WOA2023レポDAY2:地元のハロウィン大盛況&ファントム快演!

WOA2023レポDAY2:地元のハロウィン大盛況&ファントム快演!

混乱と波乱に満ちた初日を何とか乗り切った翌日──この日も朝から空はどんより。天気予報によれば、夕方まで降ったり止んだり…という感じらしい。

Wacken Open Air 敷地内

朝イチ(実際にはお昼前だが)からのファントム・エクスカリバーの出番に備えて、早めに出撃…と思ったら、彼等がHEADBANGERSステージへ向かう前に、もう雨が降り出してきた。前日のように演奏キャンセルの要請がないことを祈るのみだ。

幸い、この日は目立ったトラブルもなく、“W:O:A Metal Battle”のルーマニア代表:BLACK SHEEP──W:E:Tステージのトップバッターは、予定通りステージに立つことが出来たようだ。

既に準備万端のファントムは、BLACK SHEEPの演奏前から、次々と現地プレスや関係者に「一緒に写真を撮ってくれ!」とせがまれまくっている。ステージ・クルーの何人かも、彼等との記念撮影のための行列に並んでいたが、そんなことはそうそうない。何だ、この人気っぷりは?

PHANTOM EXCALIVER 記念撮影

午前11時25分、いよいよファントム・エクスカリバーの演奏がスタート! それまでに雨が上がれば…と期待していたが、逆に雨脚は強くなるばかり。それでも、開始前から200人ほどの観客がHEADBANGERS前に集まり、イントロSEに合わせて「ヘイ! ヘイ! ヘイ!!」と唱和し始める。

ファントムエクスカリバー
PHANTOM EXCALIVER

Kacchang
Kacchang(vo)/PHANTOM EXCALIVER

Matsu
Matsu(g, vo)/PHANTOM EXCALIVER

オーディエンスの数は、その後どんどん増えていき、最終的には1000人を軽く越えていたと思う。もしかしたら2000人ぐらい集まっていたかもしれない。楽曲に対する反応も良く、ヴォーカルのKacchangが煽ると一斉に腕が上がり、最前列ではヘドバンの嵐が吹き荒れ、驚いたことに、サビを歌う観客も少なくない。異国でのバンド・コンテストにおいて、まさか「やっさっさ」の大合唱が起こるとは…! さらに後半では、田んぼ状態の泥沼でサークル・ピットまでもが大発生。いやはや、まさに“異様な盛り上がり”だった。

20分間で4曲はあっという間。終演後、気が付けば雨も上がって、空には虹まで出ていたそう。まるで翌日の栄冠獲得を暗示していたかのように…!

ファントムの演奏後、予想以上の大盛り上がりっぷりに、バックステージで祝杯を挙げていたら、そこでもファントムは、色んな人達から「写真イイかな?」と声を掛けられまくり。楽屋に現地スタッフからの日本語(!)手書きメッセージが置かれていたのにも、メンバーは大感激していた。

バックステージ

その後、前日からトラブっていたパスの問題がようやくクリアになるも、LOUDERステージでのテラーやCEMICAN、WACKINGERステージでのアド・インフィニトゥムなど、午後の早い時間のバンドは残念ながら観に行けず…。ただ15時より、いよいよダブル・メイン・ステージがフル稼働するということで、インフィールドへ。ここで改めて、各エリアのステージを確認しておこう。

文字通りメインとなるインフィールド・エリアには、向かって左にFASTERステージ、右にHARDERステージがあり、巨大スクリーンが幾つも並べられているその中央には、WOAのシンボルである牛頭スカルが掲げられている。このメイン・ステージ前が広大過ぎて笑っちゃうほど。軽く5〜6万人は集めることが出来るだろう。もしかしたら、最大で8万人を超えるオーディエンスすべてをエリア内に収容することすら可能かもしれない。

サブ・ステージのLOUDERは、メインに向かって右斜め後方に設置。以前はインフィールドにあったが、去年から柵外に出され、ステージ間の移動がそこそこ大変になってしまった。それにより、メインとサブでショウが同時進行する場合、音のぶつかりがほぼなくなる…というメリットも生まれたのだが。

ラウダー・ステージ
LOUDERステージ

以上3つのステージだけでもかなりの規模で、LOUDERステージを正面に見てその後方には、ドリンク&フード・エリアが広がっているので、もうそれだけでもフェスは充分に成立する。しかし、世界最大級と称されるWOAだからして、その他のエリアがまた大いに充実しているのだ。LOUDERがあるWACKEN CENTERを挟み、メインの反対側には、小さめのステージが色々。中世の剣士達やヴァイキングどもが闊歩するエリアには、主にフォーク・メタル系バンドのためのWACKINGERステージが、『マッド・マックス』か『北斗の拳』かという終末世界を模したエリアには、主にスラッシュ系バンドが集うWASTELANDステージがあって、水曜と木曜に“W:O:A Metal Battle”が行なわれるBULLHEAD CITY CIRCUSにも、横並びで中規模ステージが2つ。W:E:TステージとHEADBANGERSステージだ。以前は世界最大を謳う巨大テント内にあったのだが、去年からはこちらもオープン・エアー仕様に。ただ中規模とはいっても、それはメインと比べてのことで、W:E:TとHEADBANGERSを臨めるBULLHEAD CITYエリアだって、きっと数万人を集めることが可能だ。

ヴァッキンガー・ステージ
WACKINGERステージ

その他にも、トーク・イベントやメタル・ヨガなんかが実施されるミニ・ステージ“WELCOME TO THE JUNGLE”、ヴァッケン村のパブ・レストランを利用したLGH CLUBステージなど、4日間あってもそのすべてを観て廻るのなんてほぼ無理ゲー。(ヴァッケン村の本物の教会で行なわれる“METAL CHURCH”は、今年は実施されなかった? また、WACKEN CENTERにかつてあったBEER GARDENステージの復活もナシでした)

さらに今年は、オフィシャル・ビール:クロムバッハーの3階建てバー“KROMBACHER STAMMTISCH”で、エレクトリック・コールボーイによるDJセットや、ブラスバンド・メタラー:BLAAS OF GLORYの演奏が行なわれ、神出鬼没のウォーキング・アクトが会場内のあちこちでゲリラ的に演奏したりもするから、ステージ間の移動中も油断出来ない。加えて、バックステージのプレス・エリアでは、関係者向けのショウケース・ギグがあったりもするし。まぁでも、それこそが巨大フェス:WOAの醍醐味であり、このスケール感こそがWOAのWOAたる所以でもあるのだ。

クロムバッハー売り場
KROMBACHER STAMMTISCH

FASTERステージに話を戻して──そこでは、カヴァー・バンド:SKYLINEが最初に登場するのが恒例となっている。実はこの6人組、’90年の第1回WOAでヘッドライナーを務めた地元ヴァッケン村出身バンドで、WOA主催者のひとり:トーマス・イェンゼンも元メンバーだった。今年は、ヴァン・ヘイレンやAC/DC、KISSやメタリカなど、大御所のカヴァーをやって盛り上げてくれたが──実をいうと、彼等がセレクトしたバンドが、翌年の出演ラインナップのヒントになっている…との噂も。もしや上記の中に、来年の大トリが含まれていたりしたのだろうか…?

ジョーイ・カステリーニ
Joey Castellini(g)/SKYLINE

ラーズ・ヤコブセン
Lars Jacobsen(g)/SKYLINE

SKYLINEを数曲観てLOUDERステージへ向かうと、ちょうどダーク・トランキュリティのショウがスタート! 直前にクリストファー・アモットが脱退してしまい、その後任には、元アルマゲドンでクリスの教え子でもあったジョーイ・コンセプションが迎えられており、リズム担当も’20年加入(’17年からライヴ・メンバーを務めていた)のヨハン・レインホルツということで、個人的には久々に彼等のショウを観たのもあって、何だかフレッシュな印象が。ただ、翌日のことでプレス・エリアへ戻る必要があり、慌ただしく2曲だけ観て、あまりジョーイのシュレッドを堪能することは出来なかった…。

ミカエル・スタンネ
Mikael Stanne(vo) / DARK TRANQUILITY

ヨハン・レインホルツ
Johan Reinholdz(g)/ DARK TRANQUILITY

ジョーイ・コンセプション
Joey Concepcion(g) / DARK TRANQUILITY

すると、プレス・テントでU.D.O.のアンドレイ・スミルノフがギター・クリニック中ではないか。プレス向けにクリニックとはちょっと意外だが、せっかくなのでちょっとだけ…と眺めていたら、バッキング・トラックを使ってプレイスルーなんかもやっていて(ソロ・アルバム収録インストを弾いていたと思われる)、U.D.O.での彼とはまた違う、シュレッダーな一面が垣間見られた。

アンドレイ・スミルノフ
Andrey Smirnov(g)/U.D.O.

急ぎHARDERステージへと移動すると、そのトップ・バッターとして登場したのは…ヴィクセン! そう、’80年代終盤に華やかなルックスとメロディック&キャッチーなサウンドで人気を博した、あの米産(元)ガールズ・バンドだ。現ラインナップは、ロレイン・ルイス(vo)、ブリット・ライトニング(g)、ジュリア・ラーゲ(b)、ロキシー・ペトルッチ(dr)で(+ステージ袖で鍵盤を弾く男性メンバー)、’80年代のメンバーで残っているのはロキシーのみ。ロレインが元ファム・ファタルというのも、往時のシーンを知るファンには感慨深いハズ。というか、2曲目にファム・ファタルのヒット曲「Waiting For The Big One」(’88年『FEMME FATALE』収録)が飛び出したのにもビックリさせられた。

ヴィクセン
Julia Lage(b),Lorraine Lewis(vo)&Britt Lightning(g)/VIXEN

ロキシー・ペトルッチ
Roxy Petrucci(dr)/VIXEN

ヴィクセン以前に目立ったキャリアのないブリットは、ギター・ソロにジミ・ヘンドリックスのフレーズを盛り込むなど、遊び心もある堅実なプレイで、’13年に他界したオリジナル・ギタリスト:ジャン・クエネムンドの遺志をしっかり受け継ぎ、ジュリアと共に’80年代ヘアー・メタルのきらびやかなムードも演出。ロレインのハスキー・ヴォイスが、かつてのシンガー:ジャネット・ガードナーとまた違った味わいで、新味をもたらしていたことも付け加えておきたい。

ブリット・ライトニング
Britt Lightning(g)/VIXEN

続いてLOUDERステージには、英国の大ベテラン:ユーライア・ヒープが登場! バックドロップには“URIAH 50 HEEP”とあり、歴代アルバムのジャケットも散りばめられていて──これはつまり、コロナ禍で’20年から’22年に延期された50周年ツアーの演目が、ここWOAでも披露されるということ。ただ、WOAでは持ち時間が75分と、長い時は3時間近くに及ぶ50周年セットをそのまま持ち込むことは無理なため、序盤のアコースティック・セットは丸々飛ばして、エレクトリック・セットのみで行なわれた。

1曲目が「Against The Oddr」(’95年『SEA OF LIGHT』収録)で、次が「The Hanging Tree」(’77年『FIREFLY』収録)で、その次が「Between Two Worldr」(’98年『SONIC ORIGAMI』収録)というのは、なかなかヒネった選曲でマニア垂涎! 無論、後半には「July Morning」(’71年『LOOK AT YOURSELF』収録)、「Lady In Black」(’71年『SALISBURY』収録)、「Gypsy」(’70年『…VERY ‘EAVY…VERY ‘UMBLE』収録)などなど、人気定番曲もちゃんとプレイしてくれたのだが。

それにしても、現在76歳のミック・ボックス(g)の若々しさは驚異的だ。トリルやワウ・ソロといったトレードマークとなっているプレイは依然パワーに満ち、エモーショナルで、立ち姿もどっしり貫禄があって、観る者を惹き付けて止まない。そして、人柄の良さが滲み出ているかのあの笑顔。以前、「音楽に対する情熱こそが永く活動し続けられる原動力」と語っていた彼は、まさに“生ける伝説”として、これからもステージ上からポジティヴ・オーラを届けてくれることだろう。

ミック・ボックス
Mick Box(g)/URIAH HEEP

ミック&バーニー・ショウ
Mick & Bernie Shaw(vo)/URIAH HEEP

ヒープを序盤だけ観て、一路バックステージへ逆戻り。プレス・エリアにて、今度はレイジがショウケース・ギグを行なうと聞いたからだ。’20年にツイン・ギター編成になってから、まだ生で観たことがなかったな…と思いつつ、プレス発表や記者会見も行なわれるスペースへ向かうと、そこにはトリオのレイジが…。何と、1週間ほど前にシュテファン・ウェーバーが脱退。バンドは後任を迎えず、ジーン・ボーマンだけで活動を続けることにしたようだ。

Peter“Peavy”Wagner(b, vo)/RAGE

ジーン・ボーマン
Jean Bormann(g)/RAGE

Lucky (dr)/RAGE

まぁでも、以前からギター1本でもやってきたバンドだし、特に違和感はない。初めて生で観たジーンが、元気ハツラツ&血気盛んに弾きまくっていて、実に好印象だったのもあったが。首魁ピーヴィ(b,vo)のフレンドリーな佇まいも相変わらず。プレス向けのショウケースとはいえ、彼も熱い全開パフォーマンスで楽しませてくれた。尚、レイジはこの日、夜にもLGH CLUBステージでプレイしたそうだが、そちらまで足を伸ばすことは出来なかった…。

レイジを3曲ほど観て、今年初めてWACKINGERステージへ。エルヴェイティの元メンバー3人が組んだセラー・ダーリンを観るためだ。午後からは雨も上がったので、それは良かったのだが、地面はぬかるんだままなので、移動はまだまだ大変。しかも、去年とは微妙に導線が違っていて、無駄に遠回りしてしまう…。どうやら、WACKINGERでもスケジュールの遅延などはないようだ。演奏開始予定時刻のちょっと前に着くと、メンバーがセッティング中だった。

セラー・ダーリン
CELLAR DARLING

そのあと、すぐにメイン・ステージへ戻らないといけなかったので、セラー・ダーリンもアタマの数曲しか観られなかったが、シンガー兼ハーディガーディ奏者で、フルートも吹くアナ・マーフィーの幽玄な存在感はやはり格別! 短い時間でも強烈な印象を残してくれた。エルヴェイティ時代からの盟友:イーヴォ・ヘンツィ(g)&メルリン・スッター(dr)も、アトモスフェリックな曲想とは裏腹の生々しくも激しいプレイ(前者は見た目かなり淡々としているのにトーンはなかなか粗削り)で、このバンドならではミスマッチ感が絶妙。独特な世界観にみんなどっぷり浸りきるのみであった。

アナ・マーフィー
Anna Murphy(hurdy-gurdy, flute, vo, key)/CELLAR DARLING

イーヴォ・ヘンツィ
Ivo Henzi(g)/CELLAR DARLING

メルリン・スッター
Merlin Sutter(dr)/CELLAR DARLING

慌ててFASTERへ戻ると、ハンマーフォールのショウがちょうど始まるところ。荘厳なイントロから昨年リリースの最新作『HAMMER OF DAWN』収録「Brotherhood」で幕開けると、ステージ前を埋めた推定4万人が一斉にヘドバンに興じる。彼等のライヴはいつ何どきも、良い意味で何も変わらない。どのアルバムのツアーでも、どのフェスやイベントに出ても、古き良きメロディック・メタルの守護者としてのスタンスは1ミリも…いや、1ナノ・ミリすら揺らぐことはないのだ。

ヨアキム・カンス
Joacim Cans(vo)/HAMMERFALL

オスカー・ドロニャック&ポンタス・ノルグレンのツイン・ギター・チームも、前者が時に派手なアクションを見せたり、後者がシュレッド・ソロを放つことはあっても、基本的に終始オーソドックスなプレイに徹している。そんな“王道HR/HMの教科書”のようなハマフォ・サウンドに、観客はのっけから大熱狂し、どの曲でも歌いまくり。曲間に“HAMMERFALLコール”が起こることもしばしばだった。

オスカー・ドロニャック
Oscar Dronjak(g)/HAMMERFALL

ポンタス・ノルグレン
Pontus Norgren(g)/HAMMERFALL

ところで──この日、フェス運営から驚くべきアナウンスが出される。何と、来場を完全に締め切ったという。恐らくは、キャンプ・エリアのコンディション改善が全く見込めないことから、これ以上の観客受け入れは危険…との判断が下されたのだと推測される。水曜日から土曜日まで4日間開催のWOAだが、毎年、後半の金・土だけ参加という来場者も少なくないのに…。今年もそのつもりにしていた人達は、フェスは開催されているにもかかわらず、来るのをあきらめろ…ということ。まさに苦渋の決断だったと思われるも、こりゃ本当に前代未聞だ。結果、プレスや関係者も含め3万人近くが来場出来なくなったのだとか。既に雨は上がっていて、明日の予報も曇り時々晴れだったが、既に会場全体が泥沼化してしまっているから、もうどうしようもない…のだろう。

メイン・ステージ
泥

個人的にも、会場内の移動は最低限を余儀なくされた。さっきWACKINGERとFASTERの移動の際、予想以上に時間を要したのは、若干乾いてきて粘度を増した泥が歩行を妨げ、一歩を踏み出すのも結構大変だったから…でもある。泥に足を取られ…というか、時々泥から足が抜けなくなり、思いのほか体力を奪われていくし。当初、ハンマーフォールの裏で同時進行している各ステージまで足を伸ばして、WASTELANDステージでライオット・シティを、HEADBANGERSステージでイモレーションを…とも考えたが、結局はそれも叶わず。一旦バックステージへ戻り、次のメイン・アクトに備えることに。

その“次のメイン・アクト”とは、HARDERステージの3番手でこの日のセカンド・ビルを務めたクリエイター。ラッキーなことに、フレッドことフレデリク・ルクレール(b)の取り計らいにより、ステージ袖から観戦することが出来た。いつも思うのだが、ドイツで──WOAで観るクリエイターは何か違う。やはり地元、自国ならでは…ということだろうか。もうステージから伝わってくる“圧”が尋常ではなく、この時もショウ冒頭から観客のテンションは突き抜けてしまっていて、暴動でも起こっているかのような“KREATORコール”が度々起こっていた。

クリエイター
KREATOR

バンド演奏は怒濤としか言いようがなく、フロントマンのミレ・ペトロッツァ(g,vo)は鬼神の如し。彼がMCで檄を飛ばすと、広大なWOAの大地が割れんばかりの大歓声が返ってくる。また、サミ・ウリ=シルニヨ(g)のメロディックなリード・ワークが、血気盛んなモッシャー達をさらに昂ぶらせ、重低音を吐き出しながらアクティヴに動き回るフレッドも、観客を煽りまくりながらひたすら燃料を注ぎ続ける。中盤にプレイされた「Midnight Sun」では、アルバム『HATE UBER ALLES』(’22年)にゲスト起用され、PVにも出演していた女性シンガー:ソフィア・ポルタネットが登場。普段のクリエイターとはまた異なる空気感を生み出していたことも特筆しておかねばならないだろう。

ミレ・ペトロッツァ
Mille Petrozza(g, vo)/KREATOR

サミ・ウリ=シルニヨ
Sami Yli-Sirniö(g)/ KREATOR

フレデリク・ルクレール
Flédéric Leclercq(b)/ KREATOR

そして──午後10時、FASTERステージにて本日のヘッドライナー:ハロウィンのショウがスタート! ハンブルク出身の彼等にとって、このWOAはホームも同然だ。’18年の前回出演時も凄まじい盛り上がりだったが、“PUMPKINS UNITED”として新旧メンバーが再結集して間もなく6年、未だその“お祭り”ムードは衰えることなく、今年も負けず劣らず凄いことになっていた。

ハロウィン
HELLOWEEN

『HELLOWEEN』(’21年)からの大曲「Skyfall」で幕開けると、トリプル・ギターにトリプル・ヴォーカルが入れ替わり立ち代わり見せ場に次ぐ見せ場を生み出し、どこを観ていればイイのか分からなくなってしまう。当然、推定4万人以上の大観衆は、どの曲でも歌いまくり。クリエイターのヴァイオレントなムードとはまた違う、ポジティヴかつハッピーなエネルギー交感が、バンドとオーディエンスの間で交わされる。抜群のコンビネーションを見せたカイ・ハンセン、マイケル“ヴァイキー”ヴァイカート、サシャ・ゲルストナーによるソロ競演も、ただただ圧巻のひと言だ。

マイケル・キスク
Michael Kiske(vo)/HELLOWEEN

カイ&ヴァイキー
Kai Hansen(g,vo)&Michael Weikath(g)/HELLOWEEN

サシャ・ゲルストナー
Sascha Gerstner(g)/HELLOWEEN

マーカス・グロスコフ
Markus Grosskopf(b)/HELLOWEEN

サシャ、カイ、アンディ
Sascha, Kai & Andi Deris(vo)/HELLOWEEN

個人的ハイライトは、本編ラストに飛び出した「How Many Tears」(’85年『WALLS OF JERICHO』収録)! カイも交えてのトリプル・ヴォーカルの絡みが見事で、トリプル・ギターの妙味がたっぷり味わえる中間部のアレンジもWOAの大ステージだとより扇情力を増し、泣きのフレーズではヴァッケナー達と一緒に「オ〜、オオオオ〜♪」と叫びまくった。いや──改めて振り返ると、全編がハイライトだった…と言いたくなる。観客はみんな、2時間ずっと歌い&叫び続けて、すっかり声を枯らしてしまったのでは? 実際、序盤も中盤も終盤もアンコールも観どころだらけ。2曲目に「Eagle Fly Free」(’88年『KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART II』収録)が早くも炸裂…なんて反則でしょ? そりゃあ一緒に歌わずにおられませんって!!

ただ…実は、「Future World」(’87年『KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART I』収録)だったか「Power」(’96年『THE TIME OF THE OATH』収録)だったか、まず4〜5曲だけ観て、ちょい抜けして一旦W.E.T.ステージへ。ところが、「Save Us」を背中で聴きながら、泥をかき分けBULLHEAD CITYへ近付くと、SE「Walls Of Jericho」(『WALLS OF JERICHO』収録)が聴こえてきたから、思わず足を止め、WACKEN CENTERでスクリーンを見ながらカイ・メドレーをしばし堪能することに。

いや〜、’80年代以来の披露となった「Victim Of Fate」(’85年EP『HELLOWEEN』収録)から「Gorgar」(『WALLS OF JERICHO』収録)の流れは、オールド・ファンには堪らないモノがある。驚いたのは、カイが「Gorgar」までギターを持たずにハンド・マイクで歌っていたこと。そのままメドレーを締めくくる「Heavy Metal (Is The Law)」(『WALLS OF JERICHO』収録)でのコール&レスポンスまで、じっくり楽しみ尽くしたかったが、そろそろW.E.T.に…と、再び歩みを進めると、そこでプレイしていたのは、元イモータルのアバス!!

アバス
ABBATH

アバス
Abbath(g,vo)/ABBATH

近年は白塗り面白キャラとしてネタ扱いされることも少なくない彼だが、今もそのカリズマ性は大健在。演奏中、ずっとバック・ライトが光りっ放しでほぼシルエット状態なのは…もはや恒例? それでも、ハロウィンの真裏で多くのオーディエンスを集め、轟音と共に騒乱を巻き起こしていたのは流石と言いたい。まぁ、2曲目にイモータルの「The Rise Of Darkness」(’09年『ALL SHALL FALL』収録)が!…となれば、誰しも正気ではいられなくなるのだろうが。

ハロウィンの真裏といえば、LOUDERステージでも時間丸被りでアモルフィスが奮闘中。そっちにも足を伸ばすか、それとも9月にまた日本で観られるからパスしてしまうか…と葛藤しつつ、ハロウィンも同じく9月に来日するし…と、一瞬だけLOUDERに気持ちが動くも──やっぱり「ハロウィンの“超地元”ショウを優先すべきでしょ!」ということで、アバスを早々に切り上げ、メイン・エリアへと復路を急ぐ。戻ってきた時、「Dr.Stein」(『KEEPER〜PART II』収録)を演奏中だった…かな?

ハロウィン
サシャ&カイ
サシャ&ヴァイキー
アンディ・デリス
マイケル・キスク

セットリストは、ドラム・ソロがアンコールではなく本編終盤…など、幾らか違いもあったものの、その後に行なわれた来日公演とほぼ同じ。2度のアンコール含め、スクリーンを駆使した演出でも大いに楽しませてもらった。不満とまでは言わないものの、強いて難点を挙げるとすれば、『HELLOWEEN』から「Skyfall」「Mass Pollution」「Best Time」と3曲しか披露されなかったこと。その点だけちょっとモノ足りなかったが、あまり贅沢は言うまい。バンドの超地元で、これだけの規模の野外ショウを、大観衆超絶大盛り上がりの中でたっぷり楽しめたのだから…バチが当たる。

アンコール最後、「I Want Out」(『KEEPER〜PART II』収録)でのパンプキン・バルーン乱舞がパーティ・ノリをさらに引き出し、終演時のバンド・ロゴなどを浮かび上がらせたドローン・アートが、余韻と共に充足感を増幅させ──日付が変わる頃、2時間に及ぶハロウィンのショウは幕を閉じた。結局この日、悪天候が続くことはなく、残り2日間に向けて好転の兆しすら感じられた…なんて、つい昨日の混乱が嘘のよう。残り2日間もこのまま平穏に、滞りなくモロモロ執り行なわれますように…と、誰しもが祈るような思いでいたに違いない。

ハロウィン
ハロウィン ドローン

ハロウィン@Wacken Open Air 2023 8.3 セットリスト

1. Orbit(SE)〜Skyfall
2. Eagle Fly Free
3. Mass Pollution
4. Future World
5. Power
6. Save Us
7. Kai Medley:Walls Of Jericho(SE)〜Metal Invaders / Victim Of Fate / Gorgar / Ride The Sky / Heavy Metal(Is The Law)
8. Forever And One(Neverland)
9. Guitar Solo(Sascha)
10. Best Time
11. Dr. Stein
12. Drum Solo(Dani)
13. How Many Tears

[encore 1]
14. Perfect Gentleman
15. Keeper Of The Seven Keys

[encore 2]
16. Invitation(SE)〜I Want Out