SABLE HILLSギタリストRict、Metal Battle優勝を「誇りに思う」:Wacken Open Air 2022 特別インタビュー

SABLE HILLSギタリストRict、Metal Battle優勝を「誇りに思う」:Wacken Open Air 2022 特別インタビュー

毎回、WOAで行なわれている新人発掘のためのワールドワイドなバンド・コンテスト“Metal Battle”。今年の日本代表:セイブル・ヒルズは、何と現地でのファイナル(決勝)で見事に優勝をかっさらった。実は、彼等が国内予選で日本代表に選出されたのは昨年のこと。しかしコロナ禍により、’21年はフェス自体が中止(延期)を余儀なくされ、今年になってようやく開催の運びとなったのである。

日本勢としては初の快挙を果たした彼等──若きメタルコア5人組は、メタルの聖地でどんなパフォーマンスを見せ、現地のオーディエンスからどんなリアクションをもらったのか? リード・ギタリスト:Rictに、自身のバックグラウンドも含め語ってもらった…!!

喜びよりも安堵の方が大きかったですね

WOA22 セイブル・ヒルズ :Rict
Rict(g) / SABLE HILLS

YG:まずは“W:O:A Metal Battle”現地での堂々優勝、おめでとうございます! 優勝バンド発表時の率直な感想から聞かせてください。

Rict(以下R):クラウドファンディングなども通じて、沢山の人達から応援してもらっていて、絶対に負けられないという気持ちだったので、結果が発表された時は喜びよりも安堵の方が正直大きかったですね。

YG:日本人初の快挙ですが、それについては?

R:日本人として、昔からずっと夢見ていたWOAの舞台で結果を残せたことを誇りに思います。

YG:WOA現地でプレイしてみていかがでしたか?

R:出番が朝の11時からで、一番目でまだお客さんが入場してる最中に演奏開始する…みたいな感じだったので、実際にオーディエンスも最初は少なかったです。それでも、音を出していたら徐々に集まってきて、声援をもらい、モッシュも発生して、結果的には最高のライヴが出来たかな…と思っています。

Metal Battleロゴ

WOA22 セイブル・ヒルズ:バンド
SABLE HILLS

YG:演奏曲はどうやって決めましたか? ドイツ、あるいはヨーロッパのフェスということ、国内とのオーディエンスの違いなどは意識しましたか?

R:20分しか持ち時間がなかったので、とにかくパンチのある楽曲だけでセットを組みました。日本だと今、(感染対策で)モッシュとか声出しって出来ない場合が多いですけど、ヨーロッパだと完全にフリーなので、コロナ前のように、「しっかり煽りまくっていこう」と意識はしていました。

YG:“Metal Battle”の他のエントリー・バンドのライヴは観ましたか?

R:出演当日はかなりバタバタしていましたが、自分達の次のバンドだけは観ることが出来ました。どこの代表だったかな?(編註:恐らく、ルーマニア代表のKATARA) ヴォーカルのスクリームがカッコ好かった記憶があります。

YG:そもそも“W:O:A Metal Battle”に応募したキッカケは? それ以前からWOAフェスのことは知っていましたか?

R:ずっと昔から(WOAで)プレイすることを夢見ていました。憧れていたメタル・バンドのWOAでのライヴ映像はたくさん観てきたし、何より世界最大規模の“メタルの”フェスですから、凄く特別な想いがありましたね。“W:O:A Metal Battle”には、海外で活動したいと強く思うようになったことがキッカケとなり、出場しようと思い立ったんです。海外に行くにはやはりオーディション(コンテスト)が手っ取り早く、プロモーション的にもプラスだと考えて出場しました。

YG:“Metal Battle Japan”優勝が決まったあと、コロナ禍で’21年はフェス自体が中止となり、WOA渡独までブランクが生じてしまいましたが、その間にモチべーションが下がった…ということはありませんでしたか?

R:全くありませんでした。むしろ延期となったことで、アルバムも準備して、万全の状態で行くことが出来たので、プラスに働いたと思っています。

YG:日本とドイツ(ヨーロッパ)のコロナ対策の違いや、マスクなし8万人フェスに対する懸念などで、若干でも渡欧をためらった…ということは?

R:コロナ対策に関しては、そもそも自分は、ライヴでマスクを着けることに反対だったので、楽しみでしょうがなかったです。早く日本でも、ヨーロッパと同じ水準でライヴが出来るようになるのを切望しています。


WOA22 セイブル・ヒルズ 表彰式
Pic:©Metal Battle Japan

YG:WOA現地では、他にどんなバンドを観ましたか?

R:ライヴはたくさん観ましたが、中でもスリップノットが凄く印象に残ってます。勿論、自分がずっと好きだったというのもありますが、彼等自身、WOAに出演するのが初めてで、かつヘッドライナーだったからか、メチャメチャ気合いの入ったライヴをやっていて感動しました。あと、アモン・アマースがシークレットで(GUARDIAN OF ASGARDとして)出ていたのですが、地上30mくらいの場所に特設されたステージで演奏していて、爆笑してしまいました。最初、どこで演奏してるのか全く分からなかったのもあって…!

サポートを入れてでも、ツイン・ギター編成でライヴがやりたい

YG:ここからは基本的な質問です。そもそも、ギターを始めた年齢とキッカケは?

R:14歳の時、チルドレン・オブ・ボドムが弾きたくて始めました。

YG:当初はレッスンを受けましたか?

R:レッスンといえるようなレッスンは受けていません。独学です。

YG:初めて弾いたギターを憶えていますか?

R:初めて弾いたギターは、(兄でセイブル・ヒルズのヴォーカルの)Takuyaが持っていたフェルナンデスのストラト・モデルでした。“F**k”っていうステッカーが貼ってあってダサかったです(笑)。

YG:現在は7弦ギターを使用していますが、そのキッカケは?

R:純粋にロー・チューニングを採り入れたかったからですね。

YG:当初に影響を受けたギター・ヒーローというと?

R:パンテラのダイムバッグ・ダレルと、チルドレン・オブ・ボドムのアレキシ・ライホです。プレイも人となりも大好きです。昔は2人と同じように、フロイドローズでスクウィールさせてました。

YG:最初からメタルをやっていたのですか? それとも、他のジャンルから入りましたか?

R:最初からずっとメタルをやっています。以前はTakuyaも在籍していたDASTIE HEADというメタル・バンドにいて、そのバンドが解散したあと、Takuyaと2人でセイブル・ヒルズを立ち上げたんです。

WOA22 セイブル・ヒルズ:Takuya
Takuya(vo) / SABLE HILLS

YG:セイブル・ヒルズでプレイするに当たって、お手本にしたバンド/ギタリスト、特に強く影響を受けたバンド/ギタリストというと?

R:メタルコア的な面でいうと、アズ・アイ・レイ・ダイング、アンアース、テキサス・イン・ジュライなど、メロディアスなギターという面でいうと、アーチ・エネミー、チルドレン・オブ・ボドムなどが根幹にあると思っています。あと、メロディー・センスはゲーム・ミュージックなどからも影響を受けていますね。

YG:セイブル・ヒルズでは、王道のメタルコアにオールドスクールな感触もあるメロディアスなギターを加味している…といった印象ですが?

R:オールドスクールとモダンを併せ持っているところが、セイブル・ヒルズならでは…だと思っています。オールドスクールなメタルコアや、当時のメロデスなどは好きですが、ただそれらを焼き直したような音楽をやる意味はないと思っているので、現行のメタル/ハードコアを踏襲した上で、自分のルーツに沿ったヘヴィ・ミュージックをやっているつもりです。その意図は、しっかりサウンドに出ていると自負していますね。

WOA22 セーブル・ヒルズ :Ueda(b)
Ueda(b) / SABLE HILLS

WOA22 セイブル・ヒルズ :Keita
Keita(dr) / SABLE HILLS

YG:ギター面全般で特にこだわっていることというと?

R:リフを刻む時は、ブリッジ・ミュートのズンズンというエッジを、リードを弾く時は、チョーキングの突き抜け感やヴィブラートの人間感をしっかり出すように意識しています。メタル・ミュージックって、丁寧に弾くのは勿論ですが、その上で、荒々しくワイルドな音も出さなければならない…と思っているので。

YG:では、WOAで使用したライヴ機材を教えてください。

R:ギターはE-IIの“Horizon NT-7B”で、サウンドはLine 6の“HX Stomp”で作ってます。外音はラインで出し、モニター用にムーアーの“Baby Bomb”というパワー・アンプと、現地で用意されたキャビネットを使用しました。

YG:ギターのチューニングと使用弦のゲージを教えてください。

R:基本ドロップAで、7弦のみローEという変則チューニングです。弦のゲージは、1~6弦に[.012-.060]のセットを、7弦目には[.078]のバラ弦を張っています。

WOA22 セイブル・ヒルズ :Rict

YG:いつも曲作りはどのようにして行なっていますか?

R:基本は、自分がすべて作った上でメンバーと共有して、各パートのアレンジしたい部分などをそれぞれ膨らませていく…という流れですね。

YG:現在はサポート・ギタリストを迎えての編成ですが、ツイン・ギターにはこだわりがありますか?

R:勿論です! 自分達の楽曲はツイン・リードが多く登場するので、ギターが2人いるのは不可欠なんです。片方のパートをPCで流すというのも出来なくはないですが、少し説得力がなくなってしまう気がするので、可能な限り──サポート・ギターを入れてでも、ツイン・ギター編成でライヴがやりたいと思っています。

YG:現在のサポート・ギタリストは?

R:前々から付き合いのあったGenというギタリストで、普段はEVERSOLITUDEというバンドで活動しています。ヨーロッパに行くと決まった時、体格の良いヤツを連れて行きたいな…と思い、実力があることも知っていて、タフガイな彼を起用しました。

WOA22 セイブル・ヒルズ Gen
Gen(support g)

YG:今後、正式メンバーに昇格する可能性も?

R:現状、Genにすべてのライヴを手伝ってもらってますが、彼自身の予定もあるので、9月18日の(今年リリースのセカンド・アルバム『DUALITY』に伴う)ツアー・ファイナルまで…という話になっています。

YG:現在、ギター・パートの振り分けはどのようにして? サポートのGenがソロを弾く曲もありましたね?

R:ソロは自分ですべて弾いていますが、リード・パートは弾いてもらっている箇所もあります。というのも、自分がコーラスをするところが曲中に多くあるので、そういうパートでは、自分はコーラスに専念して、リードは彼に任せている…という感じですね。

YG:今回の渡欧では、WOAのあとも他に幾つかフェスに出演し、何ヵ国かツアーして廻っていましたが、特に印象に残っているフェス、ライヴというと?

R:正直、どのライヴも印象に残っていますが、最終日の“The Ultimate Summerblast Festival”では、各地で共演してきたアズ・アイ・レイ・ダイング、ダーケスト・アワー、カムバック・キッド、リゾルヴといったバンドが大集結し、締めくくりに相応しいイベントになりました。「みんなお疲れ~」みたいな感じで。ライヴ自体も一番手応えがありましたし、インスタ・ライヴで生中継したところ、かなりの反響がもらえましたね。

セイブル・ヒルズ ヨーロッパ公演フライヤー

YG:“Metal Battle”で優勝したことで、その後のパフォーマンスに弾みが付いた…ということは?

R:優勝しての影響というと、会う前から自分達のことを知っているお客さんやアーティストが予想以上に多かったことかな。あと、これで自分達も海外でも全然ブチかませられる…と確信したので、それ以降の公演では、より自信を持って演奏することが出来ましたね。

YG:“Metal Battle”優勝により、来年もWOAに出演することになりそうですね!

R:今のところ、まだ決まってはいませんが、呼ばれるつもりで準備しています。その前に、セカンド『DUALITY』のツアー・ファイナルが、9月18日に渋谷のSpotify O-WESTであるので、そこで日本とヨーロッパをツアーして廻って培ったモノをすべて見せるつもりです。その後も、年内に国内ツアーを予定していて、その際に一緒にやる(サポート・)ギタリストも既に決まってます。あと来年にも、史上最大規模のイベントを計画しているところなんですよ。音源の制作も進めているので、来年はさらに進化したセイブル・ヒルズの音を聴かせられると思います。是非、期待していてください!!

セイブル・ヒルズ渋谷公演フライヤー

WOA22 セイブル・ヒルズ 演奏終了
Pic:Faye Strässle

セイブル・ヒルズバンド公式ウェブ
Sable Hills | Official Website