昨年暮れ、イタリアのパワー・メタル・バンド:アルテミスが、同郷のベテラン・メロディック・メタラー、シークレット・スフィアの結成20周年記念公演のスペシャル・ゲストとして出演を果たした。彼らはシークレット・スフィアとは同じ年の’99年、デモ盤『CHURCH OF THE HOLY GHOST』の再リリースをもって正式デビューしており、以後着実に活動を続けてきた実力派だ。アンドレア以外のラインナップは流動的だが、「アルテミスという名の列車を止めることはできない」と言う彼の不屈の精神が原動力となり、現在に至るまで8枚のアルバムをリリースした他、数度の日本公演も果たしている。今回は昨年発表されたパワフルな最新作『BLOOD-FURY-DOMINATION』を中心とした内容が予想されたため、どんなサウンドを聴かせてくれるのか、胸を躍らせながら会場へ向かった。
国産シンフォニック・メタル・バンドのクロス・ヴェインがオープニング・アクトとしての華やかなパフォーマンスを終え、15分ほどの休憩を挟んだ後に場内は暗転。緊迫感が漂う壮大なSEが流れると、オーディエンスの歓声に包まれながらメンバーが登場! そして1発目に披露したのは、『BLOOD-FURY-DOMINATION』のキラー・チューン「Undead」だ。
序盤は若干アンドレアのギター・サウンドが小さく感じられたが、それでもリフの存在感は際立っており、彼のプレイがアンサンブル全体をリードしていた。バンドの要であるファビオ・デッシー(vo)の歌唱は激しいパフォーマンスの中でも全くぶれることがなく、爽快感を感じるほどパワフルに聴かせていた。なお、「Still Awake」以降の何曲かはジョルジオ“JT”テレンツィアーニ(b)とアンドレアがコーラスを担当。楽器を演奏しながらでも一切不足を感じさせない、安定感のある歌唱でファビオを丁寧にサポートしていた。
基本的にアンドレアのサウンドはソロ時に掛けるワウ以外に装飾的なエフェクトを使用しておらず、シンプルな音作りでストレートに弾きこなしていく。メロウなナンバー「Home」では、ピッチシフターを活かしたユニークなプレイを聴かせる場面もあった。新作収録の「Into The Arena」でそのプレイはさらにアグレッシヴさを増していくが、それに負けじとJTが、ベースの指板に仕込まれたLEDライトを光らせつつ、バッキングにタッピングを取り入れた派手なパフォーマンスで応酬する。続く「7 Days」では、アンドレアの強烈なダウン・ピッキングを活かしたヘヴィ・リフに合わせて、3人が共にヘドバンをしながら息の合ったプレイを見せつけ、場内はますますヒート・アップ。
そんな真剣勝負の空気の中にも、ファビオが新作に付けられた邦題(革命の狼煙)を日本語で「カクメイノノロシ!」と嬉しそうに連呼する様子に思わず場が和む瞬間も(笑)。しかしラストには彼らの代表曲である「Vortex」を披露し、同期音源も駆使した大迫力のサウンドを聴かせてくれた。
クライマックスではファビオが最高にエモーショナルな声で歌い上げ、アンドレアはこれでもかという程にサービス精神旺盛な速弾きを取り入れたアドリブを展開! ショウは大盛況の内に終演となり、シークレット・スフィアへとバトンが渡された。
高い演奏技術で観客を圧倒してくれた彼らは、今回の公演でシークレット・スフィア目当てのオーディエンスにも大きなインパクトを残したに違いない。1日でも早く再来日し、今度は濃密なフル・ショウを堪能したいと思ったのは筆者だけではないはずだ。
アルテミス 2017.12.8. @新宿BLAZE セットリスト
1. Undead
2. Black Sun
3. Scars On Scars
4. Still Awake
5. Home
6. Electric Fire
7. We Fight
8. Into The Arena
9. 7 Days
10. Vortex