アンドレ・マトスの遺志を継ぐシャーマン新作『RESCUE』を、ヒューゴ・マリウッティが語る!

アンドレ・マトスの遺志を継ぐシャーマン新作『RESCUE』を、ヒューゴ・マリウッティが語る!

すべてのギターを試して、曲にピッタリくるものを見付ける

ヒューゴ 黒いSGでのオフショット2

YG:レコーディングは、サシャ・ピートをプロデューサーに迎えて行なったそうですが、彼をブラジルまで呼んだのですか? それとも、リモートで…?

HM:コロナのことがあったから、彼をブラジルへ呼ぶことはできなかった。それで、プリ・プロダクションからオンラインで進めたよ。アリリオだけは、ドイツでサシャと一緒にレコーディングしたけどね。彼はスペイン在住で、ドイツ行きも問題なかった。本来なら、みんな一緒にスタジオ入りし、その場でサシャから逐一アイデアをもらえたら良かったんだけど、今回はこの方法しか選択肢がなくてさ。おかげで、ちょっと時間がかかってしまったというのもある。ただ、ゆっくりとしたプロセスだったにせよ、俺たちは(’02年『RITUAL』と’05年『REASON』以来)またサシャと一緒に仕事ができて嬉しかったし、結果的にとても上手くいったと思う。

YG:「Brand New Me」のアルバム収録テイクは、’20年のシングルと同じですか? それとも、アルバム用に新たに録り直したのでしょうか?

HM:ほとんど同じだけど、アレンジがちょっと変わっていて、新たに録ったパートもある。ライヴでプレイしたあと、しっくりいかない部分を細かくチェックして、楽器パートを一部レコーディングし直したんだ。

YG:『RESCUE』のレコーディング使用機材を教えてください。ギターは複数本弾きましたか?

HM:ギターは山ほど用意したよ(笑)。俺は色々なアンプ、色々なペダルで実験しながら、色々なサウンドを試すのが好きなんだ。メイン・ギターはギブソンのフライングVだったけど、ファイアーバードも使ったし、SGも、フェンダー・テレキャスターとストラトキャスターも使った。あとアコースティック・ギターは、ギブソンとギルドだ。アンプは、メサブギーの“Dual Rectifier”をメインに、VOX“AC30”、マーシャルの“Plexi”、フェンダー“Deluxe”などなど。全部を挙げていくと、それだけで何時間もかかってしまうかもしれないな。

ーー註:その後、ヒューゴ本人から全リストが送られてきたので、詳しくは次ページを参照のことーー

ヒューゴ 青いファイアーバードのギターでのオフショット

YG:それぞれの機材はどのようにして使い分けましたか?

HM:曲を聴いて、頭の中で鳴っているサウンドに合わせて「ここはフライングVだな」「ストラトキャスターが合いそうだ」といった感じで選んでいく。時には間違うこともあるけど、いつもすべてのギターを試してみて、最高のトーンでレコーディングするよう心掛けているんだ。あれこれ試してピッタリくるギターやアンプを見付けるのが、とにかく大好きなんでね! 例えば、フェンダーのエド・オブライエンのシグネチュア・モデルにはサスティナーが搭載されていて、リヴァーブやディレイで凄く雰囲気が出せる。でも、飽くまでフライングVこそがメイン…というか、ライヴにおいてもこれがメイン・ギターで、シャーマンの最初のツアーからずっと弾き続けているよ。

YG:ギター録りは、マイクを立ててキャビネットの音を拾う、昔ながらの方法を採りましたか?

HM:うん。すべてマイクで拾って録音した。でも、サシャがリアンプしたいと思った時のために、同時にDIでも録っておいたんだ。そうしておけば、さらに色々なサウンドが試せるし、サシャが(テイクや信号を)自由に選べることで、サウンドの幅がより広がるからね。

YG:エフェクターは何を?

HM:俺はアナログ・ペダルが大好きで、古いスタイルにコダワリがあるから、これまた色々と使っているよ。ひとつ挙げると、「Resilience」でストライモンのリヴァーブを使って、雰囲気のあるサウンドを出したり…とかね。

YG:全曲のチューニングを教えてください。

HM:基本はスタンダード・チューニングで、「The “I” Inside」と「Brand New Me」でドロップD、「The Boundaries Of Heaven」でドロップCチューニングを使った。

ヒューゴ 黒いSGでのオフショット1

YG:『RESCUE』収録曲の中で、あなたがヤング・ギター読者に特に注目して欲しいギター・プレイというと?

HM:「The “I” Inside」の最初のソロだな。とてもエモーショナルで、“ギター・ソロへのトリビュート”という感じになっているから。あと、「Gone Too Soon」にはソロが2つあって、どっちも短いけどお気に入りだ。やはりエモーショナルで、速弾きしてはいないけど、サシャも気に入ってくれているんだよ。それから、リフなら「What If?」かな。イントロからパワフルだからね。

YG:ご自分のプレイ・スタイルについて、『RITUAL』や『REASON』の頃からどう変わったと思いますか?

HM:少しは変わっている…んじゃないかな? 自分では数えたくないけど、当時から少し歳を取っているからね(笑)。年齢を重ねれば、色々と変化が起こるのは当然だ。ツアーを繰り返し、ギグの経験を積み、日々進化してきた…のかどうかは分からないけど、とにかく自然と変化は出てくるよ。スタイルそのものは変わってないと思うけど。

YG:ところで、終盤に「The Final Rescue」という曲がありますが、アルバム・タイトルを『RESCUE』にした理由は?

HM:’06年にバンドが分裂する前に、俺たちはEPをレコーディングする計画を立てていた。その時アンドレから提案されたのが、『RESCUE』というタイトルだったんだ。ところが、それから1ヵ月後に俺たちはシャーマンから脱退し、バンドは(一時)崩壊してしまって…。だから…何と言えばイイかな? アンドレの件が──俺たちにとっては本当に悲しい出来事で、今回このアルバムに取り組む際、『RESCUE』以上に良いタイトルはないと思ったのさ。

YG:このアルバムは、アンドレに対するトリビュートだと…?

HM:ああ。一種のトリビュートだね。だから、アンドレのことを全曲で、良いやり方で扱っている。まさに冒頭曲のタイトルは「Tribute」だし、「Gone Too Soon」という曲もあるし…。

YG:では最後に、今後の予定を教えてください。

HM:ツアーをやるよ。5月にブラジルからスタートして、長いツアーになる(註:この取材が行なわれたのは4月)。勿論、新作は日本でもヨーロッパでもリリースされるんだから、是非とも世界中をツアーして廻りたいね。俺としては、いつか日本でプレイできると嬉しいんだけど…!!

シャーマン&ノクターナル2022年4〜5月ツアー日程