全バンドが日替わりセットでスラッシュ猛攻撃!! THE BAY STRIKES BACK来日レポート

全バンドが日替わりセットでスラッシュ猛攻撃!! THE BAY STRIKES BACK来日レポート

米西海岸出身の古参スラッシュ・メタラー3組:テスタメント、エクソダス、デス・エンジェルが集ったヘッドバンガー垂涎のカップリング・ツアー“The Bay Strikes Back”が日本でも開催! 去る9月下旬、東京はZepp DiverCityにて2夜連続公演が行なわれた。

’20年2月、新型コロナウイルスのパンデミック前夜に、このベイ・エリア・スラッシュの祭典はまずヨーロッパでスタート。各地で熱狂を巻き起こすも、やがて3バンドのメンバーの間でどんどんウイルス感染が広がっていき、一時はデス・エンジェルのドラマー:ウィル・キャロルが重篤な状態に陥る等、当時は文字通りの“コロナ禍”に見舞われてしまう。しかしながら、ロックダウンによる延期期間を経て、’21年秋に米カリフォルニアの“AFTERSHOCK”フェスティヴァルで復活が宣言されると、翌’22年4月になってサーキットを再開。6週間以上に及んだ北米ツアーに次いで、7月からも欧州各地のサマー・フェスを巡演し、9〜10月には北米ツアーのセカンド・レッグがそれに続いた。

そして今年──9月21日のフィリピン公演を皮切りにアジア圏へと舞台を移し、日本公演のあともタイ、シンガポール、マレーシアと廻り、10月1日のインドネシア公演までに計6公演が実施。今度はウイルス禍を吹き飛ばす勢いで、約2年間をかけて北米、欧州、アジアを駆け抜けたのであった。公演によっては、3バンドすべてが揃わない時もある“The Bay Strikes Back”だが、日本では勿論フル・ラインナップでの開催。しかも、全バンドが日替わりセットで楽しませてくれたことを、まずは報告しておこう…!

DEATH ANGEL

デス・エンジェル
DEATH ANGEL

まずトップで登場したのは、’87年のアルバム・デビュー時、メンバーの平均年齢が約18歳と、当時最年少とも言われたその若さで注目を浴びたデス・エンジェル。当時のメンバーで今も残っているのはマーク・オゼグエダ(vo)とロブ・キャヴェスタニィ(g)だけで、今や彼等も50代後半となったが、依然そのメタル魂、スラッシュ魂は激しく滾っている。いや、’00年代に復活を遂げて以降、その激情はより強まっているのではないか。今回、40分+αと短い持ち時間だったにもかかわらず、両日とも演奏開始直後すぐにオーディエンスの心を鷲掴みにし、先鋒として会場を温めるどころか、もうデス・エンジェルだけでみんな体力を使い果たしてしまうのでは…と思ってしまうぐらいの大盛り上がりを引き出してくれた。

彼等のライヴの何が凄いって、バンドによる全身全霊の極上パフォーマンスに、観客すべてが全力全開のヘドバン&モッシュで応える、バンドとファンのエネルギー交換&交感の素晴らしさ──これに尽きる。かつてロブは、「ガキの頃から呼吸をするようにメタルを聴いてきた」“経験”の積み重ねが、自らのプレイに「深みを与えてくれる」とコメント。その“深み”は、「単なる技術的力量だけでは出せない」とも。まさにその通りだ。ザクザク・リフに激速ビートと、ストイックに激音を叩き付けつつも、そのプレイのひとつひとつ、すべてのリフやフレーズにディープな情念が込められている。

ロブ・キャヴェスタニィ
Rob Cavestany

マークの熱過ぎるMCも最高! 序盤の第一声、「Toookiioooooooooooooohh!!」だけで、もう胸に迫るモノがあるし、彼の檄がその場の一体感をどんどん強固にしていったのは言わずもがな。セットリストが2日間で被り1曲もナシで、近作からのナンバー中心なのもお見事だ。ベテラン・バンドの多くは、どうしても’80年代の代表曲、定番曲に頼りがちだが、彼等はそれらを敢えて外しているのか…というバランスで勝負。初日なんて、初期曲はデビュー作『THE ULTRA-VIOLENCE』(’87年)から「Voracious Souls」だけで、『FROLIC THROUGH THE PARK』(’88年)と『ACT III』(’90年)からは全くセレクトされず。2日目には、『FROLIC〜』から「3rd Floor」、『ACT III』から「Seemingly Endless Time」が披露されるも、セットの半数以上が’00年代以降のレパートリーで占められていたのは、初日と同様だった。

マーク・オセグエダ
Mark Osegueda

’01年以来となるギター・チーム:ロブとテッド・アギュラーのコンビネーションは鉄壁…いや、完璧と言いたい。基本リード・パートは熱のこもったプレイ連発のロブが担い、テッドはリフ/リズムからアルペジオまでバッキング担当…という分業制はこれまで通りだったが、初日の3曲目「Truce」(’10年『RELENTLESS RETRIBUTION』収録)では掛け合いソロが飛び出し、2日目の3曲目「Relentless Revolution」(同じく『RELENTLESS RETRIBUTION』収録)にもエモいツインのハモりがあったことも特筆しておきたい。

テッドとロブ
Ted Aguilar & Rob

2日目のラストを飾った「Thrown To The Wolves」(’04年『THE ART OF DYING』収録)を始める前、満場の“DEATH ANGELコール”の中、「また戻ってくるぜ…!!」と高らかに宣言してくれたマーク。次回は是非とも、ヘッドライナー・ショウで楽しませて欲しい…!!

デス・エンジェル 20223.9.23 @DiverCity Tokyo セットリスト

1. Intro(SE)〜Lord Of Hate
2. Voracious Souls
3. Truce
4. Absence Of Light
5. The Moth
6. SE〜Humanicide
7. The Dream Calls For Blood

デス・エンジェル 20223.9.24 @DiverCity Tokyo セットリスト

1. SE〜The Ultra-Violence(Intro)〜Mistress Of Pain
2. 3rd Floor
3. Relentless Revolution
4. Son Of The Morning
5. SE〜Aggressor
6. SE〜Seemingly Endless Time
7. Thrown To The Wolves

EXODUS

エクソダス
EXODUS

続いての登場はエクソダス! その結成は’79年と、ベイ・エリア・スラッシュ・シーンでは最古参のひとつで、初期メンバーに現メタリカのカーク・ハメット(g)がいたこともよく知られているだろう。現時点でもうオリジナル・メンバーはひとりも残っておらず、’82年加入のゲイリー・ホルト(g)がリーダー格としてずっとバンドを引っ張り、メイン・コンポーザーとしても大活躍。現在そのゲイリーとツイン・ギター・チームを組むのは、’05年に前任:リック・ヒューノルト(脱退後も時々ヘルプ参加することが)と交代して以来、リー・アルタス(ヒーゼンにも籍を置く)が務めている。

リー・アルタス
Lee Altus

デス・エンジェルの魅力がストイックさだとしたら、エクソダスは“fun”なノリこそが肝。楽曲そのものは当然激しく、極悪だったりもするし、ステージ上にはマーシャルの壁が設置され、それが硬派なムードを漂わすも、出戻りフロントマンのスティーヴ“ゼトロ”ソウサ(’86年加入〜’04年に一旦脱退〜’14年に復帰)のフレンドリーかつ人懐っこいキャラもあり、バンドと共に“楽しく暴れまくってナンボ”といった空気が、殊にライヴではより顕著だ。

両日とも、ショウが始まるやいなや、フロアにはクラウド・サーファーが大発生! ゼトロがそれをさらに煽り立て、ゲイリー&リーもステージ狭しと動き回って、血の気の多いオーディエンスの衝動や情動を常に掻き立てまくる。但し、それでいて演奏のタイトさも抜群なところがエクソダスの凄いところ。ベイ・エリア・クランチと呼ばれるリフ・カッティングの鋭さと重々しさは、メタル・シーン広しといえども今もって随一だし、ツイン・リード体制から放たれる鮮烈この上ないソロの数々の破壊力もハンパない。特に、メロディアスな速弾きからエモーショナルなワウ・ソロ、狂気じみたアーミング乱舞まで、何でもコナすゲイリーのマルチっぷりには、多くのギター・ファンが暴れるのも忘れて、ついついガン見してしまったのでは? ちなみに、今回ゲイリーは新調したESPギターを複数使用。VシェイプにLPモデルに…と使い分けていたが、2日目にVシェイプを弾かなかったのはどうして…?

ゲイリー・ホルト
Gary Holt

セットリストはデス・エンジェルと同じく日替わりで、それぞれ全く違う楽曲で構成。殿堂入り名作ファースト『BONDED BY BLOOD』(’85年)収録曲は、流石にどっちの日も多めにプレイされていたが、全体的には初日が近作からの曲多め、2日目は初期曲多めとなっていた。オールドスクーラーにとっては、いきなり『BONDED BY BLOOD』表題曲でスタートし、終盤にセカンド『FABULOUS DISASTER』(’89年)からタイトル曲と定番人気曲「The Toxic Waltz」が披露され、’90年作『IMPACT IS IMMINENT』からレア曲「Only Death Decides」までもが飛び出した2日目は、何とも堪らないモノがあったに違いない。

ただ、デス・エンジェルと同じくエクソダスも、往年のレパートリーに頼るダメなベテランではなく、しっかり近作からのナンバーでも大いにオーディエンスを沸かせていた。実際、初日には現時点での最新作『PERSONA NON GRATA』(’21年)から4曲も演奏されたが、それで盛り下がるなんてことは一切なく、1曲目の「The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)」から、フロアはそれこそ荒れ狂っていたし。

そして2日目には、ラストにサプライズが。何と、デス・エンジェルのシンガー:マークを呼び込み、スコーピオンズのクラシック「He’s A Woman – She’s A Man」(’77年『TAKEN BY FORCE』収録)のカヴァーをプレイしたのだ。スラッシュ・ファンにはちょっと知名度的に微妙だったかもしれないが、ゲイリーがソロ・パートでワウ&アーミングを駆使し、ウリ・ロートへのリスペクトを見せたのはなかなか興味深かった…!! 

ゼトロとマーク
Mark Osegueda(L.) & Steve “Zetro” Souza

エクソダス 20223.9.23 @DiverCity Tokyo セットリスト

1. SE〜The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)
2. A Lesson In Violence
3. Blood In, Blood Out
4. The Years Of Death And Dying
5. Deathamphetamine
6. Blacklist
7. Clickbait
8. Prescribing Horror
9. War Is My Shepherd
10. The Ballad Of Leonard And Charles
11. Strike Of The Beast

エクソダス 20223.9.24 @DiverCity Tokyo セットリスト

1. SE〜Bonded By Blood
2. Body Harvest
3. And Then There Were None
4. Piranha
5. Only Death Decides
6. Iconoclasm
7. Brain Dead
8. Metal Command
9. Fabulous Disaster
10. The Toxic Waltz
11. He’s A Woman – She’s A Man(SCORPIONS)

TESTAMENT

テスタメント
TESTAMENT

両日のトリを飾ったのは──かつてLEGACYと名乗っていたデビュー前、ゼトロがフロントマンを務めていたことがあり、実はエクソダスと人脈的つながりを持つ──テスタメントだ。転換時に幕が張り巡らされ、ステージ上には地獄の魔宮が出現。エクソダスの“fun”なノリから、またまた雰囲気が一変する。テスタメントが目指すのは、スラッシュ・メタルという枠には収まりきることのない、完璧なバランスの“メタル王道”だろうか。オールドスクールを踏襲しつつも、決して古臭さを感じさせないのは、若手バンドからも様々なエッセンスを吸収するのを厭わないからだろう。

チャック・ビリー
Chuck Billy

現ギター・チームはアレックス・スコルニック&エリック・ピーターソンで、’87年のデビュー時と同じ。ただしずっと不動だったのではなく、アレックスはバンドを離れていたことが何度かあり、’05年に舞い戻ったのではあるが。また、初期は“アレックスがリード担当で、エリックはリズム担当”と分業制を採っていたが、アレックス不在時にエリックがリード志向を強めていったことから、近作からのナンバーではエリックがソロを弾くことも珍しくなくなっている。ライヴでは、’80年代の楽曲においてもちょくちょくエリックのソロ・パートが加えられていたりもするし。

時にアームを使ってノイジーなブレイクを生み出すこともあるが、基本アレックスは流麗に弾きまくり、ジャジーなフレーズを盛り込んだりもして「次は何をやってくれるんだろう…?」と、とにかく目が離せない。一方エリックは攻撃的なリードが特徴的で、アーム使いもアレックスより数倍アグレッシヴ。思わずヘドバンやモッシュの衝動に駆られ、ジックリ観察している余裕などない。そんな2人の個性の違いも観どころで、殊に「More Than Meets The Eye」(’08年『THE FORMATION OF DAMNATION』収録)のアレックス〜エリック〜ツインというソロ・パートの組み立ては、毎度ギター・フリークにとってのハイライトのひとつとなっている。

エリック・ピーターソン
Eric Peterson
アレックス・スコルニック
Alex Skolnick
スティーヴ・ディジョルジオ
Steve Di Giorgio

観どころといえば、ニュー・メンバー:クリス・ドヴァス(dr)にも要注目! 昨年、ジーン・ホグランからデイヴ・ロンバードに…というドラマー交代があり、デイヴが叩くのを楽しみにしていたファンも少なくなかったと思うが、結局デイヴは再度バンドを離れ(’98〜99年にも在籍)、以前ヘルプ起用されたことのあるクリスが正式加入を果たしたのだ。現在25歳の彼は、他のメンバーからすれば息子のような世代。しかし、持ち前のテクとパワーで屋台骨を支え、リズム隊を組むスティーヴ・ディジョルジオ(b)との相性も上々で、何ら遜色なく新旧レパートリーを見事に叩ききっていた。ちなみに、曲入りのカウントの取り方など、ジーンを真似ていたところが幾つかあったが、あれはバンドからの要請だったのか、それともクリス自身の判断だったのか…ちょっと気になる。

クリス・ドヴァス
Chris Dovas

演目は他の2バンドと同様に日替わりで、初日は言わばベスト選曲、2日目は初期2作の(ほぼ)全曲再現と、定番曲など若干のダブりはあったものの、それぞれ全く別モノだったと言ってイイだろう。『LOW』(’94年)と『DEMONIC』(’97年)を除くすべてのアルバムから選曲され、近作からのセレクトも目立っていた初日も素晴らしかったが、セカンド『THE NEW ORDER』(’88年)の1曲目「Eerie Inhabitants」からアルバム収録順通りにプレイしていって(インストの「Hypnosis」のみオミット)、続けてファースト『THE LEGACY』(’87年)の再現に移り、これまた曲順通りに披露していった2日目は、やはり相当にスペシャル! 『THE LEGACY』再現の最後に、「Alone In The Dark」と「Apocalyptic City」の順番を入れ替えていたが、これは後者で「オーオーオーオー♪」と観客にリックを歌わせる演出でシメたかったからだと思われる。

スティーヴとチャック

結果的に、3バンドすべて両日とも観たファンはラッキーというか…何というか。逆に言えば、どちらか1日だけしか観に行けなかったファンは、大好きな曲が別日のみだった場合、どうしても不満が残るかも。とはいえ、それもまた“生のライヴ体験”ならでは。一期一会のスラッシュ饗宴に、満員のオーディエンスが酔い痴れ、叫び、暴れまくった充実の2日間であった…!!

テスタメント 2023.9.23 Zepp DiverCity Tokyo セットリスト

1. SE〜Rise Up
2. The New Order
3. The Haunting
4. Children Of The Next Level
5. D.N.R.(Do Not Resuscitate)
6. The Pale King
7. Night Of The Witch
8. More Than Meets The Eye
9. 3 Days In Darkness
10. Practice What You Preach
11. Souls Of Black
12. Over The Wall
13. Electric Crown
14. Into The Pit

テスタメント 2023.9.24 Zepp DiverCity Tokyo セットリスト

1. SE〜Eerie Inhabitants
2. The New Order
3. Trial By Fire
4. Into The Pit
5. Disciples Of The Watch
6. The Preacher
7. A Day Of Reckoning
8. Musical Death (A Dirge)
9. Over The Wall
10. The Haunting
11. Burnt Offerings
12. Raging Waters
13. C.O.T.L.O.D.
14. First Strike Is Deadly
15. Do Or Die
16. Apocalyptic City
17. Alone In The Dark