EXODUS:真のラインナップが見せた“最強”スラッシュ・メタル・ライヴ
2018年のスラドミはこのバンドが最大の見せ場を持って行ったと言って良い。彼らも参戦はこれで5回目、スラッシュの元祖的存在であるエクソダスだ。初日はウォーブリンガーに続く2番手として登場し、1曲目の「The Ballad Of Leonard And Charles」からしていきなりの大爆走。トム・ハンティングの全身のバネが効いたスラッシュ・ドラムと、ジャック・ギブソンの堅実なベースが支える上で、殺傷力抜群のギター・チームが暴れまくる。ソロ・パートではリー・アルタスが妖しい中東風フレーズに続いて、ゲイリー・ホルトが狂気のリードを、そして見事なコンビネーションのツイン・リードを聴かせる。スティーヴ“ゼトロ”サウザ(vo)が復帰して以降のエクソダスは、見るからにワルそうだった前任シンガーのロブ・デュークスの時代に比べるなら、ユニークなダミ声のゼトロが醸し出すフレンドリーな雰囲気が支配しているが、出て来る音は相変わらずの凶暴ぶりだ。
この1曲目、イントロのリフが鳴った時点で「エクソダスは別格」という認識を新たにさせられた。とにかくギターのキレ味が尋常ではなく、その顔面を直撃しそうな迫力に思わずのけぞってしまうほどだ。ゲイリーが手にした毒々しい赤色のESP製シグネチュア・モデルが発する威圧感が凄まじい。ウォーブリンガーのアダムも色違いのゲイリー・モデルを使用していたのだが、さすがに迫力は本家本元に軍配が上がる。
ちなみにそのゲイリーがエクソダスと共に来日したのは、’15年のスラドミ以来ということになる。エクソダスの来日自体は’16年10月の“LOUD PARK”以来ということになるのだが、その前回はスレイヤーでの活動に時間を取られていたゲイリーが不参加で、ヒーゼンのメンバーであるクラゲン・ラムがその穴を埋めるというツアー用ラインナップだった。スレイヤーでのゲイリーも、彼が不在のエクソダスも文句のつけようがない最高のスラッシュ・メタルを聴かせてくれたが、 刺々しいオーラを発散しながら動き回る危うさ全開なアクションはエクソダスでこそ100%活きるし、彼がいてこそ真のエクソダスが完成するのだ。
スレイヤーに参加して以降のゲイリーは体型もケリー・キングに近づいていた感があったが、今回はやや引き締まった上、ストーナー・ロッカー風の太いモミアゲをたくわえた男らしい風貌。速弾き→ハーモニクスと組み合わせた超高音アーミングで締めるというリード・プレイはほとんど手グセ化しているが、それもこのバンドの暴力的な音の中では効果的に響く。明らかに’80年代のゲイリーに影響を受けたフレージングを得意とするリーがまとまりの良いソロを弾くことで、ゲイリーとの上手い棲み分けができているという印象だ。なおゲイリーは「Body Harvest」でギターを持ち替えていたが、同色のサブ・ギターを用意しており、またリーはメインの1本のみで通していた模様だ。
現時点での最新作タイトル曲である「Blood In, Blood Out」やデビュー期の「And Then There Were None」など、新旧織り交ぜた楽曲が叩き付けられる中、特に観客のテンションを上昇させたのは、日本での披露は再結成後最初の2004年以来である「Deranged」と久々の「Exodus」という2連弾か。終盤には「Bonded By Blood」に「Toxic Waltz」、そして最後の「Strike Of The Beast」ではゼトロに煽られた観客がウォール・オブ・デスを敢行。初日はここで疲れきってしまったというオーディエンスも少なくなかったに違いない。
テスタメントと入れ替わりでヘッドライナーを務める2日目は、大幅にセットリストを変更。いきなり1曲目から必殺技「Bonded By Blood」を出してきた。最後の出演者ということで会場が十分に温まりきっていたこともあって、しょっぱなからクライマックス級の盛り上がりだ。「Metal Command」に「Piranha」、2ndのタイトル・トラック「Pleasures Of The Flesh」を挟み、スタンド固定のアコースティック・ギターでゲイリーがイントロを弾いてから始まる「No Love」、「Deliver Us To Evil」、そして3rdの「Fabulous Disaster」に続いてプレイされた「A Lesson In Violence」と、中盤はほぼ『BONDED BY BLOOD』を重視した構成(前日の「Exodus」と「And Then〜」を合わせるとアルバム全曲演奏したことになる)になっていたため、年齢層高めなファンにとっては初日以上に燃える内容だったかもしれない。ラストはこの日も「Strike Of The Beast」だったが、前日を超える壮絶なカオス状態の中で今年のスラドミも締めくくられたのだった。
ライヴが終わった後に冷静になって振り返ると、いくつか挙げた“久々の選曲”を除けば、全体的に見ると両日とも2004年以降の来日時セットリストとしてはさほど珍しい内容ではなく、日本でのゲイリー参加が3年ぶりだったとは言え、ファンにとってみればサプライズがなかったことも事実。だが彼らの場合はバンドの演奏そのものがスペシャルでありサプライズ。それぐらいに音とパフォーマンスのキレが図抜けていた。エクソダスこそ史上最強のスラッシャーにして最強のライヴ・バンドだ。
エクソダス THRASH DOMINATION 2018 @川崎クラブチッタ セットリスト
2018.2.10
1. The Ballad Of Leonard And Charles
2. Blood In, Blood Out
3. And Then There Were None
4. Scar Spangled Banner
5. Body Harvest
6. Deranged
7. Exodus
8. Fabulous Disaster
9. A Lesson In Violence
10. Children Of A Worthless God
11. Blacklist
12. Piranha
13. War Is My Shepherd
14. Bonded By Blood
15. The Toxic Waltz
16. Strike Of The Beast
2018. 2.11(ヘッドライナー)
1. Bonded By Blood
2. Iconoclasm
3. Brain Dead
4. Blood In, Blood Out
5. Metal Command
6. Piranha
7. SE〜Pleasures Of The Flesh
8. No Love
9. Deliver Us To Evil
10. SE〜The Last Act Of Defiance
11. A Lesson In Violence
12. Blacklist
13. War Is My Shepherd
14. The Toxic Waltz
15. Strike Of The Beast