THE GETAWAY/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

THE GETAWAY/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
アーティスト名RED HOT CHILI PEPPERS
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
アルバム名 THE GETAWAY
ザ・ゲッタウェイ

CD | ワーナーミュージック・ジャパン | 2016年6月17日発売

Amazonでチェック

輝かしいキャリアを共に作ったリック・ルービンから離れ、ヒップホップからロックまでを手掛ける気鋭のデンジャー・マウスをプロデューサーに起用したのは、心機一転したバンドの心模様の表れだろう。『CALIFORNICATION』(’99年)以降の彼らの看板となったメロウなファンク・ロックを踏襲しながら、前作から加わったジョシュ・クリングホッファー(g)の個性も発揮させた、守りもあるが攻めもある新作だ。

作中の約半数、前任ギタリストの残り香を手繰り寄せたような穏やかなカッティング・ギターのファンク・ナンバーは鉄壁の完成度の“守り”だが、シンセや生ピアノなどの鍵盤類を導入した「The Longest Wave」「Sick Love」「Feasting On The Flowers」「Encore」「The Hunter」「Dreams Of A Samurai」は“攻め”の新味で、ここがオルタナ/エクスペリメンタル・ロックを出自とするジョシュの腕の見せ所。空間系エフェクトを用いた装飾プレイの数々は音作りも含め職人的な緻密さで、アンビエント/サイケ的な広がりや揺らぎを作り、サウンドにモダンな風を送り込む。こうした裏方的なプレイは前任者の奔放なリード・プレイよりは目立たない…が、その職人肌のギター・ワークによって、硬直気味だったバンドに化学反応が起きつつある。ガレージ/ストーナー風の異色のリフ・ナンバー「This Ticonderoga」では荒々しいギターが前方に踊り出ているが、“裏方”以外の引き出しはまだまだ隠れていそうな予感もする。次回、乞うご期待!!

【文】菅原健太