毎月10日発売。月刊ギター専門誌ヤング・ギターの公式ウェブサイト。

冠 徹弥 & K-A-Z/THE冠 インタビュー『奪冠』

インタビュー●坂東健太 Kenta Bando

もう一度しっかりメロイック・サインを伝えて行こうと…

YG:7曲目の「奇祭」。これも毎作品必ず1曲入っている、お祭り系の曲ですね。
K-A-Z:演歌とか歌謡曲とか色んな要素が出て来たけど、冠は結局、お祭り男なんですよ。ライヴの盛り上げ方も、祭りでアガるようなイメージ。まあ、デビュー作を『冠祭』っていうタイトルにしたくらいだから。
冠:年に1回、大冠祭っていうライヴもやってるしね。そういう祭りをメタルでやれたらという思いはあります。

YG:リズムが3連符で、それも盆踊りと共通しますしね。
冠:そう、メタルにも3連符は付き物ですから。

YG:イントロに出て来る民謡風の歌声も、冠さんですか?
冠:そうです。「エンヤ〜!」のところですよね。“白鶴 まる”のCMみたいな(笑)。
K-A-Z:あれ、ライヴだともっとやばいよね。
冠:みんな「そこはいいから早く曲に入ってくれ」って思ってるだろうけど、息継ぎしてもう1回やるから(笑)。

YG:冠さんの歌は本当に表現が多彩ですね。あの民謡風の節回しって、本格的に練習しないとなかなかできないと思うんですが。
冠:いや、でたらめですよ(笑)。たまたまやってみて、面白かったから採用しただけ。
K-A-Z:製品版を聴いて笑ったもん(笑)。俺がレコーディングした時は入ってなかったから、CDを聴いて「おぉ!?」って。でもそこから本編の激しいリフが入って来ると納得するよね。

YG:さらに曲の最後には、ボサ・ノヴァかと思わせるパートも突然出て来ますね。
冠:あれは僕らの中ではジャズなんですよ。「世界で一番おもろい場所」と歌っているTHE冠のライヴに来て騒いでもらい、やり切ったら「明日のため一風呂浴び寝ろ」と。その寝ている様を表したのがジャズ・パートで、歌詞も「ムニャムニャ zzz…」ってちゃんと歌ってるんですよ(笑)。
K-A-Z:この曲は必ずライヴでやっているんだけど、本当に寝てるよね。柏PALOOZAのライヴに参加した時、ギターでちょっとジャズっぽい感じのフレーズを弾いたりしてる横で、ちらっと冠の方を見たら寝ごと言ってた(笑)。普通、ステージで寝るやついないでしょ。他のメンバーはもう慣れちゃってスルーしてるんだけど、俺だけどうも笑っちゃうんだよね(笑)。

YG:次の「夏したい」は、冠さんらしいコンプレックス丸出しの歌詞(笑)。
冠:自虐系ですね。これも実体験というか、今年の夏の話なんですよ。出だしはチャラ男が海でハジける感じなんですけど、サビが始まったら全く逆ですからね。

YG:THE冠のアルバムで明るい曲調が来たら、歌詞は真逆だ…ということは何となく分かってましたけど。
冠:バレちゃった(笑)。次は裏をかいて、逆に明るい歌詞を明るい曲調で歌うのもありかもしれないですけど、今のところはこの路線が好きですね。

YG:ただどんな歌詞をうたっていても、あくまで演奏はガチというところが素晴らしい。
K-A-Z:バックでも負けないよという思いはやっぱりあるね。そうじゃないと歌が引き立たない。冠がおかしいことをやって、演奏もおかしい感じにしたら、よくあるコミック・バンドになっちゃう。
冠:「ここが笑いどころでっせ〜ふにゃふにゃ」ってやると、逆に笑えない。「ガンガンに演奏している中で、こんなこと歌ってる俺、アホちゃう?」感がいいんです。

YG:そして個人的に今作のキラー・チューンだと思うのが、次の「イロモノ」ですね。歌は和メロなんですが、猛烈に速いメタルで、それでいてミクスチャー要素もあって…不思議な曲です。
冠:リフは’90年代に流行っていた懐かしめのイメージで、当時は大好きだったけど、THE冠では今までにやってそうでやってなかったんですよ。それに加えてハードコア・メタル感もあり、歌はいつもよりちょっと強めの和メロで。ただ、「やめろと言われても〜」という出だしは西城秀樹ですけどね。

YG:えっ、そうなんですか!?(笑)
K-A-Z:俺が最初に聴いたデモは、フィル・アンセルモみたいに叫んでるテイクだったんだよね。だから製品版を聴いて「こう来るんだ!」って思った。
冠:思い浮かんじゃったんだよね(笑)。歌謡曲オマージュと言いますか、真ん中からだんだんエモくなる。夕焼け感バリバリ。これは田舎の風景が頭をよぎって、その中を1人で帰りながら想いを馳せているイメージなんですよ。悩みを抱えている田舎の学生に聴いもらいたいですね。お前らの悲しみなんか、イロモノと呼ばれている俺が破壊してやるよ、そういう歌です。

YG:イロモノという言葉をポジティヴなものにしてしまうっていうのも、斬新ですね。
冠:イロは色気の色でもありますし、決して悪い表現じゃない。白黒であるよりは、よっぽどイロモノのほうがいい。お前らが今見ている白黒の世界を、俺が彩ってやるよ…という。

YG:ギター・ソロも曲調に合わせてか、ちょっと民族風テイストですね。スライドを多用していて、ライヴでの再現が面倒そうなパターン。
K-A-Z:いや、これは得意な方のスライドだから大丈夫(笑)。面倒なのは指板をリニアに動くやつで、これはボックス・ポジションを軸にして横移動するやつだからね。ワーミーを踏んでいるようなニュアンスを、スライドの移動で出すみたいな感じかな。比較的難しくない。
冠:これもいいソロだよな〜。さらにまた、間奏明けにはしっとりゾーンから激しくなる、大好きなパターンがあるしね。

YG:そしてラストの「冠、メロイックサインやめるってよ」。
冠:これは名曲中の名曲だと思う(笑)。
K-A-Z:俺が弾いたギターの音素材を、切り刻んで作ったんだよね。
冠:弾き語りでもいずれやりたいと思っているんですよ。メタル・アルバムの最後にこれか、というぐらいのアコースティック・バラードですね。歌詞がまたいいんです。最近ファンの子たちに「一緒に写真撮ってください」って言われても、「ほら、冠さんも一緒にメロイックサインやってよ!」って言われると、「何やねん」って引いてしまう時期があったんですよ。何となく気恥ずかしいというか。ライヴではめっちゃやるんですが、写真を撮る時はそんな風にメロイック・サインをやらない時期が、ほんの数ヶ月だけありました。ただ友達に、「メロイック・サインを掲げてテンション上げながら来られるのって、何かしんどいねん」って言ったら「自分の蒔いた種だろうが!」って返されて(笑)。20年以上やって来たんだから、そりゃあファンもメロイック・サインして来るわって話ですよ。だからそれからは悔い改めて、もう一度しっかりメロイック・サインを伝えて行こうと。そういった愛を歌った曲です。意味もなくおざなりにみんなが使うから、それを見ているのが辛くて俺はやめようかと思ったけど…って、すべてメロイック・サインのことを歌っているんですよね。恋愛のように書いてはいますけど。

YG:そうですよね。先入観なく読めばラヴ・ソングだと思いがちですが、ちゃんと読み取れる自分で良かったです(笑)。
冠:「人差し指と小指を立て」とか、これを理解できる人はメタル好きという。まあ、タイトルで「冠、メロイックサインやめるってよ」という大ヒントを与えているんですけどね(笑)。仮タイトルは「Without You」だったんだけど、これだと本当に伝わらない(笑)。最も歪んでいないメタル愛を歌っている曲がこれです。

YG:…という、全10曲が収録されています。
冠:飽きないアルバムに仕上がったので、何回でもすりこんで聴いてほしいと思いますね。
K-A-Z:2枚のベスト盤を出した後の作品だから、普通だったらかなりプレッシャーが掛かるものだけど、今回はそれらに全然負けてないよね。曲のヴァラエティが広いから、新作もある意味ベスト盤みたいに聴こえる。ギターのアプローチもかなり裏で凝ったことをやっているので、キッズに聴いてもらいたいところが沢山あるんですよ。ただそれはシュレッド的なテクニック面よりも、控えめな歪みのアンプに対する刻み方だったりするけど。

YG:最初の方に話した、サウンド面のこだわりですね。
K-A-Z:そう、若い子たちもトライする価値はあると思うんだよね。例えばスタジオに入った時、いつも歪ませてるゲインの目盛りを、2つくらい下げて弾いてみる。それだけでバンド内のアンサンブルがガラっと変わるんです。聴こえて来る音が増えたり、バンドの中で抜けて来たりするから。そこに手首の使い方やピックの当て方で、表現を加えるんですよ。俺が普段使っているコイル・タップなんか、優しく弾けばカスみたいな音しか出ないんだけど、ピッキング方法を考えるだけでグッと良い音になる。それはぜひ持っていたい技術じゃないかな。…一応、最後にギター雑誌らしいことを言わないと(笑)。
冠:そういえばヤング・ギターだってことを忘れてた(笑)。でも歪ませない方がより迫力が出ることに、気付いていない人も多いよな。コード感が分かりやすくなるから、歌もうたいやすくなるし。
K-A-Z:家で練習している時よりも、バンドで弾いている時の方が気付くことが多いと思う。それにレコーディングすると、ドラムとのバランスを考えたら、意外に歪んでない方がエグく聴こえたりするしね。

当ページの連動記事をヤング・ギター本誌に掲載!