enigma／Tak Matsumoto

前作『New Horizon』（’14年）以来、約２年ぶりにリリースされたB’z松本孝弘ソロ作品。インタビューによれば、神秘的かつ不穏な雰囲気のあるメロウな表題曲「enigma」を軸としてアルバム制作を始めたそうだが、その後全く性格の異なるロックな曲が生まれてしまい、どんな方向へ行くつもりなのか本人が戸惑ったとか。ただ結果的に、ここ数年の繊細かつ穏やかな大人のインスト路線と、『西辺来龍 DRAGON FROM THE WEST』（’02年）辺りを思わせる激しい骨太路線が混在する、二面性のある作品となった。

おおざっぱに分ければ「Vermillion Place」「Step to Heaven」「Ups and Downs」「Rock The Rock」「Dream Drive」「The Rock Show」とボーナス・トラックの「#1090 〜Million Dreams〜」（名曲「#1090 〜Thousand Dreams〜」のリメイク！）辺りが久々のロック・サイド、それ以外が従来のメロウ・サイドと言えそうだが、ただいずれの曲にもガラリと表情の変わる場面が多々あり、一辺倒でないドラマティックな展開が何度も聴き手の想像力をかき立てる。その核になっているのが強烈に太いのに艶もある濃厚なギター・サウンドであることは言うまでもなく、一聴して誰と分かるこの音はやはり武器だなあ…と、相も変わらず感嘆させれらてしまうのだった。

なお、初回限定盤にはDVDもしくはBDが付属されており、前作の発表後に行なわれたブルーノート東京におけるライヴの模様、全15曲を収録。