1988年にデビューを飾ったB’zが、2018年で30周年。そのアニヴァーサリー・イヤーの一環として、まず昨年9月から全国47都道府県のライヴハウスにて、様々な楽曲と映像を爆音で鳴らす“B’z Loud-Gym”を毎月実施。11月には20枚目のスタジオ・フル・アルバム『DINOSAUR』を発表、そして12月から今年2月初頭にかけてツアー“LIVE DINOSAUR”で全国を縦断。さらに4月から6月半ばには、B’z 30th Year Exhibition “SCENES” 1988-2018と名付けられた一大エキシビションを東京・有楽町にて開催…。このように濃いイベント満載でファンをめいっぱい喜ばせ続けてくれた彼らが、さらに7月から代表的ナンバーばかりを集めた久々のグレイテスト・ヒッツ・ツアー“B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 HINOTORI”をスタートさせ、9月に大円団を迎えている。
…と、ここまで前置きが長くなってしまったが、ようやく本題。9月22日(土)、味の素スタジアムにて行なわれたその千秋楽公演の模様を、遅ればせながら当ウェブページでたっぷりとお届けしよう。
先述の通り、今回のツアー・タイトルには“HINOTORI”というキーワードが掲げられている。かつて2003年に行なわれた“B’z LIVE-GYM The Final Pleasure -IT’S SHOWTIME!!-”にて、火の鳥をイメージした超豪華なステージ・セットが用いられており、タイトルを見ただけでそのことを思い出した人は相当熱心なファンに違いない。味の素スタジアムのステージ上には、2003年をさらに進化させ派手で巨大なセットが組まれており、開演前から否が応でも期待を煽る。
その照明が暗くなると、すぐさま反応した満場の観客から大きな歓声が。ステージ・セットが青や赤の美しい色に変化し、さらに上空に設置された解像度の高い大型スクリーン群に、B’zの30年を振り返るヒストリー映像が映し出される。場内の興奮が高まる中、口火を切ったのは「ultra soul」の印象的なイントロ。松本孝弘と稲葉浩志がステージ下から迫り出し、ゴールドトップのギブソン・レスポールからあのメロディーが奏でられる…。いよいよショウの幕開けだが、いくらなんでも代表曲中の代表曲をしょっぱなにぶつけるのは反則だろう。歓声は悲鳴に近い音量へ上がり、稲葉の煽りに応えていきなりの大合唱だ。中間部にはスタジオ・ヴァージョンと異なるハーモニー・ソロが加えられ(今回もサポート・ギタリストとして大賀好修が参加)、その新しいアレンジも効果的に熱を高める。
続いてシェーン・ガラスの軽快なドラミングから始まったのは「BLOWIN’」。松本の巧みなバッキング・リフはいつ聴いても力強く、そのリズムに合わせて観ている側の身体も自然と揺れる。いつになく太い声で歌う稲葉のサビメロに導かれたギター・ソロも、半止めワウの粘っこさが実に心地よく、またエンディング・ソロもフロント・ピックアップによる甘い音色が最高級。音作りが決して簡単ではない野外ライヴで極上のサウンドを実現する、その実力の高さに感嘆させられる。
ギター・サウンドの素晴らしさは他の楽曲でも同様。「ミエナイチカラ 〜INVISIBLE ONE〜」ではイントロのシャープなリフも中間のヘヴィ・パートも、それに続く滑らかなソロも絶品で、それは当ツアーで久々に使用されたあのピンク色のアーニーボール・ミュージックマン“EVH”のおかげでもあろう。ご存知の通りSNSでの呼びかけにより約20年ぶりに発見され、松本の元に戻ったあのモデルは、明るくキャッチーな「恋心(KOI-GOKORO)」でも用いられ、アームがしっかりと生きた滑らかなヴィブラート、ペダル・ワウの効いたメロディアスなリード、しっとりと滑らかなクリーン…と多彩な場面で存在感を放っていた。
またこの夜、メイン級として活躍したのは先述したギブソンのゴールドトップ・レスポール。「裸足の女神」の空気を切り裂くようなハーモニクスや、「Wonderful Opportunity」の極太のメロディー弾き、「月光」のブルージーなイントロ・ソロや超クリーンなアルペジオ、軽快な「OH! GIRL」の図太いロックンロール・リフ、「イチブトゼンブ」の分厚いパワー・コード・バッキング…、いずれの曲でもあらゆるパートで極上の響きを聴かせる。野外スタジアムでこんな音色を響かせながら弾ければ、それはそれは楽しいに違いない。陶酔したようにロング・トーンを伸ばす松本の表情が、いつにも増して心地よさそうに見えるのは気のせいだろうか。
サウンドの良さと同じく印象的だったのは、冒頭の「ultra soul」でも観られたライヴならではの“魅せるアレンジ”の数々だ。例えば「ねがい」ではクリーンのカッティングを大賀に任せ、松本は敢えてオーヴァードライヴ・サウンドに焦点を絞ることで、重層的で豪快な立体感を創出。ギター・ソロではジミー・ペイジを思わせる特徴的フレーズを含む自由なインプロヴァイズも魅せる。さらにメンバー紹介コーナーではブルージーなアドリブから、オルガンをバックに「星に願いを」をしっとりと演奏。「ALONE」では稲葉が弾き語るグランドピアノの上に松本が乗り、印象的なテーマ・メロディーを敢えて大きく変えながら激奏…。彼らのショウを見慣れたコアなファンも唸らせる、凝った演出の数々が実にニクいではないか。
そして今回のツアーにおける最大級の“魅せるアレンジ”は、「LOVE PHANTOM」にこそあった。雄大さと哀愁を壮絶にミックスさせたこの曲では、中間部でピアノとギターの不穏なメロディーから始まる、未発表の新曲へと突入。B’z 30th Year Exhibition “SCENES” 1988-2018にて、先行して譜面が展示されていた「HINOTORI」だ。彼らの楽曲としては珍しいほどにヘヴィ・メタル的なアグレッションの強いナンバーで、稲葉のシャウトもツーバスのドラミングも激しいことこの上ない。またこのメドレーで松本は、盟友:高崎 晃(ラウドネス)からの贈り物であるキラー製ギターを使用。そのシャープな音色が楽曲の攻撃性を最大限に増幅していたことも、特筆すべきことだった。
そんな最大級のサプライズを含む見せ場を経て、ショウはクライマックスへ向けて加速。派手で豪快なコード・リフの「Real Thing Shakes」を挟んで、エネルギーあふれる「juice」が始まると、飛び跳ねる観客のパワーで会場が地響きのごとく揺れる。その勢いを「BAD COMMUNICATION」が引き継ぎ、ここでも2本のギターによる重層的アレンジで魅了。強烈に疾走する「Pleasure 2018 〜人生の快楽〜」では爽快感を煽るツイン・リードでエンディングを締め、ショウ本編は華麗に幕を閉じた。
アンコールではスタジアムの後方から松本と稲葉が登場し、大歓声を浴びながら客席の間に作られたセンター・ステージへ。30年間続けてこられたことへの喜び、彼らを支えてきたファンへの感謝の思いを2人が述べると、場内は割れんばかりの喝采で満たされる。それが止むのを待つことなく、松本が奏で始めたのは「Brotherhood」の優しいアルペジオ。彼がこの曲で携えていたのは“Tak Matsumoto Les Paul Standard 2018”で、ご存知の通り1999年に発表されたギブソン製初代シグネチュア・モデルを再現し、アップデートを加えたものだ。過去を振り返りつつ未来を見据えて進化するという、アニヴァーサリーに相応しいギターをここでセレクトしたのは単なる偶然ではあるまい。キャナリー・イエローのボディーから放たれるその音色は、この夜のショウの中でも最高級の美しさだった。
感動的な空気の余韻を引き継いで、楽器隊によるムーディーでジャジーなセッション・タイムが始まる…と思いきや、すぐさま激烈なスピードの「ギリギリchop」へ変化。切り裂くような松本のギター・リフと稲葉の振り絞るようなハイトーンは、先ほどのメロウな雰囲気を自ら消し飛ばすかのごとし。そして最大限まで振り切ったヴォルテージを、松本の幽玄なヴォリューム奏法でいったんクールダウンさせてから、勇壮で雄大な「RUN」へとつながる。最初から最後まで鳴り止まない手拍子と大合唱は、この夜集った50000人のファンたちとB’zの絆の強さをそのまま見せつけているかのようだった…!
B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 HINOTORI 2018.9.22 @味の素スタジアム セットリスト
1. ultra soul
2. BLOWIN’
3. ミエナイチカラ 〜INVISIBLE ONE〜
4. 裸足の女神
5. Wonderful Opportunity
6. 光芒
7. 月光
8. 恋心(KOI-GOKORO)
9. OH! GIRL
10. イチブトゼンブ
11. ねがい
12. ALONE
13. LOVE PHANTOM〜HINOTORI〜LOVE PHANTOM
14. Real Things Shake〜juice
15. BAD COMMUNICATION
16. Pleasure 2018 〜人生の快楽〜
[encore]
17. Brotherhood
18. ギリギリchop
19. RUN