イタリアのメロディック・パワー・メタル・バンド:アルテミスのギタリストであるアンディ・マートンジェリが、新たなソロ・アルバム『ULTRADEAD』をリリースした。全編ギター・インストゥルメンタルのその内容は、タイトルから察せられる通り強烈なメタル・ギター・フレーズのオンパレードだ。元メガデスのデイヴィッド・エレフソンのソロ・バンドでも活躍する彼が多忙な合間を縫ってようやく完成させた自信作を、たっぷりと語ってもらった!
“Ultradead”とは、ある種の人生の送り方
YG: あなたのメイン・バンドであるアルテミスとしては2017年の『BLOOD-FURY-DOMINATION』リリース時に取材させていただき、それから6年が経ちますが、この間にどういった活動をしていましたか?
アンディ・マートンジェリ(以下AM):アルテミスではライヴに精を出していたけど、同時にデイヴィッド・エレフソン(元メガデス)のバンドでヨーロッパやイギリスをツアーしていた。それにアルバムを3枚レコーディングしたよ。最も新しいのはエレフソンのソロ・アルバム『VACATION IN THE UNDERWORLD』(2022年)だ。ヴォーカルはジェフ・スコット・ソートが務めている。ドラムはアルテミスのパオロ・キャリディで、リズム・ギターはヴァレリオ・デ・ロサ。俺はリードとリズム・ギターの担当だ。このメンバーで、スラッシュ feat.マイルズ・ケネディ&コンスピレーターズのヨーロッパ・ツアーのオープニング・アクトを務め、素晴らしいライヴを行なった。ここには、Altitudes & Attitude というバンドも出演した。ラインナップはエレフソンとアンスラックスのフランク・ベロ、ギターは俺、ジョー・バビアックがドラム。それに元ジューダス・プリーストのK.K.ダウニング、ティム“リッパー”オーウェンズ、レス・ビンクスだ。アルテミスとしては、カヴァー・ソングを出したばかりだよ。俺たちの大好きなアイアン・メイデンの「Moonchild」だ。それに、新しいシングルも近々リリースされる。常に動いているといえるね!
YG:ちなみに、5月にはマイケル・アンジェロ・バティオ、ローワン・ロバートソン、ガス G.と一緒にツアーをされていたようですが、いかがでしたか?
AM:あのツアーは俺たち全員にとって本当に楽しいものだった。もう長い付き合いの友人同士なので、“Electric Guitarlands”という名前のもと、30日間で27公演を行なうヨーロッパ・ツアー開催の機会を得られたことはとても大きかった。毎晩俺たちは、ステージを粉々に破壊せんとばかりにシュレッドしまくったよ! とても楽しかった。それが目に見えて感じられたし、オーディエンスも喜んでくれた。皆にとって忘れられない体験になったね。ショウの最後はブラック・サバスの「Paranoid」をジャムって終わるんだけど、毎回その内容は違うものになったし、気の向くままにひたすら速弾きしまくったよ!
YG:あなたのソロ・アルバムとしては2014年の『SPIRAL MOTION』が初めての作品で、今回の『ULTRADEAD』は2ndソロにあたりますが、どちらもギター・インストゥルメンタル作品のようですね。バンドでは歌モノで、ソロはインストという棲み分けをしているのでしょうか?
AM:ああ、もちろんだ! 君は全くもって正しいよ。インストゥルメンタル・アルバムというのはギターがシンガーの役割を務めることになり、それは自分の声で自分自身の曲のストーリーを伝えるよりもチャレンジングなことだ。まったく違う旅路になる。自分をもっとよく知る旅に出かけてインスピレーションを得るようなものだ。ギター的なことだけじゃなく、感情を表すにも、叫んだり囁いたりと自分の声を使い分けるように、限界なく鋼のように忠実にやっていけるんだ! 同じことをアルテミスでも行なっているので、どちらの書き方でも同じように刺激を受けるよ。同じものは2つと出てこないからね!
YG:それでは、新作の話に移りたいと思います。『ULTRADEAD』を作るに至った経緯を教えてください。本作の収録曲は、どんなタイミングで書かれたのですか? 例えば「Hands Of Fury」という楽曲は6年前にあなたのYouTubeチャンネル上で公開されているようですが、長年書き溜めていたものをまとめたのでしょうか?
AM:『ULTRADEAD』はここ何年かの間、ツアーに出たりバンドでアルバムを作ったり、クリニックや旅行したりする合間に思いついた。だからこの作品は人生の旅路そのものを表していて、どの曲も、俺の人生におけるある一時を反映した関連深いものになっている。「Hands Of Fury」はたしかに、何年も前にリリースされたものだ。でもすべての楽曲は、フル・アルバムを作るために書かれていたんだ。でも制作を続ける中で、ありがたいことに他の仕事が入ってくる。それは良いことだと思ったので、「よし、流れに任せて無理をしないようにしよう」と言い聞かせ、ソロは後回しにしてきた。今振り返っても、正しい選択だったと思うよ。
YG:トータルの長さは33分と比較的コンパクトですが、その中には熱量の高いギター・プレイが満載のネオ・クラシカル・メタル・インストになっていると思いますが、いかがでしょうか?
AM:そうだね、33分に及ぶ純粋なエネルギーが詰まっている。自分が楽しいと思うことをアクセル全開で推し進める、そのためだけに書いてプレイした曲ばかりだ。よりラウドでファストで、境界線がない。誰も俺に指図しない。それが俺の生き方だ。ヘッドバンギングにピッタリな曲ができることもあれば、ブルースに根ざした曲、またはクラシックに根ざした曲ができたりもする。だから、アルバム全体において、すべての曲が物語を持っていることに誇りを持っているよ。
YG:“Ultradead”という単語はあなたの造語のようですが、どういった意味があるのでしょうか?
AM:その通り、これはある種の人生の送り方を指している。でも、それは誰の人生にも言えることだったりする。夢を追いかけ、時に人生が味方してくれなくても留まることなく進んでいくことがあるだろう。それこそが真の冒険であり、山あれば谷あり、常に何かエキサイティングでチャレンジングなものになる。だが、毎日ゾンビのような気分になったとしても、それに慣れて乗り越えていく。とにかくプッシュし続けて、自分の心が“ウルトラ(超)”な境地にたどり着く。そこは人生の現在と未来が決まる場所。過去は過ぎ去り、情熱と夢を通して最善を尽くす思いで、戦場に出ていく…俺だけじゃなく、たくさんの人がそんな状況を経験しているはずだ。だから「Ultradead」という曲はゾンビが君に向かって歩いてくるような雰囲気に作ってあるけど、楽しいメロディーとヘヴィネス、超クレイジーでラウドな曲にもなっているよ!
YG:インストゥルメンタル曲を作る時は、楽曲が出来てからタイトルをつけるのですか? もしくは先に何かキーワードが浮かんで、そこから曲のインスピレーションを得るのでしょうか?
AM:たいていは曲名を考える。素晴らしいタイトルを考えるんだ。俺はサウンドトラックや映画、イラストの世界が大好きで、まず頭の中でさっと映画ようなものを考えていく。するとごく自然に、素早く音楽が出てくるんだ。これまで長年にわたり、何百という曲を書いてきたのに、今でもそんな風に作れるから自分でも驚くことがあるよ。音楽に対して明確なヴィジョンがあり、楽曲が強力で焦点を持った状態でできてくる。クリエイティヴィティというのは天の賜物であると同時に、毎日養っていくべきものでもある。説明がつかないものなんだよね。そう思わないかい?
YG:ほとんどすべての楽曲でギターやベース、シンセなど、ドラム以外の楽器をご自身で演奏され、ドラムは元アルテミスのパオロ・キャリディが叩いていますが、他パートのミュージシャンの起用は考えていなかったのでしょうか?
AM:ああ、俺とパオロはほとんどすべての曲で演奏しているけど、結果的にそうなった。俺は他の楽器を演奏するのが好きだ。特にソロの曲は、自分の内面で対話をして、本当に言いたいことを深く掘り下げていくようなものだから。ある感情を、音の並びやオーケストレーションを通じてどう表現すべきかを把握しているのは自分だけで、他者に説明する暇も惜しいというような時があるからね。パオロはモンスター・ドラマーであるだけでなく、音楽的なアプローチにも対応できる真のミュージシャンだ。そして、素晴らしいゲストが参加してくれた。元メガデスのデイヴィッド・エレフソン、ジョルジオ・JT・テレンツィアーニ(アルテミス/b)、アルビー・ピジー・パトゥッツォ(dr)、エンリコ・マルキオット(key)…彼らは素晴らしい音楽性、パワー、ユニークなスタイルとセンスを持った、真のメタル・ブラザーだ。
YG:デイヴィッド・エレフソンのソロ・バンドに参加しているということですが、「Save Us」には彼がゲスト参加していますよね。
AM:デイヴィッドは何よりも真の友人であり、バンド仲間であり、偶然にも俺が子供の頃からメタル界で一番好きなベーシストだった。俺たちの間には素晴らしい相性とケミストリーがあり、一緒にジャムったり曲を作ったりするのが好きなんだ。というわけで、彼に「Save Us」に参加してくれるように頼んだら、「いいよ」と、素晴らしいベースを弾いてくれた。エレフソン・パワー全開のベースが曲をドライヴさせ、ギターのメロディーと相互作用しているのを聴くことができる。だから、デイヴィッドとパオロと一緒にプレイしたこの曲では、彼のバンドのロック・メタルを再現したかったんだ。
YG:それでは、新作の各楽曲について詳しく聞かせて下さい。1曲目「Army Of Darkness」はアルバムの冒頭にふさわしい勇壮なリズムの楽曲で、中盤の3連符のアルペジオなどから、あなたも大きく影響を受けたというイングヴェイ・マルムスティーンのプレイを彷彿させます。どんな経緯で書かれたのでしょうか?
AM:曲名は俺の最も好きな映画のタイトルから取ったんだ。その狂気からインスピレーションを得て、戦場で敵に立ち向かいながら歌えるような、あるいはそれ以上に、忌々しい怪物たちが歌うような、サウンドトラック・メロディーの力強い曲を書こうと思った。リード・ギターだけでなく、爆音のドラム・ビートとギター・リフにも焦点を当てた、輝かしい真のメタル・アンセムが欲しかった。この曲は、アイバニーズL.A.カスタムショップの素晴らしいチームによって作られた“AOD”(ARMY OF DARKNESS)ギター…これでレコーディングしたんだ。そうそう、イングヴェイはいつも俺のお気に入りのミュージシャンだよ。ゲイリー・ムーア、ブライアン・メイ、トニー・アイオミ、エディ・ヴァン・ヘイレン、リッチー・ブラックモア、マーティ・フリードマン、ジョージ・リンチのような他の素晴らしいミュージシャンも上位にいるけどね!
YG:ソロ・パートはハイ・ポジションでの速弾きやブリッジ・ミュートをかけながらの高速ピッキング、両手でのタッピングといったテクニックがふんだんに使われていますが、あらかじめ構築しているのでしょうか?
AM:ああ、中盤はクレイジーなパートでいっぱいだ。でも構築したわけじゃない。1テイクで、ワイルドなものを録りたいという意志に突き動かされたんだ。2回聴き直して、「そうだ! このままでいこう」と決めた。俺のアイドルたちから学んだやり方だよ。アグレッシヴなピッキングや弦の上で炸裂させる怒りのようなプレイは、時に千の言葉を話すよりも多くを語るものなんだ。だから、このアルバムの何曲かでは、ラスボスを解き放つような曲にした。
YG:2曲目「Colossus」はイントロのインパクトやソロのスウィープが印象的な楽曲ですね。
AM:これも冒頭から聴く人の心をつかむ曲で、イントロのE弦の開放弦が、キャッチーなメロディーを作るためのペダル・ノートになっているんだ。ピッキングは俺がいつもやっているエコノミー・ピッキングのようなもので、普段はオルタネイトだけど、エコノミーをやる時はとてもアグレッシヴに弾くので、音だけだとエコノミーには聴こえない。でも俺にとってはまったく自然なことだし、そういう速いフレーズを弾くのが心地いい。ほとんどの場合、俺はギターでできることを大げさに言っているだけで、ギターが話している時は本当に忠実で素直なんだ。
YG:3曲目「Ultradead」比較的スローなテンポでどっしりしたタイトル・トラックのヘヴィ・チューンです。ミュージック・ビデオ(MV)を観ると、音程差の激しいイントロはスライド・バーを使用しているのが分かります。先程の「Colossus」ではデジテック“Whammy Ricochet”を使用していましたが、こういった音程をコントロールする方法を色々と研究しているのでしょうか?
AM:「Ultradead」は俺の好きなバンドのひとつであるブラック・サバス・スタイルの、非常にヘヴィなリフだけど、ステロイドを打ってクレイジーになったブルースマンのようなスライド奏法なんだ。リズム・ギターは、スライドのメロディーと同様にとてもルーズに演奏されている。一方「Colossus」や他の曲では、“Whammy Ricochet”を使っている。ライヴでも、リードやリズム・パートでよく使うんだ。まるで怪物に顔を噛まれたような音だし、使い方を変えればヴァイオリンのように滑らかにもなる。そして何よりも楽しいんだ。これがとても重要だね。
YG:1:17からのコード進行は半音で下がっていく様子が曲調の切なさを醸し出していますが、そのコードの変化に合わせてソロを弾く音も考慮して変えているように感じました。いかがでしょうか?
AM:全くその通り。空間とメロディーを与えて大きく曲調を変化させたかったからだ。死の息吹から、メロウな息吹を感じられるようにね!(笑) メロディーのコード進行に沿って、ストリングスを入れたり、ギターで主旋律をヴァイオリンのように弾いたりして、ちょっとしたオーケストレーションを作ったのさ。その後はパワー全開のセクションに戻り、もっともっと…最後まで駆け抜けるんだ!
YG:4曲目「My Last Tears」本作の中で唯一のバラードで、アコースティック・ギターの音も聞こえるなど他とは違った印象です。書かれた背景を教えて下さい。
AM:頭の中でタイムスリップして、フル・オーケストラが演奏する昔の音楽劇場にいる自分を想像していた。聴いてわかるようにこれは本当に激しい曲調で、緊張や解放のコントラストなど、実生活の中で起きる自分ではコントロールできないような強い感情がたくさん表現されている。そういう時は、なるがままにするのがいい。リード・ギターはそうやって、レコーディング時に感じたままに演奏し、本能とフィーリングに任せて即興的に演奏した。それが「My Last Tears」になったわけだけど、真の音楽といえるものになったから、とても誇りに思っているよ。