異弦同音を使ったフレージング・アプローチ ニック・ジョンストン奏法コラム第12回

異弦同音を使ったフレージング・アプローチ ニック・ジョンストン奏法コラム第12回

ピアノなどの鍵盤楽器と違い、ギターでは例えば1弦8fと2弦13fのように、同じ音程が得られるポジションがいくつかある。これらの異弦同音のポジションを1つのフレーズに組み込むと、多少フィンガリングが難しくなるものの、弦楽器ならではのトリッキーな雰囲気を生み出すことができる。今回ニックが紹介してくれたリックは、まさにそんなプレイだ。では、いつものようにニックの言葉から。

Nick’s Comment

このラン奏法はかなりトリッキーで、僕も弾く際にはこれに特化したテクニックを使っているよ。最初の方はカラフルなアルペジオで、それから異弦同音を使う一風変わった形のランに変化していく。僕がよく使う手の1つなんだけど、まるでディレイみたいな効果が狙えるんだよ。一番の肝は、繰り返しの音をきちんと出せるかどうかだね。それと、ここではハイブリッド・ピッキングを使ってほしい。僕自身、オルタネイトで厳密に弾くなんて絶対に無理だよ!

Ex-1Ex-2とも、ド頭はAmaj7、C♯m7のアルペジオを連続してプレイしたフレーズになっている。[Amaj7+C♯m7=Amaj9]なので、’14年12月号で紹介したメジャー9th型のアルペジオを分割したものと考えてもOKだ。で、2小節目2拍以降が、異弦同音を使った部分となる。まずは図1をチェックし、[1弦12f&2弦17f][2弦12f&3弦16f]の異弦同音ポジションが用いられていることを確認してほしい。Ex-1、Ex-2を完コピするのももちろん結構なのだが、自身のプレイに応用することを考えれば…、例えば[2弦16f→1弦12f→2弦17f][3弦14f→16f→2弦12f]のように異弦同音が連続する部分のみを取り出してトレーニングしておくのが得策かも。なお、Ex-2の最後の部分は、C♯mのスウィープ・アルペジオを基にしたフレーズと考えたい。この講座の読者にはお馴染みのことと思うが、“帰り”の[2弦14f→3弦13f→4弦14f]は、ピッキングせずに、左手TAPで発音するのがニック流だ。

Ex-1Amaj7&C♯m7のアルペジオ+異弦同音のラン・フレーズ その1

●ニック本人のピッキングはかなりややこしいが、要は[2弦16f→1弦12f→2弦17f]のように2本の弦を行き来する部分を[ダウン→中指→ダウン]で弾くことを優先した結果…と考えたい。

Ex-1 Amaj7&C♯m7のアルペジオ+異弦同音のラン・フレーズ その1

Ex-2 Amaj7&C♯m7のアルペジオ+異弦同音のラン・フレーズ その2

●最後のフレーズは[3弦13f、2弦14f、1弦12f、1弦16f]のC♯mのアルペジオを基にしたフレーズと考えよう。

Ex-2 Amaj7&C♯m7のアルペジオ+異弦同音のラン・フレーズ その2

図1異弦同音のポジション

図1■異弦同音のポジション

プロフィール

Nick Johnston

ニック・ジョンストンはカナダ出身のギタリスト。フル・シュレッドから繊細なニュアンスまで網羅する卓越した演奏テクニックと抜群のメロディー・センスで動画サイトなどを中心に話題を集め、2011年の『PUBLIC DISPLAY OF INFECTION』をはじめ、これまでに4作のオール・インスト・ソロ作品を発表。昨年9月発売の最新作『REMARKABLY HUMAN』で正式に日本デビューを果たした。本作には、ガスリー・ゴーヴァンやポール・ギルバートがゲスト・ソロを弾いた楽曲もボーナス・トラックとして収録。2017年2月にはアニマルズ・アズ・リーダーズのツアーに帯同して初来日を果たし、ライヴやギター・クリニックを行なうなど、国内でのさらなる活躍が期待されている急進中のロック・ギタリストだ。

インフォメーション

公式ウェブサイト:www.nickjohnstonmusic.com
フェイスブック:www.facebook.com/NickjohnstonOfficial

最新リリース情報

foxtails

『REMARKABLY HUMAN』/Nick Johnston

キングレコード|CD|2016年9月14日発売