アーティスト名 | ANTHRAX アンスラックス |
---|---|
アルバム名 | FOR ALL KINGS フォー・オール・キングス |
Amazonでチェック |
ライヴ活動は続けていたので久々という気もしないが実は4年半ぶり、ジョーイ・ベラドナ(vo)復帰後2作目にして新リード・ギタリスト:ジョナサン・ドネイズ(シャドウズ・フォール)加入第1弾となるアルバムの登場だ。前作でのベラドナは制作最終段階からの参加だったためほぼ前任シンガーが作った素材を歌っただけだったが、今回は新加入ドネイズも含め現ラインナップ全員で仕上げた楽曲を揃えた内容。その意味で、’00年代後半からダラダラ続いた回顧お祭りモードから脱した後、バンドが初めて本当に“現在の姿”を示した作品に他ならない。これでようやく新旧のベラドナ体制アンスラックスの歴史が繋がる。
攻撃力健在にことさらリキんだ感のあった前作と違い、今回は突進力のみならず劇的展開やキャッチーで滑らかなメロディーが際立つ場面も随所にあり、曲想が幅広い。シンガロングを誘うサビを設定した曲が多いのはベラドナの功績だろう。またドネイズのプレイが前任者よりメロディー指向、かつ陶酔感と華のあるリードらしいリードであるため、リフ刻み達人スコット・イアンとのコンビネーションがバンド初期に備わっていたバランス感覚を自然と彷彿させもする。懐古的なスラッシュ回帰ではなく、アンスラックス型パワー・メタルの再構築。重い看板と現役感覚の葛藤を吹っ切った結論がようやく明快に見えた。
【文】平野和祥