見事な夏フェス日和!
WOA現地への移動を翌日に控えた7月29日、今年の“W:O:A Metal Battle”(以下MB)の日本代表バンド:PARAMENAの面々と合流。夜遅めにドイツへ到着したばかりの彼等を囲み、ささやかな壮行会を起こったのだが──その時点で、週末まで雨の予報は全くナシ。去年の地獄のような超荒天が嘘のようだ。
どうやら今年は、あまり天気の心配をしなくて大丈夫そう…とひと安心。これが初海外ライヴとなるPARAMENAのメンバーの意気も高く、これは日本代表のMB3連覇も夢ではない! …と、壮行会は大いに盛り上がった。
翌30日、午前中にアーティスト・シャトルでフェス会場へと移動。雲もあるが、空は良い感じに晴れ渡っており、何とも見事な夏フェス日和だ。既に幾つかの小さなステージでは、ライヴ演奏を含め色々と出し物が始まっていたが、この日は毎年ちょこちょこ変更になる導線の確認を行ないつつ、フェス会場全体の把握に努め、PARAMENAのフライヤー配りにも同行することに。
フェスティヴァル・エリアの真ん中を突っ切るヴァッケン・センターでは、世界中から集った酔っ払…もとい、メタルヘッドどもが宴会の真っ最中で、早くもすっかりデキ上がっている連中がちらほら。ビア・ガーデンの近くでは、ドイツ軍による広報活動も行なわれていたりして、ちょっと驚かされた。
キャンプ・エリアへ戻ると、昨年のMB優勝バンド:ファントム・エクスカリバーも到着済み。彼等も翌日のWOA凱旋ステージに意欲を燃やしていた。
そして、7月31日。いよいよメイン・ステージのあるインフィールドが解放される水曜日──本日の天候も晴れ! 予報では最高気温が26度になるということで、夏フェスらしい1日になりそうだ。ただ、最低気温は11度なので油断は出来ない。毎度のことだが、WOAでは暑さ対策や日焼け対策、水分&塩分補給などと同時に、夜の寒さにも備えておかねばならない。まぁ、雨対策をしなくても良いだけ、例年と比べてかなりマシなのだが。
この日、まず向かったのは、ファスター&ハーダーと名付けられたダブル・メイン・ステージを左に見ながらヴァッケン・センターを進んでいった先にあるラウダー・ステージ。メインの次に大きいサブ・ステージ、あるいはセカンド・ステージだが、手前にビア・ガーデンがあって、お昼前からもうかなりの観客が集まっている。
CRYSTAL VIPER
ここでトップを飾るのは、ポーランドの王道メタラー:クリスタル・ヴァイパー。元々はツイン・ギター編成の5人組だったが、’23年より専任ベーシスト不在となり、以降は女傑シンガーのマルタ・ガブリエルが兼任して活動を続けている。そういえば、ギター・チームの片割れもこの年に交代。’06年加入とごく初期から在籍するアンディ・ウェイヴの相棒には、イタリア出身のジュゼッペ・タオルミナが迎えられていた。


オールドスクールの旨味をたっぷり湛えた彼等のパフォーマンスは、まさにノー・ギミックの直球勝負。ベースを弾きながらでも全くパワフルさを失わないマルタの堂々たる歌唱に、ラウダー・ステージ前を埋めた大観衆がのっけから熱狂しまくる。正午に演奏開始ということで、まだまだ慣らし運転中といったヴァッケナーも多い中、WOA初出演を果たした彼等は、見事にオープナーの大役を果たしてみせた。
BUTHCER BABIES
続いてラウダー・ステージに登場したのは、ブッチャー・ベイビーズ! 女性ツイン・ヴォーカルの5人組…だが、何とWOA出演直前にその片割れ:カーラ・ハーヴェイの脱退をアナウンス。後任やいかに…? もしや、ゲスト・シンガーを起用? …なんて思っていたら、何とハイディ・シェパードがひとりですべてをコナしていてビックリ! しかも、これがカーラ脱退後、2回目か3回目のショウだったにもかかわらず、その不在をあまり感じさせないぐらい、ハイディの大奮闘には目を見張るモノがあった。


重くグルーヴィなサウンド、ヘンリー・フルーリーの野太く唸る8弦ギター、そして、グロウルからスクリーム、クリーンまでを自在にコナすハイディのマルチっぷりに、万単位の大観衆が大きく揺れ、小規模ながらモッシュ・ピットも発生。ショウ序盤から、「私ひとりでやってみせる…!」と言わんばかりのハイディの覚悟の強さに圧倒されっ放しだった。
Phantom Excaliver
ブッチャー・ベイビーズを3〜4曲ほど観て、ブルヘッド・シティと呼ばれるエリアへ移動。そこには、かつてはテント内にあったW.E.T.ステージとヘッドバンガー・ステージが併設され、世界各国から約30バンドが激突するMBコンテストが進行中だったが──午後2時45分に我らがファントム・エクスカリバーがヘッドバンガーに登場し、前年の優勝バンドとして、ひと回りもふた回りもデカく成長した姿をWOAの観客に見せつけた。
驚いたのはその大人気っぷり。最前列付近には、日本から駆け付けた熱狂的ファンの姿もあったが、当然ながら観客の9割以上が現地民+世界各国からやって来たヴァッケナーで、そこには軽く1万人以上が集結していたのだ。しかも、その多くがバンドTを着たり、“メタルは裏切らない”とか“YASSASSA”とプリントされたタオルを掲げていて、「みんなどこで買ったの…?」「もしかして現地でサクラを5千人雇った?(笑)」状態。いやはや彼等は、普通に人気バンドになっていたのである。
そんな素晴らし過ぎる光景に、当然バンドもテンション爆上がりで、互いの相乗効果により、その場は熱気ムンムン! 1曲目から「メタルは〜裏切〜ら〜ない♪」と大合唱が起き、次の「Yassassa」ではみんなお祭り騒ぎとなり、ナイス選曲としか言いようのない『ドラゴンボールZ』カヴァー「CHA-LA HEAD-CHA-LA」も、現地民に大ウケし、あまりの凄まじい盛り上がりに、「何だ?」「誰…?」と周囲や通りがかりも巻き込んでいき、どんどん観客が増えていく。





当時はまだ“謎の新曲”として曲名すら明らかにされていなかった「KINGDOM」が、ショウの締め括りとして披露されたのも特筆しておきたい。のちにサード『THE RISING KINGDOM』(WOA出演から約4ヵ月後にリリース)に収められるこの新曲は、何ら告知などなく、このWOAでいきなり初演奏されたのだ。日本でライヴの生配信を観ていた多くのファンが、「ヤベェ! コイツらWOAで新曲やってやがる!!」とド肝を抜かれたのは言うまでもない。それを仕掛けたMatsuにしてみれば、「サプライズ大成功!!」となった。
ファントム・エクスカリバー 2024.7.31 @WACKEN OPEN AIR セットリスト
1. メタルは裏切らない
2. やっさっさ
3. CHA-LA HEAD-CHA-LA(『ドラゴンボールZ』)
4. Remember X
5. 炎のラプソディ
6. KILL THE OMEN
7. 乾杯
8. 聖剣伝説
9. THE REBELLION
10. KINGDOM
そんなファントムの熱狂の裏では(いや、コッチが“表”か…?)、いよいよインフィールドがオープン! 午後3時過ぎに、推定3〜4万のオーディエンスがメイン・ステージめがけてセキュリティ・ゲートから雪崩れ込んできた。



ファントムの終演後、楽屋へ向かうと、メンバー達は全員まだ興奮冷めやらぬ…といった様子。いやはや、まるでもう何度もWOA出演している常連バンドか…ってぐらいの、本当に凄いとしか言いようがない盛り上がりだった。このあとすぐドイツ・ツアーに出ちゃう? …なんて言ってしまいたくなるぐらいに。
