mattia Peruzzi

YG:その後、『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』の曲作りはいつ始めましたか? 全曲あなた、アンドレア(・カンタレッリ:g)、ロベルト(・ティランティ:vo)の共作となっていますが、作曲はどのようにして進めていったのでしょう?

OT:いつも俺とアンドレアが最初にリフやメロディーのアイデアを出し、それを半分くらい形にしてからロベルトに送る。その後、メンバー全員で集まって、さらにアイデアを交換し合い、最終的に全員が納得するまで練り上げていくんだ。もしかしたら奇妙に思うかもしれないけど、ラビリンスの音楽を作るためには、これが完璧な方法なんだよ。言うまでもなく、メンバーはみんなそれぞれで曲を書こうと思えば出来る。でも、それだと俺達が望む曲にはならないのさ。

YG:クレジットを見ると、“Recorded by Labyrinth around the world”とありますが、レコーディング作業はメンバー各自が自宅スタジオなどで行なったということですか?

OT:うん。みんな自分のスタジオを持っているからね。ただドラムだけは例外で、ちゃんとした空間でマイクを立てて、良い反響やリヴァーブなんかを得る必要があるから、シモーネ(・ムラローニ)のドミネーション・スタジオで録音した。ミックスとマスタリングもシモーネにやってもらったよ。

YG:シモーネはDGMのギタリストですが、ギター・パートについて、彼から何かアイディアをもらったり、アドヴァイスを受けたりしたことは?

OT:いや、ギター・パートはすべて自宅スタジオで録音して、シモーネにはその音源を送っただけだ。アイデアを共有するのは良いことだし、彼の提案を受け入れる準備はいつだってある。俺が考えているサウンドについて、事前に彼と話し合うこともあるしね。シモーネとは大親友で、これまでに沢山のアルバムを一緒に制作してきた。だから彼は、間違いなく俺が求めるモノを分かってくれているんだ。

Roberto Tiranti

俺達はソロを弾くことにあまり興味がない

YG:レコーディングでは、全曲のギター・パートすべてを2人で弾きましたか?

OT:ああ。俺とアンドレアは、常にギター・パートをシェアしているよ。’93年に作った最初のデモの時から、ずっとね。それ以来、俺達はお互いのパートを意識し、考慮しながらプレイ・スタイルを高めてきた。レコーディングでは、同じプレイを重ねることもある。そうすればよりタイトな音に仕上がるからな。但し、例外もあって──それは大抵、レコーディング中にリフやパターンを変更する際さ。そうなった時は、もうひとりがそれを覚えるための時間や労力を要しないよう、新たなトラックを録音した方が2倍働くことになる。今回、俺達はギター・パートの録音を2日間ですべて終わらせたよ。

YG:今回のレコーディングにおける使用機材を教えてください。まずはギターから。

OT:俺が弾いたのは、シェクターの“Banshee Elite 6 FR-S”と“Banshee Mach 6”。アンドレアは日本製のシャーベル“650 XL”を使っていたな。今回、7弦は使わないようにした。何故なら、古き良きオールド・スクールなメタル・アルバムに仕上げたかったからさ。

YG:シェクター2本の使い分けは?

OT:“Elite”はソロで弾いた。サステインが効くピックアップが搭載されているからね。あと、クリーン・パートではシェクター・カスタム・ショップ製の“PT Custom”も使ったな。さらに、やはりシェクター・カスタム・ショップ製の“Sunset Custom”もあちこちで弾いた。俺はシェクターのエンド―サーだからな!

YG:アコースティックは?

OT:(ボーナス・トラックの)「Lady Lost In Time」のアコースティック・ヴァージョンで、テイラーの“614ce”を弾いたよ。オリジナル(’98年『RETURN TO HEAVEN DENIED』収録)が速くてヘヴィだったから、全く違うスタイルでプレイしたら面白いんじゃないかと思ったんだ。

YG:アンプは何を?

OT:リズム・ギターはすべてピーヴィー“6505”。ソロでは、俺はエングル“Powerball”、アンドレアはメサブギーの“Triple Rectifier” を使ったよ。但し、すべてのギターはケンパーを通して録音し、リズム・パートはあとからリアンプしたんだ。セレッションの12インチ×4搭載スピーカー“V30”などを使い、実際のコーンによって生成されるパンチの効いたサウンドを得るためにね。その際シモーネは、ベストなテイクを録るために、キャビに沢山マイクを立てていたな。一方、ソロではリアンプしなかった。殆ど大差ないし、場合によっては、ハーモニーをダメにしてしまうからね。

YG:エフェクターはどうでしょう?

OT:レコーディングでは、何のエフェクトも使わない。ミックスの際、すべて後付けさ。ソロでリヴァーヴとディレイ、あと、クリーン・パートでコーラス…といったようにね。リヴァーヴとディレイは、TCエレクトロニックを使ったよ。

YG:全曲のチューニングを教えてください。

OT:すべて半音下げのE♭だよ。

YG:ギター・ソロの振り分けはどのようにして決めていますか?

OT:ヘンに思うかもしれないけど、俺達はソロを弾くことにあまり興味がない。勿論、ラビリンスの曲には沢山のソロが存在するけど、内訳については意識しないんだ。曲が完成したら、どこで何を弾くか決めるだけ。俺とアンドレアは、もう20年以上も一緒にプレイしているから、誰がどこで何を弾くかを決めるのは容易いのさ。その際、ランダムに決めているし、特にこれといった理由はない。どのソロも即興で演奏し、その中から最も気に入ったモノを採用するだけだね。

YG:あなたはリード・プレイにおいて、アームを効果的に多用していますね?

OT:確かに! そう言われて気付いたけど、いつ、どうやって始めたのか記憶にないんだ。俺の好きなギタリストの影響はあるよ。例えば、ストライパーのオズ・フォックス。「The Way」(’86年『TO HELL WITH THE DEVIL』収録)でそれをやっていて、まだガキだった俺は、「何かの効果音だけど、エフェクターとは違うな…」と思っていたんだ。でも、その頃はまだインターネットが普及していなかったから、どうにも調べようがなくてさ。そこで俺は、考え付くすべての方法でその音を再現しようと挑戦してみた。ラッキーなことに、当時ケーラー付きのギターを持っていてね。それで最終的に、ワーミー・バーを素早くハジけば出来ることに気付き、そこから練習を積んでいったんだ。

Nik Mazzuconni

YG:前作『ARCHITECTURE OF A GOD』でも思ったのですが、あなたのギター・テクニックは初期と比べて飛躍的に向上していますね? ご自身でもどんどん巧くなっていることを自覚していると思いますが、10代や20代のギタリストならまだしも、40代になっても進化し続けているのは凄いことだと思います。

OT:ちょっと照れ臭いけど…まずはお褒めの言葉をありがとう! いや、自分ではよく分からないよ。俺自身は、ソロよりも楽曲全体を大事にしているからね。俺にとって、ソロは曲の中のほんの一瞬の出来事なんだ。何か変わったとしたら、単純に経験とスタジオで過ごした時間だと思う。ずっと前は、レコーディングの準備をやろうと思っても、やることが多過ぎて、とても自分の時間が取れなかった。スタジオで1ヵ月を過ごすにしても、他のメンバーを最後までフォローしつつ、自分のプレイもコナさなくちゃ…でね。

いつもソロは即興で演奏してきたけど、好きなだけソロに集中する時間がなかった…とも思う。でも、今ではありがたいことに状況が変わって、俺はここ何年も色々なスタイルを試しながら練習を積んできたんだ。昔ながらのネオ・クラシカル・スタイルとはしばらく距離を置いていたしね。

YG:アンドレアも、あなたのバンド復帰後からどんどん腕を上げているように感じます。

OT:うん。間違いなく上達したと思う。俺達はアルバム毎にお互いを高め合っているんだ。一方が凄いことをやったら、もう一方も刺激されて、より良い結果を出す…という感じでね!

Andrea
Olaf

YG:新作の中で特に気に入っているギター・プレイというと?

OT:「The Absurd Circus」のソロだね。ヘヴィからメロディックに変わっていく部分が、とても気に入っているよ。

YG:ウルトラヴォックスのカヴァー「Dancing With Tears In My Eyes」が収められていますが、なかなか興味深いセレクトですね?

OT:いや、単純に好きな曲だからさ。いつも言ってるけど、俺達がカヴァーするのは、長年の音楽愛を育んでくれたバンド達へのトリビュートなんだ。この曲がリリースされた時、俺達はただの子供だった。でもそういった曲がいつしか、今の俺達の頭の中から出てくるメロディーの源泉になっているのさ。

YG:では最後に、今後の予定を教えてください。今のコロナ禍ではツアーを行なうことは難しいと思いますが…。

OT:今は人類にとって、かつてないほどの困難な時期だよね。だから、何にしても計画を立てることは難しい。ただ、「俺達は出来る限り早くステージに戻ってくる」ということだけは言いたい。日本にもまた行けることを願っているよ。みんなも気を付けて──たとえどこにいようともね。いつかきっと状況は良くなる。それまで…Stay safe!!

オラフ近影
髪をバッサリ切った現在のオラフ。

LABYRINTH
[LABŸRINTH L. to R. Olaf Thörsen, Roberto Tiranti, Mattia Peruzzi, Nik Mazzucconi, Andrea Cantarelli, Oleg Smirnoff]

INFO

LABYRINTH - WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS

『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』LABŸRINTH
2021年1月22日発売

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