BLACK AND WHITE AMERICA／LENNY KRAVITZ

レニクラが“ロードランナー”からアルバムを出すとは隔世の感がある。直接的なタイトルから分かるように、自らのルーツを掘り起こしながらファンク、ロック、バラードといつもながらの“レニー節”を詰め込んだ。すべての楽器を操るマルチぶりは相変わらずだが、プロダクションは簡素で有能なプレイヤーの姿が浮かび上がる。レニーのギター・プレイはイメージに反して粘っこくなく、特にカッティングでは熱を抑え、冷静さを保つ（その点はドラム演奏にも共通する）。そこに情緒的でパワフルなメロディーが絡む。それこそ“黒と白”が溶け込んで、激しさとたおやかさを飲み込んだ１作。冒険はないが、安心して聴ける。
（小口正貴）