Line 6 “POD Go Wireless”特別映像&使用法入門編

Line 6 “POD Go Wireless”特別映像&使用法入門編

PART-3 ■ “POD Go”の基本的な音作り方法とサウンドの傾向

シンプルなサウンド・メイキング

ひと通りプリセットの音をチェックしてみたら、今度は自分で1からオリジナル・サウンドを作ってみよう。“POD Go Wireless”には自由に保存できる空のユーザー・プリセットが128個用意されているので、まずはそのうちの1つを選択。このような基本画面が現れる。

New Preset
プリセットをエディットする時の基本画面。上部にはアンプ&エフェクトの接続順とオン/オフの状態が示されており、下部には選んだエフェクト類のパラメーターと数値が表示される。

見れば分かる通り、上半分にはシグナル・チェーン(つまり左から右に向けてアンプ&エフェクトがどのように並んでいるかを示した図)が表示されている。基本的にどの空プリセットにも最初からヴォリューム・ペダル、ワウ、アンプ、キャビネット、EQは組み込まれており、さらに加えて空白のエフェクト・ブロックが4つと、オン/オフできるエフェクト・ループも。空白のブロックには9種類(ディストーション、ダイナミクス、EQ、モジュレーション、ディレイ、リヴァーブ、ピッチ/シンセ、フィルター、ルーパー)のカテゴリーから自由に割り当てることが可能で、オン/オフしたり順番を変えたりといった操作も、ノブとボタンで簡単に行なうことができる。ちなみにヴォリュームとワウは最初からエクスプレッション・ペダルに割り当てられており、ペダルを爪先側に踏み込むことでそれぞれを行き来することが可能。またカスタマイズすることで、アンプやその他のエフェクトのパラメーターを操作することもできる。

ブロック
空白のブロックには各種エフェクト(ディストーション、ダイナミクス、EQ、モジュレーション、ディレイ、リヴァーブ、ピッチ/シンセ、フィルター、ルーパー)を読み込むことが可能。

画面の下半分には、膨大な種類の中から選んだアンプやエフェクトの名前と、各種パラメーターの数値が表示される。これらは画面のすぐ下側に搭載されている5つのノブに対応しており、回したり押したりといった操作だけで直感的に音作りできる。

5つのノブ
画面下に搭載されている5つのノブがそれぞれのパラメーターに対応しており、回すと画面内の数値が変化する。

通常なら絶対に無理なセッティング…例えばワウを一番後ろに持って来たり、アンプとキャビネットの位置を入れ替えたりといったことまでOKなので、ある程度縛りがあるようでいて実はかなり自由度は高い。もしかすると未知のサウンドが生まれてしまうかも…という期待もある!

アンプ&エフェクトの順番
アンプ&エフェクトの順番は簡単に入れ替えることができる。同じ種類を用いていても、前後を入れ替えるだけで音が劇的に変わるので、色々実験してみたい。

ちなみに見逃しがちだが大事な機能が、シグナル・チェーンの左右の端にある入出力(○印の部分)にも隠されている。まず左端のインプットにはノイズ・ゲートが搭載されており、緻密な設定が可能。右端のアウトプットにはステレオ接続時に左右の音の位置を決めるパンと、プリセットの最終的な音量を調節するレベルが備えられている。またエフェクト・ループがステレオ入出力対応なのも珍しく、SEND端子とRETURN端子のそれぞれにレベル調節が搭載され、接続した外部エフェクトの音量をギターの音に自由に混ぜることが可能。この機能のおかげでRETURN端子は外部音源の入力用としても使うことができ、例えばMP3プレイヤーやスマートフォン、リズムマシンなどを再生することだって可能だ。

★Amp/Preamp(85種類)

ブロックアイコン:アンプ

ヴィンテージ系やモダン・ハイ・ゲイン、ブティック系まで網羅され、Line 6オリジナルも7種類。ベース用やマイク・プリアンプも用意されており、完成度はいわずもがなだ。真空管の状態を変化させるマニアックなパラメーターまで備えられており、マスター・ヴォリュームの設定だけでも音質はかなり変化する。また実機のパワーアンプと組み合わせる際に使用する、プリアンプのみのモデリングも用意されている。

★Cab(39種類)/Impulse Response

ブロックアイコン:アンプキャビネット

キャビネットも世界中の名器をラインナップ。特筆すべきは集音するマイクを16種類モデリングしていることで、定番ダイナミックやコンデンサーはもちろん、リボン・タイプまで揃っている。キャビからの距離を2.5cm~30cmまで動かすこともでき、変化は超リアル。ロー/ハイ・カット・フィルターや初期反射音を加えたりもできる。さらに後述のPC用エディターを使えば、IRデータを組み込むことも可能だ。

★Distortion(49種類)

ブロックアイコン:ディストーション

ブースター、オーヴァードライヴ、ディストーション、ファズもたっぷり用意。パラメーターは2〜3程度のシンプルなものから、緻密にいじれるものまで様々だ。特にヴィンテージ系のブースターの完成度が非常に高い印象で、耳に危険な突き刺さるような攻撃力も、パワー管が悲鳴を上げるニュアンスもイメージどおりだ。2つ並べて音量を上げてもクリップする気配がないので、ヘッドルームは相当広そう。

★Dynamics(18種類)

ブロック:ダイナミクス

ペダル系コンプレッサーは独特のクセが強いものが多く、それらのニュアンスとトーンもリアルに再現されている。DAW用プラグインでも使うような3バンド・コンプレッサーは、ギターのトーンの改良にも活用可能。プロのスタジオにあるような定番コンプ/リミッターも用意されており、ヴィンテージ系アンプの後ろでかければ’70年代風の強烈な音圧を生み出すこともできてしまう。

★EQ(8種類)

ブロック:EQ

シグナル・チェーン内に最初から用意されているもの以外にも、EQは追加することができる。ハイ/ロー・カットのみのシンプルなものや、3バンドで中域の周波数が可変タイプになっているもの、10バンドのグラフィックEQ、3バンドのフル・パラメトリックEQまで、好みと用途に合わせてセレクト可能。また+12dB~+15dBほどブーストできるタイプも多く、活用の幅は広い。

★Modulation(46種類)

ブロック:モジュレーション

Line 6が得意とするモジュレーション系エフェクトは、フェイザー、フランジャー、コーラス、トレモロ、ロータリー、リング・モジュレーターなどなど、ありとあらゆる種類が取り揃えられている。コーラス系のアナログ感もバッチリで、むしろ元になったオリジナル機よりも太く高音質なのでは?と思わせるほどの完成度。某フェイザーの名器のサウンドがステレオ仕様になっていたり、マニアックな驚きもある。

★Delay(35種類)

ブロック:ディレイ

ディレイはクリアなデジタル系はもちろん、幻想的な空間を演出可能なブッ飛び系や、アナログ・ディレイの名器も多数内蔵。昔懐かしいテープ・エコーのサウンドなども見事に再現されており、特にチューブ系のモデルはブースターとしてゲイン・アップさせるような使い方も可能。ステレオ系のディレイはかなり衝撃的な音の広がり方なので、ぜひ一度ヘッドフォンで聴いてみていただきたい。

★Reverb(17種類)

ブロック:リヴァーブ

リヴァーブは名器のモデリングではなく、用意されているものすべてがLine 6オリジナル・サウンドで、そこに品質への絶大な自信が見える。プレート、ルーム、ホール、スプリングといった定番はもちろん網羅しており、特にスプリング系のピチャピチャという独特のニュアンスがリアル。いずれも音質が極めて太く、解像度も圧巻で、減衰の最後の瞬間まで見えるような印象だ。

★Pitch/Synth(13種類)

ブロック:ピッチ

ピッチ系はいわゆるワーミーに代表されるペダル・ピッチシフターの他、複数のハーモニーを加えるものも用意されており、そのいずれもレイテンシーほぼなしで音質も完璧。本機の処理性能の高さは、数倍の価格帯の機種にも匹敵すると言えるだろう。シンセサイザー系も5種類用意されており、追従性が高いので普通に弾けばギター・シンセにありがちなエラーもほぼ出ない。

★Filter(15種類)

ブロック:フィルター

オート・ワウ系だけでこれほど多彩なラインナップを揃えてしまうというのは、流石長いノウハウの蓄積があるLine 6ならでは。特にステレオ系のエフェクトはブッ飛ぶほどの迫力だ。フォルマントをいじるタイプの人声系フィルターも用意されており、遊びながら弾いているだけでついつい時間を忘れてしまう楽しさ。空間系と組み合わせることで、さらにユニークな効果も生み出すことができる。

★Looper(4種類)

ブロック:ループ

6つのフットスイッチを駆使しながら録音、ダビング、スタート&ストップ、アンドゥ、1/2スピード切り替え、リヴァース再生などをコントロールできる本格的なルーパーが、モノラルとステレオの2種類用意されている。さらにフットスイッチ1つのみでシンプルに操作できるルーパーも、モノラル/ステレオの2種類。様々な音色を使い分けながら活用することで、すぐさま1曲できてしまいそうだ。

★Wah(10種類)/Volume(4種類)

ブロック:フィルター

ワウはキャラクターの違いを見事に再現しており、そのサウンドは圧巻のクオリティ(こんなにたくさんのワウを弾き分ける機会もそうそうないはずだ)。いずれも周波数の幅を調節できるところが嬉しい。さらにヴォリューム系エフェクトは、音量を+12dBまでアップできたり、ステレオ音像の左右の位置を調節できたり、広がりの幅を調節できたり…、かなり多彩なので積極的に活用したくなる。

(※各ブロック数は2021年6月現在、ver 1.20時点)