アーティスト名 | THE ROLLING STONES ザ・ローリング・ストーンズ |
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アルバム名 | BLUE & LONESOME ブルー&ロンサム |
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11年ぶりのスタジオ盤は、シカゴ・ブルースに軸足を置くカヴァー作。レコーディングは3日間でオーヴァーダブなしという制作過程と、現代の高水準な録音技術とが相俟った、眼前で演奏されているかの如きサウンドの強烈なリアリティは、60年前の荒削りで泥臭いシカゴ・ブルースの魅力を現代に伝える助けにもなろう。ミック・ジャガー(vo)のハーモニカも含めた切迫感の強い表現力には驚かされたし、キース・リチャーズ(g)、ロニー・ウッド(g)、チャーリー・ワッツ(dr)も気迫十分で、弛緩する瞬間はない。偶然同じスタジオに居合わせた、南部魂を持つ同郷の士:エリック・クラプトンが「Everybody Knows」「I Can’t Quit You Baby」で客演しているが、前者の甘く艶めかしいスライドと、キース&ロニーの乾き切ってザラついたプレイ/トーンとの対比も一興だ。
ブルースに対して身構える向きもあろうが、厚めのリフで重心低く攻めるマジック・サムの「All Of Your Love」でのシンプルなフレーズのリフレインがもたらす酩酊感に伴う精神の解放はストーナーやサイケ・ロックが表現しているものと変わらないし、リトル・ウォルターの「I Gotta Go」「Had To See You Go」やハウリン・ウルフの「Just Like I Treat You」での快活さと衝動性はR&Rそのもの。平均年齢70歳を超えても青さを出せるこの演奏集団は何者なのか? ブルースとロックの間には隔たりがないことを証明すると共に、彼らがその橋渡し役を買って出た、意義深い作品だ。
【文】菅原健太