全10曲、ランニング・タイム約55分という疾風怒濤のライヴ・パフォーマンスで鮮烈な印象を残し、それゆえに「早くまた次が観たい!」と思わされた時点ですでにその術中にハマっているのかもしれない──去る2月10日と11日の2日間にわたり、豊洲PITにて開催されたマルチバース・プロジェクト:METALVERSEによるワンマン・イベント第2 弾“METALVERSE #2 – THE END OF THE INNOCENCE”。冒頭に記したように時間的なヴォリュームこそコンパクトなものだったが、まさに今ここから未来に向けて駆け上がっていこうとする、黎明期ならではの瞬間を凝縮した、本プロジェクトにかけるメンバーの真摯な想いが伝わる空間であった。
2023年に行なわれたBABYMETALの国内公演に突如複数回出現し、それが単なる“演出”で終わらずに、その後リアルな世界で活動をスタートさせたMETALVERSE。BABYMETALのステージでは3人編成だったが、METALVERSE単体で始動してからは5人編成となり、しかしその中身(キャスト)は常に変化していくということは公式にアナウンスされている。同年8月の“SUMMER SONIC 2023”(東京公演)での初ステージ、そしてその数日後にSpotify O-EASTで開催された初ワンマン“METALVERSE#1 – UNBOXING”2DAYSを経て今回の豊洲PIT公演に至ったわけだが、いまだ音源リリース前という状況ながら会場には実に熱いファンが集結していた。
定刻を超えて場内が暗転し、まだ無人のステージに向けてフロアのあちこちからイカつい声援が上がる。ドラマティックな世界観を創出するオープニング・ムービーを導入に、ステージに現れたメンバー。縦横無尽に飛び交う無数のレーザーや舞台後方の巨大LEDヴィジョンがド派手に舞台を彩る中で、“Open The Gate!”というリフレインが印象的な「Welcome to the METALVERSE」からライヴをスタートさせた。全編に漂うフューチャリスティックな手触りはまさにMETALVERSEが打ち出し続けているイメージで、このイントロダクション的ナンバーとクールな佇まいのダンス・パフォーマンスをもって一気に彼女達のフィールドへと引きずり込んでいく。
一転、次いで始まった「Crazy J」は、ビッグ・バンド・ジャズとラウドなバンド・サウンドが融合するアップテンポのシャッフル・ナンバー。ゴージャスなホーンや打ち鳴らされるツーバスもフィーチュアした血湧き肉躍るサウンドは一気に場内の熱を上げ、またヴォーカル&ダンスを務めるセンター・メンバーは「みんなで一緒にスウィングしましょう!」と言って、ダンス担当の4人のメンバーと共にコール&レスポンスを促す場面も生まれていた(ちなみにライヴ全編を通して、煽りはあってもMCはない)。かと思えば、「Si Si」は腹にズン!と響く4つ打ちビート主軸の曲でガラッと毛色が変わりつつ、しかしながら間奏では高速スウィープが炸裂する濃密なシュレッディング・ギターが聴けたりと、そのハイブリッド感覚にまさにBABYMETALと密接な関係性にあるMETALVERSEらしい血が感じられる。また今回の2公演は、バンドを従えたこれまでの公演とは異なりバッキング・トラックを用いたものだったが、やはりこれらの楽曲を体感すると、今後生のバンド編成で再現されていくことを願うファンも多いのではないだろうか。
以降も曲ごとに多彩な表情を見せるのがMETALVERSEの特性であることは当夜のパフォーマンスから十分に伝わり、「Get Down」ではその若さに不釣り合いなほど大人の妖艶ささえ湛えた情熱的な歌唱を聴かせ(ヴィジョンに大写しになる目力も強かった)、急転直下、「Qn」が始まると、この日最もアイドルライクなときめきポップネスを全開にした歌とパフォーマンスを展開する(が、EDM+ディストーション・ギターというサウンド・メイクだったりとまったく侮れない)。
しばしのインターヴァルを挟み、「無垢の幕が下りる」「THE END OF THE INNOCENCE」といった言葉が綴られ、明らかにここからは空気が変わることを予感させながら後半戦が始まる。赤と黒が基調のレーザーと映像の中で披露された「GIZA」では、重厚なトラップ・メタル的サウンドにハイトーンが乗り、実にスタイリッシュな音像を構築。また、各メンバーが際立つ縦軸のフォーメーション・ダンスから始まった「Endless World」は、近未来的モダンさを内包しながらも、日本人の琴線に触れる歌謡性や叙情性を感じられるハード・ナンバーで、テクニカルなギター・ソロまである。特にドラマティックに盛り上がっていく終盤の展開が秀逸だった。
終盤、メンバー1人ずつにスポットが当たり、各々が異なるダイナミックなダンス・パフォーマンスを披露するセクションが設けられていたのがまた特徴的で、そこからシームレスに「Naked Princess」突入。同曲の途中でセンター・メンバーが意表を突く野太いガナリを響かせるなど、単にキュートなだけではないシンガーとしての存在感と意外性、ポテンシャルを存分に見せつける一幕も。その後のアンコールでは、ストレートなクリア・ハイトーンが聴けるバラード・タイプの「KIRA☆」を、そしてダブル・アンコールで「Crazy J」を再演し、最後は5人全員が右手を高々と掲げ充実の表情を見せながら、「Thank you, 豊洲PIT、またお会いしましょう!」の言葉と共に舞台をあとにした。
要所で流れるストーリー・ムービーや、バトルスーツに身を包むメンバーのアピアランスなどはBABYMETALの世界観に通じるものの、当然ながらその実像は似て非なるものだ。やはり百聞は一見に如かず。まずはライヴという実践によってMETALVERSEとは何たるかを証明していっている感があり、それは今後も続いていくことだろう。その上で、ここに音源リリースも加わり曲が浸透すれば、さらなる爆発力を持つ場面になるに違いないと感じられる瞬間も度々あった。次回公演は“METALVERSE #3 – GARDEN OF EDEN”――このチームゆえ、そこでは着実により進化した姿を見せてくれるはずだ。
METALVERSE #2 – THE END OF THE INNOCENCE @豊洲PIT 2024年2月10日(土)・11日(日) セットリスト
出演ラインナップ:METALVERSE
1. Welcome to the METALVERSE
2. Crazy J
3. Si Si
4. Get Down
5. Qn
6. GIZA
7. Endless World
8. Naked Princess
9. KIRA☆
10. Crazy J
METALVERSE 次回公演予定
「METALVERSE #3 – GARDEN OF EDEN」
※公演詳細は後日発表
METALVERSE 公式インフォメーション:
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