HAPPY XMAS/ERIC CLAPTON クリスマス・アレンジの中にも紛うことなきクラプトンの音

HAPPY XMAS/ERIC CLAPTON クリスマス・アレンジの中にも紛うことなきクラプトンの音
アーティスト名ERIC CLAPTON
エリック・クラプトン
アルバム名 HAPPY XMAS
ハッピー・クリスマス

CD | ユニバーサル インターナショナル | 2018年11月7日発売

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代表作『SLOWHAND』(’77年)のプロデューサーであるグリン・ジョンズを久々に起用したことで話題となった’16年のソロ・アルバム『I STILL DO』以来となる、エリック・クラプトンの最新スタジオ作。その内容は何と、彼流の解釈で数々のクリスマス・ソングにアレンジを施したカヴァー集だ。『PILGRIM』(’98年)などのクラプトン作品で知られるサイモン・クライミーがプロデュースした本作、そのコンセプトゆえに企画もの感があり、彼のキャリアの中では異質な作品と見ることもできるだろう。だが題材に選んだ楽曲がブルースやジャズではなくクリスマス・ソングだったというだけで、内容からすればこれまでの彼の仕事と何ら変わりはなく、紛うことなきクラプトンの音が密に詰め込まれている。濃いブルース・ギターの血が注ぎ込まれた「White Christmas」「Lonesome Christmas」「Have Yourself A Merry Little Christmas」、十八番のアコースティック・ギター演奏が美しい「Home For The Holidays」「Christmas In My Hometown」などがまさにその典型だろう。また唯一書き下ろされたスロー・バラード「For Love On Christmas Day」の、心を震わす熱演も見逃せない。

そしてこれらとは別の視点で注目したいのが、春に急逝したアヴィーチーに捧げられた「Jingle Bells (In Memory Of Avicii)」。原型をとどめないほどダンス・ミュージック調にアレンジされており、本作の中で異彩を放つ1曲だ。本人直筆の緩いジャケット・デザインとは裏腹に(失礼!)、巨匠の尖った気概を感じられて実に興味深い。

【文】悠田ドラゴ