藤岡幹大/仮BAND『仮音源 -Demo-』インタビュー

藤岡幹大/仮BAND『仮音源 -Demo-』インタビュー

藤岡幹大(g)、BOH(b)、前田遊野(dr)という、国内でも屈指のテクニカル度とミュージシャンシップを誇る3人が結成した超技巧派インストゥルメンタル・バンド、仮BAND。その名前の由来が、あの人気アーティストのバックを務めるあのバンドから来ていることは周知の通りだと思うが(ややこしい言い方ですみません)、今回のデビュー・ミニ・アルバム『仮音源 -Demo-』を聴いた方は果たして面食らっただろうか、それとも期待通りだっただろうか。筆者は収録されている6曲のあまりのエキセントリックさ、それでいて妙なキャッチーさも併せ持つおかしなバランス感覚に、これは一体どういう音楽なのかと思わず考え込まされてしまった。個人的には日本でもトップ・クラスの奇才だと思っている藤岡氏に、本作の制作にまつわる裏話を語ってもらおう。

3人のパワー・バランスが面白いんですよね

YG:まずは結成の経緯から教えていただけますか?

藤岡幹大:僕は以前から常に、セッション系のライヴをよくやっているんですよ。ジャンルがフュージョンからプログレまで、多岐に渡るようなものを。で、確か2015年の11月ぐらいだったと思いますけど、高円寺にあるShowBoatというライヴハウスの方に「丸一日空いている日があるので、藤岡さん何かやりませんか?」って言われまして。最初はTRICK BOXで何かをやろうと思ったんですけど、他のメンバーのスケジュールが空いていなかったんですよね。だから別のセッション・バンドをやることにして、前田遊野(dr)氏とBOH(b)氏に声をかけたのが最初です。その時に演奏したオリジナル曲は僕の「HARMONYx」ぐらいで(2007年『TRICK DISC』収録)、他はカヴァー曲ばかりでした。

YG:その時の映像は、YouTubeで公開していますよね?

藤岡:そうですね。僕的には本当に軽いセッションのつもりだったんだけど、おかげさまで会場が壊れるんじゃないかというくらいの満員御礼で、これ以上人が増えたらトイレにも行けない…というぐらい。その終演後、ライヴを観てくれていたベルウッド・レコードの方に「音源を出しましょう!」って言ってもらったんですよ。当初は2016年の間に完成させるつもりでいたんですけど、なかなか時間を取ることができなくて。ちゃんとしたライヴも、まだ数えるほどしかやってませんね。2016年にピアニストの桑原あいちゃん…、多分今1番売れっ子のジャズ・ピアニストだと思いますけど、彼女と渋谷のJZ Bratでやったのが2回目。その時初めて、仮BANDっていう名前を使ったんです。

YG:そして3回目が今年3月22日に新宿BLAZEやったライヴで、4回目が3月25日の大阪茨木JACK LION(いずれもU.S.B.との対バン形式)。僕も新宿のライヴを観させてもらいましたが、ほぼBOHさんの漫談がメインで、合間に演奏があるような形でしたね(笑)。

藤岡:BOHさんは喋り過ぎなんですよ(笑)。ちなみにBLAZEはキャパシティ的にちょうど良かったんだけど、初めての会場だったから、モニターの聴こえ方が何か上手くつかめなくて、なかなか大変でした。最終的には自分のモニターの音を0にしていましたね。

YG:これだけの演奏力を持った人がガチンコでインストをやるとなると、馴れていないお客さんだったらチンプンカンプンになりそうじゃないですか。でも適度にああやって緊張感を緩めていたおかげで、最初から最後まで笑いの絶えないライヴだったのが印象的でした。

藤岡:3人のパワー・バランスが面白いんですよね。ステージでの見え方とか曲の方向性とかを決めるのはBOHさんがメインで、僕と前田さんが出すアイデアに対して「お前らはキャッチーだと思っているかもしれないけど、普通の人が聴いたら意味が分からないぐらいマニアックだぞ」って言ってくれる(笑)。キャッチーな方向に持って行ってくれるんですよ。

YG:ライヴを観た印象では、主に変な方向に持って行こうとするのが前田さん?

藤岡:変っていうか、自由。突然勝手なフィルを入れたりして、それじゃあ他のメンバーが入れないよ、みたいな(笑)。原曲と全然違うことを、本番で思い付きでやっちゃう。

YG:その2人の中にいる藤岡さんは、どんな立ち位置なんでしょう?

藤岡:どうなんですかね? 例えば今回のミニ・アルバムの2曲目に入っている「Chuku」なんかは、本当は13拍子だけどギターのリフだけ聴くと4拍子に聴こえる、みたいな。そういう作り方をよくするのは僕で、他にも1曲目の「Common time’s Logic」も、リズムは4拍子だけど僕だけ19音パターンだったり。

2017年3月22日 新宿BLAZEにて